今、少年非行は増えている?重大化している?

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2019.11.22

今、少年非行は増えている?重大化している?

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■  連載:今、少年非行は増えている?重大化している?
■□ 連載:聴力及び聴覚認知機能のアセスメントとトレーニング
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 ■ 連載:非行と発達障害
      第2回 今、少年非行は増えている?重大化している?
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前回、非行と関係の深い精神科診断である素行症、反抗挑発症、反社会性パーソナリティ障害について説明しました。今回は最近の少年非行の動向についてみていきたいと思います。

つい先日、青森で14歳の少年がカッターナイフを使って女児の首を切りつけるという事件が起こりました。最近の子どもは、と眉をひそめている方もいらっしゃるでしょう。では果たして、少年非行は増えているのでしょうか。重大化しているのでしょうか。表1※をご覧ください。警察のご厄介になっている非行少年の激減ぶりに多くの方が驚かれることでしょう。子供が減っているからではないか、と思われるかもしれませんが、子どもの中での非行少年の割合を示す青色の折れ線グラフを見ると、これもここ15年の間に大きく減っていることがわかります。もちろん、これらの多くの部分を自転車盗や万引きなどの比較的軽度の非行が占めていることも確かです。

※表1 平成30年版犯罪白書 (詳細はこちら>>

では重大事件の動きはどうか。実は少年(20歳未満)による殺人事件のピークは1961年(昭和36年)でした。この年の少年による殺人事件の数は448件に上ります(未遂を含む、以下同)。一方、最近10年の少年による殺人事件の数は年間50件前後です。もちろん、これも問題ではありますが、激減したことは間違いありません。

もうひとつ重大事件例を挙げると、強姦事件の数は昭和33年には4,649件、平成28年には133件となっています。もちろん暗数(事件として表に出ない数)が多いことは間違いありませんが、昭和時代よりも現在のほうが暗数が多いとは考えにくいでしょうし、何よりこれほどの違いがあることから、やはり激減していることはまず間違いないでしょう。

これらの犯罪統計からみると、昭和時代の子どもに比べて、最近の子どもたちははるかに行儀正しく優しい子たちなのだ、と言えるのではないでしょうか。また、大人による犯罪も確実に減少しています(表2※)。そもそも犯罪が少ない国として知られている日本ですが、近年さらに安全な社会になっているのです。これほどの変化なのに、このような「良いこと」はなかなか報道されませんから、意外に知られていません。

※表2 平成30年版犯罪白書 (詳細はこちら>>

一方、最近筆者としては気になる動きがあります。非行少年の取り扱いを定めた法律である「少年法」の対象年齢をこれまでの20歳未満から18歳未満に引き下げようという検討が行われているのです。これまで事件を起こした少年は、家庭裁判所に送られ、調査官の調査を受けていました。それによって少年が起こした事件と、少年のおかれている生育環境や精神医学的問題との関係が明らかにされてきました。もし、少年法の対象年齢が引き下げられると、18、19歳の非行少年がこのような調査を受ける機会を失うことになります。しかも、現在家庭裁判所で調査を受けている少年の4割以上が18、19歳なのですから、その影響は非常に大きいのです。

少年法で少年を甘やかすな、対象年齢を引き下げて厳罰化すべきだ、と考える方もいらっしゃるかもしれません。しかし、実は対象年齢を引き下げても、厳罰化にはまったくなりません。今でも18歳以上であれば、重大事件を起こした子は家庭裁判所ではなく一般の裁判所で裁くことができます。死刑も選択できるのです。ですから対象年齢を引き下げても重大事件を起こした子にとっては全く変りはないのです。

では、それほど重大ではない事件を起こした大多数の少年に対してはどうでしょうか。実は、年長非行少年処遇の簡略化、放任化となりかねないのです。というのは、18、19歳の少年が成人扱いされるようになるということは、これまでは少年院に入っていた子のかなりの部分が、罰金や不起訴で終わるようになる可能性が高いのです。

少年法の場合、起こした事件そのものの重さだけではなく、事件の背景となる本人の特性や環境が重視されます。たとえ犯した罪が軽微なものであっても、背景の問題性が大きく、今後のために教育したほうが良いと考えられる場合には少年院が選択され得ます。これに対して刑法で裁かれる成人の場合、判断の中心となるのはあくまで犯した罪の重さ自体です。そのため、事件の背景の問題性が大きくても、犯した罪自体が軽微であれば刑務所は選択されません。またそれ以前に、少年の場合のように詳しく背景が調査されること自体がないのです。さらに、刑務所に入ったとしても、少なくとも今の少年院ほどの教育が刑務所で受けられる保証はありません。教育にかけるマンパワーが違い過ぎるのです。現在、法制審議会というところで、それを補うための方策も考えられているようですが、これまで約一世紀をかけて構築されてきた家庭裁判所と少年院の働きを代替えできるだけの提案は残念ながら示されていません。

