AIは教師の仕事を奪うのか 特別支援教育コーディネーターの業務:関係機関との連携について

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2026.02.13

AIは教師の仕事を奪うのか 特別支援教育コーディネーターの業務:関係機関との連携について

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■    連載:特別支援教育コーディネーターの業務 関係機関との連携について
■□   連載:AIは教師の仕事を奪うのか
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■ 連載:特別支援学校(知的障害部門)における特別支援教育コーディネーターの業務と連携について
       第2回 関係機関との連携について
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前回は特別支援学校(知的障害部門)における特別支援教育コーディネーター(以下「コーディネーター」という)の役割についてお話ししました。今回は、「関係機関との連携」とはどのような形なのか、一例を御紹介いたします。

1 関係機関とその役割

各自治体には様々な支援サービスがあり、コーディネーターは必要に応じて関係機関との連携を図ります。以下は特別支援学校で特に関わりの多い機関の一例です。

・こども家庭センター(従来の子ども家庭支援センターとは異なります)
 ※概要図はこちら
・児童相談所
・福祉部 障害福祉課(行政サービスに関すること)
・福祉部 生活援護課(生活保護に関すること)
・保健所、保健センター、健康サポートセンター
・医療機関(精神科:診察や服薬管理など)
・相談支援事業所(生活・就労に関することの相談)
・放課後等デイサービス(放課後活動など)
・その他支援施設(移動支援、日中一時支援、余暇活動など)

これらはあくまで一例であり、他にも多くの連携先があります。特別支援学校では、コーディネーターが窓口となり、各所との連携を図っていきます。

次にそれぞれの関係機関の役割などを確認していきましょう。

<こども家庭センター>
子育て世帯や子どもに対し、様々な支援資源につなぐ役割を担っています。支援が必要な子ども・妊産婦等へのサポートプランの作成、連絡調整なども行います。

主な事業として以下のものがあります。
・相談窓口:妊娠期から18歳までの子育てに関する相談
・利用者支援事業:子育て家庭のニーズに合わせて、適切なサービスや施設を紹介
・児童育成支援拠点事業:親子交流・情報交換の場の提供
・養育支援訪問事業:特に支援が必要な家庭に対して、保健師や助産師が訪問し、具体的な育児指導を行う
・短期支援事業:保護者の疾病や仕事等の理由で、一時的に子どもを預かるサービスを提供

この他にも様々な事業があります。
こども家庭センターの概要・状況 - こども家庭センターポータルサイト
※こちらで詳しく書かれておりますので、御参照ください。

<児童相談所>
18歳未満の子どもに関する問題への支援を行います。

・相談機能:児童福祉司や児童心理司が中心となり、虐待、非行、発達障害など、幅広い相談に対応
・一時保護機能:緊急性の高いケースでは、子どもを一時的に保護
・措置機能:家庭での養育が困難な場合、児童養護施設への入所や里親委託などの措置
・専門的判定:医学、心理学、教育学などの専門家チームが子どもの状況を多角的に判断
・自治体支援:自治体からの複雑なケースや専門的な判断が必要なケースの相談に対する助言

この他にも様々な支援があります。
地域の児童相談所はこども家庭庁のサイトにあります。御参照ください。
児童相談所一覧|こども家庭庁 

<各自治体の障害者福祉課>
障害者の日常の生活や社会的生活の支援をします。

・身体・知的・精神障害者(児)の障害福祉サービス等の相談、調査及び支給決定
・介護用品及び各種サービスの提供
・各種手当の支給

この他にも自治体によって様々なサービスがあります。
コーディネーターは、どの課や係に関わりが深いか調べておくとよいです。

<福祉事務所>
生活保護の相談・申請窓口です。生活に困窮する方に対し、その困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障するとともに、自立を支援することを目的としています。

