実現されたインクルーシブ教育、オランダの共生教育

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2013.10.04

実現されたインクルーシブ教育、オランダの共生教育

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■ 連載:辞書アプリを使って「自分で解決できる」を支えよう・2
■ グッズレビュー:ほのぼのペタペタブロック
■ 書籍:オランダの共生教育
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■ 連載:賞子先生の「魔法のアプリ」 第2回
辞書アプリを使って「自分で解決できる」を支えよう・2
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今回は前回紹介したA君が「自分で解決できる」ために、「どんなアプリを」「どんな組み合わせで」活用したのか、具体的な方法についてご紹介したいと思います。

最初に使ったのは、辞典アプリの「大辞林」です。

★iTunes App Store「大辞林」の詳細はこちら>>

大辞林は、

・ひらがなを一文字ずつ入力して行く「手書き」や、50音配列の「キーボード」など、入力方法が選べる。
・読み方がわからない漢字でも、手書き入力して調べる事ができる。
・出てきた漢字をピンチアウトで拡大して表示できる。
・背景が黒で文字が白のため、文字がくっきりと見える。

というような良さがあります。Aさんもすぐに操作方法を覚えて、手軽に使う事ができました。
しかし、使って行くうちに、いくつか課題が出てきました。

a) フォントの問題で、お手本として使えないものがある。
b) 子ども達の「調べたい言葉」のままでは調べられない事がある。
c)選択肢が多すぎて、選べない事がある。

iPadを日常の中でA君が「自分で解決できる」武器にしていくためには、上記のような点をクリアしていくことが必要でした。

a)について
例えば大辞林で「家」をひくと、10画目が4画目の横棒から出た形で表示されてしまいます。これは、フォントのデザイン上、仕方がないのですが、このままでは「せっかく調べて違う字を書いてしまう」という事態になりかねません。

そこで、いくつかのアプリで「家」という字の表示を調べてみました。「漢字を調べる」という目的のアプリでも、多くは大人向けのため、だいたいの形がわかることが優先されているためか、なかなか正しい表示になるものはありませんでした。


その中で「筆順辞典」で表示したものは、正しい形になっており、お手本として使えるものでしたので、「この形は違うな」という場合は「もう一度、筆順辞典で確認しよう」と声をかけて調べ直していきました。

その後、「例解学習国語辞典」という子ども向けの国語辞典が出ました。これは、調べ方は大辞林と変わらない上に、教科書体での表示になっているため、aのような問題は起こりません。現在は、「例解国語辞典」を使う事で、「筆順辞典」と組み合わせるという作業は必要なくなりました。

★iTunes App Store「常用漢字筆順辞典」はこちら>> 
★iTunes App Store「例解学習国語辞典」はこちら>> 

b)について
例えば、「家に帰って」という文中の漢字を調べたい時、「家」はそのまま「いえ」で出てきますが、「帰って」は、辞典アプリでは「却って」しか表示されません。「帰」という字を出したければ「帰る」「帰り」といった、言いきりの形に直さなければいけません。これは、小学生向けの辞典アプリである「例解学習国語辞典」でも同じです。しかし、A君にはそれはとても難しい事でした。

なんとか、彼が調べたい「かえって」という言葉のままで調べられないかと思い、使ったのが「7notes for iPad」でした。これは、いわゆるメモアプリです。

★iTunes App Store「7notes for iPad」 はこちら>>

メモアプリは、私たちが日常、携帯電話で慣れ親しんでいる「予測変換」の機能が使えますので、全部入力しなくても候補が出てきますし、辞典のように言い切りにしなくても、文中で使う形での変換が可能です。また、この7notesは、3種類の入力が可能で、キーボードだけでなく、手書きでの直接入力ができるのも便利でした。辞典アプリの手書き入力が「ひらがな一文字ずつ」であったのに対し、熟語をそのまま書き込んでも変換してくれる所や、「ゆう勝」と漢字まじりで手書きすると「ゆう勝」「優勝」の2つを表示させてくれる等、子ども達が「今」わかっている漢字を使って調べる事もできました。

辞典アプリを使って出てこない時には、7notes に切り替えて調べるということで、「調べたい言葉で調べる」ということが可能になりました。

c)について
「大辞林」は大人向けの辞典なので、語彙がとても多いです。例えば「こうせい」を調べようとすると、完全一致のものだけでも28個出てきます。これだけの量があると、なかなか必要な情報を選び出す事ができません。

この点についても「例解学習国語辞典」だと8個と、ずいぶん絞られています。また、メモアプリを使って、「こうせいをかんがえる」と、文章の中の表記として表示させて行っても、候補が狭められて選びやすくなります。

「これは多すぎてわからないなあ」と思ったら、違うアプリで試してみるという方法を、いくつか提案しながら組み合わせて行きました。

A君がしたいことにピッタリのアプリがあればいいのかもしれませんが、なかなか現状ではそれを見つけきれずにいます。でも、「じゃあこうしてみればできるかも」と、色々な方法を一緒に考えたり探したりすることもまた、A君の学びを広げる事につながるのではないかなと考えています。

