こどもの偏食・少食は社会課題。食×医療×地域ネットワークの挑戦

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2026.03.27

こどもの偏食・少食は社会課題。食×医療×地域ネットワークの挑戦

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■    はじめに
■□   新連載:こどもの偏食・少食は社会課題。食×医療×地域ネットワークの挑戦
■□■  コラム:バックナンバー 聞くことはあるけどよく知らない困り・2
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■□ はじめに ■□--------------------------
子どもに食事をさせることに苦労するという悩みを、これまでに何度か聞いたことがありました。2月に山形市で開催された日本小児医療多職種連携研究会で知り合った田島由佳(たじまゆか)さんからその対処に悩む人のための活動をされているとお聞きし、ぜひともと寄稿をお願いしました。

田島さんは、NICU・循環器内科外科で看護師として5年務められた後に、企業に入られ、保健師を20年務められたそうです。その間に、ご自身が離乳食時期のお子さんについて苦しまれた経験から偏食・小食の問題に取り組もうと思われたそうです。

現在もロート製薬株式会社で健康経営の推進と社員の健康管理、ロートグループ健康保険組合の保健師チーフとして活動されています。そしてロート製薬の社内起業project「明日ニハ」をきっかけに、こども偏食少食ネットワーク協会を2023年に設立されました。

協会で行われている支援者養成講座は常に満席状態で、多くの医療職が受講されているそうです。さらに、その講座を受けられた方をアドバイザーとして、ドラッグストアと地域ネットワーク「こども偏食医療ネットワーク」という新しい子育て支援を展開されています。

今回から3回の連載で、その活動について語っていただきます。


 
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■ 新連載:こどもの偏食・少食は社会課題。食×医療×地域ネットワークの挑戦
        第1回 「また食べないの?」 食卓で起きている小さな戦争
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夕食の時間。
テーブルの上には、栄養バランスを考えて作った料理が並んでいる。
忙しい中でもなんとか家族のためにとやっとの思いで作った夕食だ。

「今日はブロッコリーも食べてみようか」
そう声をかけても、子どもは首を横に振る。
一口だけ口に入れて、すぐに吐き出してしまう。
「どうして食べてくれないの?」
気づけば、食卓の空気は重くなっている。
怒りたくない。
でも怒ってしまう。
「ちゃんと食べなさい!」

声を荒げたあとで、親は自己嫌悪に襲われる。
本当は、楽しい時間にしたいのに。
--こんな食卓の風景を、経験したことはないだろうか。

子どもの「食べない」という問題は、多くの家庭で起きている。
調査では、7割以上の保護者が子どもの食べ方について悩んだ経験があるともいわれる。
しかし、この悩みは意外なほど語られない。

誰かに相談すると、こう言われる。
「そのうち食べるよ」
「好き嫌いは誰でもある」
あるいは、
「甘やかしているんじゃない?」
そう言われると、親は口を閉ざしてしまう。
「うちだけなのかもしれない」
そう思いながら、悩みは食卓の中に閉じ込められる。

けれど近年、この「偏食」という言葉の意味が、少しずつ変わり始めている。
子どもの「食べない」は、単なる好き嫌いではないかもしれない。
そこには、感覚、発達、経験、心理--さまざまな要因が関わっている可能性がある。

もしそうだとしたら。
子どもの偏食は、
家庭だけで抱える問題ではなく、
社会が理解すべきテーマなのではないだろうか。

今、日本でもその問いに向き合う動きが始まっている。

例えば、
・食感や匂いへの敏感さ
・噛む力や飲み込む力の発達
・食べる経験の少なさ
・発達特性
などが影響することがある。
つまり、子どもの「食べない」は、単なる好き嫌いではなく 身体や感覚、発達に関係する現象 でもあるのだ。

海外ではすでに、子どもの食事の問題を 「小児摂食障害(Pediatric Feeding Disorder)」 として研究する分野が確立されている。
小児科医だけでなく、言語聴覚士、作業療法士、栄養士などがチームを組み、子どもの「食べる力」を支援する。

一方、日本ではどうだろう。
もちろん小児科や栄養相談はあるが、「子どもが食べない」という悩みを専門的に支援する仕組みは、まだ十分に整っているとは言えない。
そのため多くの親が、試行錯誤を続けながら悩みを抱え込んでいる。
そんな中、日本でも少しずつ新しい動きが始まっている。
子どもの偏食や少食を理解し、支援するネットワークをつくろうという取り組みだ。
それが、こども偏食少食ネットワーク協会である。

ここで、一つの疑問が浮かぶ。
そもそも--
「偏食」とは、いったい何なのだろうか。
野菜を食べない子は偏食なのか。
同じものばかり食べる子はどうなのか。

そして、
どこからが支援の必要な状態なのだろう。
実は日本では、この問いに対する
明確な基準がほとんど存在してこなかった。
だからこそ、
「もう少し様子を見ましょう」
という言葉の裏で、支援のタイミングを逃してしまうこともある。
もし、偏食を客観的に判断する方法があるとしたら--。
子どもの「食べない」を
好き嫌いではなく、科学で理解する方法があるとしたら。