制度の詳細は厚生労働省のホームページおよび関係資料を御参照ください。
生活保護制度 |厚生労働省

生活保護の制度に関しては以下を御参照ください。

生活保護に関するQ&Aについては以下を御参照ください。

<各自治体の保健所・保健センター、健康サポートセンターなど>
地域住民の健康を支える広域的・専門的・技術的拠点と位置付けられる施設であり、精神保健に関する相談や難病などの患者支援、状況把握および指導などを行います。

・感染症に関すること:医療・医薬品相談・結核、新型インフルエンザなど感染症の予防・対策など
・精神保健福祉に関すること:精神障害者保健福祉手帳の申請受付や精神障害者に対する事業、自立支援医療(精神通院)の申請受付など
・生活衛生に関すること:食品衛生、食中毒等の検査、環境衛生、水質調査に関する業務など

この他にも様々な業務があります。保健所につきましては厚生労働省の資料を御参照ください。
保健所の活用の仕方 ~どんな時に頼れば良いの?~ 

<医療機関(精神科)>
心身の不調や精神的な症状に対する治療を専門とする医療機関です。診察や検査結果に基づき精神疾患を診断し、疾患や症状に応じた薬物療法を中心に、生活面での適応を支えるための助言や指導なども行います。医学的検査・心理検査、診療・診断、薬の処方などを専門としています。
また、対話や活動を通して問題解決を目指す精神療法、考え方や行動の偏りに気付き、より適切な行動を身に付けることを目指す「認知行動療法」なども行います。

<相談支援事業所>
障害福祉サービスなどの利用計画を作成する機関となります。家庭の困りごとや生活状況などを踏まえ、面談などを通して利用計画を作成していきます。担っている業務は以下になります。

・相談と情報提供:利用者が直面する困難や悩みに対して、専門のスタッフが助言を行い、適切な支援方法を提案
・支援計画の作成:最も効果的な支援が受けられるよう具体的なプランを策定し、利用者の障害の種類や程度、生活状況、希望する支援内容などを詳細かつ丁寧に把握
・サービスの調整とコーディネート:福祉、医療、教育などの各サービス提供機関との連携を図り、利用者が必要な支援を受けられるように調整
・支援内容のモニタリング:支援が実施された後、利用者の状態や支援の成果を評価し、必要に応じて調整

この他にも多様な業務を行っています。支援を必要とする児童・生徒、保護者にとっての伴奏者です。

<放課後等デイサービス>
学校通学中の障害児に対して、放課後や夏休みなどの長期休暇中において、生活能力向上のための訓練等を継続的に提供することにより、障害児の自立を促進するとともに、放課後等の居場所づくりを行っています。
通所支援のほか、身近な地域の障害児支援の拠点として、「地域にいる障害児や家族への支援」「地域の障害児を預かる施設に対する支援」をするなどの地域支援も行っています。

以上のように様々な役割を担う関係機関があります。児童・生徒、保護者の困りごとに対し、適切に連携をすることが大切です。

2 関係機関との連携の可視化

関係機関との連携において、児童・生徒本人、保護者がいつどのようなときに相談すればよいのか、分からなくなってしまうことがあります。そのような時に、我々が使用している「可視化」できるツールを紹介いたします。

※エコマップ
こちらを「エコマップ※1」と呼んでおり、児童・生徒本人、保護者を中心に連携している関係機関と支援内容、連絡先を載せています。
「エコマップ」は、困りごとに対し、適切な連携機関を自分たちで確認でき、主体的に支援を求められるように作成しています。「困りごとの可視化」を前回お伝えしましたが、その「困りごとに対する連携先」というイメージです。
新たな関係機関ができた際は追記することもありますし、実態と課題の変化により、内容を修正することもあります。年齢が18歳を超えることによって変更になることもあります。

※1:エコマップ(eco-map)とは、社会福祉・心理学で用いる図式です。個人を中心に、その周囲の家族・友人・職場・地域資源などとの関係を線や矢印で表し、支援の強弱や質を視覚化したものです。1975年、米国のアン・ハートマンが提唱しました。

