いい意味で"諦める育児"で、反抗期も親子で笑い合えた

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2020.02.28

いい意味で"諦める育児"で、反抗期も親子で笑い合えた

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■  新連載:いい意味で"諦める育児"で、反抗期も親子で笑い合えた
■□ 連載:非行少年処遇を超えて―施設内処遇の可能性(最終回)
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■□ まえがき ■□--------------------------
今回からかなしろにゃんこ。さんのマンガコラムをお届けします。月に1回の掲載予定です。文章の中に、マンガの画像が表示されるURLを記載していますので、クリックしてマンガと共にエッセイをお楽しみください。


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 ■ 連載:いい意味で"諦める育児"で、反抗期も親子で笑い合えた
      第1回 注意欠陥が重度でも車の整備士を目指しました
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ADHDと広汎性発達障害がある息子のリュウ太を育てている母でマンガ家のかなしろにゃんこ。と申します。家庭のドタバタを書いたマンガを出したり、障害に関する支援のコミック・ルポなどを書いたりしています。「息子と母の思春期・反抗期コラム」を4回にわたってお送りいたします、どうぞよろしくお願いいたします。

現在、発達障害がある息子は21歳となり、昨年自動車整備士として一般就職しました。発達障害があると診断を受けたのは小4のときで、注意欠陥は重度であるという診断結果を知らされたときには「う~ん、この子の将来社会生活は大丈夫なんだろうか?」と心配になったものでした※1。高校受験の際には、将来のことを見据えて自動車整備士の「専修学校」に進学をしました。

※1

自分の好きな職種で、自分が得意な職種にターゲットを絞り、5年間基礎を学びました。赤点やら補習やらをくぐり抜けてギリギリの成績で卒業、そしてなんとか国家試験にパスして就職したという感じです。

小さいときから電車や車など乗り物が大好きで、電車は乗って楽しむ「乗り鉄」で、車はガチの旧車マニアです! 80年代90年代の車種が好きなことから「古い物を大事にしたい」という気持ちが強く整備をして乗れる状態にしたいそうなんです※2。

※2

発達障害があって注意欠陥が重度なのに整備士なんて人の命に関わる仕事ができるのか?というご質問をよくいただきます(笑) その心配ごもっともです。学校で基礎など実習で整備を行う他にも趣味で古いバイクをいくつも整備したり、廃車寸前の車を整備しては自分で乗り回したりしていますので、そんなにおバカなミスはしていないでは?と思います。ですが、仕事で扱うお客様の車の整備は慎重になれなければいけません。

私も心配で息子に「リュウ太はさ、ADHDの特性があるじゃない、整備の順序や段取りって大丈夫なの?覚えていられるの?」と聞いてみたことがあります。息子が言うには「さすがに命に関わることを目の前にして手を抜いたり、ふさわしくない処理をすることはないよ」だそうです。

整備は一人では行いません、必ず複数人で確認する項目を細かく点検を行うんだとか。まだ新米で見習いなので簡単な助手程度しか行っていませんが、日々新しいことと向き合って切磋琢磨しているとのことです。

「発達障害なのに一般就職できてラッキーだね」と言ってくれる人も中にはいます。
確かにラッキーかもしれません、でも令和は少子化人材不足時代。整備士業界は人材不足のため、関連する学校、就活、企業には特に、若者を丁寧に育てていこうとする思いがあるように感じます。でなければ万年落ちこぼれの息子が一般就職できるわけがありません!と母は思うのです。(笑)

もうひとつの懸念がありました。整備士業界は、集中力の必要な作業が連続し、新車種ができるごとに覚えることが多いなどで労働時間が長くなりがちで、身体だけでなく心も壊す人がいる業界と言われていたことです。幸い、息子が就職した年に安倍内閣による「働き方改革」があったことで会社の雇用時間も変更され、とってもホワイトな会社になっていました。働きやすい環境も見直されたことで就労が継続できているように思います。

中3の夏に息子が「普通科の高校は行かない、自動車整備士の学校に行く!」と決めたときに「え?普通科行かないの!?」と少し戸惑ったことは事実です。ですが、やりたいことを選ばせてあげることが、息子に合った職業を見つける近道のような気がして納得しました※3。

