療養から再就職に向けて

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2023.07.28

療養から再就職に向けて

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■  連載:療養から再就職に向けて
■□ 連載:ギフテッド2E型の人の才能の見つけ方と活用方法を考える
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■ 連載:知っておいてほしい!「障害者就労支援」アレコレ
             第6回 療養から再就職に向けて(最終回) 
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■休職から退職へ…手続きの嵐
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私は数年前に5年程勤務した職場を退職しました。
今回は体験談を元に療養中の過ごし方について、「一例」を紹介したいと思います。

退職後はすぐにゆっくり休めると思っていましたが、そうもいかず…
様々な手続きがあったので、1か月くらいは心からゆったりする気分になれなかったというのが実際です。


★退職したらすぐに役場へ行って、やるべきことを確認しましょう★
★傷病手当の受給期間延長は、退職日前までにやらなければもらえません★

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■療養初期(6ヶ月くらい)
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傷病手当と貯金を切り崩しつつ、なんとか生活できるだけのお金は工面できたので療養に専念することができました。
せっかくの休みなので「何かしよう」と思うものの、「気持ちに体がついていかない」状態で、寝ては起きての繰り返し…不安な気持ちもありましたが、「まずはエネルギーの回復」に専念しました。

半年を過ぎたくらいから映画やテレビを見て楽しいと感じたり、思ったことを実行に移せたり、活動するエネルギーが戻ってきました。
すると、「そろそろ就活をしようか」という気もちが出てくるのですが、まだ早いです!
数日経つとまた疲れて寝込んでしまったり、「一時的な回復でしかない」ことを痛感したりということを何度も繰り返しました。
自分が就労支援をする中で「焦らずに」と声をかけているにもかかわらず、自分事になると冷静さを欠いてしまうものです。一般の方であればなお不安になることでしょう…。

ただし就職活動をしないとしても、何かしら社会と接点を持っておかないと就職後の負荷に耐えられず不調をきたすリスクが大きいです。
私の場合はデイケアや就労移行支援にマッチするとは思えなかったので、自分なりに過ごし方を考えることにしました。

デイケアや福祉サービスの利用に抵抗がある人、利用したくても自分に合った場所がない時、相談できる場所があるとよいですね。
また、自分なりに療養中の過ごし方を考える参考として、このコラムを読んでもらえたらと思います。

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■療養中の過ごし方:自宅整備と生活の見直し(7か月目くらいから…)
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まず最初に、やっておくとよいことが「自宅整備」です。
休む場所である家が心地よいと、回復もしやすいです。さらに、再就職したのちにも帰宅してくつろぐ場所になる家は、この機会に「快適で安心できる場所」にしておくことをお勧めします。

精神障害や発達障害のある方は特に、音や目に見えるものからの刺激(ストレス)を受けやすいです。一見治ったように見えても、疲れてくると音や視覚情報のストレスを受けやすくなるので油断しないようにしましょう。

私がやったことは以下の通り。
・カーテンを柄物から白のロール式カーテンに変更
・リビングや寝室から本などの活字類をなくす
→専用の置き場所を作って、仕切りで見えないようにしておくのでもOKです。
本の背表紙の文字なども、意外な視覚情報として集中力を削っていたりします。
・カラーBOXなどの高さは低めで、なるべく同じ高さ、色で統一する
・100円均一などの無地で同じサイズのトレイ等を活用してものを整理する
・着ない服の処分

個人差はあるでしょうが、視覚情報を減らすだけで気持ちや集中力は変わります。
疲れていると「選ぶ」ことの負担感が増します。取捨選択、意識しないことも「選ぶ」ということになるので、なるべく考えて選ぶという行為をしなくてもよい環境をつくることで、「心も体もやすまる家」、安全基地が出来上がります。
再就職後も自分を支えてくれる安全基地を作ることは、資格勉強以上に重要なことです。

余裕がでてきたら、家事をやりやすい台所、買い物の仕方など、日常生活を見直して「少しでも楽に〇〇ができる」という場所づくり、仕組みづくりをしていきましょう。

ちなみに私は、食費の見直しや買い物先を大手スーパーから業務スーパーへ変更、洗剤を細々と買わずにホームセンターで業務用を買うなど、「なるべく手間を減らして安く生活する」を目指しました。
結果的に節約&ラクになったので、再就職後も以前より家事と仕事を両立できるようになりました。


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■療養中の過ごし方:社会とのつながり(1年目くらいから…)
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日常生活が整ってきたら、いよいよ外へ出てみましょう。疲れても帰って休める場所がありますので、散歩でもウィンドウショッピングでも構いません。少し疲れて帰って休むくらいがベストです。
揺り返しを経て回復していくので、楽しく動けていたのに翌週はダウンしてしまった…ということがあっても気にしなくて大丈夫。
揺り返しの波が来ない方が「我慢している」可能性もあり、後でドッと疲れが押し寄せることになります。

