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視覚認知 入力部分ー見えることは第一の条件

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● まえがき
● 連載:入力部分ー見えることは第一の条件
● 連載:教えにくさの背景と授業のUD化
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● 連載:視覚認知発達検査とビジョンセラピーの実際
第2回 入力部分ー見えることは第一の条件
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外界からの情報の取り入れの第一は入力部分です。外界の情報の取り入れの8割は視覚情報からと言われております。瞳を閉じるとその情報は一瞬で消えてしまう事を考えると、眼の働きの大切さがわかります。当センターを受診される方の中には、「うちの子は学校での視力検査はいつもAなので眼科の受診はいりません」「視覚認知検査だけをお願いします」という方が時々いらっしゃいます。

眼の検査は、学校で実施される、遠くの視標がどの程度みえるかを測る遠見視力だけではありません。読書は遠くではなく近くの距離で見る為、近見の視力も大変重要です。ビジョンセラピーというと、眼の運動やプリント課題が注目されていますが、Orthoptic(または Strabismic-related) Vision Therapyという、視機能不全に対するアプローチも大変重要です。欧米では視機能を科学的に分析する為に21項目で構成される米国式21検査法がありますが、当センターでは学習場面で重要と考える検査項目を取り入れています。

以下は代表的な検査です。1)遠見視力 2)近見視力 3)ピント調節機能 4)両眼視機能 5)眼球運動。もちろん眼球に異常があれば治療が最優先されますし、加療が必要な場合はビジョンセラピーも制限されることもあり、眼底検査は第一に実施します。これらは医療機関で保険適用される検査である為、諸検査はかわばた眼科にて取り行っております。また、主訴や問診時の聞き取りから色覚検査や視野検査も併せて実施することがあります。

※資料1は当センターを受診された発達特性を持つ小学生の視力調査です。

※資料1 遠見視力 (画像はこちら>>

右下に示す学校保健統計検査の結果と比較すると、視機能と発達障害の大きな関連が確認できます。先生が黒板に書く文字の大きさには学年で違いがあります。小学生1、2年生では大体0.3、3、4年生で0.5、5、6年生で0.7ほどの視力があれば黒板の文字の識別が可能であると言われています。しかし、見えないことは同時に遠方世界への興味が低下します。外界への興味関心を高める為、特に発達に特性を持つお子さんの場合は、しっかりと視力を矯正することは大変重要だと考えます。

ピントの調節は見たいものを鮮明に見るために必要な機能であり、近くと遠くの距離で交互にピントを切り替える際にも必要な機能です。ピント合わせは目の中のレンズ(水晶体)の厚みを変えることで調整します。この機能に問題があると、読書時、極度に疲れを訴えたり、黒板の文字をノートに書き写す「板書写し」に困難を感じることがあります。近くを見る際、私たちはこの調節力のほか、両眼視機能の一つ、両目を内に寄せる「輻輳(ふくそう)力」を用い、この調節力を補います。市販されている多くのビジョンセラピーの本が、学習効率の向上として寄り目の練習を推奨するのはこの為です。

A君はスポーツが得意な小学二年生です。板書の書き写しと読書の際の頭痛を訴え、スクールカウンセラーの紹介で当センターを受診しました。A君のお母様は、「学校での検眼ではいつもAなので、眼科を紹介された時はびっくりしました」とおっしゃっていました。しかし、眼科での検査の結果、A君の眼には遠視性乱視がみつかりました。眼科で処方された眼鏡を装用し、近くを見る際の負担は減り、日常的な読みの苦手さは大きく軽減されたそうです。

遠視は遠くがよく見えると誤解されがちですが、実は遠くを見る時も近くを見る時もピントを合わせる為に調節が必要となる眼です。その為、読書などの長時間の近見作業では疲れてしまうことがあります。さらに、遠くは頑張れば見えてしまう為、学校の検眼はパスできた事が推察されます。発達障害を持つ児童に、この調節力に問題があるケースが多数報告されています。※資料2は眼科を受診された方の調査結果です。

※資料2 調節力と効率 (画像はこちら>>

両眼視機能は読んで字の如く、両眼を上手に使ってものを見る機能です。両眼の視線が上手に揃わないと、ものは一つに見えず、ぼやけて見えたり二つに見えたりする事があります。遠近感を捉えることが難しい場合もあり、校内活動ではボール運動の苦手さを訴える事があります。さらに、エスカレーターの利用や階段の昇降を苦手とする児童に両眼視の苦手さを訴える児童が多くみられます。両眼視機能は近視、遠視、斜視や斜位※などの影響を受けやすい為、しっかりと検査する必要があります。

