梅切らぬバカ

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2022.04.01

梅切らぬバカ

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■   コラム:映画:梅切らぬバカ
■□  連載 〔疑う〕の反対語って?
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 ■ コラム:本や映画の当事者たち
              第6回 映画:梅切らぬバカ
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今回6回目となる不定期での連載です。

タイトルからもわかるように、いわゆる障害や病気などの当事者といわれる人たちが描かれている本や映画、DVDなどを紹介します。

今回の映画は、老いた母・珠子(加賀まりこ)と自閉症の息子・忠(ちゅう)さん(塚地武雅)の絆と愛を描いたヒューマンドラマ『梅切らぬバカ』をご紹介します。
DVDとブルーレイは、5月11日発売予定。ぜひ観てくださいね。

●人はみな誰かを幸せにしている
梅の枝が柵を越えて道に伸びている古びた一軒家の庭で、息子、忠さんの散髪をする母親。そんな昼下がり、お隣に小学生の男の子と両親の一家が越してきます。日々の暮らしが始まり、忠さんの自閉症の特徴に驚き、警戒心を強める隣家の夫婦。でも、少年は子どもらしい好奇心と純粋さで忠さんと心を通わせていきます。
ある夜の少年の行動が街をあげての騒動を引き起こし、忠さんが暮らし始めたグループホームが存続の危機に陥ることに……。

少年と忠さんの友情や母子の絆、隣人夫婦の心の変遷が淡々と描かれ、まるでドキュメンタリーのようなリアルな映画となっています。
障害児施設に反対する住民の声が激しさを増していく中、隣人一家と忠さん親子は違いを越え、仲良くなっていきます。

映画を観ながら、芝居巧者で固められたキャストの演技にぐんぐん映画の世界に引き込まれ、街の人たちの理不尽な言動に怒りがわいてきます。
冷静に考えると自閉症の人のことを知らない住民側の気持ちにもわからないものではないなと思えるけれど、映画を観ているときは、忠さんの純粋さに共感し、騒ぎたてる住民側には、腹が立つのです。

一番共感できるのが、まだ純粋な気持ちのある少年です。忠さんに興味を抱き、その純粋さに引っ越ししたてで友達のいない少年の唯一の友達となっていくのです。少年の優しさゆえの行動が大騒ぎとなり、日々小さな胸を痛ませる姿がまるで自分のことのように、悲しくなってきます。

忠さん役の塚地さんが自閉症の役と向き合い、心の中で深い対話をしていました。映画に関わるすべての人が、立場を越えて、一所懸命考えて映画をつくり上げてくれましたと、監督も言っています。

決してハッピーエンドではないですが、観客の思いでさまざまなラストが想像できます。私も、自分なりの物語の続きを考えていました。
映画を観て、「皆が皆、梅の枝を切る必要はない、梅切らぬバカがいたって世の中いいじゃないか」と思えてきました。

※作品ページより引用:ことわざ「桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿」とは?
樹木の剪定には、それぞれの木の特性に従って対処する必要があるという戒め。転じて、人との関わりにおいても、相手の性格や特徴を理解しようと向き合うことが大事であることを指す。

芝居巧者のキャストの中でも秀逸なのが、母役の加賀まりこ※です。脚本ができるまで、幾度となくアドバイスをし、珠子として違和感のない物語を監督といっしょに作ったと言います。

※加賀まりこさんの、パートナーの息子さんが自閉症というのもこの映画の成功のひとつの要因かと思わされました。

「生まれてきてくれてありがとう」そんな母の息子への思いが全編ちりばめられ、「人は誰かのために生きていて、そして誰かを幸せにしている」という当たり前のことに気づかせてくれる映画になっています。

キャスト
加賀まりこ 塚地武雅
渡辺いっけい 森口瑤子 斎藤汰鷹ほか
監督・脚本:和島香太郎
製作代表:松谷孝征
(C)2021「梅切らぬバカ」フィルムプロジェクト

◆はらさちこ(ライター)
編集制作会社にて、書籍や雑誌の制作に携わり、以降フリーランスの編集・ライターとして活動。ライフワークとして、自分の子育ての経験や取材で得た知識を、成人当事者や親御さんのために使いたいという気持ちから、障がい全般、教育福祉分野にかかわる執筆や編集を行う。障がいにかかわる本の書評や映画評なども書いている。
 

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 ■ コラム:本や映画の当事者たち連載:暮らしの中の情報教育【いつでもどこでも情報活用】
              第4回:〔疑う〕の反対語って?
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〔疑う〕の反対語は何でしょう? 
〔信じる〕〔信頼する〕〔信用する〕という言葉が浮かびます。
〔疑:ギ〕の反対は〔信:シン〕ではないかと思えてきます。

