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■ 連載:特別支援教育におけるゲームとロボット ~「やってみたい」が生まれる環境づくり~
■□ コラム:映画『時には懺悔を』
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■ 連載:特別支援教育から考えるAIとの付き合い方第11回 特別支援教育におけるゲームとロボット
~「やってみたい」が生まれる環境づくり~
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「遊びになってしまうのではないか」「勉強や運動の妨げになるのではないか」「子どもが夢中になりすぎるのではないか」
そんな少し否定的なイメージをもつ方もいるかもしれません。
確かに、ゲームとの付き合い方について考えることは大切です。一方で、子どもたちの様子を見ていると、ゲームだからこそ生まれる行動があることにも気づきます。
そこで今回は、ゲームを単なる「遊び」としてではなく、子どもの「やってみたい」を引き出す仕組みとして考えてみたいと思います。
特別支援学校では、子どもたちの健康維持や学習、生活スキルの獲得などを目的として、同じ活動を繰り返し行うことがあります。しかし、子どもたちにとって必要な活動だからといって、必ずしも本人が「やりたい」と思っているとは限りません。
「もう一回やってみよう」「あと少し頑張ろう」
教師がそう声をかけても、なかなか活動に向かえないこともあります。
一方で、同じような動きを何度も繰り返しているにもかかわらず、それがゲームになると、「もう一回!」と自分から挑戦する子どもたちの姿を見ることがあります。
なぜ、ゲームになると何度も挑戦したくなるのでしょうか。
このことを考える手がかりの一つが、「動機づけ」です。
動機づけとは、私たちが「やってみよう」「もう少し続けてみよう」と、行動を始めたり続けたりする背景にあるものです。
特に今回考えたいのは、誰かに「やりなさい」と言われたからではなく、自分から「やってみたい」と思う気持ちです。
こうした「やってみたい」という気持ちを支えるものとして、Ryan & Deci(2020)は、人が自分から活動に取り組む上で、「自律性」「有能感」「関係性」という三つの基本的な心理的欲求が重要だとしています。
「自律性」とは、「自分で決めた」「自分でやっている」と感じられることです。例えば、ゲームの難易度や活動を自分で選ぶことができれば、「自分で決めた」という感覚につながります。
「有能感」とは、「自分にもできる」「少しずつ上手になっている」と感じられることです。少し頑張れば達成できる課題があり、結果がすぐに返ってくれば、「できた」「前よりうまくなった」という実感をもちやすくなります。
そして「関係性」とは、「誰かとつながっている」と感じられることです。友達や教師と一緒に活動し、「今のすごかったね」と喜びを共有することも、その一つです。
Ryan & Deci(2020)は、ゲームが人を引きつける背景にも、こうした自律性、有能感、関係性を支えやすい仕組みがあると指摘しています。
つまり、ゲームの価値は、単に「楽しい」ことだけではありません。
「自分で選べる」「できたことが分かる」「誰かと一緒に喜べる」
こうした経験が重なることで、「もう一度やってみよう」という気持ちにつながっていくのではないでしょうか。
もちろん、ゲームにすれば何でもよいわけではありません。
Ryan & Deci(2020)は、単に選択肢を用意すればよいのではなく、本人の興味や考えを踏まえた、意味のある選択が大切だとしています。
では、実際にゲームは特別支援教育の中でどのように使われているのでしょうか。
Tsikinas & Xinogalos(2019)は、知的障害や自閉スペクトラムのある人を対象としたシリアスゲームに関する54の研究を整理しています。シリアスゲームとは、単に楽しむだけではなく、学習や技能の獲得などを目的としてつくられたゲームのことです。
そこでは、認知に関する力や日常生活に必要な力、社会的な関わりなど、さまざまな学習にゲームが活用されていました。そして、多くの研究で、ゲームを通して身につけようとしていた力に改善がみられたと報告されています。
ただし、「ゲームにすれば誰にでも効果がある」というわけではありません。
Tliliら(2022)は、障害のある学習者を対象としたゲームベース学習について96の研究を整理しています。その中で課題として挙げられているのが、対象となった子どもの数が少ない研究が多いことや、障害の状態や学習者の特徴が非常に多様であることです。
つまり、ある子どもには取り組みやすいゲームでも、別の子どもには難しいことがあります。著者らも、ある障害に適したゲームが、別の障害にもそのまま適するとは限らないと指摘しています。
これは、特別支援教育においてとても大切な視点だと思います。
「ゲームにすれば、子どもはやる気になる」
と単純に考えるのではなく、
