非行と発達障害

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2019.11.08

非行と発達障害

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■  連載:非行と発達障害
■□ 連載:連載 ディスレクシアとは? 第3回 合理的な配慮2
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■□ まえがき ■□--------------------------
今年の夏、札幌で開かれた日本発達障害学会研究大会で富田先生の教育講演をお聞きし、感銘を受けました。その場でメルマガへの寄稿をお願いし、快諾してくださいましたので、今回の連載をお届けすることができます。この場をお借りして、富田先生に御礼申し上げます。

富田拓先生 自己紹介

児童精神科医。現在網走刑務所勤務のかたわら、非行少年の施設である児童自立支援施設、北海道家庭学校にも関わる。これまで、国立児童自立支援施設である国立武蔵野学院、同きぬ川学院医務課に勤務しており、長年非行臨床を続けてきた。北海道家庭学校では妻と共に、夫婦制の子どもの寮の寮長を務めたこともある。著書に「非行と反抗がおさえられない子どもたち(合同出版)」他。



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 ■ 連載:非行と発達障害
      第1回 「素行症」「反抗挑発症」をご存知ですか?
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「素行症」「反抗挑発症」という精神科診断をご存知ですか? こう問いかけておいていきなりではありますが、よほどマニアックな方でないとご存じないでしょう。医者でさえ、精神科医以外ではこの診断名を知らない人も多いはずです。

では、非常にまれな障害かと言えば、そんなことはありません。アメリカの児童精神科では、ADHD(注意欠如多動症)に次いで多く診断されているのが、素行症なのですから(全人口における有病率3.5%、2013年のアメリカCDC※調査による)。

※CDC:Centers for Disease Control and Prevention アメリカ疾病管理予防センター

ただ、日本ではこの診断が下されることはあまり多くありません(「全人口」ではなく、児童精神科を受診した診療数の中でも1.8%を占めるに過ぎない。平成26年度全国児童青年精神科医療施設協議会報告による)。それはなぜなのでしょうか。

表1※をご覧ください。これは、世界でもっとも使われている精神科の診断マニュアルである「DSM-5」の素行症の診断基準です。このうちの3項目以上を満たすとき、「素行症」の診断をすることになっています。

 
診断項目を見て、これが精神科の診断基準なのかと驚かれる方も少なくないでしょう。何しろ、いわゆる精神症状と思われるものがまるでないのですから。この3項目を満たすということは、
・学校をしょっちゅうさぼっている子が(診断基準15に該当)
・夜に家を無断で抜け出し(診断基準13)
・車上狙いをしてしまったら(診断基準10)
もう素行症の診断がついてしまう、と言うことになります。要するに、周囲から非行少年だと思われている子は、たいてい素行症の診断がついてしまう、と言うことになります。

アメリカでは非行少年の数が日本と比べてけた違いに多いので、素行症の診断が日本より多くて当たり前、とも言えます。ただしその一方、日本では素行症をあくまで「非行を精神科で扱うためにつける、いわば便宜的な診断名」と捉えられていることが多いのに対し、アメリカでは一つのれっきとした精神障害であると捉える傾向にあるようです。

その一つのあらわれとして、アメリカ児童青年精神医学会の一般向けのホームページには「素行症の診断を受ける子はbadだとみなされがちですが、彼らは障害なのです」と書かれています。彼らがbadかどうかはともかく、非行に走る子の多くが何らかの精神科的な弱みを持っていたり、生育環境に問題を抱えており、その結果として起こる非行を症状として捉えることは間違ってはいないと思います。筆者が関わってきた非行少年の施設である児童自立支援施設や、少年院ではその入所者のほとんどに素行症の診断がつきます。ただ、これを「精神障害」として統計に載せてしまうと、「児童自立支援施設や少年院の入所者はほとんどが精神障害だ」という困った認識(素行症もまた精神障害の診断の一つなので、誤りとは言えませんが)が生じてしまうので、統計上は精神障害としてカウントされていません。

では次に、「反抗挑発症」とは何でしょうか。表2※がその診断基準です。

 

これは、素行症の診断基準と違い、その子のパーソナリティの問題と深く関わる項目が並んでいます。もちろん、子どもの場合、パーソナリティを固定したものとして捉えるのは間違いですが、こういう子も時にいるなあと思われるのではないでしょうか。

興味深いのは、診断基準の中身がこれほど違うのに、反抗挑発症が素行症の軽症例あるいは幼若型として捉えられてきた経緯があることです。つまり、幼いころに反抗挑発症の診断がつく子の一部が長じて素行症へと進行する、という考え方があるのです。

