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タブレットPCを使って読み書きを楽に楽しくするために

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● まえがき
● 新連載:タブレットPCを使って読み書きを楽に楽しくするために
● 連載:暴言虐待・体罰・DV目撃による脳への影響
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● まえがき
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編者は、ATACカンファレンス※という研究会に何度か参加し、平林ルミさんの活動に注目するようになりました。この度、連載をしてくださることになり、とても喜んでおります。ご本人に自己紹介をお願いしたところ、以下のメッセージを寄せていただきましたので、そのまま掲載させていただきます。

※ATACカンファレンス (詳細はこちら>>

〇平林ルミさんからのメッセージ

読み書きが苦手な子どもたちがその困難をタブレット等のテクノロジーで補い、楽に・楽しく学ぶための研究を大学でしています。読み書き計算は学ぶための手段ですが、それを習得すること自体が教育の目的ではありません。教育におけるテクノロジーの利用もまた手段であって目的ではないといつも心に留めています。

それぞれの子どもが自分にあった学び方が選べる教育を目指して、まずはより多くの人にテクノロジー活用について知っていただけるようにブログ(平林ルミのテクノロジーノートALTはこちら>>)で情報の発信もしています。

 

● 新連載:タブレットPCを使って読み書きを楽に楽しくするために
第1回 タブレットPCを紙と鉛筆の代わりに使う
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学習障害の中でも読み書きの困難を抱えた人はディスレクシアと呼ばれます。ディスレクシアの子どもは文字の読み書きが全くできないわけではありません。読めるけれどもたどたどしい、読めるけれども正確に読めないなど、読みの困難さを例に挙げてみても、それは一つの軸で測ることはできず、複層的なものです。さらに、一旦はある漢字の読み方を覚えたにもかかわらず、時間が経つとそれを忘れてしまうという定着の問題をもつ場合もあります。したがって、ディスレクシアの子どもに対して、「全く読めないわけではないから、努力し続ければ追いつくはず」という考え方は正しい理解ではないでしょう。ディスレクシアの中核には“文字の形”と“その文字が表する音”を連合させることの難しさがあるといわれています。文字の形と音の連合を作る難しさの程度はそれぞれの子どもによって異なるため、読み書きの苦手さも濃い薄いというグラデーション状になっていると考えられます。

子どもがことばを身につける場は生活の中です。他者とのコミュニケーションを通じて少しずつことばを身につけていきます。しかし、文字の読み書きは生活の中で身につくものではありません。子どもは小学校1年生から文字の学習をはじめます。文字を学ぶ機会がなかったり、十分に練習をしなかったりした場合は読み書きできるようにはなりません。そのため、ディスレクシアの人は、その困難を有する本人でさえも自分の困難さを認識しないまま自分の努力が足りないのだと自分を責め、支援が求められないでいる場合があります。ディスレクシアは目に見えない障害なのです。したがって、保護者や教師がディスレクシアを理解し、支援していく必要があります。

ディスレクシアへの支援として、近年、タブレットPCなどのテクノロジーを活用する方法が注目を集めています。紙の印刷物はこれまで、情報を得たり表出したりするために社会の中で広く使われてきました。小学校・中学校においても紙の教科書を読んで、紙のノートに手書きでメモをしたり、答えを手書きで書き込んだりすることは一般的です。このように教育が紙中心で行われてきたのは、紙以外の方法がまだ身近にはなく、高価であったために選択肢として挙がらなかったためと考えられます。

しかし、近年の科学技術の発展により、スマートフォン(以下、スマホ)やタブレットPC(以下、タブレット)等のICT機器が身近なものとなり、情報は紙の印刷物だけでなく電子媒体で閲覧したり、記録されたりするようになりました。スマホ・タブレットを学びに取り入れていくことで、ディスレクシアの子ども達の学ぶ環境を大きく変えることができます。本を目で見て読むことが難しいならば、文字を音声化してそれを耳で聞いて読むことで情報が得られる(音声読み上げという技術を用います)、文字を手書きすることが難しいならば、ワープロのキーボードで文字を打ち込んで表出することで、考えを表出することができるという考え方です。

