聞くことはあるけどよく知らない困り 特別支援教育コーディネーターの業務:関係機関との連携

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2026.03.13

聞くことはあるけどよく知らない困り 特別支援教育コーディネーターの業務:関係機関との連携

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■    連載:特別支援教育コーディネーターの業務 関係機関との連携について
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■ 連載:特別支援学校(知的障害部門)における特別支援教育コーディネーターの業務と連携について(最終回)
       第3回 対談
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今回は、私(柳下記子)が東京都特別支援学校スクールカウンセラーの立場から特別支援教育コーディネーターの山本昇平先生とお話しさせていただきました。
山本先生、よろしくお願いいたします。

山本:読者の皆様に対して、分かりやすい内容か、求められている内容であるのかと自問自答を繰り返しています。御期待に添えているかという心配はありますが、こういう話を聞きたいというお声があれば、私の知る限りではありますが、お答えさせていただきます。

柳下:前回までの連載で特別支援学校に限らず、特別支援教育コーディネーターの存在が学校というチーム作りに欠かせない存在と感じています。ただ、通常級と特別支援学校ではコーディネート内容が変わってくると思うのですが、いかがですか。

山本:小・中・高等学校と特別支援学校では、多くの部分で共通していますが、業務内容に一部違いがあります。文部科学省では特別支援教育や特別支援教育コーディネーターを以下のように定めています。

<特別支援教育について>
特別支援教育は、障害のある幼児児童生徒の自立や社会参加に向けた主体的な取組を支援するという視点に立ち、幼児児童生徒の一人一人の教育的ニーズを把握し、その持てる力を高め、生活や学習上の困難を改善または克服するため、適切な指導及び必要な支援を行うものである。
特別支援教育は、これまでの特殊教育の対象の障害だけでなく、知的発達の遅れのない発達障害も含めて、特別な支援を必要とする幼児児童生徒が在籍する全ての学校において実施されるものである。
特別支援教育は、障害のある幼児児童生徒への教育にとどまらず、障害の有無やそのほかの個々の違いを認識しつつ様々な人々が生き生きと活躍できる共生社会の形成の基礎となるものであり、我が国の現在及び将来の社会にとって重要な意味を持っている。

<特別支援教育コーディネーターの役割>
各学校の校長は、特別支援教育のコーディネーター的な役割を担う教員を『特別支援教育コーディネーター』に指名し、校務分掌に明確に位置付けること。特別支援教育コーディネーターは、各学校における特別支援教育の推進のため、主に、校内委員会・校内研修の企画・運営、関係諸機関・学校との連絡・調整、保護者からの相談窓口などの役割を担う こと。また、校長は、特別支援教育コーディネーターが、学校において組織的に機能するよう努めること。


上記にあるように、特別支援教育は特別支援学校だけでなく、小・中・高等学校の全てで行われるものです。その点に関しては共通しており、具体的な共通点としては以下のようなものがあります。

・校内委員会の運営・支援体制づくり
・学級担任への支援
・校内の関係者や関係機関との連絡調整
・保護者の相談窓口及び理解啓発



これらに加え特別支援学校の特別支援教育コーディネーターには、校内の「センター的機能の発揮」をリードする役割が加わります。特別支援学校が拠点となり、地域の学校に対して特別支援教育のアドバイザーとしての役割を担ったり、地域住民に対して理解啓発を担ったりします。
チーム作りについては、どの校種においても中心的な役割を担うことが多いです。

校種ごとにコーディネート内容が違うように感じることもありますが、幼児児童生徒本人や保護者、教師がどういう困りごとを抱えているか、本人を取り巻く環境、障害の有無や程度などによって連携先が変わることが多いというのが本質ではないかと思います。

柳下:障害者手帳を取得しつつ通常級に在籍している場合でも、同じような「悩みごと」はあると思うのですが、そのようなケースの相談は、これまでにありましたか。

山本:療育手帳を所持している生徒の相談は多く寄せられることがあります。実際は小学校、中学校が多いかと思います。地域の特別支援学校にも生活年齢に応じた学部があり、小学部、中学部がある特別支援学校に相談が行くことが多いです。我々は高等部ですので、高等学校に在籍している場合は相談を受けることがあります。高等学校で多い相談は療育手帳よりも精神障害者保健福祉手帳(以後、精神手帳という)を所持している生徒についての相談が多いです。
現在都立高等学校と特別支援学校間では、都立版エリアネットワークという都立学校発達障害教育推進エリアネットワークを形成し、令和4年度から運用されています。そこではケース相談を受けるだけでなく、事例検討や研修なども行われています。小・中・高等学校にとっては、特別支援学校も大事な外部連携先という形になります。