また、素行症の診断を受けた人がさらに進行した場合、18歳以上で受ける診断として「反社会性パーソナリティ障害」があります。診断基準を表3※に示します。

 

これは最近時に話題に上るようになった「サイコパス」と類似した概念で、極めてはた迷惑で危険な人です。そうならないために、反抗挑発症あるいは素行症の段階で進行を食い止めなければならない、そのために、早期に診断して対応すべきだと考えられているのです(図1※)。

 

次回は、これらの診断と密接なかかわりのある少年非行の現状について述べていきたいと思います。

富田拓
網走刑務所医務課医師


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 ■ 連載:ディスレクシアとは?
      第3回 合理的な配慮2
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見た目は健康で、知的に遅れていない時に学習が進まないと、よほどディスレクシアのことを知っている人でないと勉強嫌いや怠けていると誤解する。熱心な保護者や教員、支援者であればあるほど、どうにかしようと力を注ぐようになる。多く見られるのが、繰り返し教えるということで、漢字を200回ずつ書いてくる宿題を出すようなものだ。

ディスレクシアの人は音と文字を結びつけ、操作する力が弱いといわれている。音韻の意識が主な困難さであるが、視覚認知や聴覚認知、作業記憶がゆがんでいたり弱かったりすると困難さに拍車がかかる。

人間は器官に障害がなければ生まれながらに音を聞き、真似をしながら音を発し、周りの反応で意味を理解する回路を持っている。しかし、5歳くらいになって文字という記号を目で認識してそれに音を当てはめて発音し、意味として理解していく回路は生来ある回路ではなく、脳のいろいろな機能を駆使しながら回路を作っていく。そして記憶にとどめて定着をしていく。書くことはもっと複雑な脳の機能を使い、目で見た文字を書き写す、聞いた音を文字に記すことや思い浮かんだことを文章にする。※図1

 

また、読解力とデコーディングと言って文字と音を結びつけ操作する力を見ると、多くの人はどちらも同時に使いながら読んでいるのだが、ディスレクシアの人は読解力が優れているもののデコーディングが弱いといわれている。本来読解力はあるのにデコーディングに手間取り、内容の理解にたどり着けないのだ。対応するとしたら、弱いデコーディング能力を高めるのも一つであるが、それよりも読解力の高さの方に注目して、どのような方法で読解力の高さに結び付けるかを考えたほうが早道である。※図2

 
 

前回アセスメントについて記述したが、アセスメントをするに至る前にまずは気づきが大事である。訓練を受けた専門家の数がまだまだ非常に少ない中で、ちょっと観察眼を養えば、怠けているのではなく、読み書きが困難なのかと気づくことができる。もう少し勉強すれば、脳の機能の問題で読むことに苦労して、そのために内容の理解にまで到達しなかったり、わかっていても記述することが困難なために十分に本来の能力を発揮したり、評価をしてもらえないことが起きているのだと理解ができる。現在e-ラーニングでディスレクシアの理解、対応方法から支援までを安価で学べるコースをエッジでは用意しているので、活用する方法がある。※1 そして、研修をすることで根本的な理由やアセスメントをして、適切な対応ができるようになる。

※1 子どもの味方の「教え方」を学ぶコース 

ディスレクシアの気づきについては、経験や映像などからは十分に学べることができ、自分の考えを話したり、絵をかいたりして表現をすることはできるのに、本を読もうとしない、字を書くことを嫌がるなどがあげられる。

読むことに関しては読み方がたどたどしい、勝手読みがある、読み飛ばす、似ている意味や形のものと間違える、ゆっくりである、文章を単語ではないところで切るなどが特徴である。

書くことに関しては書き写すのに時間がかかる、文字を想起するのに時間がかかる、音を飛ばす、板書が苦手、聞いたことと違うことをメモしているなどがあげられる。ほかに逆さ文字を書く、形が整わないなどがある。

これらの症状がみられるからすぐにディスレクシアと判断できるわけではないが、ゴリゴリと音読や漢字の反復練習を繰り返すよりも、音声で聞かせて口頭で尋ねてどのくらい理解しているのを問うてみたり、書く代わりにカードを選ぶなどの違う方法を取ったりしてより速やかに学べないかを確かめてみることができる。※2

※2 BEAM(音声教科書) 

藤堂栄子 
星槎大学特任教授
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