ぼくはうみがみたくなりました

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2012.06.08

ぼくはうみがみたくなりました

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■ 映画:ぼくはうみがみたくなりました
■ 連載:自閉症のトムくんの成長物語・4
■ グッズレポート:「賞状のテンプレート」
■ イベント:不登校だった僕が生まれ変わった夏休み
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■ 映画:ぼくはうみがみたくなりました
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我が街、町田で生まれた映画です。町田には発達障害児のおやじの会があり、その中心の一人が映画「ぼくはうみがみたくなりました」(略称:ぼくうみ)の原作者、山下久仁明さん。自閉症のお子さんをモデルにした本がたくさんの人々の協力で映画になりました。

ぼくはうみがみたくなりました公式サイトはこちら>>

ミニカーが好きな自閉症の青年と、同じ種類の車に乗っている看護学校に通う女性がふとしたことで海を見にドライブに出かけます。その女性の白血病でなくなった恋人に容姿は似ていましたが、青年はまったく会話をしないばかりか、奇妙としか思えない行動を取り続けます。その戸惑いもあり、途中知り合った老夫婦に声をかけることで始まった、4人の城ケ島へのドライブには思いもかけない数々のできごとが待っていました。

ドキュメンタリーとは違って、登場人物のセリフなどで巧みに自閉症や発達障害についての知識が得られるようになっています。その意味では、前2回のドキュメンタリー映画と合わせて観ると、発達障害児・者の行動や態度をより深く理解できると思います。

また、兄弟姉妹や親、さらに当事者と接する社会の一般的な反応も描かれでおり、発達障害について必要な知識・情報のほとんどが、この映画に詰め込まれているといえるでしょう。そんなことから2009年夏の封切り以来、全国各地、さらには、国会内で上映して議員の理解を深め、ついに今年1月には、ニューヨークでも上映されました。

DVDも手頃な価格(3800円税送料込)で発売されており、一度は必ずご覧いただきたい映画です。

関東にお住まいの方にはとっておきの情報:7月1日あざみ野で上映会が開かれます。さらに、えっくんママの司会で、ブログ「そよ風の手紙」で有名な新保浩さんの講演もセットになって500円。ぜひお出かけください。

あざみ野上映会イベント・情報・えっくんママのページはこちら>> 

そよ風の手紙(自閉症りょうまとシングルパパの奮闘記)・新保浩氏ブログはこちら>>


#残念ながら筆者は同日開催の後述「不登校だった僕が生まれ変わった夏休み」にファシリテータとして出席するため参加できません。(泣)

 

■ 連載:自閉症のトムくんの成長物語・4『お父さんとの会話』
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翌日の朝、1階からパチパチと手を打つ音がしました。私が2階からパチパチ手拍子をしてかえすと、そのリズムに合わせるようにトムくんが手を打ちながら二階に上ってきました。私は戸の後ろに隠れてパチパチと手を打ちました。トムくんが音の出所を突き止めにくるか、試してみたのです。

トムくんは、それには気づかないままスキップしてキッチンへ向かいました。
前日、私が戸の後ろに隠れて、大好きな「でこぼこフレンズ」を木琴で鳴らした時には、どこから音がするのか確かめに来たのです。

大好きな「でこぼこフレンズ」のメロディーだったからでしょうか?それとも、私がそこに隠れていることを少し前に見て気づいていたから推理しやすかったのでしょうか?今回の手拍子は想定外の事態(そこに私が隠れているとは思っていない)なのでわからなかったのかもしれないし、食べ物を探しに行く習慣が優先されたのかもしれません。いずれにしろ、トムくんの推理力についての微妙な差異にも気をつけていると、推測する力を高めてあげられるかもしれないと思いました。

その時、朝食の準備をしに、大学の教員をされているトムくんのお父さんがキッチンにあらわれました。トムくんは食品のストックの中からラーメンの袋を選びだして、お父さんの所に持って行きました。

「朝からラーメンが食べたいのかい?」と、トムくんのお父さんは笑いながらラーメンを作り始めました。会話の練習中のトムくんは、「お父さんラーメン、作ってください」と棒読みで言いました。

トムくんは、食べ物などに限られているものの、自分の目的を果たすために必要なものを準備して(今回はラーメン)頼める相手に要求するという形をマスターしているのです。この食べ物を作って欲しいという要求は次第にレベルアップしていて、麻婆豆腐を作っているときは片栗粉を入れていないことを指摘するほどなのだそうです。

