目標と由来:脳バランサーキッズ

MAILMAGAZINE
メルマガ情報

2023.11.17

目標と由来:脳バランサーキッズ

----TOPIC----------------------------------------------------------------------------------------
■   脳バランサーキッズ
■□  注意欠如多動症・2
--------------------------------------------------------------------------------------------------


───────────────────────────────────…‥・  
■ 連載:サービスとアプリ-目標と由来
             第6回 脳バランサーキッズ
───────────────────────────────────…‥
1.アセスメントの必要性
2001年5月にWHO総会でICF(International Classification of Functioning, Disability and Health:国際生活機能分類)が採択されました。生きることの構成要素の分類で、心身機能・構造、活動、参加の3要素で健康の状態を把握するとされています。それ以前はICIDH(国際障害分類)に基づき障害を分類していたのに対し、ICFでは社会に参加できているかを判断基準として健康かどうかを判断することになった訳です。※1

※1 厚生労働省第1回社会保障審議会統計分科会資料から

参加できるとは、生活や社会の中でやりたいことができること、そこで求められることができることになります。それらの多岐にわたる内容は、生活機能、社会機能として捉えられることになりました。

生活機能や社会機能には、身体的な要件が必要になりますが、どのように身体を動かすかという脳の働きを中心とした「認知機能」が必要となります。

認知機能には注意や記憶、言語などさまざまな種類があり、生活機能や社会機能にはそれぞれ、それを行うのに必要な認知機能のレベルがあります。

認知機能を測るには専門家が、言語や教具などを使って行う認知検査(知能検査や発達検査)で行うのが一般的です。ただ、同じ問題を使うことになるため、実施の間隔をあける必要があります。例えば、世界でもっとも行われている子ども向けの検査、WISCの場合、日本では1年半以上空けることとされています。

一方、子どもの発達は数か月で大きく変化することもありますので、個別の発達支援を適切に行うためには、認知検査以外の情報が求められることになります。

2.検証調査
脳バランサーキッズは、こども脳機能バランサー・プラスを放課後等デイサービスや児童発達支援施設(以下、放デイ等)で使いやすく改良したサービスです。こども脳機能バランサー・プラスについては、本連載の第3回をご参照ください。※2

※2 こども脳機能バランサー・プラス
 
前項で述べたように放デイ等に求められる重要な機能に、認知機能のアセスメントがあります。こども脳機能バランサー・プラスは、最初のバージョンを3歳から12歳の各年齢の子ども10数名に取り組んでもらった結果データ(タスクの正答率と所用時間)を収集し、平均値と標準偏差を計算して、それらを使った指数が算出されるようになっています。脳バランサーキッズも同様の指数が自動的に算出され、記録されるようになっています。その指数が、世界標準の認知検査であるWISCの指数と関連付けられれば、放デイ等のアセスメントツールとして使えるのではと考えて、調査を行いました。

ご協力いただいたのは、明星大学と、東京都立町田の丘学園(特別支援学校)、放課後等デイサービス3施設です。

町田の丘学園では当時、五藤が外部専門員として中等部、高等部の知的級と情緒級の全生徒のアセスメントを依頼され、そのツールとして脳バランサーキッズを使っていました。その有効性の検証にもなると同校の教諭にご判断いただき、保護者の同意が得られた生徒のWISC-IVの結果をご提供いただきました。

放課後等デイサービスでは、明星大学心理学研究科の大学院生(WISC-IVの研修受講者)が各施設に出向き、WISC-IVと脳バランサーキッズを実施して、それぞれのデータを回収しました。

それらを橋本圭司・昭和大学医学部准教授が分析し、WISC-IVと脳バランサーキッズの指数の間には高い相関があることが論文として発表されています※3。

※3 Hashimoto K. Usability of the Assessment of Cognitive Function by the Digital Application Kids Brain Balancer. Journal of Pediatrics and Neonatal Medicine. 2023. 5, 1-4.

※4 前述論文に含まれる相関分析結果

なお、WISCと脳バランサーキッズの関係については他にも研究が進んでおります。11月初めに行われた日本リハビリテーション医学会学術集会では杉山智子・昭和大学江東豊洲病院リハビリテーション科医師が「デジタルアプリ『脳バランサーキッズ』による認知機能評価の信頼性と題して発表をされています。学術論文も近々公開されるとのことですから、本メルマガで続報として紹介させていただく予定です。

3.アセスメントをベースとした発達の支援
脳バランサーキッズには、レポート作成機能(ほうかごアシスタント)があり、子どもの過去の2つの時点での発達指数を比較して、サンプル※5のようなレポートを簡単に作成することができます。