また近年の脳科学の進歩によって、衝動性のコントロールにかかわる前頭葉や扁桃体と呼ばれる部位と、それらを結ぶ経路が思春期に大きく変化することが明らかになっています※図1。つまり、この時期にきちんとした教育をすることでそれらの部位に影響を与えることができ、衝動性のコントロールがしやすくなること、また逆にこの時期に適切な環境に置かれなければ、むしろ逆に衝動性のコントロールが難しくなる可能性もあるということが明らかになっているのです。このことを考えても、最後のチャンスと言うべき18、19歳の教育の機会をなくしてしまうべきではありません。


※図1 前頭前野と偏桃体 下記ページの中ほどに掲載 『講演者、講師の記事が読める講演依頼・講師紹介サイト 澤口俊之』から引用  (詳細はこちら>>

もちろん、少年犯罪が減少しているのは少年院の教育のみによるわけではありません。少年院は減少以前から存在したのですから。減少に寄与しているものとして、例えば虐待が注目されることで大人から子どもへの暴力全体が減少したこと、以前よりも親と子の間の価値観の相違が小さくなり世代間対立が厳しくなくなったこと、特別支援教育の充実により救われている子が増えていることなどが考えられます。全体として大人が子どもにやさしくなったことが、反抗の暴発としての非行を減らしている、と言えるかもしれません。非行や犯罪が社会の病理を反映しているとすれば、それらが激減したことはやはり喜ばしいことです。

その日本の平和を支えてきたもののひとつに、約1世紀にわたる少年法の貢献を挙げることはできるでしょう。法改正を検討している法制審議会でもその有効性は皆が例外なく認めているのです。それなのになぜ今、その機能を弱めてしまうような法改正をしなければならないのでしょうか。もし、現在の少年院入院者の4割を占めている18,19歳の少年への教育の機会が失われてしまうと、将来の日本の社会の安全にも大きな影響を与えることは間違いないと思います。

次回は、この問題とも密接にかかわる、非行と発達障害との関係について述べていきます。

富田拓
網走刑務所医務課医師


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 ■ 連載:ソフトウエアで認知機能の発達と学習を支援する 
      第7回 聴力及び聴覚認知機能のアセスメントとトレーニング
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過去に2回、連載をしていただいた中川雅文・国際医療福祉大学耳鼻咽喉科教授の原案・監修で開発した「聴覚認知バランサー」を、開発プロデューサーとしての立場からご紹介させていただきます。音を聞き、理解するメカニズムについては、中川先生の連載をご参照ください。

中川教授のプロフィール(Medical Note) 
※中川教授の過去連載

構造は2つに大別され、前者が聴力チェック、後者が聴覚認知に関するアセスメントとトレーニングの合計7種類のタスクです。

※図1 聴力チェックと6種のタスク 


1.聴力チェック

耳が音を感知する仕組みを簡単にいうと、周波数ごとの音を拾う多数のマイクを並べたものです。つまり、高さごとに音が聞こえたり、聞こえなかったりする訳で、高齢になると頻出する高音難聴は、高い音だけが聞こえない障害です。

それを測るには、無音室の中で、高さごとに小さな音から、音をだんだん大きくしていって聞こえた音量で調べることになります。ですから、手間と時間がかかり、保険診療でも一定の金額が請求されることになります。

それを短時間で行えるようにしたのが「聴力チェック」タスクです。問題の語はだれでも知っている語彙でなければなりませんので、先行研究を参考に、多くの人が知っている語彙のデータベースを用意します。語彙は4モーラ※1のものとします。それらの語彙を、男性の声、女性の声、子どもの声で録音し、録音データを特殊な技術※2で音素に分けて、それぞれの音素の周波数と音量を測定します。

※1 モーラは簡単に言えば1音に聞こえる音の塊です。単音の他に、きゃ・きゅ・きょのような拗音、「ばった」の「っ」のような促音も1モーラになります。

※2 森幸男・サレジオ工業高等専門学校教授に担当していただきました。

タスクでは、その語彙の音を聞いて、図2※のような4つの選択肢から回答します。正解が「ひまわり」の場合に、回答で「みまわり」を選んだとすると「ひ」の音が聞き取れなかったことになります。「ひ」の音は、HとIの2つの音素で構成されています。それに対して、回答でえらんだ「みまわり」の「み」は、MとIの音素で構成されていますから、結果として聞き取れなかったのは、Hの音素ということになります。

※図2 結果画面(スピーチバナナ)


聴力チェックのタスクの結果は、図3※のように表示されます。中央のグラフは、右に行けば行くほど高い音、下に行けば行くほど大きい音になっており、6回の試行の、4×6モーラの音素が、聞き取れた音素は青、聞き取れなかった音素が赤で、タスクの際に出力された周波数と音量の位置にプロットされます。

