発達障害のある子どもとAI活用~「同じ助言」が、なぜ届き方を変えるのか

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2026.08.07

発達障害のある子どもとAI活用~「同じ助言」が、なぜ届き方を変えるのか

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■    連載:発達障害のある子どもとAI活用~「同じ助言」が、なぜ届き方を変えるのか 
■□   コラム:保護者、支援者からのメッセージ・3
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■ 連載:特別支援教育から考えるAIとの付き合い方
       第9回 発達障害のある子どもとAI活用~「同じ助言」が、なぜ届き方を変えるのか ~
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発達障害のある子どもへの教育では、子どもの苦手さだけに目を向けるのではなく、「どのような環境や支援であれば、その子どもの力を発揮できるのか」という視点が大切にされています。
例えば、作文を書くことが苦手な子どもがいたとします。その背景には、文章を書く力だけではなく、自分の考えを整理することの難しさや、話題が広がりやすい特性、あるいは教師からの助言を否定として受け止めてしまうことなど、さまざまな要因が関係していることがあります。
だからこそ、特別支援教育では、「何を教えるか」だけではなく、「どのように伝えるか」を大切にしてきました。

そんな中、ある特別支援学校の先生から、とても興味深い実践を伺いました。
発達障害のある子どもが、あるテーマで作文を書きました。しかし、出来上がった作文には、テーマとは関係のない、自分の好きなことが半分以上書かれていました。
先生は何度も、
「ここはテーマと関係ないから、削った方がいいよ。」
と伝えました。しかし、子どもはどうしても納得できませんでした。自分にとって大切だと思って書いた内容を、「関係ない」と言われたことに抵抗を感じていたのかもしれません。

そこで先生は、少し違う方法を試してみることにしました。
子どもの作文を生成AIに読み込ませ、添削を依頼したのです。
するとAIは、
「この部分はテーマとの関連が分かりにくいため、省略した方が文章全体が伝わりやすくなります。」
と提案しました。
その文章を読んだ子どもは、
「そっか。テーマに合っていなかったんだ。」
と言い、自分から文章を修正し始めたそうです。

ここで大切なのは、「AIの添削が教師より優れていた」ということではありません。
改めて見比べてみると、教師もAIも伝えている内容はほとんど同じです。どちらも「テーマと関係のない部分は削った方がよい」と伝えています。
それにもかかわらず、教師の助言は受け入れられず、AIの助言は受け入れられました。

この違いは、助言の内容ではなく、「誰が、どのように伝えたのか」という点にあったのではないでしょうか。

まず、「誰が伝えたのか」という点について考えてみます。
教師は、子どもの学びを支える身近な存在であり、その言葉は子どもに大きな影響を与えます。教師からの助言だからこそ、安心して受け入れられる子どももいるでしょう。一方で、教師を学習の成果を評価する相手として意識し、修正を求められることに緊張や不安を感じる子どももいます。
今回の子どもは、教師からの助言を、自分の文章や考えに対する評価として受け止めていたのかもしれません。

一方、生成AIは、成績を付けたり、日頃の学習態度を評価したりする存在ではありません。また、相手の表情や反応を気にすることなく、必要なときに繰り返し相談することもできます。そのため、今回の子どもにとっては、教師に相談するときよりも心理的な負担が小さく、示された助言を一つの情報や提案として受け止めやすかった可能性があります。

もちろん、すべての子どもが教師よりもAIに相談しやすいわけではありません。教師の言葉だからこそ納得できる子どももいれば、今回のようにAIから示された言葉の方が受け入れやすい子どももいます。大切なのは、どちらが優れているかではなく、その子どもにとって、誰から伝えられると受け止めやすいのかを考えることではないでしょうか。

また、今回の事例では、「どのように伝えたのか」という点にも違いがみられます。
教師の「ここはテーマと関係ないから、削った方がいいよ」という言葉も、命令ではなく提案する形になっています。そのため、単純に「教師は命令型で、AIは提案型だった」と捉えることはできません。
ただし、少なくとも今回示された二つの言葉を比べると、教師の言葉が「テーマと関係がない」という点を中心に伝えていたのに対して、AIは「テーマとの関連が分かりにくい」と説明した上で、「省略すると文章全体が伝わりやすくなる」という修正の理由や利点を示していました。
つまり、AIの助言は、単に「不要な部分を削ること」を求めるのではなく、「文章をより伝わりやすくすること」に子どもの意識を向ける伝え方になっていたとも考えられます。子どもは、自分の書いた内容を否定されたと感じるよりも、「読み手に伝わりやすくするための提案」として受け止めやすかったのかもしれません。

このように、同じ内容の助言であっても、「誰から伝えられるか」だけではなく、修正する理由や目的がどのように示されるかによっても、子どもの受け止め方が変わる可能性があります。

もちろん、今回の子どもがAIの助言を受け入れた理由を、これだけで断定することはできません。しかし、「同じ内容であっても、伝える相手や伝え方によって受け止め方が変わることがある」という点は、私たち教師にとって重要な示唆と言えるでしょう。
実は、このような可能性は研究でも指摘され始めています。

