感覚・動作アセスメント 2024年度ナースカフェ

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2024.04.12

感覚・動作アセスメント 2024年度ナースカフェ

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■   連載:2023年度ナースカフェスタート!
■□  連載:感覚・動作アセスメント
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■ 新連載:居場所カフェ×ナースの可能性               
      第3回 2024年度ナースカフェ
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1.病院のお作法
居場所カフェの中にテーマ募集の貼り紙をしてみました。そこに、病院の受診について聞きたいという意見があったため、「病院のお作法」というテーマにしてみました。

私自身病院で働いているため病院に慣れてはいるものの、自分の受診には若干ハードルの高さを感じています。過去にカテーテル治療を受ける際も不安や怖さを感じました。また、医療職でない知人から「何科に行ったらいいか分からない」「これって病院行った方がいいの?」と質問されることもあります。

大人でも悩む病院受診なので、高校生は更に悩む可能性が考えられます。そこで、病院受診前の準備として、保険証やこども医療証が必要であること、また、生活保護であれば役所で「医療券」を受け取ってから行くことも併せて説明しました。未成年だと病院によっては保護者同伴が必要な場合もあるので、事前に問い合わせが必要であることも付け加えました。

情報提供後は、それぞれの病院体験談が飛び交いました。意外と盛り上がったのが病院食でした。ご飯の固さやおかずの味気なさなど批判が多く出た所で、介護用弁当のアルバイトをしている生徒さんが「作るの大変やねんで」と作る側の意見を主張していました。これぞ対話ですね。

病院食を語るということは、参加者の一部は入院を経験し、それをしっかり覚えていたということです。中には身体的虐待を連想させるような内容もありました。しかし、今こうして生きて語っている姿を目の当たりにして、様々な思いがあふれました。ついた傷は消せないけど、その傷を薄くしたり見えないように工夫したり、みんな生きることに一生懸命です。この居場所カフェが、普段肩肘張って生きている中でも力を抜くことが出来る「安心・安全・健全」な場であって欲しいし、その中で自分が幸せになるためのスキルをナースカフェで得ていって欲しいと思っています。

2.第2回「身近なウイルス」
近年、梅毒の感染者数は増加の一途を辿っています。私自身の肌感覚としても、増えていると感じます。コロナの流行により、感染症は身近になってきているものの、性感染症の知識には偏りがあります。いつでも誰でもたった一回でもかかることがあるため、「身近なウイルス」というテーマにし、「感染症」としてどう対応したらいいかを考えてもらうことにしました。

コロナやインフルエンザなどの一般的なウイルスの説明をし、そこから性感染症についての説明をしていきました。性感染症は、性的接触で感染します。予防は説明が必要ですが、罹った後の対応は、他の病気と同じように病院受診し、適切な治療を受けたら治るので、特別視せず他のウイルスと同様に対応したらいいことも付け加えました。

そして、2023年度に参加していないメンバーだったので、同様に「水の実験」と「コンドームの体験」も行いました。この回参加のメンバーはコンドームに興味を持っていたので、「好きに触ってみていいよ」と促すと、引っ張ってみたり、爪を立ててみたり、膨らませてみたり様々な体験をしていました。

「触るのはちょっと・・・」という生徒さんもいるので、その場合は本人の意向を尊重し、この回では横の人がしているのを「見る」という選択をしていました。このような体験や話を苦手とする人や嫌悪感を抱いてしまう人はどうしたって一定数います。もしかしたら何か被害に遭っていて、思い出したくないから避けていることも考えられます。

こうしたワークをする時は、概ね「体験出来て良かった」「最初はどうしようと思ったけどやって良かった」など肯定的な意見が出ますが、二次被害などの可能性も考え、配慮することがとても大切です。もし今後このようなワークをされる予定の方は、必ず逃げ道を作ることに努めていただけたらと思います。

自分には関係ない事だと言っている生徒さんもいたので、もし周りの友達が悩んでいたり、相談してきたら伝えて欲しいとお話ししました。誰しもが、このような性教育に出会える訳ではなく、「運次第」と言われている現状なので、性教育を受けた方が別の方に伝えていくと、徐々に広がっていくのではと思っています。

3.第3回「不機嫌を語ろう」
今年度も人間関係に悩んでいる生徒さんがおられ、相手の不機嫌に左右されているケースが見られました。また、私が「季刊Be!(ビィ)」という雑誌に出会い、ちょうどその雑誌のテーマが「不機嫌の正体をさぐる」で、「不機嫌」についてスタッフ間で語っていたタイミングでもあったのでこのテーマにしました。

