賞子先生の魔法のアプリ~ ICTで広がる学習の可能性

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2013.09.20

賞子先生の魔法のアプリ~ ICTで広がる学習の可能性

今回から新しい連載が始まります。東大先端研「魔法プロジェクト」で素晴らしい実践を発表されている井上賞子先生の登場です。読み書きの困りなど小学校での問題を、たくさんのiPadアプリを適材適所に活用して解決する、その手腕にぜひご注目ください。

賞子先生のだんな様は、43歳になって初めてディスレクシアと診断され、学校時代や社会人になってからのつらかった体験を、著書「読めなくても、書けなくても、勉強したい」で公開された井上智(さとる)さん。ご夫婦で共有された経験が、子どもたちへの深い理解につながっているのではと編者は強く感じています。

その著書は、メルマガ第66号の書籍コーナーをご覧ください。
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■ 連載:賞子先生の魔法のアプリ~ICTで広がる学習の可能性
■ 連載:小学校でのビジョントレーニングの取り組み
■ あとがき
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■ 連載:賞子先生の魔法のアプリ~ICTで広がる学習の可能性 第1回
辞書アプリを使って「自分で解決できる」を支えよう・1
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漢字の読みや書きに苦手さのある子どもたちは、毎日のように何かを直しています。プリントだったり、日記だったりテストだったり。「答えは合っているけど、ひらがなで書いたから×」なんていうことも、よく耳にします。評価のあり方について考えなくてはならない事もいろいろありますが、ここでは、そうした日々の膨大な「直し」の解決に向けた取り組みについて紹介したいと思います。

A君は、3年生の時点では、数詞と自分の名前くらいしか、漢字で書く事ができませんでした。毎日、連絡帳の中で使っている漢字でも、思い出して書く事ができません。かといって、辞典や教科書の後ろの一覧から、わからなかった漢字を探す事も、1人ではできない状態でした。ですので、教師が赤で直したり、付箋に正解を書いてもらったものを見て直していました。毎日毎日、同じ字を、直してもらってから書き写すということを繰り返していました。A君の中には「どうせ覚えられない」「わからない」という気持ちが強くあり、漢字を書く事への意欲も持てずにいました。

4年生になってから、iPadを学習の中で活用するようになりました。毎日の「直し」についても、教師が正解を教えるのでなく、赤線を引いてもらった部分を自分でiPadで調べるという形に変えました。

iPadを組み入れた学習の流れ
A君は「ひらがな→漢字」「漢字→ひらがな」と、自分が「調べたい」と思う事を自分で「調べきれる」方法を得て、とても意欲的になりました。iPadが手元にない場面でも、お家の人や教室にいる友達に「ここの漢字教えて」と聞いて漢字を使うなど、それまで見られなかった姿も出てきました。「これは漢字のはず」という意識や「漢字を使いたい」という意欲が、そうした姿からも伺えました。

また、「調べる」という過程で、漢字の形をしっかり見たり、入力するために「音」を意識して見直すというプロセスが必要になったりした事で、「漢字と読み」のつながりについての意識が高まって行きました。

「自分で解決できる」という自信は、A君の学習への姿勢を大きく変えました。あれほど毎日、同じ漢字を直していても覚えられなかった日々が嘘のように、「書ける」漢字も増えていきました。次の写真は、そうした取り組みを重ねた一年後に、彼が書いた「振り返り日記」です。

一年前まで、数詞と自分の名前しか漢字で書けなかった子とは思えません。これは、「1人で」「何も調べず」「人にも聞かず」書いたものです。

A君にとって、「先生がいればできる」という日常は、「先生がいなければできない」というメッセージにもなっていたのかもしれません。

苦手さのある子にとって「他の子もしている方法」をスタートに据えると、苦しかったり進まなかったりする事は、ままあります。例えばA君のようなケースの場合、「覚えられないなら辞典で調べられるようにしよう」ということをスタートにしがちではないでしょうか。でも、それではいつまで経ってもA君はスタートラインに立てません。彼が可能な方法、ここでは「iPadで調べる」をスタートの手だてとして持つ事で、彼は「わからない事があっても解決できる」という見通しを持って学習に向かう事ができたのではないでしょうか。

「苦手さのある→そこをみんなよりがんばらせる」になってしまうのは、とてもツライと感じています。「補う」ことで、今の学びにしっかりと向かえる状態にしてあげることが大事だと思います。

