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数字と踊るエリ -娘の自閉症をこえて-

6月18日、所沢・軽度発達障害児を支援する会「よつばくらぶ」主催の川上康則先生講演会に出席しました。

子どもの不適応に、観察の目を向け、認知機能、体力、眼球運動など様々な観点から原因を見つけて、改善する手立てを紹介いただきました。

川上先生の支援の特徴は、不適応な状況を子どもの側から考えることです。なぜこんな行動をするのかを、その子の立場から考えます。そしてその原因を解決する仮説を立て、実施し、結果をみて、次の手立てを考えます。

観察-仮説-実践-検証(観察)-次の仮説、と、科学的思考のお手本のような実践といえるでしょう。

教育の世界にまん延するマニュアル化の及ばないところ、つまり、教師が、自分の目と頭で考える力をなかなか身につけることができていない問題を解決する点でも有効な手立てと思います。

川上先生の支援の、もう一つの特徴は上から目線でない点です。教師になる前に2年間、スイミングスクールのインストラクターをしていたそうで、自分より年上の人を指導した経験が役立っているとのことでした。

上から目線のマイナスは、本当の問題点を見逃しやすいことに加えて、手立てが「支援される側の心に響かない」ということにあります。自分の味方と思える人の言葉なら、誰しも納得できるのではないでしょうか?

講演の様子、紹介された手立ての実例などは下記をご覧ください。
http://yotsubaclub2.cocolog-nifty.com/yotsuba/2011/06/post-7381.html

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【目次】
(1)「見る」を高める・2
(2)小児発達医・まなみの診察室 第7話
(3)おすすめコンテンツ「数字と踊るエリ-娘の自閉症をこえて」
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(1)「見る」を高める・2

増本利信先生の「よつばくらぶ」勉強会レポート第2回です。
「見る」「読む」のメカニズムについて整理してみます。

文を読むメカニズムを、人間が行っている機能に分けてみます。


文   字 ---------------→ 意 味

字 → 象                   の

刺   つ ----→ 音 韻 -----→ 抽 出

激   が

1.文字表象のつながり
目で見たひと文字ひと文字はいくつかの文字がつながって、特定の意味をもつ「かたまり」であることを認識しなければなりません。それを行うには、「文字表象の辞書」を頭の中にもつ必要があります。
さらに、その辞書を適切に使って、文字をいくつかの「かたまり」に分けて認識する必要があります。

ここで必要となる機能が「眼球運動」と「視知覚」です。学習障害で意外と見落としがちなのが眼球運動です。動くものを目で追う「追視」や、両方の眼球を1つの対象に振り向ける「両眼視」ができないと、ものを適切に見ることができなくなります。

視知覚は、網膜が受け取った情報を、脳に伝え、それを像として認識するまで、様々な段階があります。それぞれの段階ごとに定型発達と異なる要素があると、ものが正しく見えない(認識できない)ことになります。

レオナルド・ダ・ヴィンチは「鏡文字」(左右が反転した形)を使ったことで有名です。その理由に、何かの意図で使ったというものの他に、実際に彼にはそのように見えていたという説もあります。ものが反転して見えるのはある意味、脳に発生することが十分考えられる差異です。眼もレンズを使って得た情報を、脳内でヴァーチャルに像を作って認識していますから、その翻訳部分が動作しなければ、鏡文字に見えるからです。

2.音韻化と意味、または語彙と意味のマッチング
かたまりを「つながった音韻」つまり「語彙」として認識します。その音韻と対応づけられる意味を「音韻-意味の辞書」を使って、抽出します。

または、場合によっては「つながった文字」から音韻化せずに「文字-意味の辞書」を使って、意味を抽出する場合もあります。

次に、語彙と語彙のつながりとして文を認識し、文法などの知識を活用して文の意味を理解します。さらに、文のつながりから文章の意味を理解します。

上記のそれぞれの段階で、脳の違った場所に局在する認知機能を使います。
脳の外傷などで発生することがある「失語症」という認知障害は、脳の損傷部位によって、文字が読めるが語彙の意味が分からないとか、語彙は言えるが文としての形状をなさない発語をするとか、様々な症状を呈します。

読みに関する学習障害も、文の意味理解の段階ごとの認知機能の発達程度によって異なった困難さを抱えており、それを見つけ出すこと(アセスメント)が、トレーニングや支援の方法を選定するための第一段階となります。

3.アセスメント
この言葉を聞くと検査を思い浮かべる人が多いですが、それ以外にも大切な情報がたくさんあります。
ア)授業などでの観察
イ)保護者から聞くエピソード
ウ)掲示物や写真、テスト等
エ)発達検査