たまに聞く「死ね」「うざい」「消えろ」なども、他に表現する言葉を持ってないからつい出てきてしまっていることも考えられます。普段感じている感情がどんなものかを出し合ってもらい、「感情」と向き合う時間を作りました。

季刊Be!2023年秋号 

不機嫌を言葉で表すとどんな言葉が出てくるか、の問いには「不快」「いらいら」「自己中心的」「面倒くさい」「理不尽」「自分勝手」「うざい」「暴言吐く」「ムカムカ」など出てきました。その不機嫌を目の当たりにするとどんな感情になるか、の問いには「面倒くさい」「落ち込む」「嫌なこともあると割りきる」「放っておく」「何とも思わない」「不愉快」「怖くなる」「話せなくなる」「逆に明るい話題を出す」「機嫌をとる」「相手に振り回されておく」「距離をとる」「大丈夫か聞く」「意見が合わないと思う」「うざい」「泣く」「無(思考停止)」、もしくは暴言に対し暴言で応戦、相手によって感情も変わるなどの意見も見られました。

参加者は全員、不機嫌をぶつけられたことも不機嫌に遭遇したこともありましたが、その受け止め方、対応方法は各自異なっていました。ポジティブに捉えられている人は不機嫌に遭遇しても自分の感情と相手の感情をきちんと線引きをし、相手に振り回されていませんでした。むしろ、逆に言い返す攻撃性を備えている一面も見られました。
しかし、過半数は相手の不機嫌に振り回され、相手の言うがままであったり、どうにか不機嫌な状況から回避しよう(自分を守ろう)とあの手この手で応戦したり、もしくは思考停止することでやり過ごすこともありました。

この不機嫌に遭遇した時の自分と相手の関係性は果たして健全な関係と言えるのでしょうか?不機嫌の背景には何があるのでしょうか?

不機嫌になる理由について話し合ってみたところ「プライドを傷つけられた時」「不安になった時」「価値観が違う時」「年代の違い」「ルールを破った時」「他人は他人だから気にならない」「愚痴の時」「恥ずかしい思いをした時」など様々な意見が出ました。

論点が同じでも、相手が友達、先生、保護者など立場が違うとお互いの不機嫌モードは異なるし対応の仕方も異なるという意見も聞かれました。

感情の共通点として、何か良い悪い関係なくイベントがあるから感情が生まれます。特に負の感情は影響を受けやすいため、何のせいで怒っているのか、何のせいで不機嫌になっているのかなど原因となることを分析することがとても大事になってきます。つまり、不機嫌の前には必ず何かの感情があり、それが元で不機嫌に繋がっているのです。

本来、感情とは自分のものであって他人のものではないため、その境界線を明確にすることで相手の感情に引きずり込まれることなく冷静に対応できるようになります。よって、その感情の原因を知ることで、感情の境界線を引くことに繋がると思われます。

最後に不機嫌な人に出会ったらどう対応していったらいいかの意見をそれぞれに出してもらいました。ここで、普段から不機嫌な人に接している不満も表出されました。
「不機嫌な相手にはなかなか思い通りにいかない」「伝えたいことが伝わらない」「話題ドロボー(自分が話題を提供し、話そうとしても横からその話題にかぶせて自分の話をし出す)」「話が噛み合わない」「(保護者から)食事を提供してもらえない」など、うまくいかないことが表出されました。そんな中でも、「関係性を築きながらその中から対応を知っていく」「とにかく相手を観察する」などの建設的な意見も聞かれました。

全体的に、相手の感情ときっちり境界線を引くことが出来ている生徒さんは、相手の不機嫌に左右されることなく接することが出来ていたものの、大半はその境界線を引くのが難しく、相手の不機嫌に引っ張られ自分の感情が迷子になっている状態でした。

しかし、相手の不機嫌に引っ張られている生徒さん同士が過去の体験を語り合うことで、「分かるー!」」と共感出来ている場は「自分だけじゃなかったんだ」と知る機会にもなりました。

4.ナースカフェでの特別感
ナースカフェをする時は、普段の居場所カフェで出すお菓子より少しいいお菓子※を用意して、参加した生徒さんたちを大切に思っているメッセージにしました。少人数なので、ドリンクもゆっくり飲めるので、メニューも増やしたりしました。体験ワークをした時に、希望があればサンプルの持ち帰りやパンフレットを配布したりもしてきました。
そして、希望者を募ってクローズ状態で限られた参加者のみで行うことで、普段のカフェと違ってゆっくり対話出来る空間作りにも配慮しました。

