デイジー子どもゆめ文庫

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2021.07.09

デイジー子どもゆめ文庫

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■   まえがき
■□  新連載:デイジー子どもゆめ文庫
■□■ 連載:特性の強みを活かした仕事の仕方とは
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■□ まえがき ■□--------------------------
今回から始まるシリーズ:子どもゆめ基金のデジタル教材は、マルチメディアデイジー図書の紹介です。

デイジー:DAISY という言葉は、Digital Accessible Information SYstemの略で、日本では「アクセシブルな情報システム」※と訳されています。

※障害保健福祉研究情報システム ENJOY DAISY

以前は、視覚に困りを持つ人が図書を聞いて読むために、ボランティアの人がいろいろな図書を読み上げ、それをカセットテープに録音して流通させるためのデイジーという規格がありました。それを発展させ、音声以外の情報もICTで活用できるようにした世界標準の規格がマルチメディアデイジーです。

著作物は著作権法で守られており、原作者の許諾がなければ、改変する(他のメディアにすることも含む)ことができません。一方、障がいのある人には、著作物の内容を知る権利があります。その調整を図り、日本ではまず教科書について著作者の権利を制限することで、マルチメディアデイジー教科書ができました。

障がいのある人の、読める対象を広げようというのが、今回の「デイジー子どもゆめ文庫」です。



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 ■ シリーズ:子どもゆめ基金のデジタル教材「デイジー子どもゆめ文庫」
                           第1回 デイジー子どもゆめ文庫の開発の経緯等
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1.開発の背景
「デイジー子どもゆめ文庫」の開発に至った背景をお話しいたします。

(公財)日本障害者リハビリテーション協会では、教科用特定図書普及促進法が制定された2008年度より通常の教科書に読みの困難を持つ発達障害児を主な対象として、本文テキストと読み上げた音声が同期して再生可能な「マルチメディアデイジー教科書」を提供しています。

※マルチメディアデイジー教科書例 国語「ごんぎつね」


読みの負担が減ることで、理解が進む等の教育面での効果が得られることから、ここ数年利用する児童生徒が増え、2020年度末には1万4千名を越えており、増加傾向が顕著になっています。

しかし、教科書で学ぶ以外に、言葉を学び、感性を磨き、表現力を高め、創造力を豊かなものにしていく読書活動が子どもにとって不可欠ですが、そのための図書は通常の紙の本のままです。読みに困難を持つ児童生徒が利用できる形式=「マルチメディアデイジー」による提供が待たれていました。

そこで、これらの児童生徒を対象に、国語の教科書で推薦されている図書を中心に「マルチメディアデイジー化」を行うこととしました。更に、児童生徒自身でも使用しやすい配信システムを開発構築し、学習支援に役立てることも視野に入れました。

2.読みの困難さとは
 まず、読みの困難さの内容について説明させていただきます。これに関しては、頭脳の中の文字認識・音声認識等の課題ですから、実際の困難さは当事者でない限り分かりにくいところがあります。

※読みの困難な子に見えていると思われる文章イメージ

この図にあるように文字がにじむ、ゆらぐ、鏡文字になったり文字がかすんだりといった見え方をするそうです。その結果、逐次読み(すらすら読めない)、勝手に読んでしまう、単語の切れ目がわかりにくい、漢字が読みにくいなどが読みの困難となって現れます。

さらに見え方の問題だけでなく、「記号」である文字を「音」として認識することが困難であったり、単語が意味するものを想起する速度が遅かったりすることで、読みの困難が起こると言われています。

3.マルチメディアデイジーで期待される効果=読みの負担低減

※デイジーで期待される効果

この図は、マルチメディアデイジーで期待される効果を説明したものです。まず、テキストがハイライトして、その部分を音声で喋ってくれるので、どこを読んでいるかがわかります。見て情報をとることが難しい場合は、音で情報をとれます。

紙の教科書だと読みにくいので、読むこと自体に一生懸命でなかなか中身が入ってきません。これに対してマルチメディアデイジーを使うと、読みに関する負担が減って本来自分が持っている能力を内容理解することに使えます。このように本来の学習の目的に自分の能力を集中させることができるというのが、マルチメディアデイジーの効果です。

次回は、「デイジー子どもゆめ文庫」の利用方法・申込み等についてご紹介します。

※デイジー子どもゆめ文庫表紙
 
◆村上 博行 (Murakami Hiroyuki)
公益財団法人 日本障害者リハビリテーション協会 情報センター 課長


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 ■ 連載:キャリアアップを目指す発達障害のある彼ら、彼女たちから教えてもらったこと
                     第3回 特性の強みを活かした仕事の仕方とは
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前号では、安心して挑戦できる場づくりの必要性と、そこでの摩擦は自己肯定感を育む機会であることをお伝えしました。今号では、一歩踏み出して、「キャリアを積みたい」、「役割を果たしたい」、「仕事で評価されたい」という彼ら、彼女たちの想いが強まる中で、自身の特性をどのように働き方の中で活かしていけばいいのかを考えたいと思います。

発達障害と診断された人の特性にあった業種や職種というのが、書籍やネットで紹介されています。例えば、(1)業務の目標や見通しを立てたり、他人とのコミュニケーションが苦手だったりする人は、配送や清掃、在庫管理といった職種や、データ入力、ファイリング、封入・封緘、メール仕分け、シュレッダー等の単純作業が向いている。(2)認知の特性で言えば、視覚型の思考が得意(視覚優位)の人は、グラフィック・アーティスト、ウェブデザイナー 、写真家、イラストレーターが向いている。(3)コミュニケーション力やマルチタスクを求められる、営業、接客、オペレーター、調理などの職種は不向きだ、というものです。また、好きなことを仕事にすればいいというコメントも見かけます。