次回は、
「偏食とはそもそも何か」
を詳しく解説する。お楽しみに。

◇田島由佳(たじま・ゆか)
合同会社こども偏食少食ネットワーク協会代表
看護師従事5年、企業で保健師を約20年務めた後に協会を設立。
現在もロート製薬および同健康保険組合で幅広く活動する傍ら、「こども偏食医療ネットワーク」という新しい子育て支援を展開している。



 
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■ コラム:メルマガ・バックナンバーのおすすめ
        第2回 聞くことはあるけどよく知らない困り・2
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配信15周年を記念してバックナンバーのご紹介です。前回に続いて"聞くことはあるけどよく知らない困り""見逃されている困り"に関する連載を3つご紹介します。

連載時から所属が変わっている方も多く、また、お立場もさまざまなので、呼称はさんとさせていただきます。旧所属についてはメルマガの原稿をお読みください。このことで失礼がありましたらこの場をお借りしてお詫びします。

4.聴覚情報処理障害 
 
2018年3月から小渕千絵さんに『聞こえているのに聞き取れない、分からないって?』と題して4回の連載をしていただきました。

耳は悪くないはずなのに、なぜか話が聞き取れない「聴覚情報処理障害(APD)」という、「聞き取りにくさ」が生じる症状について分かりやすく解説していただきました。

この連載では、居酒屋など雑音の中での会話が苦手な会社員、指示をすぐに忘れてしまう販売員、聞き間違いが多い小学生など、日常生活で起こりやすいケースを通して、APDの特性を理解できます。

また、「なぜ起こるのか」のメカニズムを紹介していただきました。単なる「気のせい」ではなく、脳の認知機能(注意力や記憶力)のアンバランス、中耳炎の影響、あるいは発達障害の特性など、多様な要因が絡み合っていることが説明されています。

また、今日からできる「4つの対処法」として、環境の整え方から、補聴手段の活用、聞く力を鍛えるトレーニング、そして自分を責めないための心理的ケアまで、具体的な解決のヒントが示されます。

「聞こえているのに、分からない」という孤独な悩みは、正しい知識を持つことで、周囲の理解や適切な支援へとつなげることができます。

5.ダウン症 

2018年10月から佐藤功一さんに『ダウン症のある子どもたちへの「知っておきたい」指導』と題して3回連載していただきました。

特別支援教育の現場で「指導が難しい」と感じられがちなダウン症児へのアプローチについて、20年以上の実践経験を持つ佐藤功一さんが解説します。

現場では「相性」や「慣れ」で片付けられがちなダウン症児への指導。佐藤さんは自らの失敗を機に、膨大なデータ分析と実践検証を行い、鍵が目に見えない「言葉かけの技術」にあることを突き止めました。

連載では、学校現場で最も教師を悩ませる「情意面(心)」の課題に光を当てます。アンケート調査の結果から、学習以前の「場面の切り替え」や「こだわり」が指導の成否を分ける構造を可視化。原因が頭(理解)・心(情意)・体(健康)のどこにあるかを特定し、いかにして学習の土台を築くべきか、具体的かつ実践的に解説します。

6.依存症 

依存症は、前掲のページのようにさまざまな寄稿者が言及されている困りです。発達障害との関連について、今村明さんに『発達障害と依存症』と題して2024年12月から3回連載をしていただきました。

「やめたくても、やめられない」――。現代社会で深刻化するアルコール、ゲーム、SNSなどの依存症。その背景に、ADHD(注意欠如多動症)やASD(自閉スペクトラム症)といった発達障害の特性が深く関わっていることをご存知でしょうか。

本連載では、医療と教育の連携の先駆けである今村さんが、そのメカニズムと具体的な支援法を全3回で解説します。注目すべきは、発達障害特有の「報酬系の障害」や「感覚探求」が依存の引き金になるという視点です。

従来の集団療法に馴染めない当事者に対し、損失の数値化やトリガーの視覚化など、本人の認知特性に合わせたオーダーメイドの治療アプローチを提示します。さらに、家族ができる肯定的なコミュニケーション術(CRAFT)についても触れています。

支援職の方はもちろん、ご家族にとっても、依存という「心の奴隷状態」から抜け出すための具体的な指針となる連載です。


さて、第1回第2回では編者が困りを選んでご紹介しましたが、読者によっては他に知りたいものがおありと思います。その際に便利な当メルマガの"全文検索"機能をご紹介させていただきます。

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次回は、バックナンバーの中から、困りの当事者に寄稿していただいた連載をご紹介させていただきます。



■□ あとがき ■□--------------------------

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