ギフテッドとは?

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2023.06.30

ギフテッドとは?

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■  新連載:ギフテッドとは?
■□ 連載:ビジョントレーニングII
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■ 新連載:ギフテッドとは?
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みなさん、ギフテッドという言葉を聞いたことがあるでしょうか。
「1つまたは複数の領域において、同じ年齢、経験、環境の人と比べて、より高い水準の能力を発揮している、または発揮する能力を持つ」(National Association for Gifted Childrenによる定義)という特徴を持つギフテッド。
ギフテッドには「英才型」と「2E型」の2種類があります。

1.英才型と2E型
英才型は、能力の全般的に高い知能を持つ人で、認知や記憶などの能力が高いため、学業成績は優秀になることが多いです。周囲からも非常に優秀に見えるため、才能を伸ばすための機会は提供されやすいとも言えます。

2E型とは「twice-exceptional」のことで、「二重に例外」という意味で、ギフテッドと発達障害を併発している状態です。突出した才能を示す分野があり、反対に苦手なことはとことん苦手。「発達に凸凹がある」などと表現されたりもします。
この場合、突出した能力が見られるものの、苦手な面の印象に覆われて、才能に気づかれることなく過ごしていることも多いのです。周囲の人だけでなく、自分自身ですら気づいていないケースも含みます。

ギフテッドのある人が医療機関を受診した場合、ASDやADHDなどの発達障害、双極性障害※1などの精神疾患と誤診を受けることも多いとのこと。これには、ギフテッドという概念の認知度が低いことも影響しているのです。

※1 双極性障害:躁状態(気分の高揚・活力および活動性の増加・睡眠要求の低下)とうつ状態(抑うつ気分・気分の低下・活力および活動性の減少)のエピソードが反復するもので、軽躁で数日間、躁状態で1週間以上、うつ状態は2週間以上続く。


能力のすべてが高いわけではなく、バラツキが大きいことで、情動制御の悪さや不安・緊張特性の強さを生じているとのことも納得できます。

とくに2E型のギフテッドは才能が開花されることは少なく、逆に困っているケースが多いのです。ギフテッドのある人への支援と支援者育成は欧米に比べて日本では進んでいないと言われている中、日本でもこのギフテッドを助けるべく、さまざまな教育機関などが支援に乗り出しています。

2.東京大学での講座も
東京大学大学院総合文化研究科では、ギフテッド創成寄付講座を開講しています。ギフテッド創成寄付講座※2は、一般社団法人インクルーシブパレットの寄付金によって2020年4月に東京大学大学院総合文化研究科に設置されたものです。

※2 東京大学ギフテッド創成寄付講座 

この講座では、ギフテッドの特徴を持ち合わせると想定されるものの、多様な背景因子の影響により潜在能力を十分に発揮できない状態にある人々に対し、認知機能と心理社会的機能を検証し、介入ターゲットを明確化する評価方法を開発することを目標としています。
将来的には、ギフテッドの特徴を持つ個々の臨床背景・能力特性を考慮し、強みとなる特異点を重点的に向上させることを目的とした支援方法や環境を整える方法を開発することを目指しています。

3.ギフテッドに伴う問題
ギフテッドのある人は、知性、創造性、芸術、リーダシップ、あるいは特定の学術分野において高い潜在能力を有しています。

その一方で、学校、職場で不適応などの問題を抱えることがあります。この問題の背景には、過度激動※2・過度興奮性という、彼らが感覚的情報を大量にとりこみ強く反応してしまう特徴を併せ持つことが挙げられます。そのため、周囲の環境からの刺激を繊細かつ激しく感じ、過度に反応してしまうとのこと。こうした特徴が問題行動や逸脱行動と判断されることもあり、孤立を招くといいます。

※2 過度激動:IQが高いと外部からの感覚情報にも強く反応してしまい、一般の人が自然に受け入れることができる物事に過剰に反応してしまうOverexcitabilityと呼ばれるもの。過興奮性と呼ばれることもある。

これらの特徴は発達障害とかなりリンクしています。出る杭を打たれる体験や、集団生活への不適応の経験者が多くいるといわれています。発達障害の二次障害と同様で、対処方法は発達障害の対策が効果を発揮するでしょう。

4.ギフテッド創成寄付講座での研究
ギフテッド創成寄付講座では、ギフテッドと想定される人で潜在能力を十分発揮できない人に対して、観察研究を行っています。
この研究には、2歳から49歳の約140名が研究参加しております。特に多いのが若年者の男性と、30代後半以降の女性だそうです。