そういえばそうよね~! 信じられなくなると何でもかんでも疑ってしまうことを、〔ギシンアンキ〕って言うじゃない!
いやいや、それは字が違う。疑心暗鬼。疑いの心に捕らわれると、暗闇に鬼がいる とまで思ってしまう事を指す言葉。

おもしろいことに、〔シンギ〕と入れて漢字変換すると、
信義、審議、真偽、真義、心技… といろいろ出てきますが、
〔信疑〕という組み合わせは出てきません。
そういう言葉はないのかな? と思って〔信疑 意味〕と検索すると、
〔信じることと疑うこと〕だそうです… あははは(((o(*゜▽゜*)o)))  これって漢字の意味そのままですよね…

ちなみに〔信疑 例文〕と検索しても、例文は見つかりません。日常的に使う言葉ではないようです。

話が変わりますが、私が子どもだったころは、「知らない人に道を聞かれたら、分かりやすく教えてあげましょう(言葉で伝わりにくい場合は連れて行ってあげましょう)」と教わりました。
私の子育て時代(情報社会が始まりだしたころ)、児童誘拐の事件が多発しました。幼稚園でも小学校でも、「知らない人に道を聞かれたら、答えずにすぐ離れなさいね」と教えるようになりました。
この社会の変遷に対し、
「人をむやみに信じるな と教えなくてはいけない、嫌な世の中になった」的な風潮がありました。人を信じることは良いことで、疑うのは良くない(哀しい)こと… という図式が、無意識に日本人の価値観に刷り込まれているように思います。

信じる ということは教育では大切です。子どもの可能性、こどもの善意を信じて、教育は行われます。しかし教育において、疑うこともとても重要です。
教育者は常に〔これで良いのか? 本当に分かっているのか? もっと良い方法はないのか?〕という疑問を持っています。子どもが〔分かった!〕と言ったり〔ウンウン〕と頷いても、そのまま信じることはしません。現状(子どもの様子、反応、以前との変化など)を観察し、違う角度で問いかけ、どの程度理解しているかを確認します。信じているから疑い、もっと深い信頼に繋げていこうとするのです。
そう考えていくと、〔信〕と〔疑〕は相反する言葉(反対語)ではなく、表裏一体の関係にあるように思えてきます。

なるほどね~~~
シンギイッタイ っていうものね~~~
いやいや、それは字が違う。心技一体。〔心に迷いや隙があると、技に現れる〕という意味。

漢字って、面白いですね。日本語を学ぶ外国の人にとっては、とても難しいようです。ところが日本で生まれ育った我々は、さほど難しいとは思わず、当たり前のように接しています。〔あたりまえのように〕が、怖いわね。分かったつもりで分かっていないこと・間違った使い方をしていることもたくさんあります。
〔あたりまえ〕と思うと、信じて疑わないからです。例えば…

〔味覚の秋〕という言葉があります。料理の〔味見〕は、少量を口に含んで行います。食べ物を口に入れて味をかみしめます。日本語の世界全体が、美味しいとかまずいとかの判断を、舌で行っていると思わせています。ホントにそうかしら…?? 疑ってみると、違う世界が開けます。

なぜ、風邪をひくと食事がおいしくなくなるの? 花粉症の私は春先(花粉症が重症になると)、料理の味をあまり感じなくなります。あるとき試しに、鼻をつまんで食事をしてみました。
アハハハ(((o(*゜▽゜*)o)))  味がしな~~い!!

ゼミ生にその話をしたら、実験が始まりました。目隠しをして4種類(ジュースA、ジュースB、水、茶)の液体を飲む。鼻をつまんで4種類の液体を飲む(中身は見えないようにしておく)。そこで分かったこと。目隠しをしても何を飲んだかは分かるが、鼻をつまむと何を飲んだか分からない。

結論
〔味覚の秋〕は誤表現。正しくは〔嗅覚の秋〕というべきである!!

「でも先生、小学校の頃理科で、舌で味を感じているって習いました!!」 と言い出す学生さんが出てきました。検索・ケンサク…!! みんなで検索すれば情報はタップリ集まります。
小学校理科 に限らず、至る所に〔舌で味を感じる〕という前提の情報が出てきました。でも待って! よくよく読むと、舌で感じるのは、甘味、塩味、酸味、苦味 の4つと書いてあります。料理がおいしいというのは、どういうことでしょう。この4つの味を組み合わせてバランスを変えたら、美味しいとかまずいとかになるのでしょうか…??
夕方、住宅街を歩くと、おいしそうなにおいがしてきます。匂いで味が思い起こされます。その時の味とは、甘・塩・酸・苦ではなく、〔おいしさ〕です。そしてこれが、料理を楽しむときに大切なものです。

動物がものを食べます。酸味があったら腐敗、苦味があったら毒 と判断できます。甘味はエネルギー源、塩味はミネラル… と考えると、舌で分かることは口にしたものが生死にどうかかわるかを判断する基準ですが、美味しいかどうかは舌では分からないのではないかしら… と思えてきます。美味しいかどうかは、舌ではなく匂いで判断している!!!