「この子は、何を面白いと感じているのだろう」「どのくらいの難しさなら挑戦してみようと思えるのだろう」「どのようなフィードバックなら、『できた』と実感できるのだろう」
と考える必要があります。
そして近年、ゲームと同じように、子どもの「関わってみたい」を引き出す可能性をもつものとして注目されているのがロボットです。
Kouroupaら(2022)は、自閉スペクトラムのある18歳未満の子どもや若者を対象としたソーシャルロボットに関する40の研究を整理しています。そこでは、特に社会性やコミュニケーションに関する活動でロボットが活用されていました。
複数の研究をまとめて分析したところ、ソーシャルロボットには、社会的な関わりを支える可能性があることが示されています。一方で、感情面や運動面については明確な効果は確認されておらず、これらを扱った研究もまだ少ないため、「ロボットを使えば何でもうまくいく」と考えることはできません。
では、なぜロボットが使われるのでしょうか。
Kouroupaら(2022)は、ロボットには、同じやり取りを繰り返し提示できること、表情などの情報を比較的単純に示せること、少しずつ課題の難しさを高められることなどの特徴があるとしています。そのため、ロボットとのやり取りは、比較的予測しやすく、一貫したものにすることができます。
人とのコミュニケーションには、表情、声の調子、身振り、その場の雰囲気など、たくさんの情報が含まれています。
そうした情報を一度に捉えることに難しさのある子どもにとって、反応が比較的分かりやすく、予測しやすいロボットとのやり取りが、人と関わるための一つの入り口になる可能性があります。
ただし、ロボットが教師の代わりになるわけではありません。
ロボットに興味をもった子どもに教師が声をかける。
ロボットの動きを一緒にまねする。
ロボットとのやり取りについて友達と話す。
そうした活動を、教師がどのように人との関わりへとつなげていくかが大切です。
これは、ゲームについても同じではないでしょうか。
子どもを一人で画面の前に座らせておけばよいわけではありません。
「あと少しだったね」「今のすごかったね」「もう一回やってみる?」
そんなふうに一緒に喜んだり、次の挑戦を考えたりする人がいることで、ゲームの経験が、人との関わりへと広がっていきます。
ロボットやゲームは、子どもを直接変えてくれる魔法の道具ではありません。
しかし、「やらなければならない」と感じていた活動を「ちょっとやってみようかな」に変えたり、「もう一回やってみたい」という気持ちを生み出したり、人との関わりを始めるきっかけになったりする可能性があります。
特別支援教育において大切なのは、「ロボットを使うこと」や「ゲームをすること」そのものではありません。
「この子が、自分からやってみたいと思える環境をどうつくるか」
ロボットやゲームは、そのための一つの選択肢なのだと思います。
【参考文献】
Kouroupa, A., Laws, K. R., Irvine, K., Mengoni, S. E., Baird, A., & Sharma, S. (2022). The use of social robots with children and young people on the autism spectrum: A systematic review and meta-analysis. PLOS ONE, 17(6), e0269800.
Ryan, R. M., & Deci, E. L. (2020). Intrinsic and extrinsic motivation from a self-determination theory perspective: Definitions, theory, practices, and future directions. Contemporary Educational Psychology, 61, 101860.
Tlili, A., Denden, M., Duan, A., Padilla-Zea, N., Huang, R., Sun, T., & Burgos, D. (2022). Game-based learning for learners with disabilities? What is next? A systematic literature review from the activity theory perspective. Frontiers in Psychology, 12, 814691.
Tsikinas, S., & Xinogalos, S. (2019). Studying the effects of computer serious games on people with intellectual disabilities or autism spectrum disorder: A systematic literature review. Journal of Computer Assisted Learning, 35(1), 61-73.