※5 脳バランサーキッズのレポート例

こういった資料を使って、図※6のように3つの要素で子どもの発達の支援を行います。

(1) 認知機能の数値化とグラフ化
それぞれの認知機能の指数をみて、子どもに習得させたい生活機能や社会機能に必要な認知機能のレベルが十分かを考えます。不十分なら不足している認知機能を伸ばす、あるいはそれを前提とした支援を検討します。

(2) 学習特性の理解と対応策の考案
注意、記憶、遂行機能など、子どもの認知機能のバランスを考慮した教え方を工夫します。その子と接する際に弱点が補える方法、強みを生かせる方法を考えます。

(3) 周囲の理解による総合的な配慮
前述のレポートを使って、子どもの発達状況を保護者に伝えます。学校や自治体で専門士などに相談できる場合にもレポートは有用です。子どもの周囲の人が目線を合わせた環境整備をすることで子どもは安心して生活し、いろいろなことにチャレンジすることができます。

※6 アセスメントをベースとした発達の支援

放デイ等では、子ども一人ひとりに合わせた個別発達支援計画を作成することが義務付けられています。

4.放デイ等での支援 5つのステップ
下図は放デイ等で、個別支援計画をベースとして支援する流れをまとめたものです。

※7 放デイ等での支援 5つのステップ

1) 子どもの認知機能の発達状況を測定・記録
 子どもの発達について、時系列で認知機能の記録を保存します。

2) 子どもごとの発達育成情報データベースを作成
 放デイの子ども全員について認知機能の情報を収録します。

3) 一人ひとりの子どもの個別支援計画を作成
 学期、あるいは今後半年間にどのように支援を行うか、個別発達支援計画を作成します。レポートを見ながら協議することで、周囲の支援者の専門性を活かしたアイデアを盛り込んで計画を作成します。

4) 支援者がシステムを活用しながら年間を通し支援
 計画に基づいて、支援を行います。

5) 定期的に進捗状況をチェックし必要な対応を行う
 子どもの発達を確認しながら、必要に応じて計画に修正を加えます。計画期間が過ぎたら新たな支援計画を作成し、3)~5)を繰り返しながら生活や社会の中での子どもの参加を増やしていくようにします。

5.アセスメントを活かした自己肯定感・自己効力感の醸成

最後に、子どもの自己肯定感・自己効力感につながる放デイ等でのイベントにおける役割分担について紹介したいと思います。

ハロウィンや発表会などのイベントでは、子ども一人ひとりにいろいろな役割を担当してもらいます。その時にアセスメントに基づく子どもの特性が活用できます。

例えば、クリスマスの場合、以下のような準備と当日の分担があります。

一点だけ先にお伝えしておきます。下記で〇〇が高いというのはその人の中での相対的な力のことです。全員にできるだけ役割を割り振るのがベストで、その際に役割に求められる能力を、その子がそれを他の能力よりも高くもっている場合に、その役割を与えてあげるとよいと思います。

〇事前準備
・ツリーの組み立て・飾り付け
 クリスマスツリーを箱から取り出し、説明図にしたがって組み立てていきます。飾りつけも多種ありますので、それらの手順や分担を考えるのに遂行機能が必要になります。それらが高い人をツリー組み立てのリーダーにしてはいかがでしょうか? また、以前にやったことを思い出せる人も必要です。記憶力の高い人にリーダーの補佐役を任せるとよいでしょう。

・クリスマス・リースづくり
 輪にする台紙を画用紙などで作り、それに毛糸玉やリボンなどで飾り付けていきます。はさみを使うのが得意な手先の器用な人と、色のバランスを判断するのが得意な二次元把握や三次元把握の得意な人に任せるのがよいかもしれません。また、根気よく毛糸玉を作って貼り付けていくには、持続性の注意力が高い向いています。

〇当日の流れ
・保護者受付
 発表会に保護者の方をお呼びする時の受付も子どもたちにやってもらいましょう。子どもと保護者を苗字でマッチングしたり、まだ来ていない人の人数を把握したりするのは言語と注意力が高い人が適任です。

・レクリエーション~サンタ登場~クリスマスプレゼント
 身体を使ったレクリエーションをし、サンタ(支援者が扮する)が登場し、みんなでプレゼントを受け取ります。その司会を年長の子どもに担当させるのもよい案です。言語、遂行機能、注意、記憶などがある程度高い子に担当してもらうとよいでしょう。
 
子どもたちはほめられるのが大好きです。ほめられることが自己肯定感を生み出します。大人からほめられるのも好きですが、中でも同世代の子どもからほめられるのは本当にうれしく、自信になり自己効力感につながります。うまくやり遂げられる役割を考えるのに、アセスメントは有効だと思いますので、記憶にとどめていただければと思います。