3 最後に

二度にわたり、特別支援教育コーディネーターの役割や関係機関との連携についてお伝えしました。今回の内容が、読者の皆様の元気なくらしの一助となれば幸いです。次回は、特別支援学校のスクールカウンセラーとして今年度から活躍されている、柳下記子先生との対談形式の内容となります。

◇山本 昇平
都立特別支援学校 主任教諭
特別支援教育専任コーディネーター
東京都特別支援学校・特別支援学級設置学校体育連盟役員
全国高等学校定時制通信制軟式野球連盟役員


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■ 連載:特別支援教育から考えるAIとの付き合い方
       第3回 AIは教師の仕事を奪うのか
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大学において教員養成に携わっていると、多くの学生から次のような問いを投げかけられます。
「将来、学校の先生ってAIに置き換わってしまうんじゃないですか?」
第1回のメルマガで紹介した調査(山﨑・齋藤・水内,2025)においても、「教育や校務にAIを活用することで生じる問題」として、「AIの普及による教員の削減」という選択肢を選んだ回答者が一定数見られました。AIの進展が、教職の在り方そのものを変えてしまうのではないかという不安は、学生に限らず、現場の教員の間にも広がっていると考えられます。

実際、生成AIの進化は目覚ましいものがあります。2026年1月17日・18日に実施された大学入学共通テストにおいて、ChatGPTが9科目で満点を取り、解答した15科目全体の得点率が97%であったことがニュースとして報じられました(共同通信,2026)。一方で、2年前のITmedia NEWS(2024)では、当時の主要な生成AIの正答率はいずれも低く、正答率は最大で46%にとどまっていたことが報告されています。これらのニュースを比較すると、この短期間でのAIの急速な進化に、驚きを感じた方も多いのではないでしょうか。

そう考えると、「教師の役割がAIに置き換わってしまうのではないか」と感じてしまうことも、決して不思議ではありません。

一方で、筆者は、教師の役割が全てAIに置き換わってしまうことはないと考えています。それは、AIがどれほど高度に進化したとしても、教師という存在が担っている役割の本質は、「正確な答えを教えること」ではないからです。教師は、子どもが出した答えそのものだけを見て指導しているわけではありません。その答えに至るまでの迷いや戸惑い、考え込む時間、表情や態度の変化など、言葉として表れない部分も含めて、子どもの理解や状態を捉えています。こうした学習の「過程」を読み取り、次にどのような関わりが必要かを判断することは、現時点ではAIには難しい、教師の専門性の一つだと言えるでしょう。

むしろ、AIを使えば正確な答えを容易に知ることができるようになったからこそ、教師には、子どもたちが体験の中で気づき、学び、それを自分の力で応用できるような学習環境を整える役割が求められています。その意味では、従来の「教え込み」に比べて、教師にはより柔軟な指導力が求められるようになっているとも言えそうです。

加えて、AIの活用が進むことで、教師の仕事そのものが減るというよりも、仕事の「質」や「重心」が変化していくと捉える方が現実的でしょう。たとえば、イラストや動画教材の作成、学習成果の整理といった業務は、AIが得意とする領域です。一方で、AIから得られた情報をどのように解釈し、子ども一人ひとりの実態や背景と結びつけて指導に生かすかという判断は、依然として教師の専門性に委ねられています。AIは教師に取って代わる存在ではなく、教師の専門性を支える「道具」として位置づけることができるのではないでしょうか。

また、知的障害や発達障害のある子どもたちは、見る・聞くといった視覚・聴覚情報だけでなく、味わう、触る、嗅ぐといった五感を通した体験を手がかりに理解を深めていくことが少なくありません。特別支援教育の実践では、こうした体験に基づく理解の重要性が、これまでも繰り返し指摘されてきました。AIが示す説明や例示は、確かに分かりやすく、整理されているため、情報の検索においては効率的です。しかし、それだけでは子ども自身の身体感覚や生活経験と結びつかず、「分かったつもり」の理解にとどまってしまう危険性もあります。教師は、AIが提示する情報をそのまま用いるのではなく、子どもの実態に応じて内容や提示の仕方を調整し、実体験へと橋渡しする役割を担っています。