※斜位 目を動かす筋肉のバランスが悪く、ずれるはずの像を無理に融像(両眼とも同じ一つの像にする)している状態の眼。

Bさんはお勉強が好きな10歳の女の子です。読書は好きですが、小さな文字の本を読む際、顔を斜めにして読む癖があり、お母さんはずっと気にされていたそうです。また、球技が苦手なことも問診でお伝えいただきました。検査の結果、Bさんには間歇(かんけつ)性外斜視と乱視がみつかりました。受診の際、両眼の視線を合わせやすいようにテストレンズを装用してもらったところ、「物が一つに見える!」と喜んでいらしたのはとても印象に残っています。処方眼鏡を装用し、5年生になって卓球部に入部したのは後日談です。

眼球運動は旧タイプの前庭動眼反射(vestibulo-ocular reflex:VOR)と視運動性眼振(Optokinetic Nystagmus)、新タイプの衝動性眼球運動(Saccade)、追従性眼球運動(pursuits)、輻湊、開散(Vergence)に分けられます。特定の”興味のある”対象の像に視線を合わせる新タイプの運動は学習と密接に関係しています。検査は2点の注視力とNSUCO(エヌスコ)という眼球運動検査で測ります。

私たちは読書の際、一点から一点に視線を飛ばしながら文章を読み進めます。この時に必要な運動が衝動性眼球運動:Saccade(サッケード)です。視線のジャンプする幅は人により異なり、上手な読み手は文節ごとに視線を移動させることで効率よく読むことができるようです。先生が指先で漢字を空書する際にその指を追ったり、飛んできたボールの軌道を追ったりする際に必要な運動は追従性眼球運動:Pursuits(パスート)です。発達障害とSaccadeの関連についての論文が多く報告されています。※資料3は眼科を受診された子供の眼球運動の検査結果です。

※資料3 発達障害種別と追従性・衝動性眼球運動 (画像はこちら>>

C君は勉強が苦手な3年生の男の子です。背景にASDの発達特性を持ち、就学後からずっと音読を嫌がってきた事をお父さんが心配され、受診に至りました。検査の結果、C君には眼球運動の苦手さが確認されました。特にSaccadeの苦手さは大きく、これが読みの苦手さにつながっていると考えました。問診時にC君本人から「何度も同じ行を読んでしまうので疲れるし、飛ばないように頑張って読むと内容がわからなくなるから本は嫌い」と教えてくれました。家で出来る眼球運動を主体としたビジョントレーニングを紹介し、3ヶ月後に再評価しました。検査結果には向上がみられ、C君本人も「前より疲れなくなったし、なんか広く見えるようになった」と言っていました。Saccadeの苦手さを持つお子さんの内、トレーニング後に視野が広くなったと報告される事が多くあります。

ビジョンセラピーは、眼球運動やプリントで行うセラピーだけではありません。視力や視機能に対する加療もとても重要です。

簗田明教
(かわばた眼科 視覚発達支援センター代表)

 

● 連載:教育のユニバーサルデザイン実践ガイド
第2回 教えにくさの背景と授業のUD化
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4.教えにくさの背景 (前号からの続き)

◇関連づける、つなげることの困難さ

教えにくさの背景の一つには、子どもたちの「つなげることの困難さ」があります。
たとえば、1)物事を自分と関連づけることが苦手、2)AとBを関連づけることが苦手、3)具体から抽象へつなげることが苦手、といった課題です。さらには、いくつかの情報から全体をイメージするといった、まとめる力(統合する力)に弱さがある子もいます。

そうなると、「主語と述語」「行動と情動」「問いと答え」のなどの関係をとらえることが難しくなります。また授業においても、冒頭で前回習ったことと今回の授業のつながりを感じさせるような配慮が必要になってくるでしょう。

こうした「つなげることの困難さ」がある子どもは、言葉だけで伝えようとすると関連づけたりイメージしたりしにくい、という傾向があるので、図やイラスト化する、といった「視覚化(見える化)」をすることで理解しやすくなります。たとえば「マインドマップ」は、関連やつながりを見える化できる重要なツールと言えるでしょう。

また、学ぶ事柄と自分との関連を強く意識させることで、興味をひき、モティベーションを高め、つなげることができます。

◇共通点を見つけることの困難

教えにくさがある子どもたちの背景、三つめとしては、「同じだ」「似ている」といった「共通点についての気づきを得ることの困難さ」があります。共通点を考えることには、抽象的な概念の理解が必要になるからです。具体的なことは理解できるけれど抽象化に向かう思考に弱さがある子どもの場合、そのことで、子どもの思考が深まらない可能性があることに留意しなくてはなりません。

共通点を見つけられない、ということは学びだけでなく、対人関係にも課題を生じさせます。私たちは、趣味が同じだったり好みが似ていたり、ということで相手に親近感を持ちますし、そこから話題を見つけて仲間作りをしていくことがあります。なにげない会話の中で、自己紹介カードで、あるいは作品を通じて「あの人と友だちになれそうだな」と自然に感じているからです。