◇山崎 智仁
山口県立大学 社会福祉学部 社会福祉学科 講師。臨床発達心理士。
特別支援教育を専門とし、知的障害のある子どもを中心に、ICTや生成AIを活用した教育支援の実践・研究に取り組んでいる。
特別支援学校教員としての勤務経験を経て現職。
近年は、AI時代における教師の専門性や倫理的配慮を踏まえた支援の在り方について検討を重ねている
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■ コラム::本や映画の当事者たち(19) 映画『時には懺悔を』
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今回は、『時には懺悔を』について書こうと思います。
重度障害児をめぐる事件を軸に
社会の隙間に必死で生きる人々を描く和製ハードボイルド
「誰にも言えない過ちを抱え、心の奥底に沈めた〔罪〕と向き合い、再び前を向くためのきっかけとなるのが、〔懺悔〕である」と公式HPでも紹介している。そんな懺悔をテーマに、『下妻物語』 『告白』など、その圧倒的な映像美や先鋭的な演出で、日本映画界に衝撃を与えてきた中島哲也監督が、打海文三による傑作ミステリー小説を映画化。全員が主役級ともいえるキャストが集結した奇跡のような映画である。
※公式ページ
一人の探偵が殺された事件から真相を探る中でたどり着いたのは、9年前の誘拐事件で連れ去られた、重い障がいのある少年・新(しん)。少年を巡り様々な人の人生が交錯する。西島秀俊の演技を中心に、全編ハードボイルドで、音楽もかっこいい。中島哲也監督のさえた演出が光る作品になっている。
出てくるすべての人がそれぞれ闇を抱え、必死で生きていて、その人たちを演じる役者が豪華だ! 特に満島ひかり、黒木華の二人は陽と陰の演技が対照的で、この二人の演技対決が見られただけでも良かったと感動した。また、佐藤二郎の不気味な存在感には圧倒される。
「(障害児は)生まれてきてよかったのか」という重いテーマを描いている中で、西島秀俊の「みんなが新を励ましている」という言葉に宮藤官九郎が返す「みんなが新に励まされているんだ」とのセリフがその答えを物語っていると感じた。ひとりでは何もできない新の存在が、周囲に光を与えているのだ。
筆者は常に思うのだが、障害のある人、特に重度障害のある人の存在を知らない人には恐怖に近い感情を与えてしまうが、当たり前のように周囲で生きていれば、必死で生きているその存在を光とすることになるのではないだろうか。
キャスト:
西島秀俊、満島ひかり、黒木華、宮藤官九郎、柴咲コウ、塚本晋也、片岡鶴太郎、佐藤二朗、役所広司ほか
監督:中島哲也
原作:打海文三
脚本:中島哲也 門間宣裕
製作:石井紹良 門屋大輔 鶴丸智康
共同製作:久保田彰
企画:石田雄治
プロデュース:石田雄治
ほか
◆はら さちこ
ライター。
編集制作会社にて、書籍や雑誌の制作に携わり、以降フリーランスの編集・ライターとして活動。障害全般、教育福祉分野にかかわる執筆や編集を行う。障害にかかわる本の書評や映画評なども書いている。
主な編著書に、『ADHD、アスペルガー症候群、LDかな?と思ったら…』、『ADHD・アスペ系ママ へんちゃんのポジティブライフ』、『専門キャリアカウンセラーが教える これからの発達障害者「雇用」』、『自閉症スペクトラムの子を育てる家族を理解する 母親・父親・きょうだいの声からわかること』『発達障害のおはなしシリーズ』、『10代からのSDGs-いま、わたしたちにできること』などがある。
■□ あとがき ■□--------------------------
株式会社ネットアーツとの協力でお届けする【特別企画】子どもたちに関わるシリーズ~生活機能・社会機能に焦点を当てた支援~ を10月21日(水)に開催します。
講師は、当社サービス、生活機能発達支援プログラム Life Skills(ライフスキル)の監修者の一人、小玉武志(NPO法人カケルとミチル代表理事 Ph.D. 認定作業療法士)氏です。
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