筆者が特別支援学校で教師として国語科の学習において形容詞を扱った際のことです。
授業では、テレビ画面に「ゾウ」と「アリ」のイラストを提示し、知的障害のある子どもに対して「どちらが大きいか」と尋ねました。すると、その子から返ってきたのは「分からない」という答えでした。そのとき私は、問題の意味が十分に伝わっていないのではないか、あるいはあまり深く考えていないのではないかと感じてしまいました。しかし実際には、その子は画面をじっと見つめ、時間をかけて一生懸命に考え込んでいる様子が見られていました。後日、保護者の方に話を伺って初めて分かったのですが、その子は動物園に行った経験がほとんどなく、ゾウを実際に見たことがなかったのです。つまり、「大きい」という言葉を判断するための具体的なイメージや実体験が十分に形成されていなかったという背景があったので 
  。

定型発達の子どもであれば、実際にゾウを見た経験がなくても、動画などを通して人と関わる様子を見たり、他の動物と比較したりしながら、「ゾウは大きい」と予想することができる場合が多いでしょう。一方で、想像することに困難さのある子どもにとっては、文字情報や視覚情報だけでは理解に至らない場合も少なくありません。実際に目の前で見たときの威圧感や、鼓膜に響く鳴き声、鼻を突く独特の匂いといった感覚的な情報は、AIが進化を続けたとしても、十分に再現することは難しいでしょう。

この事例は、子どもが「分からない」と示した反応の背景に、経験や感覚に基づく理解の手がかりが不足していた可能性があることを示しています。教師には、その子どもにとって「分かる」とはどのような状態なのかを丁寧に見極め、必要に応じて体験や感覚的な手がかりを補いながら、理解が立ち上がる環境を整えていくことが求められます。

このような関わりは、特別支援教育に限ったものではありません。通常の学級においても、子どもたちの理解の背景や経験は実に多様です。AIによって誰もが同じ説明や正解に容易にアクセスできる時代だからこそ、「その子は、何を手がかりに理解しようとしているのか」「どこでつまずいているのか」を読み取り、学びを個別化・具体化する教師の役割は、むしろ一層重要になっていると言えるでしょう。

AIは、教師の仕事を奪う存在ではなく、教師の専門性を映し出す「鏡」のような存在なのかもしれません。AIの得意なことが明確になるほど、教師が担うべき教育の本質もまた浮かび上がってきます。AIが教育現場に広がる今こそ、私たちは改めて、「教師にしかできない仕事とは何か」を問い直す時期に来ているのではないでしょうか。

【引用文献】
山崎智仁・齋藤大地・水内豊和(2025)知的障害特別支援学校におけるAI活用に関する全国調査.日本LD学会第8回研究集会(沖縄),発表論文集.

共同通信(2026)チャットGPT、9科目満点 共通テスト解答、AI学力向上. (参照日 2026.01.21)

ITmedia NEWS(2024)AIは予想より“ポンコツ”だった? 共通テストの数学、ChatGPTでも平均点未満という結果に驚く.(参照日 2026.02.01)

◇山﨑 智仁
山口県立大学 社会福祉学部 社会福祉学科 講師。臨床発達心理士。
特別支援教育を専門とし、知的障害のある子どもを中心に、ICTや生成AIを活用した教育支援の実践・研究に取り組んでいる。
特別支援学校教員としての勤務経験を経て現職。
近年は、AI時代における教師の専門性や倫理的配慮を踏まえた支援の在り方について検討を重ねている。



■□ あとがき ■□--------------------------
3月10日-12日にインテックス大阪(大阪市住之江区南港北1-5-102)でのメディカルジャパン大阪 介護・福祉EXPO の児童発達支援・放課後等デイサービスフェアに出展します。
小間番号は11-14です。レデックスブースで読者の方にお目にかかることができたらうれしいです。

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