※3

息子のやりたい!という気持ちを優先して自動車整備士の専修学校を受験することになったのですが、子どものやりたいことを応援する、という心の広い思考になるまでにはいろいろありました。思い返せば、それまでは自分の理想を息子に押し付ける頭の堅い母だったように思います※4。

※4

理想の息子像をだんだん書き換えていけたのは、通院していた児童精神科の心理士さんが誘ってくれたペアレント・トレーニングがきっかけだったんです。

次回は「いい意味で諦める育児」にたどり着いたお話をしたいと思います。

かなしろにゃんこ。
著書『発達障害 僕にはイラつく理由がある!』講談社 

 


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 ■ 連載:非行と発達障害
      第5回 非行少年処遇を超えて―施設内処遇の可能性(最終回)
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これまで、発達障害とのかかわりを中心として最近の非行少年の姿を見てきました。近年非行少年が全体としては激減していること、その中で発達障害の診断を受ける非行少年の割合が増えたこと、ただし、発達障害の存在だけで子どもが非行に陥ることはなく、非行少年のほとんどが生育環境の問題を抱えていることを述べてきました。また、その子たちに対して、言ってみれば非常に古典的な処遇形態である夫婦小舎制と言う仕組みが有効であることもお伝えしました。彼らはさまざまな要因が重なった結果、初めて非行少年になっています。ですから、働きかけもまた、一つの方法だけではなく、様々な要因に同時並行的に働きかけなければ有効ではない、とされています。

アメリカの政府機関である「司法省少年司法・非行防止事務局(OJJDP)」のホームページには、非行予防や非行改善のための治療プログラムのデータベースがあり、2020年2月現在355のプログラムが掲載されていますが、今も次々に新しいプログラムが登場しています。このデータベースでは統計的な裏付けに基づいてプログラムの格付けがなされていて、「有効」とされているのは全体の18%に過ぎません。「有望」が58%、なんと24%は「無効」とされているのです。一度掲載されても、その後のフォローアップが不十分と言うことで削除されてしまうプログラムも少なくありません。

その厳しい格付けの中で有効とされるプログラムは、例外なく多方面からの複合的な働きかけによるものです。少年への集中的な認知行動療法、集団療法、学校での働きかけ、保護者への働きかけ、地域への働きかけ、定期的なフォローアップといった実に様々な手法が組み合わされたもの全体が一つのプログラムとして編成され、初めて有効とされているのです。このデータベースを見ると、○○セラピーをやれば非行は治る、といったものではないことがよくわかります。また、このようなデータベースが構築され、日々更新していく様からは、非行対策にかける熱量が日本とは比べ物にならないと感じます。

では、日本は合衆国に学ぶべき、と言えるでしょうか。それは少し違います。国の犯罪のありさまを比較するのに、殺人の件数が使われることが多いのですが、合衆国の2017年の殺人件数(ただし成人、少年を含む全世代の件数)は17284件、日本のそれは306件とまさにけた違いです(国連薬物犯罪事務所UNODCの統計による)。また、日本の非行の特徴として、成人の犯罪率に比べて少年の非行率が高いことが挙げられます(※表1:10万人当たりの検挙人員の比較。データはやや古いが傾向としては変わっていない)。諸外国では、成人の犯罪率のほうが少年の非行率よりも高いことが通例なので、これは日本の少年非行の問題点であるかのように言われることもありますが、少年のうちに非行・犯罪から足を洗い、成人では罪を犯さなくなるからこそであり、むしろ非行少年対策がうまく機能していることの証として誇るべきことです。


※表1 主要国の犯罪率(2013年)「少年の犯罪率が成人の犯罪率より高い理由」日経Dual,2016/3/31より引用 

家庭裁判所をはじめとする日本の少年司法は、戦後アメリカを模範として構築されたのですが、今では本家よりもはるかに有効に働いています。合衆国での素行症の推定患者数は216万人と膨大です(2013年、CDCの統計による)。日本ではこれに対応する統計はなく、素行症の診断と非行は同一ではありませんが、警察に補導・逮捕される20歳未満の非行少年の数が平成30年に5万人を切っている(令和元年版犯罪白書)ことを考えると、その差は明らかです。合衆国における非行に対する力の入り方は、それだけ問題が重篤であることの反映であるとも考えられるのです。