しかし、「iPadがあれば解決」というわけではありません。A君が「自分で解決できる」という見通しを持つためには、アプリの活用や組み合わせについても考えて行く必要があります。次回は、そのことについてご紹介したいと思います。

※A君の変化の詳細につきましては、魔法のプロジェクトの成果報告会公開資料、赤江小学校、25年ふでばこのファイルにあります、下記ページのB児のケースをご参照ください。

★pdfファイルはこちら>>

(井上賞子・安来市立赤江小学校)

 

■ 連載:ビジョントレーニング 第12回(最終回)
小学校でのビジョントレーニングの取り組み
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ビジョントレーニングの連載も最終回となりました。今回は福岡県飯塚市立飯塚小学校の杉本陽子先生の取り組みをご紹介したいと思います。杉本先生は日本LD学会の特別支援教育士で「特別支援教育 はじめのいっぽ! 国語のじかん」学研の共著者です。7年前からMIM特殊音節指導パッケージ(学研)の小学校への導入に力を尽くされています。

編者注)MIMは『学習につまずきのある子どもへの多層指導モデル』のことで文部科学省の科学研究費により開発されたとのこと。
★パッケージの詳細はこちら>>

編者注)「特別支援教育 はじめのいっぽ! 国語のじかん」
★詳細はこちら>>

多くの子どもたちはMIMで楽しく文字を読めるようになってきましたが、そのなかにどうしても、すらすらと読めるようにならない子どもに杉本先生は気づかれ、何か手立てがないか考えられていたとのことです。そんな中、5年前に私のビジョントレーニング講座を受講され、すぐにビジョントレーニングを学校に導入していただきました。

通常学級ではナンバータッチ(数字のランダム羅列表を1から25まで素早く見つけタッチしていく)、線の迷路、ジャンピング矢印体操(提示した矢印の方向を声に出しジャンプする)などに全員で取り組んでいただきました。全体指導だけではなかなか難しい子どもたちのために、個別指導でパズルや点つなぎ、パソコンソフトのトレーニングも行ってくださいました。

子どもたちの1分間の読字数の調査も行っておられます。学期前と学期末を比較すると明らかに読むスピードも速くなり、字の読み飛ばしや繰り返し読みの数も少なくなりました。ビジョントレーニングだけで子どもたちの読む力が伸びたのではなく、MIMの音韻の指導と合せて、ビジョントレーニングに取り組まれたのがよかったのかもしれませんね。子どもたちは楽しくMIMにもビジョントレーニングにも取り組み、読めるという自信がついたようです。
「私はビジョントレーニングに一生懸命取り組んで、本が速く読めるようになりました」というお子さんもいたそうです。

ビジョントレーニングは眼の動きの力、形の認知力を主に高めるもので文字を読む力を直接的に高めるものではありません。ビジョントレーニングだけでは足りないところは、MIMのような文字の音からの指導モデルで補っていただくのがいいのかもしれません。

これからもビジョントレーニングを導入される学校が増えるように改めて学校、その他の機関でも導入しやすい方法を研究していきたいと考えております。どうぞ今後ともよろしくお願いいたします。今までお読みいただき、ありがとうございました。

最後にもう一つ、情報です。新しいビジョントレーニングのムック本ができました。
カラー大判で取り組みやすいと思います。
★詳細はこちら>>

(北出勝也)
★北出先生のサイト:視機能トレーニングセンター「ジョイビジョン」 はこちら>>

 

■ あとがき
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井上賞子先生は、奇しくも、ビジョントレーニング最終回の杉本陽子先生と「特別支援教育はじめのいっぽ!」を共著されています。実は編者が、初めて井上先生にお目にかかったのも、その書籍のお披露目を兼ねた講演会でした。講演会では、井上智さんもはじめての講演デビューということで登壇されており、感慨深いものがあります。

今回は、発行元のレデックスからニュースがあります。
経済産業省関係の独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構が実施している「福祉用具実用化開発費助成金」の公募に、レデックスが採択されました。採択数は新規4件という狭き門でした。
★詳細はこちら>>

この助成金を活用して、発達障害の人に多い「聞く」ことの困りを診断し、トレーニングするソフトの開発を行うことになりました。聴覚認知機能の専門医である、国際医療福祉大学教授の中川雅文先生のご指導の下で、2014年3月の完成を目指します。こども脳機能バランサープラス、ビジョントレーニングIIに続いて、子どもたちの「困り」を発見し、改善する製品にできるよう全力を尽くします。応援をよろしくお願いいたします。

次回メルマガは、10月4日(金)です。

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