あたし研究:自閉症スペクトラムから見える世界

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2013.07.05

あたし研究:自閉症スペクトラムから見える世界

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■ 連載:小学校全体でのビジョントレーニングの取り組み
■ 書籍:あたし研究 自閉症スペクトラム~小道モコの場合
■ グッズレポート:みんなのためのルールブック
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■ 連載:ビジョントレーニング 第10回
小学校全体でのビジョントレーニングの取り組み
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昨年度、広島県の北西部にある芸北小学校で学校全体でビジョントレーニングに取り組んでいただきました。同校は、筆者(北出)がビジョントレーニングの指導をかねてよりしていた心理士の橘恵先生(広島県廿日市市教育委員会)を招聘して校内研修を察を行った際に、視覚機能の弱さを持つ児童の存在を指摘されました。その後、同校の校長先生が私の講演を聴いてくださり、学校全体で取り組んでくださったのです。

全校児童29名の小さな小学校ですが、自己肯定感の低い児童が全体の5分の1を占め、学習面・生活面に困難さを抱えている児童も数名いました。良好な人間関係を築くことが難しいということもありました。一人一人の違いを認め尊重し合い、すべての子どもが「楽しく分かる、できる」授業や安心して過ごせる学校生活を目指して、一人ひとりの発達や分かり方の的確な把握とニーズに応じた指導・支援のあり方について研究することになり、一つの切り口として視覚機能検査・視覚機能のトレーニング・支援を取り入れてくださることになったのです。継続してトレーニングを行うことで効率よく文章を読んだり、漢字の形を整えて書いたりすることができるようになることを目指して取り組まれました。

まず、学校全体で児童の視覚機能の検査を行い、実態把握に取り組まれました。眼球運動のチェックでは追従性眼球運動・跳躍性眼球運動・両眼の輻輳運動(寄り目)を観察されました。追従性眼球運動で眼で上手く視標が追えない児童が10名(38.5%)、跳躍性眼球運動(眼のジャンプ)で上手くできない児童が12名(46.2%)、輻輳運動(寄り眼)が上手くできない、眼が寄らない児童が13名(50%)いました。

視覚機能チェックリストでは板書に時間がかかる4名、文字がはみ出す・形が整わない7名、ボール運動が苦手5名、たえず視線を動かして話を聞く5名と22名(84.6%)の児童に視覚入力機能のチェックが入りました。漢字の形が覚えにくいなどの視覚認知能力が低い児童は11名(37.9%)いました。

アイパッドのビジョントレーニング1※1というアプリを使ったチェックも行われました。1分間にランダムに表示される数字や文字を指で押さえて、声に出して読める数を調べます。また、1~10までの数を上下・左右に眼で追い、読むのにかかる時間を調べるチェック※2も行いました。事前検査で個別のビジョントレーニングが必要とされた児童は、アイパッド、数字読みのテストでも平均を大きく下回る結果が出ました。これら個別の取り組みが必要な児童6人は、家庭でのトレーニングも勧めて、機能向上を図りました。

※1 北出先生の会社joyvision開発販売のアプリで眼球運動プログラムはこちら>>

レデックス社のビジョントレーニングIIは、この製品を改良し、さらに、眼球運動に加えて、視空間認知関連の4つのプログラムを追加した製品です。

※2 数字読み検査 北出先生の著書「学ぶことが大好きになるビジョントレーニング(図書文化社)67ぺージに記載。

学校の中に眼球運動トレーニングシートを配置したり、ボールを紐で吊るしてジャンプしてタッチするなどビジョントレーニングコーナーがたくさん設けられ、校内移動の際にもすべての児童がトレーニングできるように工夫されました。体幹部を鍛えるため、校内外でバランスをとりながら歩くような工夫もされました。

トレーニングが必要だった児童たちの5ヶ月後の再チェックではアイパッドの読みチェック、数字読みチェックでも大幅に改善が見られました。保護者へのアンケートでは、本読みのとき字を飛ばして読むことがなくなった、字形も整い、速く書けるようになったなど効果を感じる声が聞かれました。学習面での困り感が減り、姿勢がよくなって集中力が高まる、また良好な人間関係が育つなどの改善効果も見られたということです。