柳下:様々な困りごとを解決に導くための関係機関との連携とは、具体的にどのようなものですか。

山本:外部との連携の前に、まずは校内でチームを作り、対応に当たります。具体的なメンバーとしては、担任、学年主任、特別支援教育コーディネーター、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーを中心に、生活指導部や進路指導部、教務部の教師も状況によっては入ります。
障害の有無、療育手帳の有無などによって連携先が変わります。困りごとの内容によるところが大きいですが、療育手帳を所持している場合は、各自治体の障害福祉課や相談支援事業所と連携していくことが、状況の改善に結びつくことが多いです。

また、行動面の制止が難しい場合は、療育施設や医療機関との連携をしていくこともあります。その際は、学校内での様子や制止が難しくなる場面、時間、場所など、状況を整理して伝えることが多いです。解決できることが望ましいですが、少しでも状況の改善が見込めるのであれば、様々な連携先と情報を共有していきます。

柳下:教員としての関わりまたは、学校としての役割と関係機関の役割をつなぐ時のコツやポイント、注意されていることなどはありますか。

山本:幼児児童生徒本人や保護者、教師から相談があった「困りごと」を中心に据えることが重要になります。支援内容に相違が生じないように「エコマップ」を作成し、適切かつ明確にしていくことを常に念頭に置いて業務を担っています。

柳下:特別支援教育コーディネーターに限らず、関係機関やその役割についてスクールカウンセラーにも必須と感じています。学校に関わる各々の立場の方に特に知っていて欲しい知識や情報はありますか。

山本:「つなぐ」という役割を担う特別支援教育コーディネーターにとっては、スクールカウンセラーから得られる知見が非常に重要に感じています。幼児児童生徒本人の心の内を引き出す専門家として大切な存在です。関係機関とのつながりについては、それぞれのカウンセラーの経験や所属にもよるところが大きいと思っています。カウンセリングを通して、どういう支援が必要かを明確にしていただけると、我々がその自治体に応じた連携先を探していく方がよいと感じます。ただ、カウンセラーの皆さんは、業務の関係上、関係機関からの要請もあると思いますので、役割について御存じの方も多い印象をもっています。

柳下:今回の連載に書いていただいた内容で、特別支援学校ではなくても教員、学校関係者として知っておいて欲しいと思うことは何ですか。

山本:特段知識として知っておいてほしいということはあまりありません。むしろ知らないことの方が多いのが自然であると考えています。こういう支援制度などは、刻一刻と変化を続けており、我々も日々学んでいるところです。「困りごと」があった際は、ぜひ、身近な特別支援教育コーディネーターに相談してください。小さなことでも相談いただくことが大切であると感じています。

柳下:最後に特別支援教育コーディネーターに必要な資質(経験、情報、スキルetc.)とは何ですか。

山本:私自身が今年度初めて特別支援教育コーディネーターを務めていますので、必要なスキルというものはあまり分かりませんが、話を傾聴する姿勢は必須であると考えています。また、話を整理する力も大切であると感じています。特別支援学校には複数の特別支援教育コーディネーターが配置されていますので、以前から担っている先輩方に業務を伺いながら、日々勉強して取り組んでいます。
小・中・高等学校の特別支援教育コーディネーターは一人という学校もありますが、そういった方々を孤立させないために、都立版エリアネットワークのようなシステムもあります。必要な資質は、後から身に付いてくるものかもしれません。

柳下:私も今年度からスクールカウンセラーとして勤務し、まだまだ半人前ですが山本先生はじめ、特別支援学校というチームに入れていただき日々、人とつながることの大切さを感じています。人を想う気持ちをいかに仕組みに変えていくか。今回の連載から、その仕組みを丁寧に教えていただきました。
山本先生、ありがとうございました。

◇山本 昇平
都立特別支援学校 主任教諭
特別支援教育専任コーディネーター
東京都特別支援学校・特別支援学級設置学校体育連盟役員
全国高等学校定時制通信制軟式野球連盟役員

◇柳下記子(やぎした のりこ)
東京都特別支援学校スクールカウンセラー
小金井市教育委員会指導室 読み書きに困難を抱える子どものための学校支援・学習支援員
公認心理師
特別支援教育士

 
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■ 新コラム:メルマガ・バックナンバーのおすすめ
         第1回 聞くことはあるけどよく知らない困り・1
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当メルマガの編集人、五藤博義です。2010年7月の創刊以来、15年間で通巻376号となりました。思えば、発達の困りについてほとんど知らない中で、隔週刊をよくこれまで続けてこられたと思います。これも拙い内容で始めたメルマガを見守ってくださった読者の皆さまと、ご寄稿を通して編集人を育ててくださった数多くの専門家や研究者、当事者やその家族の方々のおかげと、改めて感謝申し上げます。

