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タブレット活用が合理的配慮につながるプロセスは?

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● 連載:タブレット活用が合理的配慮につながるプロセスは?
● 連載:親に寄り添うこと「養育者支援」
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● 連載:タブレットPCを使って読み書きを楽に楽しくするために
第3回 タブレット活用が合理的配慮につながるプロセスは?
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「合理的配慮」という言葉をご存知でしょうか。2016年4月に「障害者差別解消法」が施行され、学校教育においても障害のある児童・生徒が教育に参加する際に、障害により生じている制約が原因で十分に学ぶ機会を得られない場合には、本人からの申し出に応じ、その参加を保障するための合理的配慮を提供することが公立学校※に義務付けられました。

※東京都においては、2018年10月に「東京都障害者への理解促進及び差別解消の推進に関する条例」(パンフレット(詳細はこちら>>))が施行され、公立学校だけでなく私立学校でも合理的配慮の提供が義務化されています。

合理的配慮は配慮提供者側に過度な負担にならない範囲で、本人が教育に参加するために必要なルールの変更調整(=ルールに例外を設ける)を行うために話し合いをすることを指します。

合理的配慮とは特定の支援を指すわけではありません。ここにはときおり誤解があります。それは、書字障害だからワープロ利用を認める、視覚障害だから点字利用を認めるなど、今までの障害カテゴリ(視覚障害、聴覚障害、肢体不自由、発達障害といった枠組みのこと)に応じて特定の支援があるという誤解です。

しかし、合理的配慮は話し合いを始める前に決まっているものではありません。障害のある人が障害がなければ当然参加できる活動に、障害を理由として参加に制限がある・参加ができないという場合に、参加ができるように本人とその活動の担い手とで話し合いをして、合意を作ってください、というものです。

したがって、合理的配慮のための話し合いは自動的には始まりません。本人が自分はこういう場面でこのように困っていると伝えること、こういう変更や調整をしてほしいと伝えることが始まりとなります。

この連載「タブレットPCを使って読み書きを楽に楽しくするために」では読み書きの困難さをタブレットPCで補うことに焦点を当ててきました。読み書きの特異的困難をディスレクシアと言います。ディスレクシアはその困難さを目で見ることができない障害です。そのため学校や保護者、時には本人でさえもその困難を障害※として認識していない場合があります。

※障害という言葉は現在、「個人の能力の問題(障害の個人モデル)」として捉えるのではなく「社会の仕組みの問題(障害の社会モデル)」として捉えるのが適切だと考えられています。読み障害を「文字が読めない個人の状態」と捉えるのではなく、「情報が紙の印刷物に書かれた文字を読むことでしか得られない学校や社会の仕組みの問題(アメリカにはプリントディスアビリティ(印刷物障害)という概念があります)」と捉えることが適切です。

[参考記事]
・平林ルミのテクノロジーノートALT, 「障害を社会の仕組みから捉え直してみよう」
(詳細はこちら>>

・障害の社会モデルについては、東京大学バリアフリー開発研究センターがイベントの企画等、さまざまな取り組みをしていますので、ウェブページをのぞいてみてください
(詳細はこちら>>

そのため、本連載第1回・2回でお示ししたようにタブレットPCを学習の中に取り入れながら、子ども本人の自己決定を尊重しながら、タブレットPCの活用を考えていく必要があります。

それでは、本人がタブレットPCの活用を経験した上で、学校での具体的な学習場面で使用することを自己決定した場合、次のステップはどのようなものになるでしょうか。ここからが合理的配慮を得るために話し合いをしていくというプロセスになります。

[ステップ1 学校に申し出る]

どのような困難が日常の学校において生じていて、どんな配慮が必要なのかを学校に相談しましょう。 学校での学習活動は、大きく宿題場面・授業場面・テスト場面の3つがあります。どの場面でどのような困難が生じており、具体的にどういった配慮が必要なのかを学校の方に申し出ます。申し出る先は、担任の先生でもいいですし、その他、各学校には特別支援教育コーディネーターという調整役の先生が必ずいますので、特別支援教育コーディネーターに連絡するのもよいでしょう。

