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発達障害のある人のキャリアアップについて

── TOPIC ───────────────────────────────
● まえがき
● 新連載:発達障害のある人のキャリアップについて
● 連載:障害ある児童のためのプログラミング学習
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● まえがき

大人の発達障害者にとって「就労」は重要なテーマです。「就業中の発達障害をもつ人のキャリアアップ」について、一昨年からプロジェクトを立ち上げて取り組んでいる榎本哲さんに連載を依頼しました。

なお、関連する過去の【レデックス通信】では、発達障害者の就労支援をしている石井京子さんの投稿を掲載していますので、合わせてご紹介させていただきます。

※発達障害のある人の就労(2016年11月18日号)
(バックナンバーはこちら>>

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● 新連載:発達障害のある人のキャリアアップについて
第1回「自分のことを知ることが最初の一歩」

2016年に発達障害者支援法に国および都道府県は就労の定着を支援することが盛り込まれ、同年施行された障害者差別解消法で、「障害を理由とする不当な差別的取り扱い禁止」、「合理的配慮の提供義務」が課せられました。

そして2018年4月1日の障害者雇用促進法の改正で、法定雇用率の算定基礎の対象に新たに精神障害者が加わり、 段階的に法定雇用率が引き上げになります。発達障害のある人の就職と職場定着のための環境整備が少しずつですが改善しています。

しかしながら、発達障害のある人は、学生時代や就業経験の浅い段階で何かしらのつまずきによって発達障害と診断され、就業継続が上手くいかず、障害者雇用枠や非正規、あるいは有期雇用契約といった雇用形態で働くケースが多く、経済的にも将来的にも不安を抱えています。企業が求める役割期待は、休まずに出社する、与えられた業務をミスしない、といった本人の能力と反したものが少ない状況ではありますが、自分の能力を活かして活躍したいと志向する人が増えてきました。

そんな彼ら/彼女たちからは、障害者枠では与えられた仕事にやりがいがない、今の仕事は処遇が悪くスキルアップして転職したい、学生時代のつまづきで就職の時期が遅く社会人として必要な知識やスキルを獲得する機会を失った、今の働き方だと将来のビジョンが描けない、取得した資格を活かせる業務につけない、など、意欲はあるものの知識を学んだり、スキルを活かす機会がなく将来が描けない不安を抱えている様子がうかがうことができます。

私が立ち上げたプロジェクトには、就業中でキャリアアップやキャリアチェンジを志向する発達障害のある方たちが参加されています。プロジェクトの内容については次号以降に紹介します。

■自分のことを知る・伝えるための言語化の大切さ

就労の際には、意欲ややる気があるか、自分で体調管理ができているか、そして自分のことをよく理解しているかが採用する企業にとって重要な項目となります。
では「自分のこと」とはなんでしょうか。

発達障害当事者が集まる場所での自己紹介で、自身が発達障害であることについて、「ASD(自閉症スペクトラム症)とADHD(注意欠如多動症)の診断を受けています」と話されますが、具体的に生活や仕事の場面でどういう特性があるか尋ねると回答に苦慮することが多いようです。すべての人が大なり小なり生来的な脳の特性(発達特性)を持っており、それが何らかの生活障害を生じる原因となり、その症状によって発達障害であることが診断されます。

社会、特に職場で同僚や上司との良好な人間関係を築くためには、診断名ではなく自身の発達特性によって仕事のうえでどのような支障(生活障害として)を来すのか、どのような配慮が必要なのかを伝えることが必要となります。しかしながら、発達障害のある人は、その特性から、客観的な視点で物事を考えることが苦手で、意外に自分のことがわからない。あるいはわかっていても、対面でのコミュニケーションの不得意さや、話が分散したり、偏りのある伝え方をするなど、正しく伝えることができない傾向があります。

業務をスムーズに行うためには、まず原因と結果を具体的に言葉にする(言語化)しておくことが大切です。例えば、発達障害のある人の定番である集団討議やメモがとれないという点については、以下のケースが考えられます。

・多人数での話し合いが苦手
会議などの集団での討議を行う場合には、話すタイミングが上手くつかめない、複数の発言があると理解しづらい、話しを聞きながら板書するのが苦手である、集中していないと話している内容を忘れがちになる、等

