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第2回 AI時代だからこそ求められる「教師力」
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教師の働き方改革や教師支援の一つとして、筆者は近年、生成AIを活用した校務DXに関する研究に取り組んでいます。その背景には、授業準備や校務に追われる中で、「子どもと向き合う時間が十分に確保できない」という現場の切実な声があります。そこで、研究協力校の先生方から、日頃の校務に関する困りごとや要望を定期的にアンケートによって聞き取り、それらを踏まえて生成AIの調整を行い、現場に提供するという形で研究を進めています。
■ 連載:AI時代だからこそ求められる「教師力」
■□ 連載:学校現場で出会う、不器用さのある子どもたち(1)
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■ 連載:特別支援教育から考えるAIとの付き合い方第2回 AI時代だからこそ求められる「教師力」
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教師の働き方改革や教師支援の一つとして、筆者は近年、生成AIを活用した校務DXに関する研究に取り組んでいます。その背景には、授業準備や校務に追われる中で、「子どもと向き合う時間が十分に確保できない」という現場の切実な声があります。そこで、研究協力校の先生方から、日頃の校務に関する困りごとや要望を定期的にアンケートによって聞き取り、それらを踏まえて生成AIの調整を行い、現場に提供するという形で研究を進めています。
その中で、特に多くの先生方から寄せられている要望の一つが、「学習指導案作成を支援するAI」の提供です。学習指導案は授業の質を左右する重要な資料である一方、作成には多くの時間と労力を要し、特に若手教員にとっては大きな負担となりがちです。このAIは、そうした負担を軽減するために、ChatGPTなどの生成AIに学習指導要領の内容や学習指導案の基本的な構成・作成手順を意図的に学習させ、それらを参照しながら学習指導案の叩き台を作成できるようにしたものです。
もちろん、特別な調整を行わなくても、ChatGPTのような一般的な生成AIに指示を入力すれば、学習指導案を作成すること自体は可能です。ただし、その内容は必ずしも十分な精度や妥当性を備えているとは限りません。そのため、入力するデータやプロンプトを工夫・調整することで、学習指導要領との整合性や現場の実態に即した内容を、より反映させた指導案を生成しやすくなります。
また、生成AIは、教育委員会や学校などがインターネット上で公開している学習指導案を含め、膨大で多様な情報を学習データの背景として持っています。そのため、単なる形式的な文章ではなく、単元構成や指導の流れ、評価の観点などを踏まえた、一定の質を備えた学習指導案を短時間で提示することが可能です。この点は、日々多忙な現場の教員にとって、大きな魅力の一つであると言えるでしょう。もちろん、そのまま使用できる完成形が出力されるわけではありませんが、ゼロから学習指導案を作成するのに比べれば、構成を考える負担や書き出しの心理的ハードルは大きく下がります。
一方で、このAIを実際に活用していく中で、見過ごすことのできない問題も明らかになってきました。それが、生成AIによるハルシネーションです。ハルシネーションとは、AIが事実とは異なる内容や不正確な情報を、あたかも正しいかのように生成してしまう現象を指します。こうした内容は非常に「それらしく」提示されるため、専門的な知識がなければ誤りに気づきにくいという特徴があります。
学習指導案作成支援AIにおいても、提案される課題内容が、実際の学習指導要領の趣旨や範囲から微妙に外れているにもかかわらず、一見すると妥当なように見えてしまうケースが確認されました。例えば、特別支援学校(知的障害)の国語科では、「俳句」は中学部の第1段階から取り扱う内容とされており、小学部では扱わないことになっています。しかし、生成AIは小学校の学習指導要領なども含めた膨大なデータを背景として学習しているため、特別支援学校小学部の学習指導案に対しても、違和感のない形で「俳句」を扱う指導案を提案してくるのです。そのため、学習指導要領の内容を十分に把握していなければ、教師はこの提案が誤りであることに気づくことができません。
