乳幼児に大切な運動って?!ADHDセルフケア物語 議員連盟総会に行ってきました

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2024.05.17

乳幼児に大切な運動って?!ADHDセルフケア物語 議員連盟総会に行ってきました

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■   まえがき
■□  新連載:乳幼児に大切な運動って?!
■□■ 連載:議員連盟総会に行ってきました
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■□まえがき ■□--------------------------
今回から乳幼児の運動について、東京女子体育短期大学教授の土井晶子先生から連載していただきます。
土井先生は、文京学院大学 修士課程(人間学)を修了した後、アメリカの大学でレクリエーション・野外教育を学ばれました。現在は東京女子体育短期大学こどもスポーツ教育学科で保育・幼児教育を教えておられます。
また、(社)くにたち子どもの夢・未来事業団理事、NPO法人むさしっ子の会理事も務めておられるなど、子どもに関わる様々な活動に取り組んでおられます。


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■ 新連載:乳幼児に大切な運動って?!
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我が子をプロスポーツ選手にしたいと考え、幼児期から特定のスポーツを始めることがテレビで紹介されるのを見ることがあります。例えば、タイガー・ウッズは、生後1年に満たないときからゴルフ
クラブを握っていたという話がテレビで話題になったこともありました。これに触発された親も少なからずいたかもしれません。しかし、早い時期から特定のスポーツのみをすることは、子どもの発達にとって本当にいいことなのかという疑問があります。

子どもの動きの発達の視点から運動を考えると、0~2歳で「移動運動の技能」が獲得され、それがベースとなり2~6歳で「基本運動の技能」が獲得されます。移動運動の技能とは「這う」「歩く」で、基本運動の技能とは「走る」「跳ぶ」「登る」「つかむ」「投げる」「押す」「蹴る」などの動作になります。

生後半年を過ぎる頃から子どもは「這う」動きができるようになり、1歳を迎える頃には見事な「はいはい」を披露してくれます。そして、「つかまり立ち」から「独り歩き」へと進み、1歳半を迎える頃には「歩く」動作をほぼ獲得することになります。この「這う」「歩く」といった移動運動は、興味のあるものに近づきたいという子どもの知的好奇心が動機づけとして関与しています。
さまざまな環境にアクセスし、五感で感じ取り多くの情報を脳に蓄積していくことで、子どもの知的好奇心は高まります。何らかの理由からこの時期の子どもの移動運動を制御してしまうと、さまざまな環境へアクセスする機会が減少し、多様な刺激が脳に入力する回数も減少し、知的側面の発達にも影響が出ることがあります。何もない広い場所で移動運動するということではなく、子どもが興味や関心のあるものに近づきたいと思うような環境を整えることが大切になります。

移動運動の技能の獲得ができるようになると、それをベースにさまざまな動きを獲得するようになります。幼児期の基本運動の技能を調べた研究(引用・参考文献1)で、84種類のもの動きが観察されたことが報告されています。幼児期運動指針ガイドブックでは、この84種類の動きのなかで幼児期に経験する基本的な動きの例※として28種類の動きを挙げています。

※ 幼児期に経験する基本的な動きの例 幼児期運動指針ガイドブック(引用・参考文献2)


幼児期の神経系の発達は「6歳ごろまでに大人の約90%に達する」といわれており、多様な運動刺激を与えて、体内にさまざまな神経回路を複雑に張り巡らせていくことが大切になります。運動における基礎づくりの段階である幼児期には、特定のスポーツで同じ部位だけを動かすということではなく、発達の特性を生かしたさまざまな動きの獲得が重要になってきます。
基本的な動きの種類が増えていき「動きの多様化」がされると、タイミングよく動いたり、力の加減をコントロールしたりするなどの運動を調整する能力が高まり、普段の生活で必要な動きをはじめ、とっさの時に身を守る動きや将来的にスポーツに結び付く動きなど基本的な動きを多様に身に付けやすくなると言われています。     

基本的な動きは、その動きを習得することを目的にするのではなく、幼児期は日常生活やからだを動かす遊びなどのさまざまな経験の中で習得していくことが大切になります。例えば、日常生活では保育所等での食事の時間の配膳や椅子やテーブルの準備をしたり、午睡の布団を運んだりなど、これらの活動も運動ととらえることができます。
また、遊びの中で活発にからだを使う遊び(以下、運動遊びという)とは、走る、跳ぶ、投げる、転がる、泳ぐなど全身運動をともなう遊びや運動遊具、固定遊具を使う遊びなどです。幼児期の子どもにとって、運動遊びは身体的側面だけでなく、知的側面や社会的側面、精神的側面にも効果があります。例えば、知的側面では、「タッチされたら鬼になる」のようなルールや言語の仮定法の理解、上下や前後など空間的概念、「10数えたら交代」など数概念も発達していきます。社会的側面では、集団で遊ぶ中で、きまりやルールを理解し、それを守って遊ぶことができるようになります。また、精神的側面では、子どもはさまざまな直接体験の中で、行動の主体という形で自己が意識されます。特に「…ができる」という有能感は、幼児期の自己概念の内容として非常に重要な位置を占めると考えられています。