今年に入ってから芸北小学校といくつかの近隣の小学校が合併されることになりました。昨年度、ビジョントレーニングに取り組んだ生徒と他の小学校の生徒が一緒にトレーニングに取り組まれることになり、よい成果が出ることを期待されているとのことです。
(北出勝也)

★北出先生のサイト:視機能トレーニングセンター「ジョイビジョン」 はこちら>>

 

■ 書籍:あたし研究 自閉症スペクトラム~小道モコの場合
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著者の観察力と表現力に感服した本です。この本を知ったのは、国立障害者リハビリテーションセンター秩父学園(埼玉県所沢市)で6月1日に開催された自閉症子育て支援セミナーの岸和之先生(横浜市中部地域療育センター)の講演です。
★秩父学園の詳細はこちら>>

この本は小道モコさんが、その友人が始めた、発達障害を考える会「くれよん」で継続的にお話をしている内容をまとめたものだそうです。その会ではこの本にも収録されている小道さん自作のイラストを提示しながら、自閉症スペクトラム(ASD)の子どもが周りをどう見ているか、どう感じているかを紹介します。そして、そこで生じる困りを、周囲がどう支援できるかを解説しているそうです。

文中で小道さんが書いているように、「おとなモコ」になって過去の状況の理解が深まり、「こどもモコ」と同じように困っているであろうASDの子どもたちを、こんなふうに支援してほしい、と具体的に語っています。

最大の特長はイラストです。一例を挙げれば、「学校はJungleのようでした:360°予測不可の恐怖」は、他の人の行動の意味が分からないことでの困りや、先生や他の子どもの音声が時として苦痛を引き起こす感覚過敏など、平均的な子どもにとっては問題にならないことが、ASDの子どもにとってとても対処の難しい場合があることを的確に表現しています。

他にも、「慣用句に弱いワケ」では、音声を文字に変換し、それを意味のある語のかたまりに分解し、その語の意味を自分の知っている語彙から見つけ出すという、普通の子以上に時間がかかる聴覚理解のメカニズムをうまく表現しています。

この本は、図書館で借りて読むだけでなく、ぜひ手元に一冊保有されることをお薦めします。

あたし研究 自閉症スペクトラム~小道モコの場合
小道モコ 絵・文、クリエイツかもがわ、2009年10月発行
B5判、120ページ、1800円(税別)
★詳細はこちら>> ※立ち読みあり

 

■ グッズレポート:みんなのためのルールブック
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レヴュアーの小林雅子さんの文章が大変わかりやすいので、以下に抜粋を紹介させていただきます。

この本には、アメリカの小学校の先生であるロン・クラーク氏がクラスで教えている大切なルールが50個掲載されています。「宿題はかならず提出しよう」「先生にあいさつしよう」という学校生活で必要になるルールはもちろん、「しかられている人のほうを見ない」「人の成績を言いふらさない」など、ついつい子どもがやってしまいそうなことも。

読んでいくにつれ、私たち大人が“当たり前”と思っているルールが子どもにとっては初めて出会うルールなのかもしれないということに気づかされます。(中略)

この本は発達障害の子ども向けに書かれたものではないのですが、見開きで一つのルールが読めるという簡潔さや「守らなければならない理由」がそれぞれのルールに対して明確に書かれていることもあって彼らにとって非常に受け入れやすくわかりやすい読み物となっているようです。 (ここまで)

前述の「あたし研究」で解説されている、ASDの子どもの周囲の見え方や感じ方と合わせて読んでいくと、この本のルールの説明の意味がより深く理解できるのではと感じました。
レヴュアー: 小林 雅子

★ヴァラエティカフェ・グッズレビューはこちら>>

 

■ あとがき
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昨年11月に発売し、たくさんの方にご利用いただいている「ビジョントレーニングII」がiPadアプリになりました。手指で操作できますので、年少のお子さんにも容易に取り組めます。
★詳細はこちら>>

なお、購入はレデックスからでなく、Apple社のAppStoreからとなりますのでご注意ください。

では、次回7月19日(金)のメルマガで、またお会いしましょう。

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