要するに、AIを活用するということは、元となる内容を教師自身が十分に理解していること、そしてAIの提案を批判的に吟味し、ファクトチェックを行えることが前提となります。AIが示す内容が「正しいのか」「適切なのか」を判断できなければ、AIを使いこなすことはできず、かえって教育の質を損なう可能性すらあるのです。さらに言えば、「教師力」が十分でなければ、そもそもAIが提案した指導案が学習指導要領の内容に準拠したものであったとしても、どの部分が子どもの実態に合っておらず、どのように修正すれば教育的効果が高まるのかを判断することは困難です。
こうした点は、先行研究においても指摘されています。黒田(2024)は、「特別支援学校教員アシストAI」の開発と評価を通して、AIの活用が教員に新たな視点やアイデアをもたらす一方で、的確な質問力や、AIの回答を判断するための教員の知識と経験が、AI活用の成否を左右する重要な要因であると述べています。これらを踏まえ、筆者は、AI時代だからこそ、教師にはこれまで以上に専門性が求められるようになると考えています。AIの進化によって教師の役割が縮小するのではなく、むしろ教師の専門性そのものが、これまで以上に問われる時代に入ったのではないでしょうか。
本来、生成AIは誰でも利用できる道具です。しかし、AIを教育的に意味のある形で活用できるかどうかは、使い手である教師の専門性に大きく依存します。AIは、専門性の不足を単に補うための代替手段として機能するものではありません。むしろ、教師一人ひとりがこれまでに培ってきた専門性や経験を広げてくれる存在だと考えることができます。AI時代とは、教師の専門性が不要になる時代ではなく、教師の専門性をより生かしやすくなる時代なのではないでしょうか。
【参考】
黒田一之(2024)「特別支援学校教員アシストAI」の開発と評価.日本教育工学会2024年春季全国大会発表論文集,327-328.
◇山﨑 智仁
山口県立大学 社会福祉学部 社会福祉学科 講師。臨床発達心理士。
特別支援教育を専門とし、知的障害のある子どもを中心に、ICTや生成AIを活用した教育支援の実践・研究に取り組んでいる。
特別支援学校教員としての勤務経験を経て現職。
近年は、AI時代における教師の専門性や倫理的配慮を踏まえた支援の在り方について検討を重ねている。
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■ 連載:特別支援教育を担う先生たちを応援したい ~教員養成に関わる大学教員の立場から~第3回 学校現場で出会う、不器用さのある子どもたち(1)
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授業や学校生活の中で、学習に困っていたり、作業が苦手だったりして、支援が必要なお子さんに出会うことがあります。そのようなお子さんの姿を見ていると、体を動かすことや、手先などの細かい動きをすることなどに苦手さがあることがあります。
今回は、そのような不器用さがあるお子さんの姿やその支援について考えてみたいと思います。
1 手先の不器用さがあるお子さん
普段の学習の場面で、文字がマスからはみ出る、文字の形が崩れがちになる、音楽のリコーダーが苦手、コンパスの扱いがうまくできない、などの状態が見られる場合、手先の不器用さや手と手の協調運動に躓きがある場合があります。
そのようなお子さんには、まずは何が苦手なのかをアセスメントして、できること、難しいことなどを明らかにしながら、対応できる支援を考えていくことが大切です。
例えば、コンパスを扱うには、一番上の持つ場所を持ち、針を円の中心としたい場所にしっかりと差し込む必要があります。そして、手首を返したり指で捻るような動きをしたりして円弧を書く方の先端を紙から離さずに”くるっ”と回転させる必要があります。また、その時の非利き手の動きも重要です。紙を動かないように押さえたり、利き手の旋回を補うように紙を少し動かしたりなどの動きが必要になります。