※特別感を演出するお菓子
 
※ナースカフェの様子

ファシリテーターとしては、出た意見は一旦受け止め、否定はしません。どうかな?と思えるような意見が出た場合は、みんなで意見を出し合ったりするのですが、「安心・安全・健全」「子どもの権利擁護」を普段のカフェから心がけているからか、口々に意見が出てきます。中々意見が言えていない生徒さんも、話を振るときちんと話してくれます。

不機嫌の時に出てきた意見で「話題ドロボー」がありました。本当は自分のことを話したくても、話し上手な人がいるとその人が先に先に話してしまうため、本当は話したいことがあっても聞き役に徹してしまう生徒さんが一定数います。
話し上手な生徒さんがいるとついついその生徒さんを中心に話が進みがちですが、そこはファシリテーターの腕の見せ所なので、今後も気を付けていくところだと思います。

2024年は、このようなテーマで行いました。2023年とかぶるところもありましたが、参加する生徒さんが異なりますし、学校では中々踏み込んで伝える難しさもあるためカフェで継続して行う意味はあると考えます。

次回は最終回、「ナースカフェの可能性」について語ろうと思います。もう少しのお付き合いよろしくお願い致します。


◆新山愛子(にいやまあいこ)
看護師/思春期保健相談士/性教育認定講師
officeドーナツトーク非常勤スタッフ


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■ 連載:サービスとアプリ-目標と由来
      第8回 感覚・動作アセスメント
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1.一人ひとり異なる感じ方
感覚過敏という言葉はほとんどの人が知っていると思います。筆者自身、掃除機の音が聞こえるといらいらして集中できません。また、新しい衣類を着て、襟周りのタグが気になって切り取るようにしています。蛍光灯の点滅が気になる、嫌い、という特徴は一部では有名で、「音符と昆布」などいくつかの映画で発達障害の人のエピソードとして描かれています。

映画「音符と昆布」

ただし、こういった感覚の違和感は人によって大きく異なるようで、他の人にそれを訴えても同意されることは少ないようです。そんな経験から、一人ひとり異なる感覚の困りを調べる方法があったらよいのにと長年思っていました。

2.不器用さ
これも筆者の経験で一般的ではないかもしれません。小学校の高学年になっても、鉄棒の「逆上がり」ができませんでした。教師や友達の説明を聞いていろいろな方法を試したのですがどうしてもできません。

運動ができない、というのはとても恥ずかしく、その当時は心の奥で大きなしこりだったと思います。

ところが、中学校になって何かのきっかけで校庭にあった鉄棒でやってみたら、簡単にできてしまいました。特に筋力を鍛えることもしていなかったので、それが原因ではなかったと思います。なお、その後、体育で鉄棒の上級技「蹴上がり」をすることになった時は、すぐにできるようになりました。

3.岩永先生との出会い
発達の困りについて問題意識をもったいろいろな立場の人とヴァラエティ・カフェ※という活動を2011年から始めました。その活動で多くのことを学び、また、多くの方々と知り合うことができました。本メルマガの記事やレデックス製品の多くはその交流の中から生まれたと言えると思います。そして、長崎大学大学院医歯薬学総合研究科教授の岩永竜一郎(いわながりょういちろう)先生もその一人です。

岩永先生は作業療法士で、多数の発達障害児に対して療育を行う傍ら、感覚の困りと動作の困りを調べる方法を作り出そうと取り組んでおられました。その具現化を行えるだけの小学生に関するデータを集め、それに基づいたアセスメント・ツールを開発してほしいと要請を受けました。そして、2019年に完成したのがWebサービス「感覚・動作アセスメント」です。

ヴァラエティ・カフェ関連ページ 
 
4.同一の子どもに関する複数のコメントの分析に基づくアセスメント
感覚・動作アセスメントの開発の仕組みとそれがどのように使われるかは、次の図を参照してください。

※開発の仕組みとその機能
元になるデータは、1000名以上の小学生について、小学校の教師に感覚と動作に関連すると思われる質問に回答してもらったものになります。

質問は、以下のようなものです。

・授業中、1度でも席を立ったり、落ち着きなく頭や体を揺らしたりする   
・授業中、椅子をうしろに傾けて座ったり、揺らしたりする   
・鉛筆や、爪などをかむ癖がある   

これらに対して教師が、0:まったくない、から、4:いつもある、の5段階で回答したものをデータとして「因子分析」という手法で演算を行い、そこから、感覚の困りと動作の困りに関連した因子を見つけ出します。