子どもが気づき、興味関心をもつ、そして自分から「やってみよう」という意思によって積極的に何かをしようと思い、実際にやってみるという子ども自身が主体的にものごとにかかわることがこの時期には大切になります。なぜなら、実際にやってみたら「できるようになった」という実感=有能感が、また新たな挑戦につながるからです。

この幼児期にさまざまな運動遊びを経験することで、獲得された「基本運動の技能」はその後に獲得されていく高度な運動技能獲得のベースになり、児童期以降の運動技能が洗練される段階にスムーズに移行できるようになります。遊びは子どもたちの生活そのものです。自分から動き、取り組んで遊ぶことで、健康な身体や自分で考え判断する力、創造する力を養います。幼児期にはからだを活発に動かして遊びましょう。

【引用・参考文献】
1)体育カリキュラム作成小委員会(1980)幼稚園における体育カリキュラムの作成に関する研究I:カリキュラムの基本的な考え方と予備調査の結果について,体育科学,8,150-155
2)文部科学省,幼児期運動指針ガイドブック
3)岩崎洋子編(2015)保育と幼児期の運動あそび,萌文書林

◆土井 晶子(どい あきこ)
学校法人藤村学園 東京女子体育大学・東京女子体育短期大学
こどもスポーツ教育学科(保育内容研究室) 



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■ 連載:ADHDセルフケア物語
             第2回 議員連盟総会に行ってきました───────────────────────────────────…‥
皆様、ゴールデンウィークはいかがお過ごしでしたか?新年度になり、環境が大きく変わった方もいらっしゃるかもしれません。ここでしっかり休養をしないと、体調を崩すことにもなりかねません。頑張るだけでなく、休憩もとても大切です。
 
ゴールデンウィーク前、永田町の議員会館で開催された「発達障害の支援を考える議員連盟総会」に行ってきました。現在の会長は野田聖子議員で、その他議連の議員やその代理の秘書のほか、各省庁の担当者の方々とともに、日本発達障害ネットワーク(JDDネット)からは代表他7名が参加しました。

この総会は 2004年5月19日、超党派で発足したものです。当初は私も毎年参加して何かしらの意見を言わせていただいていました。今年度は久しぶりに出席しました。そして、前回のメルマガでもご紹介した映画『ノルマル17歳。-わたしたちはADHD-』の紹介と、えじそんくらぶの「2Eの会」の設立について、3分間スピーチをさせていただきました。あらためて、多くの関係省庁にダイレクトにキーワードをお伝えする、とてもよい機会だと思いました。
 
皆様は「発達障害者支援法」をご存知だと思います。現在は色々なところで発達障害という言葉を聞くようになりました。学校現場での知的障害のない発達障害の子への合理的配慮や福祉就労など、いろいろな支援もできています。ですが、この総会が発足したころは何もなく、ADHDという言葉もほとんどの方が聞いたことがない状況でした。

そんな中、関係者でいろいろな意見を出し合い、問題を共有し、どうすれば発達障害をもつ方々が幸せに過ごしていけるかということを議論しました。アスペ・エルデの会のホームページに当時の状況がありましたので、引用させていただきます。
 
「NPO法人 アスペ・エルデの会」「NPO法人 えじそんくらぶ」「NPO法人 EDGE」「全国LD親の会」「社団法人 日本自閉症協会」(50音順)の5団体は、2005年に「日本発達障害ネットワーク」を設立するため、準備会を設置しました。
発起人5団体は、厚生労働大臣および文部科学大臣あてに、「発達障害者に対する今後の制度・施策に関する要望書」を提出しました。
これら一連の準備会議や記者会見などで5団体のトップは連日集まり、欧米から30年以上遅れている日本の、知的障害のない発達障害の支援について意見を表明しました。ロビー活動というものをはじめて体験したその当時のことが懐かしく思い起こされます。

そして、2004年12月3日、「発達障害者支援法」が成立し、現在の発達障害に関する様々な支援の土台が作られたわけです。この法律は、発達障害を定義し支援の必要性を明らかにするもので、以下のような点で画期的な内容でした。

