強度行動障がいを有する者等に対する支援について

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2021.11.05

強度行動障がいを有する者等に対する支援について

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■   まえがき
■□  寄稿:強度行動障がいを有する者等に対する支援について
■□■ 新連載:一人でも多くの子どもがスポーツを好きになるサポートを家庭から
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■□ まえがき ■□--------------------------
今号は、寄稿と新しい連載です。
寄稿は、強度行動障がいの研修を多数実施している白石浩一氏に、障がいについての解説と、支援の現状と課題についてまとめていただきました。
連載は、シリーズ「子どもゆめ基金のデジタル教材」の続きです。
教材は、保護者がスポーツを「上手く出来るためのコツやヒント」を子どもに教えることが出来るようになるための映像教材です。執筆は、2012年から札幌市を中心にスポーツ&カルチャーを無料で体験できるイベントを企画運営しているスポカル実行委員会の本田一輝氏です。

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 ■ 寄稿:強度行動障がいを有する者等に対する支援について
          ~強度行動障がい支援者養成研修を日本で一番多く実施した経験を踏まえて
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今回、強度行動障がい支援者養成研修の実施についての実態やその印象についてお話をいただく機会をいただき誠にありがとうございました。私自身の自己紹介としましては、子どものころより家族に障がいがあり、その中で育ったことで高校卒業後は介護・医療・障がい福祉分野で30年ほど働いております。また、福岡県指定養成機関に認定された株式会社エイドとして、強度行動障がい支援者養成研修※1を日本で一番多く開催してきました。また、私が関与するもう一つの団体、一般社団法人発達障害支援アドバイザー協会としても研修を実施しています。

※1 強度行動障がい支援者養成研修(厚労省)

強度行動障がいとは、精神的な診断として医学的に定義される群とは異なり、直接的他害(噛みつき、頭突き等)や、間接的他害(睡眠の乱れ、同一性の保持等)、自傷行為等が通常考えられない頻度と形式で出現し、その養育環境では著しく処遇の困難なものであり、行動的に定義される困りのことで、家庭にあって通常の育て方をし、かなりの養育努力があっても著しい処遇困難が持続している状態を表す言葉です※2。

※2 引用元:特定非営利活動法人全国地域生活支援ネットワーク/監修『行動障害のある人の「暮らし」を支える:強度行動障害支援者養成研修[基礎研修・実践研修]テキスト』中央法規出版 

1.研修制度

強度行動障がいがある人は日本全国に約8,000人程度いると言われています。この人たちの多くは重度の知的障がいや自閉スペクトラムの人で、本人の特性と環境のミスマッチが行動の問題をさらに大きくしてしまうことがある、と厚労省の報告※3では、指摘されています。

※3 強度行動障がいイメージ(厚労省)

自傷、異食、他害など、生活環境への著しい不適応行動を回数多く示すため、支援が困難であり、それへの対応が虐待につながる可能性が高いと厚労省の調査によりわかりました。これを踏まえ、また、適切な支援により状態の改善が見込まれることから、専門的な研修により適切な支援を行う従事者を養成することが重要視されました。

このため、厚労省において平成25年度に、強度行動障がいを有する者に対する支援を適切に行う者を養成する「強度行動障がい支援者養成研修(基礎研修)」が創設されました。さらに、平成26年度には、「強度行動障がい支援者養成研修(実践研修)」が創設されました。これらのことから、強度行動障がいを有する児・者に対する適切な支援をすることが重要視されたと考えられます。

これらの研修の修了者については、平成27年度報酬改定において、短期入所、施設入所支援、共同生活援助及び福祉型障がい児入所施設の重度障がい者支援加算等の算定要件の一つとされました。更に平成30年度障がい福祉サービス等報酬改定※4において、生活介護、計画相談支援、児童発達支援、放課後等デイサービスについても当該加算が算定できるようになったことで、多くの福祉施設の職員が研修を受講するようになりました。

※4 障がい福祉サービスの体系(厚労省)

