AI時代だからこそ人間形成の教育

MAILMAGAZINE
メルマガ情報

2019.10.25

AI時代だからこそ人間形成の教育

----TOPIC----------------------------------------------------------------------------------------------------
■  連載:AI時代だからこそ人間形成の教育
■□ 連載:合理的な配慮1 基本的な考え方、前提となるアセスメント
---------------------------------------------------------------------------------------------------------------

────────────────────────────────…‥・ 
 ■ 連載:情報化の進展に対応した教育
      第4回 AI時代だからこそ人間形成の教育  
────────────────────────────────…‥・
最終回では、これまでの話の要点をまとめてみよう。

今の子どもたちが大人になり、社会の中心となって活躍するころには、知的ロボットが人間の半分以上の仕事を担っていることが十分に予想される。つまり、マニュアルに沿った作業はロボットの仕事になるわけである。

私たちは、将来を担う子どもたちに対して、ロボットに命令して仕事をやりこなせるように、創造性や行動力を育成する必要がある。そのためには広い意味で、情報活用能力の育成が必要である。新しい状況に対して常に情報を収集し、判断、発信する力を持ち、時代の変化にいつまでも対応できる人間の育成が、将来の人材を育成するもっとも重要な目標になる。もし、先生方がこれまでのように「賢くて、人の言うことを素直に聞く子どもを育てよう」と思われているならば、子どもたちは『言われたとおりの作業をこなす』素直な人に育ち、ロボットの命令に従って働く層の人になってしまうかもしれない。

「ロボットの下で働く人」ではなく「新しい仕事を開拓し創造して、ロボットに命令していける人材」を育成できるように、私たち教育者は、学校教育を、考える力やコミュニケーション能力、情報活用能力の育成を中心としたカリキュラムにシフトさせていく必要がある。

情報が多すぎて意思決定できないという新たな問題も指摘されている。ひとつの疑問や問題に対し、その信頼性や整合性を確認することができないほどの様々な情報がネットワークなどから入手でき、かえって正しい判断ができないという問題である。

人間が1分間に読める文字数を高々500文字としても、一生かけてもギガバイト(10の9乗)のオーダである。これは1台のPCに収まってしまう。逆に言えば、情報にいくらアクセスし蓄積しても、すべての情報に目を通すことはだれもできない。YouTubeなどには、毎秒の単位で動画がアップされているが、閲覧する側では1日24時間以上はかけられない。

どのようにすれば、この情報洪水をかき分けて、生きていけるのか、情報化の進展による光の部分(恩恵を受ける部分)と同時に、影の部分(新しい社会問題、人間のあり方を問う問題など)についても、目を光らせ、対策を立てておく必要がある。

一つの答えは、「情報を活用できる的確な判断力」、そして「自らの考えをうまく説明できる技能」である。これから学校では、集団の中での人の役割や社会とのかかわりを実践的に体験する、自己の問題として考える、問題解決を協調的に学ぶ場としての機能が大きく求められる。そして、これからの教師には、子どもたちに「何を体験させ、何を考えさせるのか」という視点に立ち、さらに子どもたちが自ら考えるように示唆する役割、メンターやパートナーとしての役割が重要になる。

得てして、私たち教育者は、知識・技術を「どのように教え込むか」をばかり考えてしまい、子どもたち自身考え、自分で判断する機会を奪っていないだろうか。教える授業から、子どもたちが行動し、1人ひとりが考える授業へ転換することは、いろいろな意味で非常に重要になるのである。

さて、これまでは、近い未来(AI時代)における技術的革新、情報の洪水、仕事のロボット化など社会変革などを予想し、これからの教育を考えてきた。これらをすべて考慮したうえで、これからの教育に重要と考える別の視点を最後に指摘しておきたい。

AI時代の人間に本当に必要な力は何であろう。それは結局「人間力」にさかのぼる。例えば、「一人ひとりを大切にする精神」「自己肯定感や自己理解」「困難に立ち向かう強さ」などである。そのうちでも、最も重要なのは「自己肯定感の育成」であろう。

自分を信じ、どんな場合も自信をもって物事にあたることができる力(自己肯定力)はどのようにすれば身につくのか。それは、どんな逆境の時も、自分を認め励ましてくれる人を(できれば身近に)意識できることだと思う。私の経験でも、若い時、世間や社会を知らないため、大変な失敗をし、自信を失うような出来事には幾度も遭遇した。しかし、そんなときも家族はだまって肯定的に見守ってくれていたように思う。それがいつしか(これだけ自分なりに一生懸命やっているのだからこれでいいのだと)自己肯定感につながっていった。

長い人生、いろいろなことに失敗したり挫折をしかかることは、どんなひとにも起こりうる。人間だから、思うようにならなかったことを人のせいにしたり、社会のせいにして恨んだりすることはあるだろう。しかし、生きていく上では、自分を信じ、未来を信じて立ち上がれる勇気と努力が必要になる。その心の支えは、できれば家族、なければ、先輩や教師の役割になると思うが、あくまでも個人だと思う。