これらの動きが難しい場合には、洗濯バサミをつけ外す遊び、揺れる積み木を積み上げるような遊びによって、力まかせではなく力をコントロールすることを引き出すような遊びが考えられます。両手の協応動作が難しいときには、「右手は~、左手は~」と、言葉掛けをしていくとうまくできることがあります。
リコーダーの苦手なお子さんも、リコーダーの穴を指で塞ぐことが難しく、隙間が空いていたり、思ったところの指の操作ができないことがあります。また、息の吹き込みが一定でないために音が揺れる、吹き込みが強すぎたために音が外れる、など、皆と同じような音が出ないと、本人も恥ずかしい思いをして、やりたくなくなってしまうこともあります。
音にあう穴の押さえ方は覚えられているか、押さえた時、隙間がないように押さえられているか、などを確認し、支援を工夫していくことが大切です。
また、本人へのボトムアップ的な支援だけではなくて、利用しやすい道具を使用するようなトップダウン的な支援も大切です。少し、扱いやすい用具があればできたり、やる気が起きたりもします。
例えば、コンパスでは、今では書きやすい工夫がされたコンパスは文具屋さんなどでも市販されており、さまざまなタイプがあります。リコーダーも、穴の周りに貼り付けるクッション性のあるシールのようなものや、リコーダー自体に、穴を塞ぎやすくしてある物もあります。
合うものを選んで使ってみることができるといいですね。
2 目と手の協応動作に苦手さがあるお子さん
不器用、と言っても、次のような様子が見られた場合は、ただ手先が不器用なだけではなくて、目と手の協応動作に躓きがあることがあります。
折り紙を折ると端と端が揃わない、文字を書くと点画と点画の接点がずれているなど、乱雑に見える文字を書いていることがある場合です。
このような場合には、目で捉えた位置や形などの情報と手の動きを連動させることが困難であることが予想されます。そういうお子さんの場合、思ったところに針が刺せなかったり、半径を測るためにコンパスを広げても定規にうまく合わせられなかったりします。
例えば、ビジョントレーニングによって、目の動きを高めたり、ジェンガのように目で見たところにぴたりと操作するような動きを取り入れた遊びをするなどが有効な可能性があります。目の動きと、手先のコントロールの両面を高めていくような関わりが有効となると思われます。
ビジョントレーニングは、ある程度の期間継続して取り組むことで成果が現れやすいと思われます。ただし、「トレーニング」は、苦手な部分へのアプローチであり、繰り返すことによって成果が現れるような取組です。それをやり続けるには、相当の意識や覚悟なども必要となるかもしれません。ただただしんどいトレーニングは、なかなか続くものではありません。
「昔遊び」などは、遊びの中に目を動かす動きがたくさん仕組まれていたり、目と手の協応動作が必要だったりして、遊びの中でトレーニングできるようなものが多いですね。お手玉やこままわしなど、楽しみながら取り組めるといいですね。
3 まとめ
このような実態に合わせて、取り組みやすいグッズを見つけるのも楽しいですが、工夫を凝らして、作り出すことも面白いですね、子どもたちは、遊びの中でアイデアを出し、変幻自在に遊びも変化します。子どもたちにそういった工夫をお任せしてみるのも楽しんでくれるコツとなるかもしれません。
私は、現役の教員の時には、よく百円ショップへ出かけていました。百円ショップは、面白アイデアの宝庫と感じるくらい、いろいろなものを見て考えるのが楽しく、自作の教材などを作ったものです。
この動きが引き出せそうかな? これを使って何か遊びができないかな? などと考えを巡らせて、自作グッズを試してみるのも、支援者も子どもたちも楽しめることにつながるかもしれませんね。
次回は、不器用さの、その他の要因についても考えてみたいと思います。
◇岡野 由美子(おかの・ゆみこ)
奈良学園大学人間教育学部准教授
元公立小学校教員、兵庫県特別支援教育センター主任指導主事、兵庫県教育委員会事務局播磨西教育事務所主任指導主事を経て現職。
特別支援教育士SV、認定専門公認心理師。
■□ あとがき ■□--------------------------
次回は、2月13日(金)の予定です。



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