Ronksley-Paviaら(2025)は、ADHD、自閉スペクトラム症、ディスレクシアなどを含む、ニューロダイバージェントの児童生徒を対象とした生成AIに関する研究を整理しています。その中では、生成AIは、一人一人の特性や学習状況に応じた個別化された学習や学習支援を提供できる可能性をもつ一方で、その教育的効果を示す実証的な知見はまだ限られており、人による監督や判断が必要であることが指摘されています。
また、このレビューでは、生成AIとのやり取りが、人とのコミュニケーションに伴う社会的なプレッシャーや、評価されることへの不安を感じにくい環境につながる可能性も示されています。今回の作文の実践も、AIの方が相談しやすく、示された助言を受け入れやすいと感じられる環境だったからこそ、子どもの行動につながった可能性があります。

今回の作文の実践は、Ronksley-Paviaらが示した「個別化された学習」や「学習支援」の可能性を、教育現場で具体的に示した一例と言えるのかもしれません。

この実践で印象的なのは、教師が子どもに合った伝え方を探し、支援の方法を柔軟に見直したことです。
先生は、「何度説明しても伝わらない子ども」と捉えたのではなく、「この子には別の伝え方が必要なのではないか」と考えました。そして、その選択肢の一つとして、生成AIを活用したのです。

特別支援教育では、これまでも絵カードや写真、ICT機器など、その子どもの実態に応じてさまざまな支援ツールを活用してきました。生成AIも、その延長線上にある新たな支援ツールの一つです。
大切なのは、「AIを使うこと」ではありません。子ども一人一人の実態に応じて、その子どもの力を引き出す支援を選択することです。
生成AIは、そのための新しい選択肢の一つです。子どもに合わせて支援を工夫してきた特別支援教育だからこそ、この技術もまた、子どもたちの学びや成長を支える形で生かされていくことを期待しています。

【参考文献】
Ronksley-Pavia, M., Nguyen, L., Wheeley, E., Rose, J., Neumann, M. M., Bigum, C., & Neumann, D. L. (2025). A scoping literature review of generative artificial intelligence for supporting neurodivergent school students. Computers and Education: Artificial Intelligence, 9, 100437. 
 
◇山崎 智仁
山口県立大学 社会福祉学部 社会福祉学科 講師。臨床発達心理士。
特別支援教育を専門とし、知的障害のある子どもを中心に、ICTや生成AIを活用した教育支援の実践・研究に取り組んでいる。
特別支援学校教員としての勤務経験を経て現職。
近年は、AI時代における教師の専門性や倫理的配慮を踏まえた支援の在り方について検討を重ねている


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■ コラム:メルマガ・バックナンバーのおすすめ
          第7回 保護者、支援者からのメッセージ・3
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当メルマガ15周年記念企画の第7回は、保護者、支援者からのメッセージの3回目です。

5.堀野めぐみさん 「自閉症児の四次元ワールドへようこそ」(全5回)

これは、障害のある3人の我が子を育てる母親のリアルな体験と温かな視点がつまったエッセイです。

自閉症やADHDなどの特性をもつ子どもたちとのユーモラスな日常をはじめ、子どもが「困ったこと」に直面し自力で乗り越える成長の機会の大切さ、フロアホッケーなどへの新たな挑戦を通して子どもも大人も「進化」していく喜びを描きます。

また、支援者が考える「困りごと」と本人が捉える感覚のズレについて問いかけ、当事者目線に寄り添う重要性を提示します。最終回では特別支援学校卒業後の「成人期の余暇や地域での豊かなつながり」という課題に触れ、一人ひとりが自分らしく地域で生きる未来を願っています。

子育ての悩みや葛藤を抱える親へ「みんなちがってみんないい」「泣くより笑顔で楽しもう」とエールを贈り、成長を温かく支えるヒントを与えてくれる連載です。

※2017年1月から

6.高山恵子さん 「ADHDセルフケア物語」 全6回

NPO法人えじそんくらぶ代表であり、臨床心理士でもある高山恵子さんによる連載「ADHDセルフケア物語」。自身もADHDおよびLDの当事者である著者が、これまでの失敗談や実践的な経験を交えながら、特性と上手に向き合いサバイバルするための極意を分かりやすく紹介しています。

本連載では、苦手なことへのSOSの出し方や得意分野の活かし方、自己理解・自己受容のステップ、そして自分自身をすこやかに保つための「セルフケア」の秘訣などがテーマとして取り上げられています。無理に“普通”を目指すのではなく、自身の強みを活かして豊かに生きるための具体的な工夫と温かいメッセージが満載です。

当事者の方はもちろん、そのご家族や教育・福祉関係の支援者にとっても、生きづらさを和らげ周囲との良好な関係を築くためのヒントが詰まった必読の連載です。

※2024年4月から


■□ あとがき ■□--------------------------
先日熊本県で発生した地震により被害に遭われた皆さまに心よりお見舞い申し上げます。
多摩イノベーションエコシステムという団体のリーディングプロジェクトに、脳バランサーキッズ2と感覚・動作アセスメントKIDSを使った5歳児健診システムの検証が採択されました。今後3年間で、従来の支援者の主観に、パズルを子どもがすることでの認知機能測定を加えたシステムにまとめていけたらと思います。

多摩イノベーションエコシステム 

次号メルマガは、お盆休みをはさんで8月28日(金)に刊行とさせていただきます。

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