ア)授業などでの観察
検査以外のアセスメントを、インフォーマルなアセスメントと総称します。その中でも、子どもたちの日常を観察することは最も重要です。下記の場面などで、他の子どもとちょっと違った行動をしているのに気づいたら、その原因を考えることが、支援の必要な認知機能の発見につながります。
・書字や読字の姿勢
・板書転記時の特徴
・教師や学習材料への注視の程度
・注意の移り変わり
・対象箇所の探索

イ)保護者から聞くエピソード
面談などで保護者がふと漏らすエピソードは、子どもの認知機能の偏りを、端的に示す場合があります。メモをとっておくと役に立ちます。
・頭痛をよく訴える
・パズルはあまり好きじゃないみたい
・よく物を落としたり、ドアにぶつかったり・・・
・見ているようで、見てない時がある
・ボールを使った遊びはあまり・・・
・目の前の物を見つけるのに時間が・・・
・テレビを近くでみます。斜めに見ます

ウ)掲示物や写真、テスト等
子どもの作品や行事等で撮った写真などを、改めて見直してみることで、貴重な発見が得られることがあります。
・人物画の特徴
自分自身が使っている身体機能の部位を大きく書き、あまり使っていない部位は小さかったり、省略されたりすることがあります。
・誤答の傾向
なんども似かよった誤りをする場合は、特定の認知機能が原因かもと考えてみることも有用です。
・書字の程度
・集合写真での視線

エ)発達検査
増本先生がよく使われる認知検査を紹介していただきました。
・WISC-3 「符号」「記号探し」「組み合わせ」「積み木模様」
・K-ABC  「手の動作」「語の配列」「位置探し」
・DTVP-2
・近見遠見課題
・DEM

アセスメントについては、増本先生のブログにいろいろな情報があります。
合わせて、ご参照ください。

ブログ「西風~LDのお子さんとともに」
http://www.blogmura.com/profile/00418844.html

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(2)小児発達医・まなみの診察室 第7話

今号から『認知特性』について触れていきたいと思います。『認知特性』というのは、小児の発達を専門とする身にとって非常にしっくりとくる表現なのですが、一般的にはあまりピンとこないかもしれません。『認知』というのは『ある物事を頭の中で認識し理解すること』、『認知特性』は『頭の中で認識し理解する方法』というと少しは分かりやすくなるでしょうか。

人は自分が見たり、聞いたり、理解したり、感じたりするのと同じように、他人も見聞き、理解すると思いこんでいます。けれどそれは違うのです。私が個人個人の『認知特性』を意識するようになったのは、生い立ちも職業も趣味も全く違う主人との結婚、そしてそんな主人の遺伝子を受け継いだ息子の誕生がきっかけでした。

まだ結婚して間もない頃、私の作った夕飯の味で夫婦ケンカになったことがあります。それから1年ほど経ったある日に、私はタンスから青いセーターを出して着ました。すると主人が「そのセーターは、ケンカしたときに着ていたセーターだね」とポツリと言ったのです。1年も前のことで、ケンカの内容すら忘れていた私は、青いセーターとケンカの場面を結びつけた彼に驚きました。

良く話を聞いてみると「ボクはリビングのこのイスに座っていて、横にあるテレビではヒトラーのドキュメンタリー番組をやっていて、画面にヒトラーの顔が映っている、そしてちょうどこの位置から見える台所で青いセーターを着て怖い顔をしている君を良く覚えている。でもどういう理由でケンカをしたのだっけ?」というのです。映画のシーンあるいは古い写真の1枚をそのまま覚えているようでした。その後も主人は青いセーターを見ると私の怖い顔とリンクするようです。一種のトラウマ、PTSDなのでしょう。

そんなことがあったので、私は一緒の生活をしながらも、自分とは全く違う世界を生きている主人をとても興味深く見るようになりました。そして「生涯で一番古い記憶は何か」と尋ねました。

多くの人は3~4歳と、ある程度、物心ついた以降の記憶というのが一般的ではないでしょうか。記憶力の悪い私は嫌なことも楽しいことも時間が経つとすぐに忘れてしまい、友人からは過去のない女と言われるほどです。そして主人の最も古い記憶は「自宅の階段をハイハイして登ろうとしたときに、天窓から差し込む光が階段に映ったシーン」というのです。

ハイハイしている時期ですから、生後8ヶ月くらいでしょうか。少なくとも1歳未満の記憶であるようです。また記憶している場面というのは、自分の視界からみた映像であることも特徴的です。

