間違いだらけのビジョンセラピー

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2019.03.22

間違いだらけのビジョンセラピー

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● 連載:間違いだらけのビジョンセラピー
● 連載:人的環境のユニバーサルデザインとは
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● 連載:視覚認知発達検査とビジョンセラピーの実際
第4回 検査結果の見立てとその後のフォロー ー間違いだらけのビジョンセラピーー
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最終回の今回は出力部分の苦手さとその後の見立てについてお話ししたいと思います。また、トレーニングについてよく質問をいただく、眼球運動トレーニングについても少しお話しさせてください。

「ビジョンセラピー」や「ビジョントレーニング」という言葉が浸透してきた昨今、書籍も増え、多くの機関でトレーニングが実施されています。実際にビジョントレーニングを取り入れている学校や放課後デイサービスなども増えてきたようですね。そのような中、間違ったトレーニングや、効果が期待できないトレーニングを続けている機関があることを、その機関の利用者から報告していただいています。利用者のことを考えると、それらには注意が必要だと感じています。

視覚からの情報の処理は(1)入力 (2)情報処理 (3)出力とお伝えしてきました。(3)の出力については前回、視知覚技能検査のうちの、運動協応課題※1やDEM-RJのNCT※2の部分で少しご説明しました。今回は検査結果から出力部分に問題がみられたケースの、その後の対応についてお話しします。

※1 運動協応課題 視覚認知検査のうち、「目と手の協応」や「模写」など、運筆を伴う課題を指します。目の動きと手先の動きの協応課題です。

※2 NCT Number coping Test for far and near の略、近見視写検査と遠見視写検査です。遠くの指標を書き写す課題と近くの指標を書き写す課題です。

連載の第1回にお伝えしたように、当センターにはオプトメトリストやビジョンセラピスト、心理士の他に、作業療法士、言語聴覚士、特別支援教育士も在籍しています。検査結果から、視機能や眼球運動、視覚認知等に問題がない読みの苦手さを持つケースは、言語面の精査とその結果を踏まえ、言語聴覚士がその後の療育をサポートします。

運筆をはじめとする書字に関する苦手さは、前回ご説明したように、主に「手と眼の協応」と「模写」からなる運動協応視知覚技能課題や、板書写しやノートテイクをみるNCTの結果を基に、その後を見立てます。このようなケースは、視機能および視覚認知に精通している作業療法士がさらに掘り下げ評価をして、トレーニングの組み立てを行います。トレーニング初日はM-ABC※3やVMIの発達評価などをベースにし、当センターで独自に開発した検査項目を通して主訴に沿いながら多角的に評価していきます。

※3 M-ABCは、DCD(発達性協調運動障害)の評価のため、神経心理学的観点から開発されたテストバッテリーです

運筆と書字の出力部分には様々な要因が関与します。身体イメージやボディバランスをみるために、Standing Angel In The Snow検査※4の結果や上下肢の固着の有無なども併せて評価していきます。例えば丸、四角などの基礎図形では、机に突っ伏してその図形を見ると、その形は楕円に見えたり、長方形に見えたりと、見る方向でその形の認知は変化していきます。このように、姿勢保持の重要性も非常に高く、検査時の様子、姿勢保持力なども重要であり、評価の対象になります。

※4 Standing Angel In The Snow検査 視覚情報を遮った状態で、触刺激のみで身体イメージが取れているかを確認する検査

Moro反射※5やSTNR※6、ATNR※7などの残存は視知覚や視覚認知にも大きく影響する可能性は高く、これら反射の残存も確認していきます。三歳児検診など、低年齢時の検診が充実している我が国においては、反射の残存は大変稀であると多くの小児科の先生は言われます。しかし、発達特性のためか、幼少期に評価できず、発見されずに就学をむかえたケースが、当センターでの精査で多く見受けられます。

※5 Moro反射 モロー反射。大きな音、眩しい光、その他体が瞬間的に傾いた時など、乳児が外から大きな刺激を受けた時に起こる原始反射です。

※6 STNR 対称性緊張性頸反射 原始姿勢反射の一つ。顎が上がると上肢が伸展し、下肢が屈曲します。反対に顎が下がると上肢が屈曲し、下肢が伸展します。

※7 ATNR 非対称性緊張性頸反射 顔の向いている側の腕と足は伸ばし、反対側は屈曲する。評価のポイントは首の向き。

静的な視覚刺激への対応とは別に、動的な刺激や自身の体を動かしながら指標を認知することなどをターゲットとする、「ダイナミックビジョントレーニング」※8も大変重要です。