なお、このクリスマス・イベントについては、下記のページを参考にさせていただきました。ここにURLを記載して御礼申し上げます。ただし、このページ紹介については、ページ主催者にまだご許可をいただけておりませんので、後日、リンクを削除させていただく場合がある点、あらかじめご了承ください。
※7 こばりんの!30代からでも保育士を目指す人のための応援サイト  
 
◆五藤博義
※レデックス サービスとアプリ一覧
 

 
───────────────────────────────────…‥・  
■ 連載:教育・心理的支援において診断基準をどう読むか・理解するか
             第8回 ADHDの下位分類と発症年齢(注意欠如多動症・2)
───────────────────────────────────…‥
このシリーズでは、教育関係者や心理支援職が改めて診断基準を読むときの留意点を解説しながら、どのように診断基準と付き合っていけばいいのかをご一緒に考えることで、発達障害の改めての理解につなげていければと思います。今回のシリーズでは、DSM-V及びDSM-V-TRについて、発達障害の診断基準を丁寧に説明させていただいております。前回から注意欠如多動症を取り上げています。

DSM-V及びDSM-V-TRでは、注意欠如多動症(Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder)という名称が採択されました。DSM-Vでは、注意欠如・多動症と注意欠如・多動性障害が併記されていたが、TRになり、注意欠如多動症に統一されたことになります。略語は、これまで通り、ADHDです(以下、ADHDと表記します)。

●ADHDの下位分類(前回の復習)
前回のメルマガでご説明したように、ADHDには不注意優勢状態、多動衝動優勢状態、混合状態の3つの状態像があります。DSM-Vからは、例えば不注意型というようなタイプ分けをせず、状態像として説明をされています。しかし、実際の医療機関では、医師の判断で、「不注意型」のようなタイプ分けで説明され、診断書もそのように描かれることもありますのでご注意ください。

●診断基準の作り
ADHDの診断基準の作りは以下のようになっています。

--------------------------------------------------------------------------------
A.(1)および/または(2)によって特徴づけられる、不注意および/または多動-衝動性の持続的な様式で、機能または発達の妨げになっていること
(1)不注意
(2)多動-衝動性

B.不注意または多動-衝動性の症状のうちのいくつもが12歳になる前から存在していた

C.不注意または多動-衝動性の症状のうちのいくつもが2つ以上の状況(例:家庭、学校、職場:友人や親せきといる時:他の活動中)において存在する

D.これらの症状が、社会的、学業的、または職業的機能を損なわせているまたはその質を低下 
させているという明確な証拠がある

E.その症状は、統合失調症、またはほかの精神症の経過中にのみ起こるものではなく、他の精
神疾患(例:気分症、不安症、解離症、パーソナリティ症、物質中毒又は離脱)ではうまく説明
されない
--------------------------------------------------------------------------------

ASDの回でも説明しましたが、診断基準は、医学領域以外の支援者は特にAの、具体的な症状の部分のみに注目しがちです。もちろんAも重要ですが、B~Eを理解していないと、子どもの気になるところを「あてはまっている」かどうかでしか見ない、ということになってしまいます。ADHDは特に、B~Eが重要です。

●Aの症状の項目の読み方
私の経験ですが、以前、ある中学校でスクールカウンセラー業務に従事している際、中学校の先生方との勉強会でADHDをとりあげました。主に教員用の、いわゆる教育図書といわれるような書籍には、このAの診断基準のみを表で掲載している、もしくは説明しているものが多く、先生方はその項目を見て「あてはまっているかどうか」「いくつ該当するか」で判断しがちでした。そしてある先生がそのリストを見て「こんなこと言われたら、中学生男子の8割がADHDになってしまいませんか?おかしいですよね。」と叫ばれたのです。

その先生の叫びは、実に考えさせるものがあります。つまり、診断基準のAのような、症状だけでは、「どの程度」「どんな時に」が抜けており、元気で、ちょっとやんちゃな子どもたちはみんな該当してしまう、というのはその通りなのです。でも、8割も該当するはずは、ないのです。有病率からみてもあり得ないことになります。DSM-VにおけるADHDの有病率は、「世界的に児童の約7.2%」(成人では2.5%)と明記されています。

ADHDはどんな障害なんですか?と言われたときに皆さんはどのように説明しますか?

