北海道のある中学校で、タブレット端末の使用許可を得るまで

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2020.08.07

北海道のある中学校で、タブレット端末の使用許可を得るまで

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■   まえがき
■□  新連載:北海道のある中学校で、タブレット端末の使用許可を得るまで
■□■ 連載:8050(ハチマルゴーマル)問題と成年後見
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■□ まえがき ■□--------------------------
以前、平林ルミさんに「合理的配慮」についてご寄稿いただきました。
ものの見えや手書きに困りをもつ人にとって、タブレット端末は画期的な存在です。ですが、その人だけに使用を認めることは不公平と判断される場合がまだまだ多いようです。
そんなご苦労をされた体験談の投稿がありましたので、掲載させていただきます。


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 ■ 新連載:北海道のある中学校で、タブレット端末の使用許可を得るまで
         第1回 小学校、中学校との交渉
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〇自己紹介と小学校生活
私(母親)は、中学2年の特別支援学級(弱視学級)に在籍する息子と北海道十勝地方のS町に住んでいる。書字障害を持った息子の公立小学校時代と、公立中学校に入学する際に、個人の端末を学校に持参することを認めてもらい、学習環境を整えるまでのお話を紹介させていただきたい。

母親は、「診断名がついたなら、それをプラスにできる環境を作っていく事が一番重要をモットー」としている。また、絶対に諦めない姿勢を貫いている。
(結構、しんどい時もありますが・・・)

息子の書字の困難さに気づいたのは小学1年生の時。年中の妹が書いた「ねこ」という文字と、息子の書いた文字が全く見分けがつかないことに違和感を持った。作文を書いても、板書をとっても、何度も消しゴムで消すことで手に汗をかいているようで、ノートが破れている様子を見つけた。

※小学1年生の時に書いた文字
そこで、通っている小学校の学校コーディネーターに相談した。その学校コーディネーターは、発達等の検査と指導方法のアドバイスができる他校の教師に検査を依頼してくださった。フロスティッグ視知覚発達検査※とWISC-IVの検査をすると、発達に凸凹があり、書字に困難さをもっている可能性が高い結果が出た。

※1 DTVPフロスティッグ視知覚発達検査
※2 WISC-IV 世界標準の認知検査

母親としてはいろいろ考え、本人が低学年ということを考慮して、ビジョントレーニングII※をiPadで行うことにした。その結果、トレーニング前より空間認知機能は伸びたが、巧緻性(指先の動き)が低く、なかなかノートをとる事ができない。書いても、本人が後に見たいと思えるノートにはならなかった。

ビジョントレーニングII 

そこで、母親はパソコンのタイピングソフトで、息子の好きなキャラクターが出るものを見つけ、入力の練習を開始。「書けなければ、打てればいい」と、発想を変えた瞬間だった。

※小学1年生で初めてiPadを使う様子

当時、学校に何度も相談の電話をしていた時に、小学校の教頭から「お母さん、電話は2回線しかないので、長々電話しないでください」と言われてしまった。私だって電話をしたくてしていた訳ではない。小学校の教員に解決するアイディアが出てこないのだ。結局、私はクレーマーの保護者になっていたようだ。

※小学3年生の時に書いた文字

このような事は、他の方々にもよく起きてしまうことかもしれない。しかし、ここで諦めていたら、今の学び方の環境はできていなかったと思う。

〇診断名と中学校との交渉
母親はその時に、見立ての良い教員と出会える可能性が非常に低いことを予測した。住んでいる十勝地域には、学習障害の確定診断まで見立てができる専門医師がいないのだ。

そのため、小学校5年生の冬に都市間バスで片道2時間半をかけ、北海道大学病院を受診して、限局性学習障害(書字障害)という診断名がついた。その時点で、母親としては、中学校に入ると教科担当の教員が作成した定期考査等があるため、板書の情報が重要であると考えた。それに備え、本人専用のiPadの持ち込みを小学校の校長にお願いし、必要性を認めていただいた。6年生の2学期までは、iPadの写真機能やPDFにテキスト入力をするスキルを、担当教諭ではなくICT活用が得意な校内教員に教えていただいた。

秋になり、中学校側と保護者の教育相談を開始した。中学校側のコーディネーターと教頭先生に、書字障害があるので板書が取れない可能性を伝えると、「お母さん、こんな字を書く生徒はたくさんいますから、心配はありませんよ」と言われてしまう。そこで、発達相談センターの所長に教育相談の場面に参加していただいたが、「特性の説明はできるが、教育課程の部分に関しては僕は口をはさめない。それをすると、教育委員会から怒られる。」と言われた。

えっ、診断名がついていて、困難さがあるのに、このような生徒がたくさんいるから大丈夫ってどういう事? 特性と指導方法ってセットで考えないと繋がらないのでは? と内心で思いながらも、小学校で個人のタブレット端末を使っているので、使わせてほしい事を伝える。

すると、中学校側から不思議な質問があった。「お子さんは普通に(キーボードを)打てるか?」

私たち夫婦は「普通って何ですか?」と聞き返した。
質問をした管理職の普通は、タッチタイピングができる。ことだった。
私は、「タッチタイピングができないと中学校は使用を認めないんだ」と感じた。

学校側からの回答は「通信機器なので、校則で通信機材の持ち込みは禁止しているので認められない。タブレットは学校のsurfaceを使えばよい」と回答があった。

インターフェイスが変わると、子どもは使い方で困る事を中学校側はまったく考えていないと感じた。

町の教育委員会に相談したが、中学校長の判断だから・・・と認める様子は見られなかった。

そこで、北海島特別支援教育相談センター(札幌)まで、息子を伴って出向き相談。T教育局の指導主事にも相談。さらに、町の教育委員会と十勝教育局と中学校コーディネーター、中学校管理職、保護者と話し合いをした。しかし、それでも、中学校管理職の理解は得られない。この時点で、すでに1月。入学までに2か月しかない状態だった。