[ステップ2 学校と話し合う]

学校への申し出を行ったら、学校と話し合いがスタートします。申し出の内容が了承され、具体的に配慮をどう実現させていくかという話が進んでいけばそれでよいのですが、時には、「その配慮がどうして必要なのか、その根拠を示す」というステップが必要になる場合があります。

「その配慮がどうして必要なのか、その根拠を示す」ステップというのは、具体的には専門機関に行って、評価(知能テストや読み書きテスト)を受け、診断を医師に書いてもらう等を示します。ここで注意が必要なのは、合理的配慮を学校が提供するために医師の診断は必須ではないということです。専門機関に行き、評価を受けることは、学校の理解を得るためのの一つの選択肢ではありますが、それを学校が要請してしまうと、専門機関に行くことができない場合や評価を受けられない場合には合理的配慮が受けられないということになってしまいます。それは、この障害者差別解消法の理念に合っていません。

個人的には、普段の学習での配慮について学校と話し合いをする場合と、高校受験や大学受験を受ける際の配慮では、「その配慮がどうして必要なのか、その根拠を示す」というステップの重みが異なると思っています。今後このあたりの議論が進んでくると、小学校・中学校といった初等中等教育での合理的配慮のプロセスが具体化していくと思います。今は、まだ進行中でいろいろな議論が生まれているところと言えるのではないでしょうか。

[ステップ3 周囲に説明する(注意:周囲への説明は必須ではありません)]

実際に学校で合理的配慮の内容を決定する際に、子どものプライバシーを尊重することはとても大切です。しかし、通常の学級でみなと同じ教育にアクセスするために、どうしてもその障害が周囲にあらわになってしまうことを避けられないという場合があります。特に、タブレットPC等のICT機器は未だ学校の中で子どもたちが自由に使用出来るものではありません。そのため、教室内で使用していれば、目立ってしまうことは避けられません。したがって、学校の先生はその子どもがなぜ ICT機器を使用するのかを 他の子どもたちに説明しないことには、他の児童生徒が それを不公平であるという感情を持つことを招きかねないため、秘密裏に配慮を提供することができないという問題があります。

だからといって、学校側が「周囲に説明しなければ使用させない」としてしまえば、本人の学ぶ権利が守られません。どのように周囲の理解を得ていくのか、説明するとすればどのようなことばで説明するのか、本人と学校とで一つ一つ相談して進めていくことが大切です。

また、「周囲の子も同じようなニーズを持っているかもしれないから使用は許可できない」という考えもまた誤りです。合理的配慮は本人からの申し出を尊重し、話し合いを進めます。ですから、「周囲の子も同じようなニーズを持っているかもしれないから使用は許可できない」という考えは、本人からの申し出がないのに勝手にニーズを汲み取っているという点で問題があります。

実際に読み書きが苦手な子どもに対してタブレットPCの活用を認めている学校では、周囲に説明する際に「他にもタブレットPC利用を希望している人がいたら先生に言ってきてください」と付け加えるという工夫をしています。これによって「学校は窓口を開いていますよ」と伝えることができるので、もし他に希望を持つ子どもがいれば、そこから話し合いをしていくことができます。こういった形で周囲の理解を得るための工夫もしながら合理的配慮の話し合いを進めていくとよいでしょう。

タブレットPC等のICT機器を必要とする子どもたちが通常の学級でICT機器を利用して自然に学ぶためには「個人にはそれぞれに合った方法で学ぶ権利がある」ということを本人・先生・クラスメイトが理解していくことが大切です。

[読み書きを補うICT活用・合理的配慮に関するおすすめの書籍]

〇スマホ・タブレットを学習に役立てる視点

・中邑賢龍・近藤武夫. (2012). 『発達障害のある子を育てる本 ケータイ・パソコン活用編』. 講談社

〇学校でのICTを活用した合理的配慮の実際について

・近藤武夫編著(2016):『学校でのICT利用による読み書き支援?合理的配慮のための具体的な実践』.金子書房

〇合理的配慮に関して

・川島 聡・飯野由里子・西倉実季・星加良司 (2016). 『合理的配慮―対話を開く, 対話が拓く』. 有斐閣

平林 ルミ (ひらばやし るみ:Hirabayashi Rumi)
東京大学先端科学技術研究センター
Research Center for Advanced Science and Technology, The University of Tokyo

 

● 連載:児童虐待の脳への影響
第4回:親に寄り添うこと「養育者支援」
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1.要支援家庭とは?

