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■ 連載:感覚処理の問題への介入・対応
■□ 連載:AIセラピストco-miiを徹底解剖!支援現場での活用法
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■ 連載:発達障害児の感覚処理・協調運動の問題への支援第3回 感覚処理の問題への介入・対応
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今回は、感覚処理の問題が子どもに対する療育などの介入、日常生活における対応について説明します。
1.療育の場などにおける感覚の問題への介入
(1) 感覚刺激への過反応(感覚過敏・感覚回避)が見られる子どもへの介入
感覚処理の問題を抱える自閉スペクトラム症(ASD)の子どもに対しては、感覚統合療法によりその軽減を目指したアプローチが行われることがあります。例えば、触覚過敏のある子どもに対し、接触を受け入れられる部分から少しずつマッサージを行いスモールステップで刺激を増やして行くことがあります。このような方法によって、触覚過敏が目立っていた子どもが他者からの接触を受け入れられるようになることがあります。
他者からの揺らされる刺激が受け入れられないなど、揺れ刺激への過反応を示す子どもにスモールステップで揺れのパターンや大きさを徐々に増やすようにして改善を図ることもあります。揺れ刺激の受け入れを改善する指導は、前庭刺激に耐えられるようになることだけを目的にしているのではありません。感覚刺激への過反応は、感覚系をまたがって現れることがあり、一方の感覚刺激への過反応が変化すると、もう一方も変化することがあります。そのため、揺れに対しての過反応が軽減してくると、他の過反応も改善されることがあります。そのようなことから、他の刺激の受け入れ改善を狙って揺れ刺激が入る活動を行うことがあるのです。
なお、揺れの刺激の受け入れが良くなると他者のかかわりに対する柔軟性が見られるようになるASD児が多いため、対人関係スキルへの波及効果を狙って揺れのある遊びを取り入れることもあります。
これまでの治療効果に関する研究では、感覚統合療法を受けたASD群は治療を受けなかった群に比較して感覚の問題が有意に改善したことや(Fazliog^lu Y & Baran G, 2008)、感覚調整障害を持つ発達障害児群がコントロール群や他の指導を受けた群よりも、目標達成度スコア、注意のサブテストと認知/社会の改善が見られ、感覚プロファイルや小児行動チェックリスト、皮膚電位反応に変化が見られたこと(Miller et al., 2007)などがわかっています。
(2) 感覚探求行動が見られる子どもへの指導
ASD児の中には、激しくジャンプしたり、ブランコで揺れたりする遊びを過度に行う子どもがいます。そのような子どもにはスイングやトランポリンなどで子どもが求めている感覚刺激が得られるような場面を設定し、子どもの情動や行動の安定を図ることがあります。また、感覚探求行動で求めている感覚刺激を強化子として用い、コミュニケーション行動の発達を促すことがあります。例えば、前庭感覚の探求行動が目立つ子どもに“高い高い”を行い、次に子どもが“高い高い”をしてもらうことを求めてきたら、要求のジェスチャーを教えるなどの指導を行うことがあります。
2.日常生活における感覚の問題への対応
次に日常生活の中での感覚の問題への支援について述べます。
(1) 周囲の人に正しく理解しもらうこと
感覚の問題は周囲の人に気付かれないことが多く、間違った対応も起こりやすいです。そこで、まず周囲の人に感覚の問題を理解してもらうための取り組みが必要となります。感覚刺激への低反応や感覚探求は、専門家の間でも感覚の問題として認識している人が少ないのですが(岩永ら,2021)、これらについての対応も不可欠です。そこで、ASD児の感覚の問題を説明した文書、感覚の問題について説明した本やパンフレットなどによって周囲の人に理解を促すことがあります。
(2) 感覚刺激への過反応が見られるASD児への支援
ASDの感覚刺激への過反応を治療する方法は確立されていません。そのため、過反応のあるASD児には、まず不快刺激を遠ざけるための環境調整を行うことが多いです。例えば、聴覚刺激への過反応がある子どもへの対応として、運動会のピストルを旗や笛に変えてもらう、音を遮断できる部屋を用意する、イヤーマフを用いる、などの対応を行うことがあります。触覚刺激への過反応が見られる場合に服の素材に配慮する、などの対応が挙げられます。
過反応が見られるASD児は、気分が不安定であったり、不安が強くなったりすると過反応が顕著となることが多くあります。そのため、情動を安定させる働きかけが必要となります。多くのASD児は、見通しが持てない状況では情動が不安定となります。そのため構造化が必要となります。つまり、感覚刺激が与えられる状況、刺激の内容、刺激がいつまで起こるのかなどをわかりやすく提示する必要があります。
歯科医師の中には治療の流れを視覚的スケジュールによってわかりやすく示している人がいます。治療の流れがわかりやすくなると治療の際の過反応が見られにくくなるASD児は多くいます。