また、この期間は疲れている、ダウンしている状態で家事や生活をどう維持するかを模索する期間でもあります。
無理な労働と家事は再発リスクを上げます。回復とリハビリ、再構築の期間ということを都度都度、思い出しながら過ごせると良いですね。

そして、通所先がない場合は自分で外と繋がる機会を設ける必要があります。
私は知人の農作業をほんの少し、体験程度ですが関わらせてもらいました。毎日ではなく月に1~2回程度。
それから安く通えるジムに通いました。アレコレ考えて動くのは疲れてしまうので、行って歩くだけ、何も考えずに同じメニューを2周したら帰るなど、本当に簡単な形で取り組みました。
鍛えることが目的ではなく、定期的な外出、人が居る場所になれることが目的です。週2~3くらいを目標にするのがおすすめです。

そうこうしているうちに1年くらいが経過していきます。
「家事と外に出ることの両立がそこそこできるようになる」と、いよいよ就職活動を検討してもよい時期ではないでしょうか。

また、私は療養期間中にカウンセリングと独学でストレス対処法を模索することも行っていました。カウンセリングはお金もかかりますので、本やワークブックを買って取り組むだけでも良いと思います。
また、通っている病院の紹介でストレス対処を学べる場所があれば教えてもらいましょう。
再就職した時にストレスで潰れてしまっては困りますからね。しっかりと準備をしてから就活をスタートできると安心です。


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■いよいよ就職活動スタート(1年5か月目くらい)
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私の主治医は「絶対に働けるようになった」とは言い切れないと言っていました。
環境や働き方、上司や同僚との相性によっては、またストレスで症状が悪化する可能性があるからです。

100%はありませんが、どのような条件と環境であれば大丈夫そうかを主治医にアドバイスをもらい、自分が療養中に見直した生活スタイルと合わせて「いくら稼ぐ必要があるか」を冷静に考えることが大切です。
給料が多ければそれに越したことはありませんが、体調を崩して無職になる方がデメリットは大きいです。

そして、忘れてはならないのが傷病手当から失業手当受給への切り替え手続きです。
主治医の「就労可否証明書」を持ってハローワークへ行き、就職開始と失業手当の受給手続きをします。
傷病手当よりも金額は下がりますが、ここでも収入が途切れないというのは安心感につながります。
また、受給期間を一定期間残して就職することができれば、再就職手当をもらうこともできます。

焦らずに、制度を活用しながら準備を整えていくと、意外なメリットが沢山あるんです。
人によっては、療養期間中に障害者手帳を申請する方もいるでしょう。
障害者手帳を持っているとハローワークの専門援助部門で障害者雇用枠「も」紹介してもらうことができます。
一般求人と障害者雇用求人の2つに応募できるようになるので、選択肢も広がりますね。
自分に合った働き方ができる求人を探していきましょう。

就職活動はしたいがもう少し訓練や生活リズムを整えたい場合は、就労訓練をしてくれる場所に通うこともできます。失業手当をもらいながら通うこともできますので、ハローワークの窓口や福祉課に相談してみるのもよいでしょう。(知っておくとよい就労支援については、本連載第2回※2をご参照ください)

※2 就労移行を選ぶときに気を付けるポイント

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■おわりに
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療養期間はただ休む期間ではありません。
回復と、再発予防の取り組み、生活と仕事のバランスの見直しをする期間でもあります。

そして、使える制度を使って焦らずに準備をしていきましょう。
準備はその後の安定した生活と就労継続につながります!

私は今回初めて休職、療養というものを体験しました。
不安もありましたが、自分のことを見直すとても良い機会だったと思っています。
置かれた生活状況によって、焦らざるを得ない方もいるでしょうが、可能であれば自分と向き合い、その後の人生を苦しまずに進んでいける形を模索して欲しいと思います。

◆下茉莉(しも まり)
発達特性との付き合い方を考える会「かもみぃる」代表。精神保健福祉士と社会福祉士の資格を持つ、発達障害と発達性トラウマ障害の当事者。障害受容、診断が出た後の相談先や利用できる支援、選択肢が分からずに悩んだ経験を活かし、制度の狭間(グレーゾーン)に落ちてしまう人達の就労支援に力を入れてきた。七転び八起きの精神と突破力で突き進む!
HP
Note

 

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■ 連載:ギフテッドとは?
             第2回 ギフテッド2E型の人の才能の見つけ方と活用方法を考える
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今回は、ギフテッドについて、下記の本を例に紹介します。

 
前回では、「1つまたは複数の領域において、同じ年齢、経験、環境の人と比べて、より高い水準の能力を発揮している、または発揮する能力を持つ」(National Association for Gifted Childrenによる定義)というギフテッドの概要をお伝えしました。
そして、2E型という、ギフテッドと発達障害を併発している状態についてもお伝えしました。2E型は、突出した才能を示す分野があり、反対に苦手なことはとことん苦手。「発達に凸凹がある」などと表現されたりもします。

