広がる可能性と立ちはだかる壁 ~これからのプログラミング教育に必要なもの

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2026.07.10

広がる可能性と立ちはだかる壁 ~これからのプログラミング教育に必要なもの

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■    連載:広がる可能性と立ちはだかる壁 ?これからのプログラミング教育に必要なもの?
■□   コラム:保護者、支援者からのメッセージ・1
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■ 連載 子どもたちの創造性を育むために~必修化から5年、小学校プログラミング教育の今
       第3回 広がる可能性と立ちはだかる壁 ~これからのプログラミング教育に必要なもの(最終回)
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これまで見てきたように、「小学校のプログラミング教育」には、子どもたちの思考力や創造性を育む大きな可能性があります。ただ、その実践を支える体制という面では、まだ解決できていない課題がたくさんあるのも事実です。

まず学校現場でよく聞かれるのが、指導の「属人化」※1という問題です。プログラミングに詳しい先生が一人いれば何とか回っているけれど、その先生が異動したら途端に立ち行かなくなる。そんな状況が少なくありません。学校全体でプログラミング教育を共有・継続して実践していくことができる体制がなかなか整わないのです。

※1 属人化 特定の人のスキルや知識に依存して業務や活動が成り立っている状態のこと。その人がいなくなると組織全体が機能しなくなるリスクがあります。学校教育の場では、熱心な担当教員が転勤・退職するだけで取り組みが止まってしまうことが典型例です。

また、中学校以降を見据えた接続として「Scratch(スクラッチ)※2」のようなビジュアルプログラミング※3から「Python(パイソン)※4」などのテキスト型プログラミング※5へ段階的に移行していくことに不安を感じる先生も多く、GIGAスクール端末やネットワーク通信環境の整備が追いついていない学校がかなりの割合であることも、こうした実践を広げる上での壁になっています。

※2 Scratch 米国マサチューセッツ工科大学(MIT)が開発した、子ども向けの無料プログラミング環境。文字を入力する代わりに、色分けされた「命令ブロック」をパズルのように組み合わせてプログラムを作る。

※3 ビジュアルプログラミング 文字や記号を入力する代わりに、図形やブロックをドラッグして組み合わせることでプログラムを作る方式。

※4 Python 世界で最も広く使われているテキスト型プログラミング言語のひとつ。文法がシンプルで読みやすく、AI・データ分析・Webなど幅広い分野で活用されている。

※5 テキスト型プログラミング 決まった文法に従って文字でコードを書くプログラミングの方式。

こうした状況を打開するには、特定の先生に頼らなくても続けられる仕組みをつくることが必要です。子どもたちの発達段階に沿ったカリキュラムをきちんと整備すること、ICT支援員※6や外部の専門家をもっと積極的に活用すること、そして先生たち自身が試行錯誤できる時間を確保すること。地味に聞こえるかもしれませんが、実はこうした積み重ねが実践の土台になるのです。

※6 ICT支援員 学校でのICT(情報通信技術)活用を技術面からサポートする専門スタッフ。

それともうひとつ、忘れてはならない視点があります。特別支援教育との関わりです。第2回で解説したように、「プログラミング教育」は、さまざまな認知特性をもつ子どもたちにとっても有効な学びになり得ます。しかしその一方で、支援員がいるかどうか、端末が安定して使えるかどうか、担任の先生に知識と余裕があるかどうかの差が、そのまま学習機会の差になってしまう危険性もあります。それらをきちんと整えれば「誰もが参加できる学び」になるのに、中途半端なままでは新たな格差を生む可能性がある。プログラミング教育にはそういった二面性があります。

だからこそ、どの学校でも安心して取り組める環境を整えることがまず大切です。プログラミング教育は、最先端の内容を教えるためのものではなく、「誰一人取り残さない学び」※7を実現するための手段のひとつとして学校の先生方も保護者の方も捉える必要があります。

※7 誰一人取り残さない学び SDGs(持続可能な開発目標)の理念「Leave no one behind」を教育に適用した表現。障害の有無・家庭環境・学力などにかかわらず、すべての子どもが質の高い学びに参加できる状態を目指す考え方。

GIGAスクールが始まって5~6年がたちます。子どもたちにとって、コンピュータはもう特別なものではありません。問題は、それを「ただ使う」のか、「自分なりに使いこなす」のかです。プログラミング教育は、まさにその分かれ道に立つ学びになると思っています。