※8 静的な視覚刺激への対応とは別に、動的な刺激や自身の体を動かしながら指標を認知することなどをターゲットとしたトレーニングを指します。

ADHDと書字表出の苦手さの合併が高いためか、最近は書きの苦手さを主訴に受診される方々が大変多くなっております。実際、このダイナミックビジョンセラピー枠は、現在一番予約が取りづらくなっております。そのため、初回のトレーニングで粗大運動やボディバランス、姿勢保持、さらに書字の基礎である運筆に課題のある就学前児童のケースについては、必要なトレーニング課題を保護者にお伝えするなどして、地元の療育センターと連携していくケースも増えています。

H君は就学前の6歳の児童です。書字の苦手さを訴え、手指操作の苦手さについて地元の療育センターにて療育実施してきましたが、療育効果があまりみられないことや、書字の際に眉間にシワを寄せ、見にくそうに対応していたことなどから、一度見え方を確認するようにと療育センターから紹介され、当センターを受診されました。

視覚認知発達検査の結果から、軽度の遠視性乱視とDTVP-3の下位検査「手と眼の協応」に大きな苦手さが確認された為、ダイナミックビジョントレーニングへとつながりました。※資料1は実際の検査結果です。視知覚技能検査の結果からは視覚情報を取り入れる課題、非運動性課題に苦手さはないことが確認できます。検査の結果とその後の評価などから、H君には手指操作の苦手さに加え、STNRの残存と眼球運動に課題がみられました。その後眼鏡処方、STNRと眼球運動のトレーニングを実施し、書字の苦手さは大きく改善されました。

※9 DTVP-3 前回紹介した視覚認知発達検査のうち、視知覚技能を評価する検査項目です。運筆課題を評価する運動協応視知覚技能と非運動性視知覚技能を確認する下位検査で構成されています。

※資料1 H君の検査結果 (画像はこちら>>

通常書字の苦手さがみられるケースでは、手指操作や手首のコントロールなど、直接動きに関する問題点に着目しがちですが、書字には手の運動の他に、その動きを抑制する能力も大きく関与します。特に細部が見えにくい場合は、終点意識が難しくなります。その為、このケースでは遠視の対応と姿勢保持の要因であったSTNRの為のトレーニングが有効だったと考えます。

私たちはものを書く際、指と鉛筆の先を眼がリードします。指でコントロールされた鉛筆はその先をいく視線を追うことで、丁寧な文字を書くことが出来ます。もちろん文字の構成には空間関係や視覚閉合力などといったイメージ力も大きく関与しますが、この協応がうまく働かないと、始点と終点が揃わない図形になったり、書いた文字のバランスの悪さにつながります。

このようなケースには視線を素早く動かす衝動性眼球運動のトレーニングなど、全体を瞬時に確認し視線を指標に合わせるスキャニングの練習が効果的です。このスキャニング力にはナンバータッチなどの名前で知られている課題が有効です。最近は携帯アプリなどにも数多くでていますので、楽しくトレーニングできるようになりました。

眼の動きが良くなってきたら、点結び課題を用い、実際に鉛筆を持った練習に移ります。この際、見ている(注視している)ところに手を持って行くことを意識し、注視している点できちんと鉛筆を止めることを伝えます。運筆のコントロールについてはこのあと迷路課題や線の模写などさらに手先の運動が関与する課題へと移行して行きます。慣れてきたら迷路課題はスタートからゴールまで一筆書きをするように指導すると、視線が先に移動することを意識できるでしょう。また、これらには追従性の眼球運動も必要になるため、併せてトレーニングしていきます。

このように、運筆と書字の基礎である「手と眼の協応」課題には手指操作以外にもたくさんの問題が関与します。その要因を検査時の様子やその結果を整理し、本当に必要なトレーニングや配慮点を考査することが我々療育者の最重要課題であると考えます。

視覚情報の取り入れの苦手さには眼球運動トレーニングの重要性は高く、眼球運動はビジョントレーニングの入り口であるといっても過言ではありません。

例えば読みに苦手さを訴える児童を評価し、その後のトレーニングを考える場合には、(1)基本的な眼球運動に苦手さがあるのか、(2)文字を読む際のみに苦手さがみられるか、それとも(3)眼球運動はあまり関係なく、形の情報を音の情報に変換するDecodingに苦手さがあるのか、さらには、(4)視覚認知の問題で字詰まり文字を読むことに問題があるかなどを十分に判断しなければなりません。