自分の記憶をたどる時、その場面に自分が登場していて俯瞰的に思い出となっている人も多いのではないでしょうか。少なくとも私の記憶はそうです。
私の記憶が自分が映っている古い写真とリンクしていて、想い出となっているからかもしれません。

そんな主人の職業は広告デザイナーです。広告と言っても映像を媒介するTVコマーシャルではなく、ポスターや新聞広告のような2次元の紙媒体を専門としています。目で見たシーンや場面を写真のように記憶し、頭の中で整理する彼にとって天職といっても過言ではないのでしょう。

主人はよくカメラマンからメールで送られてきた同じようなカットの写真を何十枚もパソコンで早送りしながら、一番良いと思う写真を1枚チョイスします。横でその様子を見ていると、何枚も似たような写真がパソコン画面で次々に変わっていて、何枚目の写真のどこが良かったのか、前後の写真との違いなども私には全く分かりません。1枚1枚を写真記憶として頭の中で整理できるのは彼の認知特性ならではなのでしょう。

けれど、彼のもつ認知特性が故に、彼には弱点があります。非常に方向音痴なのです。家の近所の道でさえ分からなくなることがあります。主人曰く、「行ったことのある場所は写真のように記憶していて、来たことがある場所かどうかはすぐに分かる。けれど、1枚の写真の横にどの写真がくるのかが分からないので、右に行けばいいのか左に行けばいいのか分からなくなる」と言うのです。

主人の認知特性は2次元世界の視覚優位者であると言えます。持って生まれた認知特性によって、得意も不得意も決まるのです。

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(3)おすすめコンテンツ「数字と踊るエリ-娘の自閉症をこえて」

朝日新聞5月8日読書ページ「著者に会いたい」で紹介された本です。著者はテレビのコメンテーターなどで活躍する臨床心理士の矢幡洋氏です。
http://book.asahi.com/author/TKY201105110266.html

小学校入学を翌年に控えた11月に、就学前検診の結果を郵便で受け取る場面からストーリーが始まります。臨床心理士でありながら、娘の変わった点に気がついていながら、敢えて目をつぶってきた状況が一変します。

特別支援学校の選択を勧める地元の教育委員会の意向に従わず、普通の小学校への入学を著者は決断します。その後で、娘を専門医に連れていき自閉症と診断されてから、著者の戦いが始まります。

自閉症の療育が進んでいる米国から文献を取り寄せ、自分の娘の特性に合わせて、手作りの療育を進めていきます。その結果どうなったかは、ご自身でぜひご確認ください。

優れた点の多々ある本ですが、もっとも異色を放つ点は、娘さんの行動や、療育アプローチへの反応を詳細に記録してある点です。臨床心理士ならではの鋭い観察眼による描写は、自閉症の特徴を知るための貴重な情報といえるでしょう。

また矢幡氏の心の動きは、お父さんお母さんが、ご自分のお子さんについて気になることが出てきた場合に、とても参考になると思います。

矢幡氏はご自身のホームページで、娘さんの支援の過程で得た、自閉症に関する情報をまとめておられます。本のより深い理解に役立つと思います。
http://www.yahata-sinri.com/index.php?FrontPage

数字と踊るエリ -娘の自閉症をこえて
矢幡 洋著、講談社、2011年4月発行、四六判、287ページ、1680円
http://www.bookclub.kodansha.co.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=2169150

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Twitter や Facebookなどソーシャルメディアを活用した新サービスを論じるソーシャルカンファレンスでのプレゼン・コンペで、栄えある第1回ソーシャルカンファレンス大賞をいただきました。発表内容はソーシャルメディアで様々な立場の人をつなぎ合わせ、発達障害や知的障害の保護者を支援する社会システムを作るというものです。

その時のプレゼン資料を公開しています。よろしければご覧ください。
http://www.slideshare.net/gotoledex/sc2011-ledex

大賞受賞をきっかけにして、そのサービスを議論するFacebookの「発達障害&知的障害」ページに、たくさんの方が参加・協力してくださり、7月30日に池袋で、気になるお子さんをもつ保護者が、先輩保護者、成人当事者、専門家と懇談し、必要な情報を得られる場を設けることになりました。

その詳細については、下記ページで随時、情報公開されています。Facebookは、会員登録しなくても閲覧できる「ページ」機能がありますので、一度、のぞいてみてください。
http://www.facebook.com/all4variety

次回メルマガは、諸事情により2週間先の7月15日金曜日の刊行とさせていただきます。少々、先になりますが、楽しみにしていただければ幸いです。