そして、アセスメントを実施したい対象の子どもについて、支援者や保護者が前述の質問に回答をし、その傾向がそれぞれの因子について、どの程度該当しているかどうかをパーセンタイルという数値で示すのが、感覚・動作アセスメントです。

具体的には、以下のようなチャートが示されます。

※感覚の結果チャートの例
 
チャートでは、困りをもつ可能性を1パーセンタイルから25パーセンタイル以上のスコアで示します。スコアが1パーセンタイルとは、100人の子どもをその困りをもつ可能性の高い順から並べていくと最も困りがある1番目の人という意味で、とてもその困りを持っている可能性が高いことを示します。逆にスコアが25パーセンタイル以上とは、その困りをもっていいる可能性が下から25%以上ということで、困りを持っていない可能性はそれほど高くないことを示します。

チャートは、外側に1パーセンタイル、中心を30パーセンタイルにして逆対数でプロットしています。外側に近いところにプロットされていればいるほど、その困りをもつ可能性が高いことを示します。

5.感覚・動作アセスメントの使い方
具体的な使い方は、以下の流れになります。なお、どなたでも1回、感覚または動作のいずれかを試すことができる無料チケットが自動で発行されます。

(1) サービスの利用者(支援者や保護者)は、対象の子どもについて、Webブラウザに表示される質問(動作38、感覚45)に回答します。
 
(2) 感覚または動作の結果の表示を選択すると、入力した質問への回答が分析され、感覚は「感覚系ごとのスコア」と「感覚刺激への反応パターンごとのスコア」、動作は「動作要素ごとのスコア」と「因子ごとのスコア」の、各2種類のチャートが示されます。また、それぞれの困りに対処する方法が、学校でできる支援、家庭でできる支援、学校と家庭で共通した支援が色分けされた文で記載されます。さらに、支援に役立つツール等が写真で提示されます。

(3) 前項の出力結果は、支援者には支援方法の改善に、保護者には家庭での支援の改善に役立ててもらいます。また、子ども本人に提示することで、自分自身に、感覚あるいは動作に困りに関連する事項があることを認識してもらうことで、自己像をより深く理解してもらい、日常生活や社会生活への対処に工夫ができるようにしてもらいます。

詳しくは、岩永先生ご自身に本メルマガに寄稿していただいていますので、バックナンバーをぜひご覧ください。

岩永先生の連載 
 
また、合同出版からは岩永先生の詳しい解説に加えて、感覚・動作アセスメントの無料追加チケットが入手できる書籍の増補版が本年3月に出たばかりです。

増補版 特別支援教育に使える 【感覚+動作アセスメント】マニュアル 

6.お伝えしたいこと
感覚については、感覚過敏以外に3つの因子があり、子どもたちの困りの理解に役立てていただきたいと思います。

(1) 認知を伴う過反応:白いものが食べられない、など、本来の感覚とは別の感覚で行動が制限される困りがある。
(2) 感覚探求:前庭覚の刺激を求めるあまりに自傷行為をする、など、刺激を求める行動をしてしまう困りがある。
(3) 身体感覚への低反応:聴力に問題がないにかかわらず、名前を呼ばれても気が付かない、など、一般的な人がとる行動がとれない困りがある。

動作については、不器用が発達(脳の形成過程)の進み方が人によって異なることから発生している可能性があることです。不器用さの項で述べた、逆上がりが中学生になって突然できるようになったことは、身体の使い方を脳が習得に至ったと考えることができます。それまでは見よう見まねだけでやろうとしていました。中学生になってからは、まず、身体を鉄棒の近くに寄せる、鉄棒を手元に近づけるように力を入れて腰に鉄棒が近づくまで身体を押し上げる、その後に身体を鉄棒の方に倒すことで回転する、という身体の動かし方(の手順)がイメージできるようになっていました。

運動が同世代の子よりできないことは、コンプレックスにつながります。できないのではなく、その段階になるのが、他の子よりも少し遅い、ということが分かれば救われる子は多いと思います。

7.その後の展開
感覚・動作アセスメントは、小学生のデータに基づいた因子でアセスメントしています。昨年、就学前の子どものデータを元にした、感覚・動作アセスメントKIDSという新サービスを発表しましたので、合わせてご活用ください。

感覚・動作アセスメントKIDS 

◆五藤博義
レデックス サービスとアプリ一覧 

 
■□あとがき ■□--------------------------
次回は、大型連休前日の4月26日(金)を予定しています。

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