昨年秋の研究結果では、5~15歳の児童期には、年齢と鬱の相関関係があり、年齢が上がると鬱状態の人の割合が上がっています。16歳以上の成人では相関はなかったそうです。この結果からも、早期からの支援が重要であることがわかります。

ギフテッドのある人は当事者だけでなく、保護者も困っている人が多いということも発達障害と重なります。子どもの成長や子育てについて語り合う場が少ないこと、家族や友人に子どものことを話せないこと、ギフテッドの子育てに特化した情報が少ないことから、ストレスや育児困難感、不安を感じているのに周囲から理解が得られにくく、孤独に陥ってしまいがちだからです。

海外では、ギフテッドのある人々の保護者への親支援グループがあるとのこと。日本でも同様なことができないかと考えて、予備的研究に着手もしているそうです。
この研究は今でも続いており、さまざまな成果がこれからも出てくると思われます。

ライター。
編集制作会社にて、書籍や雑誌の制作に携わり、以降フリーランスの編集・ライターとして活動。障害全般、教育福祉分野にかかわる執筆や編集を行う。障害にかかわる本の書評や映画評なども書いている。
主な編著書に、『ADHD、アスペルガー症候群、LDかな?と思ったら…』、『ADHD・アスペ系ママ へんちゃんのポジティブライフ』、『専門キャリアカウンセラーが教える これからの発達障害者「雇用」』、『自閉症スペクトラムの子を育てる家族を理解する 母親・父親・きょうだいの声からわかること』『発達障害のおはなしシリーズ』、『10代からのSDGs-いま、わたしたちにできること』などがある。



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■ 連載:サービスとアプリ-目標と由来
               第4回 ビジョントレーニングII
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1.眼球運動トレーニングの必要性
米国オプトメトリ―ドクターの北出勝也氏(視機能トレーニングセンターJoyVision代表)から連絡をもらいました。北出氏がご自分で開発された「ビジョントレーニング」というソフトを基にして新しいソフトを開発してほしいとのことです。その時に説明を受けて感銘を受けたのが、現在社会に生きる子どもたちにとっての眼球運動の必要性でした。

眼球を動かしているのは眼筋と呼ばれる筋肉です。上下左右に加えて、近く遠くに眼球を向けるために1つの眼球に6つの筋肉が付随しています。※3

※3 目の事典・目の構造についてのQ&A 

以前の子どもたちは野外で活動する時間もあり、木に登ったりするなど眼球もさまざまな方向を見るために筋肉が使われていました。しかし現代社会では外出の時間も少なくなり、激しく眼球を動かすのは体育の球技の時間くらいではないでしょうか? 

けがや病気で入院した人が社会復帰する前に歩行トレーニングが必要になるように、筋肉は使わないと短期間で退化する性質を持っています。つまり今の子どもたちの眼筋は使われることが少ないため、退化とまではいかなくても動かすのが負担になりつつあるようです。

学校の授業で板書をする時には、黒板(ホワイトボード)とノートを交互に見ます。その時に使われる眼筋がスムーズに活用できないと、時間がかかり、疲れるという症状が出る可能性があります。

2.ビジョントレーニングII
北出氏から任された新ソフトの内容は、眼球運動のメニューを豊富にすることと、それ以外の視覚認知と空間認識のタスク(ゲーム)を付け加えることとしました。

眼球運動では、目で追う記号を、123、あいう、アイウ、ABC、abc、漢字(2種類)、矢印の計8種類としました。
目で追う記号の動きの方向では、水平方向、垂直方向、斜め、ランダムの4種類にしました。
動きのスピードでは、3秒の表示、2秒、1秒、押すまで待つの4種類としました。
ゲーム性を高めるために、おてつきを設定し、特定の色(赤または青で設定)の時は押さないというルールを設けました。

視覚認知のタスクとしては、ジオボードとテングラムを用意しました。
ジオボード


テングラム
空間認識のタスクとしては、ばらばら漢字(正しい部品を選ぶと漢字が完成)と、どこにいる?(見える景色を示し、どの場所からどちらを見ているかを探す)  を用意しました。ばらばら漢字とどこにいる?は、デジなぞ(原案・監修:高濱正伸氏)の中から選択しました。

ばらばら漢字



どこにいる?
 
さらに、結果の記録を可視化する表やグラフを用意し、本人の動機づけや支援者(保護者)の確認に使えるようにしました。

利用できる環境としても、Windows、Mac、iPadを用意しました。

北出氏のビジョントレーニングの必要性を訴える活動と、ソフトの前述の工夫が評価されたことなどで、自治体等から1,000本といったまとまった数の注文をいただくまでになっています。

◆五藤博義

 
■□ あとがき ■□--------------------------
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