例えば(1)の問題であれば、1スケール法※資料2 や基本的な衝動性眼球運動のトレーニングは有効です。基本的な眼球運動練習では、声にあわせたり、メトロノームの音に合わせて視線を動かしていくような受動的な刺激に合わせてトレーニングを行います。

※資料2 1スケール法 (画像はこちら>>

(1)の基本的眼球運動には問題はないのに、音読時に行の飛ばしや、どこを読んでいたかわからなくなるような(2)のケースでは眼球運動トレーニングも能動的な練習が必要になります。このようなケースでは、新聞の記事の端と端の文字だけを読み進める「Column Saccade」や「とびとび読み」、「とびとび迷路」※資料3などでトレーニングすることが大変有効です。

※資料3 とびとび読み、とびとび迷路 (画像はこちら>>

眼球運動は自身の手が届く距離では動きは滑らかですが、そこから遠ざかるにつれて次第に難しくなります。そのため、課題の難易度の設定には 1.手に持って実施、2.資料を壁に貼り、手を伸ばしても届かないくらいの位置に立って行うと有効です。さらにバランスボードに乗った状態で読み進めたり、片足立ちで実施すると目の自動性も高まり、さらなる向上が期待できます。

(3)のケースは上記したようにDecodingの練習が必要になるため、視覚認知ではなく、言語面の指導が必要になる為、ここでは割愛させていただきます。

(4)のケースは視機能には問題はないにも関わらず、文字が潰れてみえると訴えることなどが特徴です。このような場合にはフォントの大きさやその種類を変えることで読みの苦手さが改善されるケースが多いです。さらに重複して(2)の眼球運動にも問題がある場合には、使用する課題の指標を読みやすい大きさのフォントに変えた練習課題を取り入れると高い相乗効果が期待できます。この字詰まりなどから読みの苦手さを訴えるケースでは併せて細部認識力が乏しいことが多くみられます。このような場合は、同図形発見や間違いさがしなど、市販の視覚認知課題のドリルなどを取り入れることも大変有効です。

このように読みに苦手さをもつ児童の眼球運動のトレーニングといっても、その療育法は多岐にわたります。苦手さの本質に着目していかなければトレーニング効果は低下します。

以前、某療育センターから眼球運動の指導について助言をもらいたいと要望があり、見学に行ったことがあります。ボール運動や読みの苦手さをもつ児童らを対象に眼球運動のトレーニング時間を設けていらっしゃるとのことでしたが、実際のトレーニングの内容は先生が目前の数人の児童に対してキャラクターの指標を持った状態で「さぁ、みんなでこのキャラクターを見続けましょう!」というものでした。ボール運動と読みに関する眼球運動はそれぞれ異なるばかりではなく、数メートル離れた手に持った指標を追い続けることだけでは、それほど大きな眼球運動は行われない為、トレーニング効果には大きな制限がかかります。

また、他の施設では音読の前にクラス全員に輻輳(寄り眼)のトレーニングを実施していました。調節性内斜視やその他眼位異常のあるケースでは、視機能を悪化させるケースもありますので、注意が必要です。

療育や学習の場面では、グループ指導は時間の短縮や効率性の問題などを加味すると大変貴重なものです。しかし、基本の眼球運動に問題がないにも関わらず闇雲にそのトレーニングを継続したり、間違ったトレーニングの取り入れは、効果が期待できないだけではなく、当事者にとっては多大なる時間の浪費や機能不全に陥ることがもあります。また、機能や能力の向上が感じられない場合は、トレーニングに対するモチベーションの低下も招きます。

ビジョントレーニングが普及していくことは、苦手さをかかえる子供達にとっては喜ばしいことです。しかし、指導者は療育指導についてのノウハウを正確に理解し、普及に努めなければならないと考えます。当センターでは年に一度の講習会と療育者向けの実践講習会を年に3、4回の頻度で開催し、ビジョントレーニングの普及、療育者の育成に努めております。時期や場所などは視覚発達支援センターのホームページ※上に告知しておりますので、ご覧いただければ幸甚です。