・メモがとれない
聞くことと書くことの2つの作業が同時にできない、ワーキングメモリが小さいために聞いたことをすぐ忘れる、聴覚からの情報処理(理解)が遅い、理解できても文字に変換する(アウトプット)のが苦手、話の中で興味関心をひく言葉があるとその後の話が聞くことができない(集中できない)、等

これらのことを理解し、場面や工夫により自身で対処できる方法を考えるとともに、配慮してもらうことでできることを伝えることが大切です。

■業務を円滑にするために自身の「認知特性」を知る

発達障害のある人はコミュニケーションが苦手と言われていますが、自身のコミュニケーションの特性(認知特性)を知っておくことは大切です。

人は主に視覚と聴覚から音声情報や言語(文字情報)、図形情報、イメージ情報など、さまざまなかたちで情報を受け取っていますが、その情報の獲得から理解・判断・学習・思考し、行動・発信するまでの情報処理の方法は、その人が持つ脳の特性(認知特性)によって異なります。

認知特性には、人によって視覚優位、聴覚優位、言語優位などがあり、また、情報媒体が文字情報、図形(映像)情報であるかによっても得手不得手があります。例えば、話し手の説明が音声情報だけだとわからない、文字ばかりのスライドは苦手、図や写真だけだと理解がすすまない、というようにコミュニケーション手段によって、理解度が異なるケースがあります。

自身の認知特性を知ることで、どのような工夫を加えれば情報を受け取りやすいのか、アウトプットしやすいのかを理解し、職場でのコミュニケーションに応用することが、仕事を円滑に行うことにつながります。実際に、自身の認知特性をよく理解し、上手く活用することで苦手な業務をこなしている方も増えています。筆者は認知特性の傾向を調べるのに脳活バランサーや聴覚認知バランサーを活用しています。

※脳活バランサー (詳細はこちら>>
※聴覚認知バランサー (詳細はこちら>>

認知特性の詳しい説明は本田真美先生が【レデックス通信】の「小児発達医・まなみの診察室」の第7話(2011年06月24日号)~第12話(2011年09月30日号)で紹介されています。

※小児発達医・まなみの診察室 第7話
(バックナンバーはこちら>>

■わかりやすく伝えるために

話したり書いたりするのは、考えていることをかたちにしたり記憶にとどめたりするために必要な行為ですが、仕事のうえで重要な報・連・相の質を高めるためにも、そのベースである「言葉にする力」をしっかり身につけることが重要です。

しかしながら、発達障害のある人は、「話し出すととまらない」「話し出すと何を伝えたいのか忘れてしまう」「言っていることがわからないと言われる」「話をうまく組み立てることができない」「話につまると言葉が出てこない」ということが多く、言葉にする力(言語化スキル)は共通の課題となっています。

プロジェクトでは、「言葉にする力(言語化スキル)」である、(1) 頭の中にあることをアウトプット(話す・書く)すること、(2) わかりやすい内容(構造化)にすること、(3) 相手にあった(相手が理解できる)言葉を使うこと、の中で「わかりやすい内容にすること」(構造化スキル)を目標に、実際にビジネスの現場で使われているフレームワークを活用して課題に取り組んでいます。

次号では、プロジェクトの説明の中で、この「言葉にする力」を身に着けるため発達障害のある人に向けた取組みを紹介する予定です。

榎本哲(つむぐびとプロジェクト主宰)
※発達障害のある人のキャリアップ創出プロジェクト (詳細はこちら>>
※「働く発達障害の人のキャリアアップに必要な50のこと」(弘文堂)
(詳細はこちら>>

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● 連載:プログラミング教育への期待
第2回 障害ある児童のためのプログラミング学習

小学校において2020年から始まる新しい学習指導要領において、プログラミング教育が必修化される。その背景については、第1回の「今なぜプログラミング教育なのか」で書かせていただいた。情報化やIoT社会の進展のなかで、コンピュータに制御される日常の便利な道具を「魔法の箱」とするのではなく、その仕組を発達段階に応じて理解すること。「魔法の箱」は、あくまで人が主体であるという認識。プログラミングをとおして論理的思考を育成することなどであった。