強度行動障がいを有する者に対する対応については、障害支援区分※5の認定では、認定調査項目※6の判断基準の留意点として「行動上の障がいが生じないように行っている支援や配慮、投薬等の頻度を含め判断する」と記載されており、そのため、「行動上の障がいが現れた場合」と「行動上の障がいが現れないように支援している場合」は同等の評価となります。つまり支援が適切に行われている状態とそうでない状態の場合、同一人物であるのにもかかわらず、認定調査項目の判断に影響を及ぼしてしまう可能性が生じてしまっております。

※5 障害支援区分(厚労省)

※6 認定調査項目80項目(厚労省)

強度行動障がい支援者養成研修が開始された当初は、各都道府県が直接開催する研修が年に1回若しくは2回程度あるという状況でした。各地の法人において受講を推薦する人数も1名程度に制限されていました。推薦される人は1年以上の実務経験者であり、かつ抽選で受講者を決めるほど受講者数に制限がかかっておりました。

こういった状況に一石を投じる意味で、社会福祉協議会や社会福祉事業団などではない株式会社エイドが研修を実施する許可を求めました。理由は少なくない数の施設に、研修により学んでいないことでの理解不足から生じる不適切な支援があり、それまでの研修実施のペースでは、多くの「困っている」当事者の方への適切な支援が迅速に届かないと考えたからです。

当社が研修を実施するようになり、実務経験者だけでなく、当事者のご家族も施設勤務予定ということで受講することができるようになりました。当社は杓子定規に知識や技術のみを伝えるのではなく、命に係わる職種に携わろうとする方々に対して、「想い」をのせて真剣に伝えようとしてきました。当社の研修を受けた方々からは、受講して良かった、もっと早く知っていればと後悔したというお声もいただいております。一部の養成研修機関においては、単に資格を付与するだけの機関になっているところもあると伝え聞きますが、これからも決してそのようなことにならないように努めたいと思います。

2.現状と希望

発達障がい児・者への支援の現状として、行動障がいなどを伴う重度障がい児・者を受け入れる事業者は残念ながらそれほど増加しておりません。原因としては、研修機関により有資格者となった方の知識・技術を十分に生かせる環境に現場がまだなりえていないことも考えられます。全体の職員が当社の研修を受講された施設の多くからは、支援が変わったことで利用者の方々の状態が変わり、行動障がいがかなり減少したとの嬉しい報告が得られています。

加算ありきで受講をさせている一部の事業者では、基礎研修だけ受ければいい、実践研修は受けさせないとはっきり言われるところも残念ながら多いです。適切な支援を学ぶ意義について考えているのかと疑問に感じることもあります。当社では、基礎研修と実践研修は両方とも受けていただくように推奨しております。基礎研修では支援計画書の作成方法やその具体的な考え方までは学べません。例えば何故ここは声掛けでなく見守りだけなのか、その際の見守りはどういったことに注意するのか、それらはどのような背景を考慮しているためかなど重要なことは、実践研修において話すことで理解が深まるからです。

強度行動障がいを呈する人は激しい行動障がいを頻繁に繰り返します。そのため、何をしてもそうなると職員が誤解をしてしまってることがあります。本人の本来持つ能力を適切に評価してその能力を活かし、その方の特性や強み、そして興味・関心を示すことを把握してスモールステップで自立へ向かう伴走ができる方を育てられればと思っております。日ごろから行動を観察して、そこから得られる支援のアイデアをスタッフだけでなく当事者のご家族や関係機関とも共有してチームアプローチすることができる人を育てることが大変重要だと感じております。そうすることで、日常生活や社会生活などの暮らし全体を支援することになると考えております。