※視覚発達支援センター (詳細はこちら>>

読み書きの苦手さには様々な要因が関係します。残念なことに年齢が高くになるにつれ、絶対的なトレーニング効果が低くなったり、モチベーションの低下などの二次的要因により、療育効果が低くなる場合は多々あります。読み書きを苦手としても、学習に対する好奇心が上回る子供達には、苦手な読み書きの代替となるICTの取り入れに期待します。トレーニングという内的視覚支援と、合理的配慮という外的視覚支援を上手に活用し、子供達の発達を見守っていきたいと思います。

最後に、よく聞かれる質問とそれに対する私の答えを書いておきます。

QビジョントレーニングでIQが上がりますか?
A上がりません

Qビジョントレーニングで発達障害が治りますか?
A治りません

Qビジョントレーニングで学力があがりますか。
A学習に関する苦手さの原因が視機能・視覚認知にある場合、その苦手さをビジョントレーニングで取り除いたり、改善することが可能です。ビジョントレーニングは学習や生活を円滑に行うために必要な学習レディネスに対するアプローチです。

簗田明教
(かわばた眼科 視覚発達支援センター代表)

 

● 連載:教育のユニバーサルデザイン実践ガイド
第4回 人的環境のユニバーサルデザインとは
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(1)人的環境のユニバーサルデザイン

人的環境のユニバーサルデザインというのは、子どもたちの心にアプローチしてクラスの雰囲気をやわらかくし、子どもたちが助け合うための環境や関係作りをしていくことです。人的環境を整えることで、誰かの間違いを冷やかしたり、失敗を笑ったり、からかったり、という場面をなくし、誰もが「わからない」ことに正直になれる場を作っていくということです。「教室はまちがうところ」であり「みんなちがってみんないい」という思いを共有できる、それが人的環境のユニバーサルデザインなのです。

その人的環境を整えるために、私は、実施に工夫がなされたソーシャルスキルトレーニングが重要な役割を果たすと考えています。

(2)ユニバーサルソーシャルスキルトレーニング

ソーシャルスキルトレーニング(以下SST)というのは、社会性や対人関係スキルを育てることを目的としたトレーニングのことです。

学校現場をまわっていて痛感することは、「社会性を育てる」ということが、特定の子どもだけにあてはまることではなくなってきている、ということです。私も、以前は発達障がいの子のソーシャルスキルを高めることだけを考えていましたが、数年前からそれだけでは不十分だと思うようになりました。クラス全体を見渡してみると、SSTが必要なのは決してその子だけではないと感じています。

それからは、子ども全体、つまりクラス全体の社会性を高めるために、学校をあげて取り組んでいきましょうという提案をしていまして、U-SST(日本標準)※1という教材の開発にも携わらせていただきました。道徳の時間などに、単元に合わせて指導できるワークシートを使ってクラスワイドなSSTを行うことができます。いろいろな学校と協力し、援助要請スキル、自己肯定感を育てたり、ストレスマネージメントや自分の得意不得意の把握を行ったりしているところです。実はそのプログラムが効果を上げていて、日本LD学会などでも発表させていただきました。

ただし、単に形式的なSSTを実施しさえすれば子どもに社会性や対人関係能力が身につく、とは考えていません。SSTが実際に行われても、日常生活で応用されず実際には機能していない例をいくつも目にしたからなのです。

※1 U-SST(日本標準) (詳細はこちら>>

(3)ソーシャルスキルトレーニングの問題点

いまやSSTのニーズは非常に高まり、相談機関や療育機関などで盛んに行われています。近年では、特別支援学校や通級指導教室といった学校現場にも取り入れられ、その必要性・有効性は十分認められているわけです。しかし、繰り返しになりますが、私はSSTを実施しさえすれば、子どもに社会性や対人関係能力が身につく、とは考えていません。

例えば自閉傾向の子などは、通級指導教室(通級)でSSTの指導を受けても、それを般化させて家庭や教室で応用できない面があります。さらに、ADHDの子で言えば、こうしましょう、などとお仕着せの指導のようなことをされると、あえて挑戦したくなる性質を持っているので、「そんなことわかってら、でもオレはやらないよ」という態度になりがちです。

実はSSTが誰にでも効果的というわけではなく、SSTが効果的な子どもとそうでない子どもがいると考える必要があるということです。

SSTが定着しにくい子の特性を、私はこのように捉えています。まず、ソーシャルキュー※2をつかめないタイプです。コミュニケーション場面で、自然にとらえられる合図、視線や表情、身体の動きなどのキューをキャッチできないために、獲得したスキルをどのタイミングで使ったらいいかわからない子です。