ADHDは「落ち着きのない子」であり「不注意な子」であり・・・様々に説明されてきました。これは、症状による説明です。でも、ただ単に「落ち着きがない」「不注意な子」では、とても分かりにくいです。人は誰でも状況によっては落ち着きをなくすでしょうし、他のものに気をとられて不注意にもなるでしょう。私はADHDを説明するときには、「不注意や落ち着きのなさをもちながら、やりすぎたり、やらなすぎたりする子どもと説明するようにしています。

これまで使ってきた(使っている)発達障害という言葉は、障害、が非常に強いので、自分たちとは何か異なる何かを持つ、あるいは特異なことをする、異質さをイメージしやすいのですが、ADHDは、症状そのものも、時や場面や誰でもがしそうなことです。そのしそうなことをやりすぎたり、やらなすぎたりするのが、ADHDであり、その制御がうまくいかない障害である。と私は説明するようにしています。これで、C.とD.を含んでイメージしてもらえるかな、と考えています。
だからこそ、B~Eをしっかりと理解し意識しつつ、Aの各項目を確認する必要があります。Bの発症年齢については、前回説明しました。Bも含めて、B~Eの視点を持って、Aの項目を見ていくことにしましょう。

●不注意
不注意という言葉を聞くと皆さんはどのようにとらえられるでしょうか。そもそも「注意」とはどんなことを指すでしょうか。
広辞苑には以下ようにまとめらえていました。

(1)気をつけること。気をくばること。留意。「―して見る」「細心の―を払う」
(2)危険などにあわないように用心すること。警戒。「足もとに―する」「子供の飛び出し―」
(3)相手に向かって、気をつけるように言うこと。「先生から―される」
(4)〔心〕心の働きを高めるため、特定の対象に選択的・持続的に意識を集中させる状態。

心理学でつかう注意は、広辞苑の(4)にあたるものが使われていると考えられます。
実は、注意という言葉にはいろいろな意味があります。様々な先行研究があるのですが、ここでは注意を以下の5つに分けて考えてみます。

(1)持続性注意(続ける力):ある対象に一定以上の注意を向け続ける力
(2)選択性注意(見つける力):多くの情報の中から必要な情報だけを見つけ出す力
(3)転導性注意(別のことに注意を切り換える力):ある対象に向いている注意をスムーズに別の対象に向ける力
(4)注意の分配・多方向性:複数のことに同時に注意を向ける力)複数の対象に同時に注意を向ける力
(5)注意の容量:目的に応じて注意の配分のバランスを保つ機能

(1)(2)(3)のみで分ける考え方もあります。(1)(2)(3)は注意の種類、(4)(5)は注意の機能について説明していると考えてもよいと思います。

ではDSM-V-TRの不注意の項目である(a)~(i)の9つは、どの注意を意味しているでしょうか。今回はa.を例に挙げて、(1)~(5)にそって整理をしてみます。

*診断基準の項目の(例)を省いています。また、DSM-V-TRでは、DSM-Vで用いていた文中の表現が修正されていますのでご注意ください。

--------------------------------------------------------------------------------
a.学業、仕事、またはその他の活動において、しばしば綿密に注意することができない、また
は不注意な間違いをする。
--------------------------------------------------------------------------------

a.は、(1)の持続性注意を示すと考えられます。必要なだけ、その活動に注意を持続させることができないために、細かいところに注意を向けられないということになります。また、この項目は(5)の注意の容量とも関係します。例には、「細部を見過ごしたり、見逃してしまう、作業が不正確である」とあります。単純なミスを繰り返すことになります。

また、(2)の選択性注意も無関係ではなく、たくさんの情報の中から自分が今、意識を向けるべき対象を選択する、という注意力も必要としています。

a.の症状は、重要なシーン、例えば入試の時に、緊張のあまり普段ではありえないようなケアレスミスをしてしまった、ということは誰にでも起こり得ることです。ここで診断基準のB.C.Dの軸を加えて考えてみましょう。

つまり、ADHDは、Aの症状を、12歳以前から見せており(B)、家庭でも学校でも、誰といる時でもこのようなミスを起こしている。しかも、こうしたケアレスミスがあることで、常にテストの結果が著しく低いということや、知能検査や認知検査によって、作業処理的な課題、例えばWISC-IVであれば「処理速度」領域に属する下位検査の得点が他の項目より有意に低い、というような証拠があることが重要になります。

日常的な印象としては、「おっちょこちょい」で片づけられてしまいますが、診断基準から考えると、このような解釈をすることができます。

次回は、不注意のb.の項目以降をこのように解説をしていきます。

◆吉田 ゆり(よしだ ゆり)
長崎大学教育学部・教育学研究科 教授。専門は発達臨床心理学。
公認心理師、臨床心理士、臨床発達心理士、そして保育士でもある。

 
■□ あとがき ■□--------------------------
次回メルマガは、12月1日(金)です。

▼YouTube動画 レデックス チャンネル ▼

メルマガ登録はこちら

本文からさがす

テーマからさがす

全ての記事を表示する

執筆者及び専門家

©LEDEX Corporation All Rights Reserved.