要支援家庭とは「保護者の状況、子どもの状況、養育環境に何らかの問題を抱え、それを放置することで養育が困難な状況に陥る可能性がある家庭」を意味します。保護者が自ら支援を必要と考えていない場合も含みます。要支援家庭には、既に虐待が起こっている家庭、虐待のリスクを抱えた家庭、育児不安や負担感を抱えた家庭など、さまざまな段階があります。※表1

虐待(疑いを含む)は「保護者(親または親に代わる養育者)から、児童が以下の行為を受けている・あるいは受けていると推察される状態」です。介入的支援が必要です。

┌--------------------
│1.身体的虐待
│ 身体に暴行を加えられる
│2.性的虐待
│ わいせつな行為をされたり、
│   行為をさせられたりする
│3.ネグレクト
│ 養育行為の放棄や保護の怠慢により
│ 心身の発達を妨げられる
│4. 心理的虐待
│ 心理的な外傷を与える言動を
│ 浴びせられる
└--------------------

「気になる親子」とは、「1. 虐待につながりやすいハイリスクな要因がある親子、2. 親子関係などに、何らかの不自然な様子が感じられる親子」を意味し、虐待の予防的支援が必要です。

※表1 児童虐待に至るおそれのある要因(リスク要因)

┌--------------------
│1.保護者側のリスク要因
│・妊娠そのものを受容することが困難
│ (望まぬ妊娠、若年の妊娠)
│・子どもへの愛着形成が十分に
│ 行われていない。
│ (妊娠中に早産等何らかの問題が発生
│ したことで胎児への受容に影響がある。
│ 出産後の子どもの長期入院など)
│・マタニティブルーや産後うつ病など
│ 精神的に不安定な状況
│・元来性格が攻撃性・衝動的
│・医療につながっていない精神障害、
│ 知的障害、慢性疾患、
│ アルコール依存、薬物依存
│・被虐待経験
│・育児に対する不安やストレス
│ (保護者が未熟等による)
│・体罰容認などの暴力への親和性

│2.子ども側のリスク要因
│・乳児期の子ども
│・未熟児
│・発達障がい児
│・何らかの育てにくさを
│ 持っている子ども

│3.養育環境のリスク要因
│・未婚を含む単身家庭
│・内縁者や同居人がいる家庭
│・子連れの再婚家庭
│・夫婦関係をはじめ人間関係に
│ 問題を抱える家庭
│・転居を繰り返す家庭
│・親族や地域社会から孤立した家庭
│・生計者の失業や転職の繰り返し等で
│ 経済不安のある家庭
│・夫婦不和、配偶者からの暴力
│ (ドメスティクバイオレンス)など
│ 不安定な状況にある家庭
│・定期的な健康診査を受診しない
└--------------------

2.家庭環境や親子関係の問題を気づいた場合、どのように対応すべきか?

子ども家庭支援センター、保健所・保健センター、児童相談所に相談(通告)してください。

(1)市町村の子ども家庭支援センター

市町村における子供と家庭に関する総合相談窓口であり、18歳未満の子供や子育て家庭に関するあらゆる相談に応じます。来所の他、電話・ファックス・メールでの相談も可能です。

○子どもと家庭の問題に関する総合相談窓口。
○虐待の事実確認、児童相談所への連絡、相談事業。
○子育てサークル、一時保育やショートステイなどのサービスや情報提供。