※2 ソーシャルキュー 人の反応を無意識に引き起こさせる社会的な合図のことです。身体的な合図としては、表情、視線、姿勢、体の動き、声のトーンなどがあります。

次に、スキルを使う前に衝動が優先してしまうタイプ。「貸して」と言うべき場面で、衝動的に相手のものをとってしまう、など感情のコントロールがうまくいかない子です。

あとは、スキルを使うことをあきらめているタイプ。最初からうまくいかないと思い込んでいる子もいますし、過去の苦い経験からあきらめてしまった子もいます。あいさつしても無視される、「貸して」「手伝って」と言ってもどうせ相手に受け入れてもらえない、と感じている子は獲得しているスキルを使おうとはしません。ですから、スキル指導というのは、トレーニングの時間にスキルを獲得させればそれで終了、というわけにはいかないのです。

実は、通級でアスペルガーの子とかがきちんとしたトレーニングを受けてきて、戻ったクラスで「ありがとう」と言えたのに、そこでクラスメイトに「何おまえ格好つけてんだよ!」といった反応をされ、まじめさゆえに一人だけ逆に浮いてしまう、というケースが出てきているのです。せっかく一生懸命学習しても、それが通用しない環境に変わってしまっていて、逆にいじめられてしまうわけです。

(4)通常学級においてソーシャルスキルを学ぶ意義

私は、ソーシャルスキル(SS)を学ぶことにおいて大切なことは三つあると思っています。それは「自己肯定感」「共感的理解」「他者視点取得」です。

「自己肯定感」とは「ありのままの自分を受け止め、自己の否定的な側面も含めて、自分が自分であっても大丈夫という感覚」だと言われています。失敗経験が多い、注意・叱責を受ける機会が多い、そして他者からのマイナス評価が多い子どもは「自己肯定感」を持ちにくくなるのです。SSを使うことが格好悪いという気持ちだけでなく、自己肯定感が低いことによって、どうせ自分がやってもうまくいかないだろうと思ってしまうと、学んだSSを使うことができません。自分についてのプラスのイメージを持てないと、SSは使えないのです。

次に「共感的理解」ですが、とくに発達障害のある子どもの中には、他者に共感することが非常に苦手な子がいますので、非常に難しい課題だと言えます。人への共感というものは、共感された実体験がないと起こってきにくいものです。この子は共感性がないなぁとか、このクラスの子たちは共感性が弱いなぁとか感じたときに、「人に共感しなくてはいけないよ」などの堅い言葉で諭しただけでは効果は表れないと思います。

まず、教師の側が、その子どもたちに対してどれだけ共感的に言葉を返せるか、ということではないでしょうか。「○○君の気持ちになって考えてみたらこうだと思うよ」などの共感的な言葉を、先生が意識的に返してあげることが大切でしょう。子どもたちの中には、先生の言葉遣いを真似する子というのが必ずいますよね。共感的な言葉を先生が日常的に使っていれば、同じように言い始める子が出てくる可能性があります。

「他者視点取得」というのは、相手の立場に立って考えられるようになることですが、こういう感性をまず先生ご自身が磨かなければならないと考えます。つまり、クラスの中に共感や他者視点の芽生えみたいなものが出てきたときに、それを確実に拾い、育てていくために、先生ご自身のアンテナを高くする必要があるということです。

子どもたちに対して「AさんがこういうふうにBさんのことを考えながら言ったことは、すごくよかったなあと先生は思うよ」というふうにさりげなく返してあげる。その中から子どもたちがだんだん学んでくれるということなのだと思います。

先生をお手本にしながらSSTを学ぶことで、一人一人の子どもが「自己肯定感」を持つようになる、これが「集団的自己肯定感を育む」ことであると私は考えています。

阿部利彦
(星槎大学大学院)

 

● あとがき
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4月13日(土)と14日(日)に、長崎大学で開かれる第3回日本DCD学会学術集会※で展示を行います。感覚の困りと不器用さをチェックする新サービスを、その日に公開する予定です。参加を予定されている方はぜひレデックスブースにお立ち寄りください。ブースでは、新サービスの無料チケットが記載されたチラシを配布させていただきます。

※日本DCD(発達性協調運動障害)学会 (詳細はこちら>>

次回メルマガは、4月5日(金)の予定です。

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