私がこの研修を通して一貫してお伝えしていることの一つに、本人に努力をさせなくても、環境・状況を本人の特性や強みに合わせて変えることで変わることがあるということです。本人が努力する支援だと明日も継続できるかは本人次第となります。極論すれば、不安定な支援といえるかもしれません。それに比較して、本人が努力をしなくていい支援であれば、本人はいつもと同じ生活をしているだけなので、支援の継続は可能になりやすいと思います。まずは、本人が努力せずにできる支援は何か、本人をよく観察して本人の特性と合った環境・状況とは何かを見出すことが大切ではないでしょうか。

最後に、強度行動障がい支援者養成研修の実施機関としてのお話をとのことで今回は寄稿致しました。この研修が特別なものではなく誰もが学ぶものの一つとして広く受け入れられ、当事者である本人やご家族の方の気持ちも含めた暮らしが変わるきっかけになれば幸いです。

◆白石浩一
一般社団法人障害福祉推進機構代表理事
一般社団法人発達障害支援アドバイザー協会代表理事
株式会社エイド代表取締役
エイドケアキャリア株式会社代表取締役


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 ■ シリーズ:子どもゆめ基金のデジタル教材
           新連載   :一人でも多くの子どもがスポーツを好きになるサポートを家庭から
                          第1回 「出来ないから出来るへ!親子で学べるスポーツコーチングガイド」ができるまで
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ほとんどの保護者の方はお子さまに算数の足し算を教えることが出来ますが、皆さんは鉄棒の逆上がりやマット運動の後転をお子さまに教えることが出来るでしょうか?

私達は、スポカルを運営している関係でたくさんの指導者とつながりを持つなか、とある指導者の方との打ち合わせ中にふとそんな話になりました。その指導者は、主に中学生を対象にバスケットボールを教えているのですが、その方の話によると「部活動の顧問の先生は非常に一生懸命指導してくれているのだが、中学校からバスケットボールを始めた子ども達は運動が苦手ではないのに、いまいち上手くバスケットボールが出来ていない。よくよく観察してみたら体の使い方やコツをつかめていないので、個々にコツを指導したら上達のスピードがあがった。」とのことでした。その話を聞いて、もしかしたら、運動が苦手と思っている子ども達に体の使い方やコツを教えてあげれば上手く出来るケースが増えるのではないか?と思いました。

それからいろいろと調べてみたら、スポーツ庁の「子どもの体力向上のための取組ハンドブック」※7に、子どもたちの体力は、昭和60年(1985年)と比べ依然として低い水準にあり、ハンドブックの第2章6に「体の動かし方のコツが分かった」→「上手く出来た」→「スポーツが楽しい」→「運動機会の増大」→「体力向上」のサイクルが非常に重要であることが指摘されていました。

※7 子どもの体力向上のための取組ハンドブック(文部科学省)

これは裏を返せば、上手く出来ないから運動が得意ではないと思い込んでいる、または、運動が好きではない子どもが相当数いるということではないかと思いました。上手く出来ないから嫌い。すごく当たり前のことのように聞こえますが、運動に関しては、上手く出来るようになるためのフォローやケアが手薄ではとも感じました。

子ども達が主に運動するのは学校の体育の時間や部活動です。しかし、学校の体育の時間や部活動ではどうしても全体指導がメインとなり、子ども一人一人にコツや体の使い方を教える時間が足りないのかもしれません。上手くなるためには、繰り返し練習することが大事かもしれませんが、速く走るための体の使い方を知らない子どもが繰り返し練習してもタイムはあがらず好きになることは稀かもしれません。逆上がりをするための体の使い方を知らない子どもはどうしても上手く出来なくて諦めてしまうかもしれません。

・子ども達の身近な存在である保護者は、その時どうしているでしょう?
 
子どもの運動会や試合に一生懸命声援を送ったり、ビデオを撮ったりしている姿をよく見かけます。運動会のリレーでも部活動の試合でも子ども達は一生懸命です。運動会のリレーの前に、勝ちたいから走る練習をする子どももいるのではないでしょうか?野球の試合でヒットを打ちたいから家で素振りの練習をする子どももいるのではないでしょうか?逆上がりが出来るようになりたいから練習をする子どももいるかもしれません。でも、保護者は算数の足し算は教えられるけれど、鉄棒の逆上がりのコツを教えられる保護者はほとんどいないのではないでしょうか?