・これまで日本では障害と認定されていなかった、知的障害のない軽度発達障害を障害と認め、必要な支援を行うと定めたこと

・発達障害の早期発見と早期療育、家族支援、さらに、保育、教育、就労といった生涯にわたる支援を、地域が主体で行うと示されたこと

・特別支援教育の推進で先行した文部科学省と厚生労働省の足並みがそろい、幼児期から成人までの一貫した支援が可能となったこと

・犯罪被害に逢いやすい発達障害者の権利擁護が明確に示されたこと

・福祉、教育、医療、保健、保育など、発達障害に関わる専門家の専門性の向上を計り、育成を行うと定めたこと
 
などがあげられます。今後もいろいろな問題は出てくるでしょうが、当事者や現場の皆さんが困っていることを伝えるスピーチができ、政策につながる発言の場があるということに感謝し、これからも頑張っていこうとあらためて思いました。
 
前回のメルマガでは、柳家花緑さんとの対談のご案内をさせていただきました。メールをいただいた方々、ありがとうございました。

私は柳家花緑さんとこれまでに4回対談をさせていただいています。はじめてお話したときの内容が、以下の小学館のサイトでご覧いただけます(花緑さんへのインタビューという体裁になっています)。
 
このとき、「私たち2人はLDがあって文字の読み書きは不得意だけれども、ラッキーなことにしゃべることが得意です。苦しい思いを伝えられない人もたくさんいるし、誤解されやすい状況を説明できない人もたくさんいる中、この特技を生かして代弁していきましょう」と話しました。花緑さんは「そうですね」と言ってくださり、意気投合。マネージャーさんに、「高山恵子との対談系のイベントは最優先で予定を組むように」と指示を出して下さいました。それが、前回ご紹介したえじそんくらぶの25周年記念の対談につながったわけです。本業もおありの中、ありがたいことだと思います。

私たちは話すことで、ある種の問題解決をしてきました。発達障害があれば、トラブルは日常茶飯事です。大切なのはまず、失敗やトラブルを想定内にできているかどうかです。そして、自分に合った問題解決方法を試行錯誤しながら見つけること。もちろん、発達障害がなくても問題解決力は大切です。生きるとは、ある意味問題解決の連続といえるかもしれませんね。

大企業のコンサルティングでも使われている、「空―雨―傘」のフォーマットという、問題解決法があります。空を見て雨が降りそうだったら、傘の準備をする。このフォーマットを問題解決のスキルとして、事前の準備に使えるようになったら、発達障害があってもQOLは高められると思います。
 
5月22日のえじそんくらぶの夜間講座では、問題解決をテーマにお話します。ご興味のある方は、ぜひご参加ください。私の失敗&リカバリーのスキルを詳しくお話しする予定です。
 
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成人ADHD等の理解と対応 第21期夜間講座
「発達障害のある人が過剰適応せず、QOLを高め自己実現力を高める方法」
 
第5回「問題解決のスキル:コミュニケーションのトラブルを減らす工夫」(オンライン講座)

【日時】イベントは終了しています
2024年5月22日(水)19:30~21:00
(講座:19:30~20:40、Q&A:20:45~21:00)

【参加費】
1回分 会員 /学生 1,500円 一般2,500円 
 
【講師】 
高山恵子(NPO法人えじそんくらぶ代表。臨床心理士。薬剤師)

【対象】 
ADHD等発達障害のある方、その傾向のある方、そのご家族、支援者、学生(高校生以上。親子で参加する場合は小中学生も可能です)。2E、ギフテッド、自己理解・他者理解、合理的配慮などに興味のある方。

【テキスト】
『発達障害の人が自己実現力をつける本 社会に出る前にできること』(講談社 税込1650円)

【定員】
70名 

●ご入金後、欠席の場合の返金はできませんが、代理の方の参加は可能です

◆高山恵子 
NPO法人えじそんくらぶ代表。
臨床心理士。薬剤師。
昭和大学薬学部 兼任講師。
アメリカトリニティー大学大学院修士課程修了(幼児・児童教育、特殊教育専攻)、同大学院ガイダンスカウンセリング修士課程修了。
児童養護施設、保健所での発達相談やサポート校での巡回指導で臨床に携わる。
AD/HD等、高機能発達障害のある人のカウンセリングと教育を中心に、ストレスマネジメント講座等、大学関係者、支援者、企業などを対象としたセミナー講師としても活躍中。また、中央教育審議会専門委員や厚生労働省、内閣府などの委員を歴任。
これまでの経験を生かし、ハーティック研究所を設立。最新刊『発達障害・愛着障害・小児期逆境体験(ACE)のある親子支援ガイド』(合同出版)等、著書多数。
 
 

■□ あとがき ■□--------------------------
次回は、5月31日(金)の刊行になります。

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