(井上賞子・安来市立赤江小学校)

 

■ グッズレビュー:ほのぼのペタペタブロック
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世の中に数限りなくあるブロック玩具。年齢などの目安や、安心できる材質かどうかなど、選ぶポイントはいろいろあります。

本メルマガで昨年、「自閉症のトムくんの成長物語」を15回に渡って連載してくださった未来奈緒美さんが、自閉症の子どもたちが喜んで取り組むブロックについて、実際の使い方のアイデアとセットでご紹介いただきました。

★ヴァラエティカフェ・グッズレビューはこちら>>

レヴュアー: 未来奈緒美

未来さんの連載は、2012年4月27日号から同年11月30日号まで。
★メールマガジンのバックナンバーはこちら>>

 

■ 書籍:オランダの共生教育 -学校が〈公共心〉を育てる-
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文部科学省が取り組むことになった「インクルーシブ教育」。どんな障害のある子も一緒に学ぶことができる学校、その実現までには長い、長い時間がかかるのでは、というのが正直な感覚でした。

ところが、その教育システムを作り上げ、2003年にすべての障害児を対象とした「普通学級」での特別支援教育を実現している国がありました。そのオランダでの学校システムを、実際の子どもたちの様子を交えて、詳しく紹介しているのが本書です。

インクルーシブ教育というと、障害のある子どもたちのための特別な教育と思われるかもしれません。しかし、すべての子どもたちは一人ひとり異なっており、それらの個性に対応する教育、と考えれば、ある意味で、学校教育そのものの高度化ということができます。実際に、オランダでは、たくさんの「学校教育の進化を模索する教育-オールタナティブ教育」が1970年代から研究され、実際に多くの学校に取り入れられてきました。それらの下敷きがあったからこそ、インクルーシブ教育が実現できたのだと思います。

本書では、第1部でオランダの特別支援教育の制度と実態が解説されます。それらを作り上げることになった1996年の「もう一度一緒に学校へ政策」と2003年の「リュックサック政策(生徒当たり付属補助金政策)」は、日本にこれからインクルーシブ教育を実現するために必要なアイデアのひとつだと思います。

同時に、オールタナティブ教育の理念的創始者ともいうべき、ジョン・デューイの思想や、新しい評価の観点を提唱したハワード・ガードナーのマルチプルインテリジェンスも紹介されます。さらに、新しい学校の姿を模索したたくさんの教育方法-モンテッソーリ、イエナプラン、ダルトン、フレネイ等についても解説されます。教育制度改革の研究者である著者、リヒテルズ直子さんは、これらたくさんの教育に関する試みを、相互に関連付けて分かりやすく解説しており、これらの部分だけでも、子どもに関わる全ての人に読んでほしいと思います。

そして並行して、実際の学校を運営している仕組みが紹介されます。サークル対話やフレキシブルな時間割などの授業運営の仕組みや、ラーニング・バイ・ドゥーイングという、実際に役立つ形で知識や概念を身につけさせる方法、他人との比較でなくその子どもの個性を把握するための成績、ポートフォリオなどです。具体的ないくつかの方法が、実際どのように運用されて、一人ひとりの子どものもつ能力を多面的に伸ばそうと取り組んでいるのかを理解することができます。

第2部は、本書の副題「公共心」を育てる、というテーマについてオランダでの取り組みがまとめられています。9・11事件の3年後、2004年に、イスラム教の男女差別を描いた映画の監督が、イスラム教徒の青年に射殺されました。この青年はオランダの学校で学んでいたため、「意見や立場の違いを、暴力で解決するのではなく言葉で率直に表現しあう」態度を、より具体的かつ効果的に学校で学ぶ必要がある、と考えられ、開発された市民教育プログラムを中心にまとめられています。学校での取り組み、それを支える社会制度(保護者の教育参加を含む)などです。

このプログラムは、オランダにもある、いじめ問題の解決にも有効と考えられます。また、他の人との違いを認め合い、それら多様な違いとの共生を創り出していくための方略の一つとして、日本の教育、さらには社会システムに欠けている部分を作るために、大いに参考になると思います。

オランダの共生教育 -学校が〈公共心〉を育てる-
リヒテルズ直子著、平凡社、2010年10月発行、
B6判、208ページ、1800円(税別)
★本の詳細はこちら>>  ←本書12ページまで読むことができます。

 

■ あとがき
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今年も千葉県福祉機器展(10月18・19日、我孫子駅前)に出展します。

★詳細はこちら>>

展示全体では、高齢者介護や身体障害が中心ですが、レデックス・コーナー(入口付近のもっとも目立つ場所)には、全バランサーの他に、デジなぞ、ビジョントレーニングIIなども体験していただけるようにし、代表の五藤が2日間、ご質問等にお答えします。お時間があれば、ぜひ、ご参加ください。

また、18日11:30~12:00にはミニセミナーで「認知症予防に必要なこと」と題して、難聴と認知症の関係など、最新情報に基づき解説します。

その対応もあり、次回メルマガは10月25日(金)とさせていただきます。

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