なお、感覚刺激を与える人との関係ができていないと刺激を与えられる際のASD児の不安は強くなります。そのため、刺激を与える人とASD児の対人関係を改善することも過反応の軽減のために必要なことがあります。
歯みがきをされることを嫌がる子どもには、歯みがきを自分ですることから始め、徐々に他者からの仕上げ磨きを受け入れられるようにしていきます。このように過敏反応を起こす感覚刺激を能動的に取り入れる練習から始め、徐々に他者からの刺激の受け入れの改善を図ると改善が見られることがあるのです。
自分自身をくすぐることはできないため、自分で歯みがきをする際には過敏反応が起こりにくい傾向があります。そこで、自分で歯みがきをすることを練習して、その途中で大人が歯ブラシを持っている子どもの手を覆いかぶせるように持って動かします。このようにするといきなり他の人から仕上げ磨きをされるより、受け入れが良くなることが多いです。
(3) 感覚探求行動が見られるASD児への支援
感覚探求行動が目立つASD児には、行動を完全に制止するよりも、求めている感覚刺激をより社会的に受け入れられやすい形で、日常生活の中で効率的に得られるように感覚刺激が入る活動をスケジュールに組み込むことがあります。例えば、水遊びをやめない子どもに皿洗いや風呂掃除などの水仕事をやってもらったり、授業中にうろうろしてしまう子どもには休み時間にトランポリンで飛ぶ時間を設定したりすることがあります。このような方法はセンソリーダイエット※と呼ばれています。
以上、感覚処理の問題への対応を説明しました。
※センソリーダイエット(Sensory Diet):「センソリーダイエット」とは、子どもが必要とする感覚刺激(前庭・固有受容・触覚など)を、日常生活に組み込んで意図的に提供する方法です。感覚統合理論に基づいた戦略です。
文献
Fazliog^lu Y, Baran G. A sensory integration therapy program on sensory problems for children with autism. Percept Mot Skills. 106: 415-22. 2008
Miller LJ, Coll JR, Schoen SA: A randomized controlled pilot study of the effectiveness of occupational therapy for children with sensory modulation disorder. Am J Occup Ther 61: 228-237, 2007
岩永竜一郎、辻井正次、萩原拓、徳永瑛子:厚生労働省令和2年度障害者総合福祉推進事業「発達障害児者の感覚の問題に対する評価と支援の有用性の調査」.2021
◆岩永 竜一郎
長崎大学大学院医歯薬学総合研究科(保健学科)・作業療法学専攻教授、医学博士、作業療法士、
感覚統合学会理事、特別支援教育士スーパーバイザーほか、長崎県内外のさまざまな委員を兼任。
アスペルガー症候群の息子がおり、長崎県自閉症協会高機能部部長としても活動している。
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■ 連載:「AIセラピストco-mii」がつくる発達支援の未来第3回 AIセラピストco-miiを徹底解剖!支援現場での活用法(最終回)
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1.実際の支援現場で「co-mii」はどう活用できるのか?
そこで活躍するのが「AIセラピストco-mii」です。専門家の知見が詰まったAIの力を活用することで、アセスメントから個別支援計画書の作成、療育メニューの提案までをシステム上で行うことができるため、支援の質を維持しながら業務負担を大幅に軽減できます。
本記事では、AIセラピストco-miiの機能を詳しく解説し、どのように支援現場で活用できるのかを紹介していきます。
2.co-miiの主な機能
1) 5領域7分野で行う精密なアセスメント
co-miiは「健康・生活」「感覚」「運動」「手指」「言語・コミュニケーション」「認知」「社会性・人間関係」の7分野でアセスメントを実施します。児童に関する約100~200項目の質問に「はい・いいえ」で答えるだけで膨大な数の論文やデータに基づいたアセスメントを実施することができます。この結果をもとに、次に取るべき支援の方向性を明確にすることが可能です。
2) アセスメント結果の可視化
アセスメント結果は数値化され、チャートやグラフで表示されます。これにより、支援の優先順位が一目でわかるようになり、どの分野に重点的な支援が必要かが明確になります。また、保護者に対しても視覚的に説明できるため、共通理解を深めやすくなります。
このアセスメント結果をもとに、co-miiは次に支援の方向性を決定するための個別支援計画書を作成する機能を提供しています。
3) 5領域に対応した個別支援計画書の半自動作成
co-miiはアセスメント結果に基づいて、短期・長期の支援目標を自動的に提案します。さらに、5領域ごとに優先的に取り組むべき課題もリストアップされ、スタッフがスムーズに支援計画を立てられるようになります。これにより、計画書作成の負担が大幅に軽減され、現場のスタッフがより実際の支援に集中できる環境を整えます。