保護者の方は、子どもが何を作ったかよりも、「どんな工夫をしたか」に目を向けてみてください。先生方は、完璧な授業を目指すより、今ある教材や実践を手がかりに、「まず一歩踏み出してみる」ことが大切です。小さな実践が積み重なって、やがて大きな変化につながっていくのです。

「プログラミング教育」の未来は、すでに多くの教室で芽吹いています。その芽をどう育てていくか。それが、これからの教育に問われていることではないでしょうか。


◇望月 陽一郎(もちづき よういちろう) 
大分県立芸術文化短期大学 非常勤講師。
長年にわたり、学校現場におけるICT活用やプログラミング教育の推進、教員研修の講師などに尽力。自身が運営するサイト「mochizuki.net」では、micro:bitを用いた「サンプルプログラミング集」を無償公開しており、プログラミング教育の活動については、2019年に「学情研デジタル学習教材コンクール 学情研賞」を受賞。「まねる、変える、そしてつくる」をコンセプトに、子どもたちがテクノロジーを「魔法の箱」ではなく、自らのアイデアを形にするための「道具」として使いこなせるようになるための環境づくりを提唱している。
 
関連リンク mochizuki.net(個人サイト)micro:bitプログラミング集(無償公開中)


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■ コラム:メルマガ・バックナンバーのおすすめ
        第5回 保護者、支援者からのメッセージ・1
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15周年記念メルマガ・バックナンバー紹介の5回目です。保護者あるいは支援団体の方に寄稿いただいた連載を紹介させていただきます。

1.聴覚障害のある子を育てる

荒木友希子さんの「聴覚障害のある子を育てる」は、2016年6月から連載です。心理学者であり臨床心理士の著者が、先天性重度聴覚障害を持つ息子との歩みを綴った全7回の連載です。

物語は生後すぐの「新生児聴覚スクリーニング検査」で障害の疑いが発覚した瞬間から始まります。診断結果に葛藤し、我が子の障害を受容していく親としての心の機微がリアルに描かれます。さらに、生後半年からの補聴器の活用や、1歳10ヶ月での人工内耳手術の決断など、医療や機器の選択に伴う親の苦悩と選択が具体的に語られています。

本連載は単なる育児記録にとどまりません。聴覚障害児の親としての当事者の視点と、心理学者としての専門的な知見が融合しています。「障害が世界を広げ、人間として大きく成長させてくれた」と語る著者。葛藤を抱えながらも前を向く姿は、同じ境遇にある家族だけでなく、すべての子育て世代の心に深く響く気づきに満ちています。

※聴覚障害のある子を育てる 第1回 

なお、荒木さんはお子さんがタブレットを使って言葉を学んだことに感銘を受け、聴覚障害のある子どもたちのツールとして「手話うたアプリ」を開発されました。それについての全3回の連載も2021年から本メルマガに掲載させていただきました。

※手話うたアプリ 第1回 

2.ディスレクシアとは? 

藤堂栄子さんによる連載「ディスレクシアとは?」をご紹介します。
藤堂さんはお子さんがその困りをもっていらっしゃったこともあって、認定NPO法人EDGE(エッジ)を立ち上げられ、多方面で活躍されています。

知的な遅れがないにもかかわらず、文字の読み書きに著しい困難を抱える神経発達症(発達障害)の一種「ディスレクシア(発達性読み書き障害)」。日本における当事者支援の第一人者である著者が、その現況から具体的な支援方法、社会の動向までを2019年10月から全8回にわたり網羅的に解説していただきました。

連載では、当事者が抱える「見え方・捉え方」の困りごとを解説し、単なる努力不足ではないことを伝えます。その上で、前提となるアセスメントと合理的配慮の基本的な考え方、ICT機器やデジタル教科書を用いた代替手段など、具体的な配慮のあり方を提示。さらに「読書バリアフリー法」といった最新の社会の動きや、国内外の成功例を交え、全人的な成長を支える重要性を説きます。

周囲の正しい理解と環境調整により、本来の能力を発揮できることを伝える、教育関係者や保護者必読の羅針盤となる連載です。

※ディスレクシアとは? 第1回 

藤堂さんには、「読み書きのアセスメントをして子どもの本来の力を発揮する」と題して2回の連載をしていただいています。

第1回 25年2月7日 


■□ あとがき ■□--------------------------
次号は、7月24日(金)の刊行予定です。


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