ゼミ生と実験して遊んだのは10年以上も前の話です。今はネット情報はどうなっているのかと調べてみました。
味覚に〔うま味〕が追加されたようです。甘味、塩味、酸味、苦味 に うま味を加えた5種類 と書かれているものがほとんどでした。また舌の先が甘味、舌の横が塩味 などと書かれていた味覚地図は、〔舌のすべての場所で感じることが分かってきました〕という記述になっていました。ようやくいろいろ分かってきた段階のようで、情報発信する側もシッカリ理解しないまま、明らかに憶測や流用入り混じって発信されているページも散見されました。舌でうま味を感じると書いてあるものもあれば、うま味は匂いや経験から生じると書いてあるものまで、まだまだ情報は混乱… 分かっていないことが多いのね。

月に人が降り立つほど科学は進歩してきているのに、味覚 という自分たちの体のメカニズムがまだ解明されていない という事が分かりました!! 面白いわね~~
まだ未解明 という理由の一つは〔生き死にに関係しないから〕があると思うわ~~~

〔生き死にに関係しないことは、興味ないなぁ〕といった友人(ドクター)を思い出します。
子育てをしていた頃、私の生理の周期が狂いました。あれ? と思ったら、長女が初潮を迎えていました。それがうつり、私の周期が狂ったのかしら…? と疑いました。数年後、また周期が狂いました。次女が初潮を迎えていました。それがうつって私の周期が狂ったのに違いない! と思いました。
友人のドクターとお茶しながらその話をしたら「生き死にに関係しないことは興味ないから分からないけど、聞いたことない」と言われたのです。ドクターに限らず、その話をした友人は皆「ありえな~~い!」と言いました。

私の周期も順調にもどり、そのことを忘れていました。ある時、調べたいことがあって「あしながおじさん」を斜め読みしていた時「またルームメイトの生理がうつって…」という記述が目に留まりました。アメリカ文化では、生理はうつるのが前提だと分かりました。やはり生理はうつるのね~~ と思って、ゼミ生にその話をしました。いくつかの卒論が生まれました。
調査の結果、生理がうつる経験をした人は、相当な数になりました。特に、合宿時や団体競技の部員に多く見られました(ああ、私、某体育大学の教員だったもので…)。猫が寄ってくるという話も出てきました。

その原因を調べたゼミ生は、イタリアの論文にたどり着きました(生き死ににかかわらないテーマでも、欧米ではよく研究対象にします)。生理の周期に沿って出されるフェロモンに、周期を早めたり遅くしたりする働きがあること。「鋤鼻(ジョビ)器官」というフェロモン受容体が関係していること(猫の行動はこれで説明されていました)。人間の鋤鼻器官は退化していることになっているそうで、なぜ他の人のフェロモンによって周期が変化するのかは未解明なこと。などなど…

アレッ??? と思ったことをそのままにせず追いかけていくところに、発見があり進歩に繋がります。疑いを持つことは、とても大切なことなのです。
疑いがあったら信じられません。信じるために、疑ったことをとことん追求するのです。〔信じる〕と〔疑う〕は、反対語ではなく、表裏一体の関係にある言葉だと思います。

今いる環境、文化、当たり前と思われていること などを鵜呑みにしないで、疑問を持ち、追求すること。それが大切だ と言われても、これまでの社会ではなかなかできませんでした。
ついつい〔あたりまえ〕に従い、報道や環境を〔鵜のみ〕にしてきました。
しかし情報社会では、手を伸ばせば情報があります。
どうやって正しい情報を探し出すか、何を基にどうやって判断していくか ⇒ 情報をどう活用していくか という力が、一人一人に望まれ問われているのですね。

どんどん、疑いを持ちましょう。疑念が信念に変わるまで、追及していきましょう。
疑うことの反対語は、〔鵜のみ〕です。

◆小田 和美
情報ネットワーク教育活用研究協議会(JNK4)理事、聖心女子大学講師、大妻女子大学講師
教育情報化コーディネータ検定、情報支援員認定、情報モラル指導モデルカリキュラムや情報活用能力評価カリキュラムの作成、情報教育ポータルサイト構築など、情報教育の研究・推進活動を行っている。


■□ あとがき ■□--------------------------
次号は、4月15日(金)の刊行予定です。

久しぶりにシリーズ:アメリカ便り の連載が次号からスタートします。新型コロナウイルスがキンダ―ガーデンや子どもたちに与えた影響はどんなものだったのでしょうか?

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