しかし、計画を立てるだけではなく、実際にどのような療育を行うかが重要です。co-miiは、500種類以上の療育メニューを提供し、より実践的な支援を可能にします。
4) 500種類以上の療育メニューを提案
co-miiでは、アセスメント結果に基づいて最適な療育メニューが自動で提示されます。各メニューには具体的な実施ガイドやスライドが付属しており、現場のスタッフがすぐに活用できるように設計されています。
療育メニューの提案は、適切な順番で課題を組み立てるため、子どもの成長段階に合わせた支援が可能です。支援の質を維持しながら、スタッフの負担を軽減できるのが大きな特徴です。
5) 専門的支援実施加算の取得を支援する専門的支援計画書の作成
co-miiには、専門的支援実施加算の取得に必要な「専門的支援実施計画書」を作成する機能が備わっています。アセスメント結果をもとに、加算要件を満たす計画書を半自動で作成するため、スタッフの負担を大幅に軽減できます。また、計画書の統一性が保たれることで、支援の質が安定し、加算の取得がスムーズに進みます。
6) 保護者へ送る日報機能
支援の透明性を向上させるため、co-miiは保護者向けの日報作成機能を提供しています。日々の支援内容や児童の様子を簡単に記録し、保護者へ送信することができるため、保護者との信頼関係構築にも役立ちます。
7) 加算記録・議事録の作成機能
co-miiでは、専門的支援実施加算や欠席時対応加算の取得に必要な記録を簡単に作成できる機能を搭載しています。さらに、会議などで必要となる議事録の作成もサポートしており、業務効率化に貢献します。
このように、co-miiは業務の効率化だけでなく、支援の質を向上させる役割を果たしています。実際に導入していただいている療育現場の声をお届けいたします。
3.導入施設の声
〇放課後等デイサービス「ひかりのにわ」
「今まで、「個別支援計画書」の作成は児童発達管理責任者の個々の能力差が出ていましたが、一定の水準で作れるようになりました。あいまいな評価に基づかず、根拠あるアセスメントと評価を実施できるようになったので、事業所の水準を維持しやすくなっています。」
〇「めいめい」施設のスタッフの声
「提示課題に必ず目的、ねらいがあるため、実際に支援していても迷うことなく支援ができると感じた。また、アセスメントのアセスメント結果を見ながら、保護者と困りごとの共有ができるため、対応しているスタッフも共感性が高まり、保護者とのコミュニケーションが初回から密にとれるようになりました。」
4.まとめ
co-miiは、療育現場の業務を効率化し、質の高い支援を実現します。データを活用した客観的な支援計画の立案が可能になり、保護者との信頼関係の構築にも貢献します。
今後も、さらなるデータ活用や新機能の追加によって、より効果的な支援を可能にしていく予定です。「支援の質を向上させたい」「業務負担を減らしたい」と考えている事業所にとって、co-miiは強力な味方になると思います。
ぜひ、この機会にco-miiの導入を検討してみてください!
◆中村 一彰
株式会社ヴィリング 代表取締役
STEAM教育スクール「STEMON(ステモン)」、放課後等サービス向け療育教材「すてむぼっくす」、発達障害AIアセスメント「co-mii」、バイリンガル英語家庭教師「お迎えシスター」などを運営。著書『AI時代に輝く子ども』『放課後等デイサービス 5領域に対応療育トレーニング50』
所属学会:日本LD学会、日本授業UD学会
◆小嶺 一寿
AIセラピストco-mii 開発者
株式会社みやとの作業療法士。療育センターや福祉の児童分野で16年以上の経験。著書『放課後等デイサービス 5領域に対応療育トレーニング50』
※AIセラピストco-miiとは
AIセラピストco-miiは、児童発達支援事業所や放課後等デイサービス向けの支援システムです。
5領域に対応した「アセスメント」の実施
「個別支援計画書」の半自動作成
アセスメント結果に基づいた「療育メニューの提案」
「専門的支援計画書」の半自動作成
これにより、支援の質を向上させるとともに、業務の効率化にも貢献します。
詳しくはコチラ
お問い合わせ先 TEL:03-5303-9850 MAIL:sales@viling.co.jp
■□ あとがき ■□--------------------------
今年1月に本メルマガで「療育に特化した施設運営システム-HUG」についてご寄稿いただきました。そのご縁で5月20日に同社のオンラインセミナーに登壇させていただき、300名以上の方にご視聴いただきました。心より御礼申し上げます。
今年1月に本メルマガで「療育に特化した施設運営システム-HUG」についてご寄稿いただきました。そのご縁で5月20日に同社のオンラインセミナーに登壇させていただき、300名以上の方にご視聴いただきました。心より御礼申し上げます。
※療育に特化した施設運営システム-HUG
同セミナー第3回(6月23日)では、小玉武志先生(NPO法人カケルとミチル代表理事 Ph.D. 認定作業療法士)が「生活機能・社会機能の発達とは?」と題して講演されますのでご紹介させていただきます。
※HUGオンラインセミナー
次回メルマガは、6月13日に刊行予定です。