スマホ・タブレットといったハード面の普及だけでなく、教科書等の教材の電子化も進んでいます。紙の教科書を読むことが難しい子どもには、紙の教科書の代わりに音声でその内容を読み上げる教科書(通称、音声教科書)が無償で提供される仕組みがあります。音声教科書の提供は「障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律(教科書バリアフリー法)」に基づき、現在4つの団体が音声教材(マルチメディアデイジー教科書、Access Reading、音声教材BEAM、ペンでタッチすると読める音声付教科書)を提供しています。4種類の音声教材のうちマルチメディアデイジー教科書※1と、Access Reading※2は、教科書の内容を音声で読み上げる以外に文字の大きさや、文字色や背景色といった文章の見た目を個人の特性に合わせて変えることができます。

※1 日本リハビリテーション協会 (詳細はこちら>>

※2 東京大学先端科学技術研究センター (詳細はこちら>>

このような教材を用いることで、教科書を音読するのが苦手な場合には教科書の内容をまず音声で聞いておいて、それを繰り返して言えばスラスラ読めます。そうすることで教科書の内容があらかじめ頭の中に入っているので、安心して授業が受けられるのです。

ICT機器は、文字を書くのに苦労していて学校でノートを書き写すのが間に合わない、そんな子どもにも役立ちます。ノートアプリ※3に黒板の写真を入れて、その上からワープロを使って文字を打ち込んだり、プリントを取り込んで解答を書き込むことも簡単にできます。

※3 例えば、iOSだとUPADやGoodNotes、OneNoteなどが便利です。

おすすめのノートアプリなどの情報は、下記のブログを参考にしてください。

※4 平林ルミのテクノロジーノートALT (ブログはこちら>>

読み書きに苦労している子どもが、紙と鉛筆の代わりにタブレットを利用する時に大切なことは何でしょうか。3つポイントがあります。

まず1つ目のポイントは、子ども自身が操作方法を知っていることです。タブレットの読み書きを補う機能やアプリをまず家庭で使ってみてください。使い方がわからなければワークショップに参加したり、インターネットで調べて使い方のビデオを見たりするのもいいですし、学校にタブレットの操作に詳しい先生がいれば力を借りるのもいいでしょう。

2つ目の大切なポイントは子どもと大人が一緒にタブレットを使って遊ぶことです。子どもにタブレットを渡すと多くの子どもは面白がってタブレット上のいろいろなボタンを押していきます。大人はそれを見ると大人が考えるタブレットの正しい使い方を教えたくなってしまいます。ここで大人が正しい使い方を教えたくなる気持ちをぐっとこらえ、一緒に遊ぶことが大切です。例えば、以下の図を見てください。

※図 (画像はこちら>>

この図は、ある子どもが情報を整理するためのマッピングツールを使って人の形の絵を描いたものです。大人としては、マッピングツールは作文を書くのに役に立つのだから、遠足でどんなことがあったか心に残ったことを書き出してほしい、という気持ちがあります。しかし、子どもはそんな大人の気持ちをよそに大人が想定していない方法でマッピングツールを使い、絵を描いたりします。 このとき、大人はぐっと我慢しなければなりません。大人のやり方を押し付けるのではなく、子どもが何をしようとしているのか、観察しましょう。そしてできればそれを一緒にやってみましょう。子どもはマッピングツールの枝を「自由に配置して動かせる」ということを学んでいるのですから、もっと他の絵を描いてみようと一緒に遊ぶことが大切です。そうすると、例えばプログラミングに興味がある子どもがプログラムの構造を書きたいけれど手書きでは書くのが難しい、そんな場面で自分からマッピングツールを使いはじめることがあります。