・子ども達の一番身近な存在である保護者が自分の子どもに教えられたら
 
周りの保護者にもいろいろと聞き取りをしましたが、想像どおり、一番身近な存在の保護者が自分の子どもに教えることが出来ない。なかには、自分も逆上がりが出来なかったという保護者の方もいらっしゃいました。また、保護者がその運動の経験者であっても、例えばバスケットボール経験者であってもその保護者がバスケットボールを教えられるのは数十年前の技術です。それから技術も指導法も大幅に進化していて、保護者達がならった時代とは大きく違ったりしています。わかりやすい例を挙げると、部活動中に水分をとらせてもらえなかった時代の指導法しか知らない保護者が多くいらっしゃいます。

様々な指導書も調べましたが、プレーヤー向けの指導書は「こうしなさい」と書いてあり、上手く出来ない場合は、ここがこうなっていたら上手くできない、といった説明が一言も書いていない指導書がほとんどでした。そして、指導者向けの本は専門的で、保護者が読むには重たすぎるモノばかりでした。

また、子どもが上手くなりたいと自主練をしたとしても、間違った体の使い方のまま練習をしても上達のスピードはあがりません。わかりやすく言うと、算数の公式を間違ったまま覚えていた場合、何問計算しても答えは×になるように、間違った体の使い方でシュート練習をしてもシュートの成功率が上がらないのと一緒です。

そこで、私達は、子どもが少しでも上手く運動が出来るようになりたいと自分で練習する時に、保護者の方が上手く出来ていない部分を改善するアドバイスができるようになるための指導書的な教材があればいいと考え、教材開発を進めました。

・出来るだけわかりやすく上手くできるコツを教えられるように
 
私達が開発した「出来ないから、出来るへ!親子で学べるスポーツコーチングガイド」※8は運動を上手く行う以前に、まずは正しい姿勢・歩き方などを解説した「正しい姿勢・体づくり」から、体を思ったようにコントロールするためのコーディネーション能力を養う「頭と体のウォーミングアップ」から始まります。

※8 出来ないから、出来るへ!親子で学べるスポーツコーチングガイド 

正しく立てていない子どもは正しく歩くことが出来ず、当然正しいフォームで走ることは出来ません。運動が上手く出来ない子どもは往々にして姿勢が崩れていることがあります。特に、最近はスマホやゲームに向き合う時間が長いため普段の生活習慣で姿勢が崩れている子どもが多いように感じますので、是非、確認してみることをオススメします。

その他は、かけっこ、とび箱、鉄棒、マット運動や、野球、サッカー、バスケットボール、バレーボール、テニス、バドミントン、卓球、スキーの基本動作などが上手く出来ないケースについて、正しい動作と比較して解説しています。極力、難しい専門用語などは使用せず、未経験者の保護者の方にもわかりやすく解説しています。ぜひ、お子さまが上手くなりたいと頑張って練習する時や上手く出来ていない時には、お子さまと一緒に活用していただければと思います。

この教材が一人でも多くの子どもの運動に対する苦手意識をなくし、運動を楽しめるようになる一助になれば幸いです。


◆本田一輝
スポカル実行委員会 実行委員長 
株式会社セブンスギア 代表取締役
2012年より北海道札幌市を中心にスポーツ&カルチャーを無料で体験できるイベント「スポカル」を企画運営。スポカルは、年間で約8万人強の来場者がある親子に人気のイベントに成長。野球・バスケ・サッカーなどのメジャースポーツからセパタクローやスポーツチャンバラなどのマイナースポーツやダンス・書道・茶道・ヨーヨー・けん玉・ドローンなどのカルチャーも一度に体験出来るのが特徴の無料イベントです。

■□ あとがき ■□--------------------------
次号は、11月19日(金)の予定です。

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