では、特性にあった仕事に就けばキャリアが積めるのでしょうか。
実際には、与えられた業務の量をこなす、質の高い仕事に取り組む、など、それなりの成果を出す仕事の仕方を見つけていく必要があります。

■特性の弱みを強みに読み替える
発達障害と診断された人にとって特性は自身の弱みと考えている人がほとんどではないでしょうか。
人それぞれが持っている特性が周囲の環境に対してマイナスにとらえているものが「特性の弱み」であり、さらに生活上の困り(障害)のレベルになっているものが「障害特性」ではないでしょうか。

特性が弱みとして顕在化する要因は環境にありますから、環境調整することが弱みに対する対処のひとつとなります。今回の連載の第1回「障害特性に対する環境調整術」の中で、仕事で支障を来す特性については、場面に応じた環境調整術を見つけることをお伝えしました。

その環境調整として、弱みとなる特性が強みとして発揮できる方法を言語化する、つまり弱みを強みに読み替えることが重要ではないかと考えています。

例えば、発達障害の障害特性については、「こだわりの強さ」は「きちんと守るまじめさや、ぶれない強さ」に、「共感性や想像力が乏しい」は「独創的で人と違った発想ができる」などに、弱みを強みに読み替えることができます。プロジェクトでは、自分自身が仕事を行う上でのS:Strength(強み)、W:Weakness(弱み)、O:Opportunity(機会)、T:Threat(脅威)をそれぞれ言語化するワークの中で、弱みを強みに読み替えることを行っています。具体的な事例では、「同時並行処理が苦手」は「継次処理は得意」、「ゼロベースで物事を考えるのが苦手」は「テンプレートに基づく情報処理は得意」などがあります

※事例「弱みを強みに読み替える」

また、「机の上を片づけられない」「職場の仲間と雑談ができない」というよくある特性の弱みについては、「資料が視界にあると効率よく仕事ができるので、片づけない」「仕事に集中することで多くの仕事をこなすことができるので、雑談しない」と強みに読み替えればいいのです。

このように、特性の弱みを強みに読み替えた仕事の仕方を、実際の働く上での様々な場面で活かしていくことこそが重要なのです。

実際に仕事に活かしている例を紹介します。Aさんは、こだわりが強く、気分屋で興味があるものに関心をもち、過集中の傾向があるため、順序だてて仕事をしたり、チームで課題を解決するというのがとても苦手だそうです。この特性を強みに読み替えた仕事の仕方として、日々のやることリスト(to doリスト)を作るのではなく、(1)1か月や1週間のスパンごとに課題リストを付箋にして見えるところに貼っておいて、やる気スイッチが入ったときに関心がある課題から過集中で仕事をこなす。(2)仕事の終わりはあらかじめ時間を決めて区切るのではなく、「気持ちの電池が切れたら止める」ということをしているとのことです。この仕事の仕方は、組織で働くのにはなじめないのかもしれませんが、試行錯誤の結果たどりついた方法で以前と比べてパフォーマンスは3倍になったと話します。

■特性を活かして働きやすい職場をつくる
働きやすい環境は、ハード面を整えるだけでは実現するものではなく、周囲の人たちの理解が必要であることは言うまでもありません。では、どのようにして働きやすい環境をつくればいいのでしょうか。

自助努力としてできることは別にして、職場の人たちに対処してもらうためには、法的には合理的配慮を求めることができますが、忙しい職場では、細かな配慮を求めても現実的には難しいケースが少なくありませんし、発達障害であることを開示せずに働いている方にとっては、合理的配慮を求めること自体を躊躇することになります。

このことの難しさは、プロジェクトに参加しているメンバーからの相談で、特に上司や同僚の配慮のなさに対するものが多くを占めることからもわかります。このような話を聞く中で、最終的には仕事ぶりを認めてもらって配慮せざるを得ない状況を作るしかないように感じています。そのためにも特性を活かすのも方法の一つではないかと思います。

実際に、結果として配慮されている事例を紹介します。
職場で発達障害であることを開示していないBさんは、コミュニケーションが苦手で職場での会話に入っていけず、笑顔が少ないとよく言われているそうです。物忘れも多く、あちらこちらに付箋を貼ったり、腕にメモ代わりのリストバンドをしています。毎日が勝負と日々の悪戦苦闘ぶりを話してくれます。そんなBさんも話し言葉が出てこないので雑談が苦手だそうですが、書き言葉は出てくるので文章にすることは得意のようです。この特性の強みを活かして、いろいろな場面を想定して誰に何を、どのように、と、5W1Hで事前に人に連絡することを文章化してメモをすることで、職場でのコミュニケーションや仕事の段取りをこなしています。これらの仕事に対する一生懸命な行動は、結果として職場で様々な配慮につながっているそうです。発達障害の特性である愚直さ、生真面目さは、仕事上の強みになると改めて感じます。

特性の強みを活かした仕事の仕方を見つけることが、成果を出すだけでなく働きやすい環境づくりにもつながるのではと思います。

最終回となる次号では、「教えるから主体的な学びを創るに」について紹介する予定です。

本プロジェクトでは、新たなメンバー(4期生)を募集していますので、興味・関心のある方はお問い合わせください。

※プロジェクト概要 
 


■□ あとがき ■□--------------------------
次号メルマガは、3週間先の7月30日(金)とさせていただきます。

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