日本では、1世紀以上にわたり2つの相当異なるタイプの非行少年の施設を保ってきました。一つは法務省管轄の矯正施設である少年院であり、そこでの現在の処遇は認知行動療法をはじめとする様々な非行治療プログラムが中心です。それに対して厚労省管轄の児童福祉施設である児童自立支援施設では、日々の生活を通じた養育と愛着形成が処遇の中心です。そこでは治療プログラムはあくまでオプションです。しかし、子ども同士のインフォーマルな関わりをも認める生活は、結果的に非常に多面的で豊かなものとなり得ます。この性格の大きく異なる二つの非行少年施設が選択できることは、日本の財産だと言えると思います。

実は現在、世界的に見ても、日本ほど施設内でマンパワーと時間をかけて非行少年を教育しようとしている国は少ないと言えます。施設入所による非行少年教育は、世界的に見て主流とは言えないのです。日本以外の多くの国は、施設内で非行少年を処遇することが数的に不可能とも言え、だからこそ、社会内での治療プログラムで何とか改善させようとしている面があります。日本では非行少年の数が少ないからできる、ともいえるのですが、1世紀以上にわたりこのような処遇形態を続けてきたことで、日本は平和な犯罪の少ない国、非行少年の少ない国を作ってきた、とも言えます。

児童自立支援施設でも、少年院でも、多くの子は1年以上の時間をかけて処遇されます。私は施設勤務経験のなかで、ほとんどの子がそこで大きく成長することを見てきました。また、最近刑務所に勤務するようになって感じているのは、思いのほか児童自立支援施設や少年院の経験者が少ない、と言うことです(この印象が実際に正しいかどうかは、もっと精査されるべきだと思いますが)。少年時代から非行に走っている人はもちろん少なくはないのですが、児童自立支援施設や少年院に入ったことがある人はそれほど多くないと思っています。現時点ではあくまで印象に過ぎませんが、もしこの印象が正しければ、やはり児童自立支援施設や少年院での教育には意味があるという反証となるのではないかと思います。

施設入所は教育の敗北だと考える方は少なくありません。少年たち自身、施設入所を「終わった」と表現することが多いと思います。しかし、暴論であるとのそしりを覚悟のうえであえて言わせていただければ、施設入所は彼らの成長のための正しい選択肢の一つです。もし、拙稿を読んでいただいている方の周りに、家庭や学校、地域でどうしてもうまくいかない非行少年がいたら、施設入所と言う選択肢を考えていただきたいと思います。施設入所は「終わり」ではなく、彼らの新たな成長への始まりなのです。発達障害を伴うような様々な要因を抱えた子であればなおのこと、そうなのだと思います。さらに言えば、可塑性の高いうちに医療的な働きかけを含めて集中的・多面的な働きかけができる施設内処遇の可能性は、非行少年だけにとどまらず、被虐待や発達障害と言った様々な生育上の問題を抱えた多くの子どもたちにとっても、大変大き

富田拓
(網走刑務所医務課医師)


■□ あとがき ■□--------------------------
新型コロナウイルスが猛威を振るっています。一日も早く対応策が見つかればと祈っております。

3月に大阪府堺市で予定したセミナーは「さかいきこえのフェスタ」のプログラムの一つとして設定されたのですが、フェスタが大阪府の、高齢者が多数集まるイベントの自粛要請で中止になってしまいました。ただし、私が講師をするセミナーの参加者は、40代以下の方が多いため、当初の予定通り、単独で開催することにしました。

その関係もあって席にまだ余裕があります。定員30名としていますが、かなり広い会場ですので、座席は離れておかけいただけます。ご関心をお持ちいただける方はご参加ください。

〇堺特別支援教育セミナー
日時:2020年3月21日 土曜日 17:00~18:30
場所:堺市総合福祉会館4階第三会議室
詳細と申込はこちら
次号は、3月13日(金)の予定です。

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