「目的をイメージして、準備し、要求し、最後まで見届ける」
という一連の作業を、途中で集中力を散らすことなくやり遂げることができるにもかかわらず他の多くの場面では、そうした能力が生かされることなく無目的にフラフラ移動してばかりいるように見えました。

遊びや学習の場で、この食事を準備してもらうシーンのように「ある一定の時間に目的を達成しようとし続ける行動を生み出すことができないものか」と思いをめぐらせました。

朝食をいただきながら、トムくんのお父さんに昨日から気になっていた細々した発見を話しました。すると、非常にささいな変化に至るまでトムくんのお父さんは、すでに気づいていらっしゃったようで、そのひとつひとつにご自分の考えや気づきを返してくださいました。

なかには、「夜、トムくんのお父さんが帰宅していると、家から遠い、暗い位置にいるにも関わらず、トムくんがブランコから降りて窓際でそれを見ている」というびっくりするものもありました。「ブランコに乗っていても、視界にちらっと入るんだろうね」というお話でした。

「暗くなると、お父さんが帰ってくる」「だいたいこれくらいの時間に」という推理が働いていて、普段以上に外をチラチラ見ているのでしょうか。それとも、非常に広範囲にわたる視覚の情報を常に処理していて、そのことで
トムくんの、理解や外に向かって表現する速度が遅くなっているのでしょうか?

お風呂のように目に入るものが少ない場なら、トムくんの集中力はアップしているので、目に入るものを減らしてあげると学習しやすくなるのかもしれません。あらゆるものを見て認識しているために、そうした視覚の情報処理が原因でできることが少なくなっているのだとすると、言葉で「こういうときは、こうしたものにだけ注目すれば良い。他のものは見なくて良い」と教えていくことで効果があがるのではないでしょうか。

そうしたことを話合いました。トムくんのお父さんはトムくんの微妙な変化に気づきやすく、適度に距離を取りながら客観的に分析できる方です。トムくんのお母さんは、自閉症についてのたくさん知識を持っていて、新しい方法を探してきたり試したりする意欲があって、トムくんと接する時間が長い方です。このご夫婦がトムくんの療育で協力して、情報交換の仕方、分析の仕方、振り返りの仕方といった方法自体を洗練させていくことができれば、すばらしい成果が期待できるのではないか、と感じました。
(未来奈緒美)

 

■ グッズレポート 「賞状のテンプレート」
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目標を設定してお子さんががんばった場合、その達成感を記録に残すことができるのが賞状。今回紹介のサイトでは、本格的なものからかわいい子ども向けのデザインのものまで、たくさんの種類が無料で簡単に作れます。

賞状がたくさんたまったら次はメダルはいかがでしょうか?思いの他、手軽な値段で購入することができます。

グッズレポート「賞状のテンプレート」はこちら>>

 

■ イベント:不登校だった僕が生まれ変わった夏休み
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不登校と発達障害は深い関係があります。自分の子どもの、ADHDの特性から不登校を選択した母親、溝井啓子(みぞいひろこ)さんは、夏休みにお子さんと一緒に、ある経験をしました。それがきっかけになって、お子さんがまた学校に行けるようになったそうです。

そんな溝井さんのお話を聞いて、不登校に関心をもつ人同士がヴァラエティカフェ形式で話し合うことはとても有意義だと思います。

主催:発達障害支援アカンパニスト 共催:ヴァラエティカフェ推進委員会
日時:2012年7月1日(日)12時30分~16時30分
場所:アリーノ(川崎市有馬・野川生涯学習支援施設)  
費用:800円(お茶・お菓子・資料・施設利用料・講師代含む)
詳細と申込はこちら>>

 

■ あとがき
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夏から秋にかけて学会の大会や展示会に出かけます。せっかくなので、その地域の人たちと情報交換ができればと、その前後等で勉強会の計画を立てています。もし、近くにお住まいの方がいらっしゃったら、お声をかけてくださればうれしいです。

7月14日・15日 札幌 日本自閉症協会全国大会
8月3日・4日 四日市 ライフサポートフェスタ~こどもの福祉機器展
9月16日・17日 甲府 日本早期認知症学会全国大会 (案内PDFはこちら>>

次回メルマガは、6月22日(金)です。

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