当メルマガはすべてのバックナンバーを公開し、また、任意の語彙で検索もできるようになっています。ただ、膨大な文書量なのでなにを読んだらよいのか迷う方もいらっしゃると思いますので、何かのヒントになればと、コラムの形でメルマガを紹介することにしました。

他の寄稿の合間を縫って不定期での掲載とさせていただきますので、気が向いたら読んでみていただけるとうれしいです。なお、連載時から所属が変わっている方も多く、また、お立場もさまざまなので、呼称はさんとさせていただきます。旧所属についてはメルマガの原稿をお読みください。このことで失礼がありましたらこの場をお借りしてお詫びします。

その第1弾として、つねづね心に留めている"聞くことはあるけどよく知らない困り""見逃されている困り"に関する連載を選んでご紹介させていただきます。

1.発達性協調運動症 
2018年6月から宮口英樹さんに『不器用さへのアプローチを考える』3回の連載をしていただきました。宮口さんは「ケーキを切れない非行少年」の著書として有名な宮口幸治さんのお兄さんで、コグトレに関する活動を立ち上げた中心人物のおひとりです。

不器用さはコンプレックスにつながりやすく、ひいては社会と距離を置く原因のひとつとなります。コグトレはそういったことを起こさない支援として開発されたという面があるのではと思います。この連載では、コグトレの対象のひとつとして、不器用さ、協調運動の困りへの対処を解説していただきました。

また、2025年5月から岩永竜一郎氏さんに「発達障害児の感覚処理・協調運動の問題への支援』と題して6回の連載をしていただきました。前半は協調運動と関係の深い"感覚の困り"の解説と対処法で、後半が、発達性協調運動症(DCD)の解説です。岩永さんには昨年オンラインセミナーの講師を担当していただき、2回とも200名以上の参加者の方々にご好評をいただきました。今年も4月30日にセミナーを計画しています。次号メルマガで申込方法をお知らせします。

手前みそですが、宮口幸治さんには"コグトレ デジタルさがし算初級"、岩永さんには"感覚・動作アセスメント""感覚・動作アセスメントKIDS"というサービスをそれぞれ原案・監修者としてご協力いただいて商品化しています。ご興味があれば、レデックスの個人向け商品ページをご覧ください。
 

2.吃音 

2016年3月から佐藤雅次さんに『「吃音」のこと、もっと知ってください! そして、
もっと一緒に話してください!』6回の連載をしていただきました。

吃音は、人との交流で必要となる発話の中で出てきますから、不器用よりさらに目立ちやすく、周囲から差別、自分からは交流忌避につながりやすい困りです。

佐藤さんには、人によって異なり、また、状況でも大きな変化が出てくる吃音のことを一から教えていただきました。幼児期、学童期、思春期、成人期での症状例についても詳しく解説していただきました。加えて、支える団体や当事者団体にも触れてくださいました。

2023年8月からは堅田利明さんに『吃音のある子どもの自己理解を育てていくための協働』と題して4回に分けてご寄稿いただきました。

吃音の症状を発生から、人によっては消失することなど詳しく解説してくださいました。また、ご自身が初めて吃音のある子に接したときの経験から、それへの他者としての理解と、当事者自身の理解についても語っていただきました。さらにその保護者やきょうだいへの支援の必要性についても解説くださいました。

まとめとして、吃音に関わる専門家としての過去への反省から矜持についても触れてくださり、さまざまな困りに関わる立場の方への提言としても気づきの多い連載でした。

3.場面緘黙 
2016年1月から場面緘黙支援団体かんもくネット関係者がリレー方式で『場面緘黙(ばめんかんもく)の子どもへの理解と対応』5回を連載していただきました。

第1回では、イギリス公共放送BBCの調査を元にしていろいろなデータが紹介されています。子どもの発症率は約1%。3クラスに場面緘黙の子が1人いるというデータは読者のみなさんも驚かれるのではないでしょうか?

分類的には情緒障害の一つとされていますが原因は多様で、引っ込み思案といった性格的なものの他に、言語に問題がある、ASDやLDなど発達の困りが関係する、などの原因があります。また、子どもに多く大人になるとだんだん減っていきますが、大人になってから発生するケースもあるそうです。

第2回以降では、対処法の解説として、保護者の方の経験が紹介されたり、教員の方からの具体的な支援と対応が解説されたり、家庭と学校が連携して対処することの必要性が紹介されます。大きな声で話しましょう等、卒園式の練習がきっかけで発症したケースは目を通していただきたい内容です。

発話状態や安心度のチェックシートなどのツールや参考となるたくさんの書籍や資料が紹介されていますので、具体的な手立てを知る上でとても役に立つ内容だと思います。
(続く)


■□ あとがき ■□--------------------------
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