3つ目のポイントは、「子どもが参加する活動を設計してタブレットを活動の中で使う」ということです。活動を設計する、というと難しく聞こえるかもしれませんが、身近なことから「自分にとってこれは必要なんだな」と感じる瞬間を作ることが必要です。

例えば、学校の授業での板書が手書きでは間に合わないからカメラをメモツールにするのがいいのではないかと大人が考え、実践した時に何が起こるでしょうか。カメラがあればメモができてとても便利だとすぐに活用できる子もいますが、自分からは板書をカメラで撮影しないとか、カメラで撮影して帰ってきたけれどそれを家では全く見返さないという子もいます。そのような場合、その子はメモの便利さを知らないのかもしれないし、学校の板書を家で見返したくないということかもしれない、いろいろな可能性が考えられます。まず、家庭でできることとして後から見返したい情報は写真で撮っておけば便利だということを生活の中で子どもに教えておくということが大切です。

そこで、「スーパーで特売のひきわり納豆3個パックと単4の乾電池を4個を買ってきて」などと子どもに買い物ミッションを依頼しましょう。少し長めの指示にして複雑にしないと子どもが覚えてしまう場合がありますので、少し難しくします。子どもがメモを取らずに買い物に行こうとしても、止めずにぐっと待ちます。何かを買い忘れて帰ってきたら、「次はカメラでメモを撮っていこうね」と、一緒にスーパーの広告の写真を撮ります。そして、次の機会にまた買い物ミッションを子どもに依頼して様子を見る、ということを繰り返します。それによって、覚えられそうにない情報はあらかじめメモをするという行動と、そのメモを必要なときに見返すという行動が子どもの中から自発的に出てくるようになります。カメラがメモツールとして活きるということになるのです。

日常生活の中ではなかなか余裕がないという場合もあるかと思いますが、まずは、3つのポイントを参考に、子どもたちと楽しくタブレットで活動をしてみてください。

平林 ルミ (ひらばやし るみ:Hirabayashi Rumi)
東京大学先端科学技術研究センター
Research Center for Advanced Science and Technology, The University of Tokyo

 

● 連載:児童虐待の脳への影響
第2回 暴言虐待・体罰・DV目撃による脳への影響
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〇暴言虐待の脳への影響

親が暴言を子どもに対して日常的に浴びせる行為は、精神的虐待として米国では高頻度に通報されます。こうした体験をもつ子どもには過度の不安感、泣き叫び、おびえ、睡眠障害、うつ、引きこもり、学校にうまく適応できないなど、さまざまな問題がみられます。

母親から「ゴミ」と呼ばれたり、「お前は生まれてこなければよかった」というような言葉を浴びせられたり、物心ついたころから暴言による虐待を受けた1,000人近い方を集めて、脳を調べました。その結果、スピーチや言語、コミュニケーションに重要な役割を果たす脳の聴覚野という部分が変形していることがわかりました。※図1

※図1 VBM法による暴言虐待経験者の脳皮質容積増加
高解像度MRI画像 (Voxel-based morphometry) による、小児期に暴言虐待を受けた若年成人群(21名)と健常対照者群(19名)との脳皮質容積の比較検討。被暴言虐待群では左聴覚野 (22野) に有意な容積増加を認めた。(カラーバーはT値を示す。)

容積の増加は、聞こえなどに影響があることが予想されます。なぜなら、聴覚野のシナプスの刈り込みが進まず、込み入った枝葉が茂ったままになっていると考えられるからです。被虐待者たちは聴覚路を認知的な理解やコミュニケーションのためというより、ヒトの声の中に警戒のサイレンを聞き、反射的に対処するために発達させてきたのではないでしょうか。

言葉の暴力は、身体の表面には傷をつけませんが、心や脳に傷をつけるのです。

〇激しい体罰の脳への影響

小児期に過度の体罰を受けると、非行を繰り返す行為障害や抑うつといった精神症状を引き起こすことが知られています。しかしながら、過度の体罰の脳への影響はこれまで解明されておらず、また、体罰を受けたヒトの脳の形態画像解析もこれまで報告されていませんでした。一般に体罰はしつけの一環と考えられていますが、驚くべきことに「体罰」でも脳が打撃を受けることがわかりました。