市町村の地域特性に応じて、保育士、社会福祉主事、臨床心理士などの専門職が配置されています。

(2)市町村の保健所・保健センター

○ 母子の健康に関する総合窓口。
○ 相談事業、母子の状況調査、フォロー。
○ 健康診査、家庭訪問、健康相談など。

医師、薬剤師、歯科医師、保健師、診療放射線技師、臨床検査技師、歯科衛生士、管理栄養士などの専門職が配置されています。

(3)児童相談所

○療育手帳の発行。家庭訪問、18歳未満の児童に関する子育て相談・指導。
○グループ活動、親子教室(ことばの遅れのある子ども、自閉症など)。
○ 虐待の事実確認、児童の一時保護、児童と保護者の指導、児童を乳児院などの児童福祉施設へ入所させる、里親への委託などの措置。

児童福祉司、児童心理司、精神科医などの専門職が配置されています。

(4)要保護対策地域協議会(要対協、「子どもを守る地域ネットワーク」)のこと)

虐待ケースに関わる場合、要対協のシステムは重要です(表)。児童福祉法に「要保護児童」、「要支援児童(とその保護者)」、「特定妊婦」を保護、あるいは支援する協議会を作ることが定められていて、全国の自治体に設置されています。その子どもや親に関わる機関の人たちで、子どもが虐待されないよう、あるいは親が虐待しなくても済むようにするには何が必要かを検討します。

虐待に関する問題は、一つの機関で対応できるものではありません。複数の関係機関が情報を持ち寄り、今後の対応を検討する必要があります。尚、ここでの協議には守秘義務が課せられていて罰則規定もある一方で、秘密漏示罪(守秘義務違反)には問われることはなく、法的に守られています。

(5)地域の子育て支援ネットワーク

要支援家庭の抱える問題が複雑になるにつれて、1つの機関だけで支援を行うことが困難になります。各機関にはそれぞれの役割と専門性がありますが、ネットワークを活用することにより各機関の特色を活かしながら、多角的な視点で適切な子育て支援を行うことができます。医療機関、母子保健事業、子ども家庭支援センター、児童相談所、保育所・幼稚園、学校、児童館、民生児童委員、福祉事務所、警察、NPOなど、様々な支援方法と役割分担をすることによりサービスが重層的に行われるよう留意します。

要支援家庭と判断する方法や関係機関につなぐ基準、フォローの方法などについては、地域の関係機関と連携していくためにも具体的に説明できるように内容を「可視化」することを心がけることが重要です 。

(6)親に寄り添う(養育者支援)

子どもの虐待の通告や対応件数は増え続けています。少なくとも虐待が減っているということはありません。保育や学校で子どもに関わる立場の人は、子どもがその親から虐待をされていることを知ると、「とんでもない親だ」と感じるのも無理のないことです。しかし、そういう親御さんも元は虐待されたり放ったらかしにされたりしてきたのかもしれません。

今この瞬間にも、全国で心の病を抱えながら虐待もしてしまう人たちがいます。本当は、そういう親になりたいなど思ってもいないし、そういう子育てだけはしまいと思っていたにもかかわらず。ましてや、そういうことをする親になろうと思って生まれてこられたわけではありません。

私は、そうした「虐待をしてしまう親」は、幼少期から虐待を受け、不適切な養育環境に育ちながらも、必死に懸命に生きぬいてこられた“サバイバー”であると思います。私たちは、この“サバイバー”の方々に敬意を払い、そしてその方が“子どもだった過去”と、“親になった現在”の状況や心のありように思いを馳せながら接すること、すなわち養育者支援が重要であると思っています。

※文献
友田明美. 「子どもの脳を傷つける親たち」, NHK出版, 2017.
友田明美, 藤澤玲子.「虐待が脳を変える?脳科学者からのメッセージ」, 新曜社, 2018.
友田明美. 「脳を傷つけない子育て マンガですっきりわかる」, 河出書房新社, 2019.
厚生労働省「子ども虐待対応の手引き」(平成25年8月改訂版)(表1).

友田 明美 (ともだ あけみ:Akemi Tomoda)
福井大学 子どものこころの発達研究センター
Research Center for Child Mental Development, University of Fukui

 

● あとがき
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