また自信を持たせる時期も問題である。未熟で知識や社会を知らない子どもに自信だけをつけさせても、むなしい結果に終わるであろう。就職して、1年もたたずにドロップアウトしている若者が増えているという事実は、高校や大学教育で、自己の表現や理想を描かせすぎるだけで、社会に出てからの対応力、知識や技術、将来への見通しをもった、自己肯定力を育成する方法に失敗しているからだと思われる。

情報化の時代だからこそ、情報を的確に判断できる知恵と同時に、人間形成や社会へのスムーズな参画の要素が教育のプロセスの中に求められるようになるのではないだろうか。(完)

永野和男
聖心女子大学 名誉教授、法人本部 参与
JNK4 情報ネットワーク教育活用研究協議会 会長
JAPIAS 学校インターネット教育推進協会 理事長


────────────────────────────────…‥・ 
 ■ 連載:ディスレクシアとは?
      第2回 合理的な配慮1 基本的な考え方、前提となるアセスメント  
────────────────────────────────…‥・
障害者差別解消法に依って、発達障害への合理的な配慮が公的な機関では義務、民間でも努力義務となったことを踏まえ、読み書きの困難であるディスレクシアに対しても「合理的な配慮」をすることが決まっているが、ほとんど進んでいないのが現状である。「合理的」というのは本人にとって取り組みやすく、効果があるということである。そして「配慮」というのは誤訳で本来は「調整・変更」を意味するadjustment、modificationであるが、このことの理解も進んでいないようである。

文部科学省の対応指針を参考にすれば、できることは羅列してあるのだが医療、福祉そして教育の現場に、ディスレクシアの程度やどのように表出しているのか、本人がそれをどうとらえていて、どうなりたいのかを複合的に判断する人材が圧倒的に足りない。また、一人ひとりに合った学校や放課後等児童デイそして家庭でできることは何なのかが分かる人材も少ない。

WISCやK-ABCなどの心理検査を取ることが推奨されているが、WISCでは読み書きの評価はできないし、K-ABCは時間がかかり、本人に負担がかかる。読みと書きのスピード、流暢性と正確さを評価して、その中から一人ひとりに合った支援の方法や合理的な配慮を選択して施行することが推奨される。

現在NPO法人エッジでは、具体的にはURAWSSII※1という、小中学生の読み書き速度を評価し、読み書きが苦手な子ども達に支援技術等を活用した支援を行うために作成されたものと、STRAW-R 改訂版 標準読み書きスクリーニング検査-正確性と流暢性の評価-※2を組み合わせている。
※1 URAWSS 
※2 STRAWーR 

前者は書き写す速度を記録し、キーボード入力などを使用した際の違いを見ることと、黙読にかかる時間と理解する力に対して、読み上げされたときの理解の力を比較することで、時間延長や支援機器の使用、読み上げなどの合理的な配慮を検討する基となる。後者はひらがな、カタカナ、漢字の読み書きのスピード、流暢さと正確さを見るもので、読み書きの困難さの程度とどこら辺に顕著に困難さがあるかを知ることができる。

これらのアセスメントの結果を本人とともに見やすさ、学びやすさ、覚えやすさ、表現のしやすさを検討し、その結果を考慮して家庭や学校、塾、家庭教師、放課後等児童デイなどでの教え方、教材、使用機器、アプリなどの組み合わせを提案していく意見書を作成している。通常学級でもできることはたくさんあり、具体的に効果があることが分かると本人も支援を受けることに対して前向きになる上、学校や家庭でもすぐに取り組める方法が分かる。やって効果があることを小学校、中学校、高等学校、さらには高等教育や仕事でも継続して積み重ね、本来の能力を十分に生かせるようになって欲しいと思う。

家庭や教室ですぐに簡単にできるスクリーニングは、教科書の新しい単元や試験を読み上げてそのあとに口頭で内容の理解をしているかを調べる方法がある。読むことにエネルギーを取られ、内容理解まで到達していない場合でも、聞いたら分かるのであれば、音声で聞いて理解することは「合理的」以外の何物でもない。エッジで用意している教科書を音声化したBEAM※3はMP3形式であり、音楽を聴くことができる機器であればどのようなものでも聞くことができるので自分一人で学習することができ、集団の中でも目立たず使用ができる。文部科学省の委託を受けて作成しており、無償提供ができるので是非活用してほしい。
※3 BEAM

藤堂栄子 
 星槎大学特任教授
 認定NPO法人エッジ会長
 facebook

参考:
URAWSS 
STRAWーR 
BEAM:スクリーニングに使える音声教材 

教員・支援者・学生。保護者向けe-ラーニングコース:ディスレクシアへの支援「子どもの味方の教え方」



■□ あとがき ■□--------------------------
レデックスの視覚認知バランサーが、朝日新聞朝刊10月19日号に掲載されました。
凸凹の輝く教育:都立葛飾盲学校の事例 

次回メルマガは、11月8日(金)です。新しい連載が始まります。お楽しみに。

メルマガ登録はこちら

テーマからさがす

全ての記事を表示する

©LEDEX Corporation All Rights Reserved.