これでは、息子が困り、中学校生活で、また、学習についていけなくなる。さらに、診断名をプラスに使うことができないと判断した私は、一つの行動を決断した。
                                  (続く)

◆大久保 育美
2児の母親。現在は、息子と娘の学習環境を整える事が仕事。
看護師・保健師・養護教諭2種免許をもっている。
文部科学省の指定事業を受けていた高校で支援員として勤務していた経験がある。
ロストジェネレーションという年代で生きてきているので、医療現場、保健分野、教育分野で勤務していた。


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 ■ 新連載:専門用語を使わない!!
         16歳~19歳未成年の障がいのある子の親なきあとの「お金」の話
                      ~親として「行動」したこと、「サキヨミ」すべきこと~
                     第2回 8050(ハチマルゴーマル)問題と成年後見
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今回は、”未成年のうちだからできる”親なきあとの準備についてお話します。前回もお伝えしたように、民法改正により2022年4月から18歳で成人となります。16歳~19歳の障がいのあるお子さんのご家族には、特に知っていただきたい内容です。

8050(ハチマルゴーマル)問題をご存じでしょうか? ひきこもる子が50代になったころに、同居する親は80代になっていることで起きる問題です。
コトバンクの解説 

障がいのあるお子さんのいるご家族は、きょうだいがいるパターンと、ひとりっ子のパターン、大きく分けると2パターンです。

まず、下の資料を見てください。

※図1
この家のお父さんは、「きょうだいが面倒をみるのが当たり前だ」と思っていますが、「きょうだいに負担をかけることはできるだけしたくない」というお父さんもいます。
きょうだいが面倒を見るのが当たり前というお父さんには、お母さんは「本当にそれでいいのかしら?」と疑問に思っています。

そして31年後……。
お父さんは病気で要介護状態となり、お母さんは夫の介護と子どもの世話に明け暮れ、「私の老後はどうなるのかしら……」と不安が絶えません。
障がいのある子のお姉さんは結婚し、18歳の受験生の母親であります。
お姉さんのうちも受験や教育資金の用意などがあり大変で、両親や弟にまで手が回せないというのが正直な気持ちです。

では、このご家族は、障がいのある子が成人になる前、親権のあるうちにどう準備すればよかったのでしょうか?

私の講演に来られる方には、高齢の親御さんも多いのでこれと同じような話がたくさん出てきます。

障がいがある子どもとない子どもがいた場合、お金を誰に託すべきか?
きょうだいには頼れない、頼るべきではないという親御さんの声も多く聞かれます。
きょうだいと障がいのある子にお金をどう残したらいいか、遺し方も大事になりますね。

次はひとりっ子の場合です。

※図2
お父さんは、「今は元気だから」、「まだ死なないから」、「考えるのが面倒だから」、「もう少し年齢が上がってから考えればいい」などと思っている方が多いです。
それに対して、お母さんは「本当に大丈夫かしら」と漠然と不安を感じているようです。

私の娘もひとりっ子です。私は、障がいのある子に対して、未成年のうちにしかできないことがあるということを知ってから考え始めました。
特に、民法が2022年4月に18歳で成人というルールに変わることが大きく影響しています。

娘が16歳の時、あと2年たったら成人するということを学びました。
成人したら親権が使えなくなる。そうなるとどうなるか!?
今何か手を打たなければいけないのか?手遅れになってしまうことはないのか?と思って、いろいろ調べました。

お父さんが亡くなったとき、お父さんのお金と不動産はお母さんと障がいのある子で分けます。その時に、この資料にあるように成年後見人(法定後見人)が付く可能性があり、わが子の財産管理に大きな影響が出ることが予想されました。法定後見人は自分たち家族で決められるわけではなく家庭裁判所が選任します。

成年後見制度については、学校でも社会でも習う機会が少ないのでほとんどの人は知らないでしょう。知らないから「それってどうなるの?」、「誰が後見人になるの?」と不安がわいてくると思います。私も調べるうちにこのままだと大変なことになると思い、勉強し始めました。

この成年後見制度は判断能力がつかなくなった人をサポートする制度です。
でも、私はこの制度について、今の段階では疑問に思うことが多くあります。

まず、成年後見人をつけるべきは、判断能力が無くなった人ですが、その人たちを大きく分けると、以下の3種類です。
(1)知的障がい (2)精神障がい (3)認知症など

判断能力がないと認定される方にも、そうなった理由、立場、財産状況がそれぞれ違うと思うのです。この理由の違う(1)~(3)の人に同じルールが適用されている。
それが、今の段階でこのルール自体に違和感があると私は感じています。

でも、ここで異を唱えても仕方ありません。
前回お話したニーバの祈りを思い出してください。
自分の意志だけでは簡単に変えることができないものの一つに『法律』があります。
そのルールを理解したうえでどう利用するかを考えなければいけないと思いました。

そして、うちの娘と同じ生れながらの知的障がいのある子の場合、どんな対策をとるべきか、成人になる前、親権のあるうちにやるべきことはどんなことかを考えることにしました。
次回はその結果わかったこと、成年後見制度についてどう考え利用すべきか、もう少し具体的にお話します。

鹿内 幸四朗


■□ あとがき ■□-------------------------- 
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8月4日に念願の新サービス『生活機能発達支援プログラム Life Skills(ライフスキル)』を発表しました。日常生活や社会生活で必要となる動作や態度、行動を身につける方法を、その人の認知機能バランスに基づいて助言し、取り組めるクラウド・サービスです。ご家庭でも施設でも使っていただける3種類のプランを用意しています。

次号は、8月21日(金)の予定です。

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