厳格な体罰を受けてきた1,500人の調査では、心を司っている脳の前頭前野が影響を受けることがわかりました。※図2 前頭前野の一部で、感情や思考、犯罪抑制力に関わっている内側前頭皮質のサイズが小さくなっていたのです。この部分が傷害されると、うつ病の一つである感情障害や、非行を繰り返す行為障害などにつながります。体罰としつけの境界は明確ではありません。親はしつけのつもりでも、ストレスが高じて過剰な体罰になってしまう、これが最近の虐待数の増加につながっているのではないかと思われます。

※図2 VBM法による厳格体罰経験者の脳皮質容積減少
高解像度MRI画像 (Voxel-based morphometry) による、小児期に厳格体罰を受けた若年成人群(23名)と健常対照群(22名)との脳皮質容積の比較検討。被厳格体罰群では右前頭前野内側部(10野)、右前帯状回(24野)、左前頭前野背外側部(9野)に有意な容積減少を認めた。(カラーバーはT値を示す。)

〇両親のDV目撃による脳への影響

夫婦間の暴力を目撃させる行為が心理的虐待の一つにあたることが、児童虐待防止法でも定義されています。DV曝露を受けた子どもにはさまざまなトラウマ反応が生じやすく、知能や語彙理解力にも影響があることが知られていました。

私たちもハーバードの女子大生を対象に同じような研究を行ったところ、小さいときに両親の夫婦喧嘩を見て育った人たちのグループは、IQと記憶力の平均点が低いことを確かめています。

脳のMRIでは、視覚野が小さくなっていました。※図3 また悪い影響が一番出やすい時期は、11~13歳であることがわかりました。以上,これまで述べた被虐待者たちは,虐待の中でも単一なものを受けた者を意図的に選んで集めたものです。すなわち,異なる虐待カテゴリーの被験者は相互に重複していません。

※図3 VBM法によるDV目撃経験者の脳皮質容積減少
高解像度MRI画像 (Voxel-based morphometry) による、小児期に両親間の家庭内暴力(DV)を目撃した若年成人群(22名)と健常対照群(30名)との脳皮質容積の比較検討。 DV目撃群では右舌状回の容積が6.1%も有意に減少していた。(カラーバーはT値を示す。)

※文献 『新版いやされない傷―児童虐待と傷ついていく脳』 友田明美、診断と治療社、2012; 1-151。

友田 明美(ともだ あけみ:Akemi Tomoda)
福井大学 子どものこころの発達研究センター
Research Center for Child Mental Development, University of Fukui

 

● あとがき
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4月13日に長崎大学で開催された日本DCD学会大会で、レデックス株式会社が開発したデジタルサービス「感覚・動作アセスメント」を公開しました。その内容を多くの方に知っていただきたく、名古屋と東京で講演会を開催します。講師は、原案・監修者の岩永竜一郎・長崎大学大学院教授です。

また、それぞれ同日の午後に、放課後等デイサービス等での個別支援方法についてのセミナーを行います。講演会、セミナーとも下記からお申込みください。定員は講演会100名、セミナー40名ですが、各会場とも半数以上の席が埋まっていますので、なるべく早めの申し込みをお勧めします。

〇5月12日名古屋 講演会&セミナー (詳細はこちら>>
〇5月19日東京 講演会&セミナー (詳細はこちら>>

さらに、複数学年の教材を自由に選べるサービスを提供する「すららネット」と共催で、放課後等デイサービス経営者セミナーを開催します。下記チラシに記載の「脳バランサーキッズ×すらら」セミナー申込書でお申込みください。

〇すららネット共催セミナー 5月10日名古屋、5月22日大阪、5月29日東京
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次回メルマガは、5月17日(金)です。