今回ご紹介する本を読むと、発達障害とギフテッドを併せ持った凸凹のある人たちが、自分に合ったやり方で生きるためにどんなことを考えて実行したらいいかがわかります。
著者の高山さんは、私の古くからの友人ですが、日本の教育では芽が出なかった1人です。
この著者を読むと、彼女もギフテッドの一人ではないかと思います。

本の中にはこんな記述があり、心を打ちました。
「障害者も天才も普通、常識の枠からはみ出ています。はみ出ている部分が、社会に対してどう働くかによってマイナスに働くと障害、プラスに働くと才能になります。なんでもそこそこできることがバランス良く、普通に見えると思われるかもしれませんが、それは価値観の1つでしかありません」。
そして、下記のように書かれています。
「自分の能力を開花させるために目指したいのは自分の隠れた才能に気づくこと。隠れた才能はあまり努力しなくても簡単にできることを言います。得意なことはストレスもたまらず簡単にできてしまうのでできて当たり前。誰でもできると思い、それが自分の得意なことだと気づかないのです(概要)」。

得意なことは、人に見つけてもらうことが良いともあります。弱みと思う性質を強みとして捉え直すことも自分への見方を変えることにつながります。

この本ではリフレーミング※の練習方法についても書いてあります。欠点だと思われる性格も工夫次第で才能になることがある、これはとても大切な考え方ですね。

※Wikiから抜粋して引用 リフレーミング(reframing)とは、ある枠組み(フレーム)で捉えられている物事を枠組みをはずして、違う枠組みで見ることを指す。元々は家族療法の用語。

発達障害の特性は全てプラスの意味を持ち、社会貢献に使われれば才能にもなります。ADHDの多動や不注意、過集中などは、狩猟民族としては全て才能になりますが、農耕民族の中では支障をきたしやすくなってしまいます。

こう考えるととても元気が出ると思います。規格外ではみ出ている状態はマイナスなことだけではありません。変わっている、普通と違うと言われるところが才能にもつながるのです。

全米ギフテッド&タレンテッド・ソサエティーが作成したギフテッドの6分野は、知性、創造性、芸術性、リーダーシップ、特定の学問、運動能力の6分野(44項目)でチェックできるようになっています。

この本では、44項目をチェックできます。ここには、創造性とリーダーシップと言う2つの項目が入っていますが、この発想は日本の教育ではあまりないですね。これらの6つの分野でどれか1つでも同年齢の子と比べ能力が高い上位10%以内と言うことが、何らかの形で証明されるとギフテッドチルドレン児になります。
天から与えられたギフトを持つ人には高い能力に合った教育が必要で、アメリカでは1978年に才能を持ったギフテッド児を定義し、才能を伸ばそうと法律で決められました。

しかし、日本では、定義が明確ではなく、公立の学校ではギフテッドのためのプログラムは用意されていません。誰か伸ばしてくれる人に出会わないとギフトを持つこともわからないのです。生きづらく感じている人の多くがこの考え方を知って、自分を見つめ直してもらえたら嬉しいです。

ギフテッドの人の多くは、宿題や授業が簡単すぎてつまらないと感じています。特に反復学習に重点を置かれるとやる気が出ない人が多いです。欧米の教育は、個別性と自分をアピールする力を教育目標としています。日本の、社会の一人として生きていくための教育目標とは違います。

このメルマガを読んでいる人やそのお子さんの中にも、きっと日本の教育ではうまくいかない人も多くいるでしょう。天からのギフトを与えられている人も中にはいるのではないでしょうか。2E型のギフテッドを持つ人の多くは認められないまま、悶々としています。自分の才能を生かす方法を見つけて、自分に自信をもって生きてほしいと思います。

ライター。
編集制作会社にて、書籍や雑誌の制作に携わり、以降フリーランスの編集・ライターとして活動。障害全般、教育福祉分野にかかわる執筆や編集を行う。障害にかかわる本の書評や映画評なども書いている。
主な編著書に、『ADHD、アスペルガー症候群、LDかな?と思ったら…』、『ADHD・アスペ系ママ へんちゃんのポジティブライフ』、『専門キャリアカウンセラーが教える これからの発達障害者「雇用」』、『自閉症スペクトラムの子を育てる家族を理解する 母親・父親・きょうだいの声からわかること』『発達障害のおはなしシリーズ』、『10代からのSDGs-いま、わたしたちにできること』などがある。



■□ あとがき ■□--------------------------
YouTube動画レデックス チャンネルは、新シリーズとして子育て支援関連の施設や制度の紹介を予定しています。

7月31日公開予定 →「発達障害かな?」と思ったら…乳幼児の相談先


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