ただ、共通点を見つけることが苦手な子の中には、細かな差違を発見することは得意な子がいます。彼らは全体を大まかにとらえたり、統合的に判断したりすることに苦手さはあっても、細かいところに注意を向ける力、極小注意に関しては強い場合があるのです。また、同一性保持(いつも同じ状態を保つこと)の傾向があるので、そういった「違い」に対してはアンテナが高くなります。

そういう子どもたちへの授業のしかけとしては、たとえば段落を入れ替える、不要な一文を加える、といった「ダウト」を入れるという方法が、彼らの探求心を刺激するのにうってつけとなります。間違いさがしは、彼らの学習意欲を高める方法なのです。

◇ポイントがつかめない

授業のポイントをつかむことが困難な生徒に対しても、私たちは「教えにくい」と感じてしまいます。そんなとき学ぶべきことは、小・中学校の先生の教え方の中にあります。なぜなら、小・中学校の先生方は、「ここが大事だよ」「要点に赤で線を引いておこう」「ここはノートに写そう」などと、常に子どもの注意をひきつけ明確にポイントを伝えているからです。

このように、重要なキーワードやポイントを繰り返し明示することを「記憶ガイド」と呼ぶこともあります。要点が記憶に残りにくい子どもたちのためにポイントをハイライト(浮き立たせる)する、ということは授業のユニバーサルデザイン化の「ポイント」なのです。

5.授業のUD化における5つのテクニック

これまで説明してきた子どもたちの「つまずき」を踏まえて、そのつまずきへの配慮を盛り込んだ授業デザインこそが授業のUD化だと言えます。

私は、UD化された授業を観察・分析していくうちに、子どもたちをおいていかない授業には以下の5つのテクニックが見られることに気づきました。それらのテクニックについて、順に解説していきたいと思います。

(1)「ひきつける」授業

飽きっぽい子、集中できない子をひきつけるには、基本的には視覚化が有効であるといわれています。視覚的な工夫を心がけている先生は多いことでしょう。

もちろん、視覚化する努力をしていただけるのはありがたいのですが、ただ挿絵や写真を拡大して黒板に並べて貼って満足、という視覚化では不十分です。UD化された授業にはさらにもうひと工夫が求められます。

具体的には、情報を整理したり、手がかりを吟味したりするということです。また、ポイントを浮き上がらせる、よりシンプルな写真を選ぶ、など、情報を整理して子どもを混乱させない配慮も必要です。

さらに、UD化された授業には、「面白そう」「考えたい」と思わせる資料の提示の仕方や、子どもの意欲を引き出す「演出」についても工夫がみられます。

たとえば、注意機能に課題がある子などは、チラッと見せるやり方に興味を持つことが多いです。フラッシュカードを一瞬だけ見せると、「何それ?見せて!」と、とても興味を示してくれます。そこで「その前にこの課題やり終えてくれる? そしたら見せるから」などと言うと、進んで課題をやってくれたりします。

問いかけの手がかりとして、提示物を部分的に見せたり、瞬間的に見せたりすることは、視覚的にもより効果的だと言えます。

(2)「むすびつける」授業

前時と本時の授業内容をむすびつけることや先生が提示した複数の情報をむすびつけること、友達の意見と自分の意見をむすびつけること、具体から抽象へむすびつけることなどが苦手な子どもたちがとても多くなっています。

今日勉強する内容と自分にはこういう関係があるんだなと思わせる取り組み、授業を身近に感じさせるということはとても大切です。自分に関係ないや、と感じてしまったら、子どもは興味を持たなくなってしまいます。

子どもたちが学びをいかに自分のこととしてとらえるか、つまり学びを「自分ごと」にむすびつけていくか、が授業のしかけでは重要になります。方法としては、子どもの関心がある分野・得意な分野にむすびつけていくやり方や、今まで学んできたこと、子どもたちが知っていることを通じてむすびつけていくやり方などがあるでしょう。

たとえば、授業の冒頭におさらいをして、前回こういうことを勉強したね、そこから今日はこういうふうにつながるんだよ、と説明します。わかりやすい言葉やイメージしやすい言葉を選び、言葉でむすびつけて理解しやすくするのです。

「それ、知ってる!」が大事なキーワードです。自分が知っている事柄が含まれていると、どの子にも参加しやすい授業になります。「興味のスイッチ」が入れば、その次からの授業にも前向きに参加してくれる可能性が高くなるでしょう。  次号に続く

【引用文献】阿部利彦 『通常学級のユニバーサルデザインプランZERO2授業編』阿部利彦、東洋館出版、2015 (詳細はこちら>>

阿部利彦
(星槎大学大学院)

 

● あとがき
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はやぶさ2の着陸成功、おめでとうございます!

次回メルマガは、3月8日(金)の予定です。