プログラミング教育の実施が目前に迫る中、筆者は、総務省が平成28年度から始めた「若年層に対するプログラミング教育の普及推進事業」の中で、平成29年度に「障害ある児童のためのプログラミング教育」の実証研究に取り組ませていただいた。ここでは、その実践を紹介しながら、障害ある児童にとって、プログラミング教育が持つ可能性について考えてみたい。

◎対象となった児童と目的

まず、対象となった児童について簡単に紹介しておこう。主役は富山県にある富山市立芝園小学校の特別支援学級に学ぶ児童13名。芝園小学校は児童数600名の大きな学校ですが、ここに、知的障害、自閉症・情緒障害、肢体不自由、病弱、難聴の5つの障害に対応する特別支援学級を持つ学校です。この特別支援学級に学ぶ児童たちを対象に、論理的思考力の育成とともに、彼らにとって最も求められる能動的かつ持続的学習意欲の育成、コミュニケーション能力や協働学習能力の育成につながるプログラミング学習を試みた。障害及び学年を考慮し、本実践では6グループで活動を行った。

◎プログラミング学習のための教材

このような児童が興味を持って学習に取り組むための理論的背景として、認知発達学習理論から導かれた「応答する学習環境」の考えのもとにどのようなプログラミング教材がいいかを検討した。応答する学習環境とは、子どもの能動的で自発的な環境への働きかけに対する環境の適切な応答が、子どもの知的好奇心を喚起し、学習の動機づけに効果があるというものである。

ムーア(O.K.Moore)によって、応答する学習環境の基準が次のように示されている。
a) 子どもに反応を強制せず、自由に探索させる
b) 行動と環境の受け答えの間に一定の規則性があって、子どもが行動するとその結果がすぐに分かる
c) 学習速度が子ども自身によって決められる
d) 行動と応答との関係を発見するための思考が必要

この応答する環境の基準の考えに基づき、視覚的に行動が把握しやすい、以下の学習教材と学習を支援する補助教材を用いてプログラミング学習を展開した。それぞれの教材で2時間、計6時間の学習を行い、最後に通常級の2年生の児童との交流学習を行った。

1) Code A Pillar:単純な構造(直進、右、左)のブロックから構成されるいもむしロボット※写真1

2) Ozobot:単純な色コードを認識して動きを制御するたこ焼きロボット ※写真2

3) Viscuit:単純なツール(めがね)で動きのある表現活動が可能なビジュアル言語 ※写真3

※写真1 Code A Pillarと戦略ボード (画像はこちら>>
※写真2 Ozobotと作戦ボード (画像はこちら>>
※写真3 Viscuitと表現ボード (画像はこちら>>

◎プログラミング学習の展開

1.いもむしロボット

最初が、いもむしロボット「ピラーちゃん」を目的の場所まで動かす課題。児童の学習への動機づけとして、「エリック・カール著『はらぺこあおむし』」を大きく写しながら、いもむしは何が好き、いもむしは大きくなって何になるなど、児童への発問と応答を通して、学習への意欲を高めた。その後、児童は2人または3人一組で各グループに分かれて、ピラーちゃんを自由に動かし、ピラーちゃんの動かし方を理解したあと、問題解決学習に入る。問題は、ピラーちゃんにたくさん餌をあげること。すなわち、スタート地点から事前に計算された位置に配置された葉っぱやりんごを通過させるという課題に取り組んだ。

ここで論理的思考を促す手立てとして、動かす前に、協働して手順を考える活動(戦略ボード上に、前、右、左などのコードチップを動きを考えながら配置すること)を行わせ、その後、その戦略ボードに従って、ピラーを組み立てる活動を行わせた。

※写真4 戦略ボードで考える (画像はこちら>>
※写真5 戦略ボードに従ってピラーちゃんを組み立てる (画像はこちら>>

組み立てたら、スタート地点にピラーちゃんをおいて Go! やったあ!という歓声、あれ?という声。あれ?の時は、もう一度、よく考えて、戦略ボードを見直し、再度 Go! 上手く葉っぱやリンゴに到達できれば、ピラーちゃんの食べ物カードに、グループの名前の入った葉っぱやりんごを貼って達成感を持たせた。このPDCAサイクルをグループで協働して回すことが、協調活動能力や論理的思考力の育成につながる。競争的達成感を持たせることで、問題解決学習への持続的取り組みにつなげた。