この結果から、周波数ごとで聞こえたかどうかの判断がなされます。さらに、中川教授のノウハウで様々なコメントが自動的に生成されます。例えば、聞き取れなかった音素が、語の最初の箇所に集中していれば、注意力の問題、最後の箇所に集中していれば、抑制力と注意力の問題と想像され、コメントとして指摘される訳です。

このタスクは今までになかった方法として、特許出願中です(特願 2015-197962)。

2.聴覚認知のアセスメントとトレーニング

2-1.1音ジャッジ


課題の語彙を聞き、その語頭のモーラまたは語尾のモーラを答えます。塊としての語彙から音を聞き取るアセスメントとトレーニングができます。

2-2.ランダムワード


ランダムに生成される音のつながりを記憶するタスクです。今まで知らなかった語彙は、その人にとっては無意味語になりますが、まずはそれを聞き取り、記憶できないと新しい語彙を獲得できません。そのトレーニングになります。

2-3.イン・ザ・クラウド


生活雑音が背景に流れる中で、語彙を聞いて、正答を見つけるタスクです。
感覚過敏を治すというものではありません。耳はすべての音が平等に入ってきますが、成長する過程で、聞くべき音と、聞かなくてもよい音(例えば、エアコンや周囲を通る車などの生活雑音)をえり分けて聞く能力(認知機能)ができていきます。それを伸ばすタスクです。

2-4.単語ジャッジ


課題の語彙が、あらかじめ提示されたカテゴリー(動物名や機械、衣類等)に一致するかどうかを判断するタスクです。音のつながりを語彙として判断し、その語彙の意味を想起して、カテゴリーと一致するかどうかを判断するタスクです。

2-5.カテゴライズ


課題の語彙が、候補として示される4つのカテゴリーのどれに合致するかを判断するタスクです。単語ジャッジと合わせて、聴覚情報処理障害※のアセスメントとトレーニングとなるように用意しました。

2-6.色あて


画面に、色を示す語彙が色付きで表示されます(例えば、あかやきいろ)。課題は前半と後半に分かれ、一方は、音声が、画面の語彙の意味と一致するかどうか、他方は、音声が画面の文字の色と一致するかどうか、を〇と×で回答します。聴覚の意味情報と、視覚の意味情報と情感(色として感じる力)のどちらと一致するかを判断するタスクです。ストループ効果という、複数の情報から選択的に判断する能力を測るもので、抑制力とも関連があります。

3.製品のねらい

3-1.軽度難聴

加齢によって、あるいは生活環境で、だんだんと音が聞き取れなくなっていきます。日本人の場合は、60歳以上が4人に一人、70歳上では実に2人に一人が軽度難聴ともいわれています。目が見えなくなると眼鏡をかけるひとが多いですが、音の場合は聞こえなくても、自分の判断で処理しがちですし、あまり聞くことに熱心でなくなる場合もあります。その結果、重度の難聴になったり、聞く力に関する脳を使わないことで、フレイル(廃用性障害)としての認知機能障害(認知症)になったりする可能性があります。その早期発見に役立てていただきたいと思います。

3-2.聴覚情報処理障害(Auditory Processing disorder, APD)

音は聞こえているが、意味が分からないという発達障害の一種です。そのアセスメントとトレーニングに役立てていただきたいと思います。

※聴覚情報処理障害については、小渕千絵・国際医療福祉大学准教授のメルマガ連載をご覧ください。

3-3.自閉スペクトラム症

発達障害、特に自閉スペクトラム症の人は、視覚のみで生活している傾向があります。ただ、視覚情報と聴覚情報を両方を組み合わせないと理解できないこともあります。例えば、「大きい」という言葉は、それが掲揚される語彙(果物、建築物など)によって使われ方が違い、使い分けを習得するためには、聴覚を使う習慣や能力は欠かせません。

また、ものには、大小や色といった視覚でとらえやすい属性の他に、重い、とか、香りがあるといった他の属性があるものがあります。本人が視覚だけで判断している時に、別の属性に関する他の人の発言を聞くことができると、自分が気がついている以外に、別の側面があることを知ることができます。

他の人の感性に関心を持ったり、新しいものの見方を増やしていったりすることは、自閉スペクトラム症の人の、視野の広さを育てることに役立つと思います。

五藤博義(ごとうひろよし)
レデックス代表


■□ あとがき ■□--------------------------
12月19日(木)に京都で、読み書き困難への支援 アナログからデジタルへ と題して、講演とセミナーを行います。講演は、NPO法人支援機器普及促進協会理事長の高松崇先生です。デジタル機器を活用した支援効果を、エネルギッシュな話術とパフォーマンスでご体験ください。

京都での講演会&セミナー 

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