※写真6 やったあ! (画像はこちら>>

2.たこ焼きロボット

次が、たこ焼きロボットOzobotの学習。Ozobotをスタート地点から、カラスなどの敵に遭遇しないように目的地まで動かす課題だ。まずは、Ozobotの基本を学習。あらかじめ黒線で描画されたパターンの上を走らせ、その動きを観察させ、どんなことに気づいたかな?皆で気づいたことを発表する活動だ(※写真7)。

※写真7 動きを観察する児童 (画像はこちら>>

次に、白抜きされたパターンに自分で色線を描き、その上をOzobotに走らせどのような変化が起きるか観察。どんなことに気づいたかな?皆で気づいたことをまた発表した。Ozobotは色を見て行動を変化させることに気づくという活動であった。

Ozobotは色の組み合わせを見て、右、左、まっすぐなど、どのように動けばいいか理解し行動することができる。この色の組み合わせが、Ozobotに対する動きを指示する命令(コード)になっていることを学習。次は、カラスに食べられないようにして、葉っぱにたどり着くためには、どのような道筋をたどればいいか、チャレンジ問題に挑戦だ。右へ曲がるのか、まっすぐかなど考えながら、そのような動きになるようなコードを指示された場所に配置する学習だ。簡単な問題から、障害物が増える複雑な問題へとチャレンジをすすめた。

※写真8 作戦ボードに従ってコードを貼る (画像はこちら>>
※写真9 考えたように動くかな? (画像はこちら>>

3.Viscuit

3番目の学習はビスケットを使ったアニメーション作りに挑戦。ビスケットでは、自分で描いた対象を動かすのにメガネという道具を使う。まずは、確認ボードでメガネの仕組みを学習する。メガネの左に対象物を置く。次にメガネの右に対象物を位置をずらして置く。このズレが対象物の動きを制御している。上下、左右、斜め右上、斜め左上などいろいろ置く場所を変えてみて、対象物がどのような動きをするか考える学習だ。

※写真10 メガネの基本をボードで学習 (画像はこちら>>

メガネの使い方がわかったら、次は自分で絵を描きそれを動かす学習。ビスケットの基礎、メガネを使った動きのあるアニメーションの作り方を学んだあとは、チームで作品作りに挑戦。作品は、「海の世界」(※写真10)と「おばけの世界」。チームで興味のある世界を選んで、各自が、そこに登場する仲間を描く。

「海の世界」を選んだチームには、絵を描く参考に、海のなかまたちを紹介するイラスト集が補助教材として与えられた。児童は画作りに一生懸命取り組んだ。同様に、「おばけの世界」でも様々なおばけが描かれた。ビスケットの機能に、各自がそれぞれのiPadで描いた絵や動きを統合する機能がある。この機能を活用して、グループごとに制作した「海の世界」や「おばけの世界」を全員で鑑賞。児童は自分で描いた生き物が海の世界で動くことに歓声をあげ、また友達の描いた様々な生き物でにぎやかな海の世界ができたことにも歓声を上げ、楽しいアニメーションづくりであった。

※写真11 海の仲間を描く (画像はこちら>>
※写真12 友達との協働で作品が完成 (画像はこちら>>

次回は、この実証実験授業の最後に行った通常級の2年生との交流授業「Teaching is best learning」で、これまでプログラミングを学習した児童が教師役となって展開した活動の内容や、この実証実験授業で得られた児童の変容について紹介する。

山西潤一(富山大学名誉教授、ICT教育アドバイザー)

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● あとがき

今年も、障害者自立支援機器シーズニーズ・マッチング交流会に出展します。第1回は12月の大阪、第2回は1月の福岡、第3回は2月の東京です。

※障害者自立支援機器シーズニーズ・マッチング交流会
(詳細はこちら>>

次回メルマガは、12月21日(金)の予定です。