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通級指導教室でのLD児の指導小学生と漢字学習

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| 連載:通級指導教室でのLD児の指導 小学生と漢字学習
| 連載:発達の課題を持つ人の高校の選択肢 新たな学校の創設
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─■ 連載:通級指導教室でのLD児の指導
第3回 小学生と漢字学習
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これまで2回にわたって、書字に関する課題のあるLD児への支援について述べました。通常の学級に在籍する、書字のLD児は漢字を覚えて書くことに困難を示す例が多くあります。そこで今回は、小学生にとっての漢字学習について、そしてそこから派生する課題について考えます。

〇漢字学習と小学生

小学生にとって、漢字の学習は国語の勉強の中でも大きな比重を占めています。学習指導要領には「学年別漢字配当表」として、各学年で学習する漢字が示されています。そして、各学年で新しく習った漢字が読め、漸次書けることと、一つ上の学年では前年までに習った漢字が書けることが求められています。現行の学習指導要領では6年間に1006字の漢字を学習します。各学年に配当された漢字数を表で示します(※1)。

※1 文部科学省 学習指導要領 学年漢字配当 (詳細はこちら>>

表でおわかりのとおり、3・4年生では一年間に200字もの新しい漢字を覚えなくてはなりません。小学校の一年間の授業日数がおおむね200日程度であることから考えると、子どもは毎日何らかの新しい漢字を学習するという感じです。また、表の右には各学年で習得する漢字の中に「象形文字」がどれだけ含まれているかを示しています。

1年生では、「川は水の流れの形から、山はそびえたつ峰の形から漢字の形が作られています」と視覚的にも説明のできる象形文字がおよそ50%含まれています。それが2年生で全体の三分の一に減り、3年生以降では、象形文字の割合が1割台にまで減っていることが分かります。つまり、3年生以降では急激に漢字が抽象性を増し、記号化するということです。

それだけではありません。漢字は文章の中で様々な読み方をされます。例えば2年生で学習する「頭」は、「頭のてっぺんから足のさきまで」なら「あたま」と読みますが「頭痛」では「ず」「山賊の頭」では「かしら」、「温泉饅頭」では「じゅう」、「腹部、胸部、頭部」では「とう」のようにその漢字の前後との関係を考えて読みを変えなければなりません。しかも、これは完全に自動化されて変換されなくてはなりません。

報道等でご存知かもしれませんが、学校で教える内容を示した学習指導要領が改定されます。それに伴って小学校の各学年で学ぶ漢字も改められ現行の1006字から1026字へと増えます。4年生が200字から202字、5年生が185字から193字、6年生が181字から191字となり、高学年で勉強する漢字が増えます。増えた漢字は、主に都道府県名に使用されている漢字です。日常的に目にする機会の多い漢字でもありますが、新潟の「潟」などは間違えて覚えそうな要素満載です。

通級指導でその子に合った学習方略を見つけることができ、漢字の苦手さを克服しつつある子どもが、成長して中学校段階になると、漢字の習得で苦心したことが、今度は英単語で起こります。

英単語の綴りで、例えば「cho」は「choice」では「チョ」、「chorus」では「コ」と発音しなければなりません。このような読みで困惑し、時制で変化する動詞(例えばgo-went-gone)で、書くことに関してますます混乱を深めます。

LDの子どもは、学齢期以降、各学校段階で障害による困難さを有しつつ学業・社会生活を送ることとなり、途切れない長期的な支援が必要であるし、子どもの立場から考えると「日々苦手さにトライし続けることを強いられている」ということが言えるのです。

〇ADHDにLDを併発している子ども

通級指導教室では、子どもが問題解決している場面でどのように見てとらえているかを非接触型の視線追跡装置を使用して確かめることがあります。漢字を覚えることが苦手という主訴で通級したCさんで、選択肢の中から正しい漢字を選ぶ問題に取り組んでいる時の視線を確認した例を示します※2。

※2 (図はこちら>>

この問題は、最初ひらがなの例文が提示され、少し遅れて選択肢が表示されるというものです。図の中にある番号のついた水玉は、その間のCさんの視線の動きを記録したものです。1の緑色円から始まり、16の黒色円で終わっています。

図をご覧いただくと分かるようにCさんは、あわてんぼう特性からか、正解の選択肢に視線を向ける前に、似たような漢字を選んでしまっていました。こういった場合、Cさんの最初の目標は、「しっかり確かめてから回答する」ということになり、書字よりも前に取り組むべきことがあることが分かることがあります。

余談ですが、近年は技術の進歩により、このような視線追跡装置が安価で入手できるようになり、指導の役に立っています。良い時代になりました。

坂本條樹(さかもとじょうじゅ)
所沢市立泉小学校教諭

 

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─■ 連載:発達の課題を持つ人の高校の選択肢
第2回 新たな学校の創設
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〇発達障害のある生徒を、スペシャルニーダーと呼び、SNEC (スペシャルニーズ・エデュケーションセンター)を展開

2008年、新たな学校を創設しようという気持ちを持つようになりました。
なぜなら、通信制高校における専門性を高めないと、時代に追いついていけないし、ましてや親御さんの願いにも応えられないと考えたからです。「発達障害に特化した通信制高校が必要だ」「教職員体制をもう一回作り直そう」と思い立って設立したのが、明蓬館高等学校です。

創設は2009年。1年でできました。
明蓬館高校の本校は福岡県の筑豊地域にあります。
通学できる場所として、筑豊の子どもたちを中心に約100名在籍しており、毎日、数十名が登校しています。

来校していただくとわかりますが、里山があって、自然豊かなところです。
とはいうものの、交通が不便な場所で、開校当初は「ここに登校する生徒はまずいないだろう」と、思っていたのですね。

ところが、コミュニティバスを乗り継ぐなどして、福岡県内のあちこちから生徒たちは毎日通学しています。月一回程度来ている子は、大分県内、佐賀県内、鹿児島県内在住の生徒です。

私どもにとっても、これは本当に想定外でした。
行政の支援で宿泊環境施設、給食環境施設も整備していただいたので、調理実習も可能となり、みんなで給食や食事を作ることもできます。二段ベッドや畳の部屋なども設置いただき、入浴施設もあって、至れり尽くせりなのです。
感謝でいっぱいです。

2013年に、東京の品川・御殿山に高校としては初めての特別支援・補習センター、通称SNEC(スペシャルニーズ・エデュケーションセンター)を開設しました。
ビルの二階フロアには、学習スペースと面談スペースがあり、3、4人の授業ができるスペース、保護者との面談、相談の専用スペース、休憩コーナーがあります。
ゾーニングと呼ぶのですが、平面を物理的に構造化することによって、生徒たちが居やすく、過ごしやすい工夫を施しています。

通常、家の中はそれぞれのスペースに役割、機能がひも付けられています。ダイニングルーム、リビングルーム、個室、寝室というふうに。ところが、学校では多くの時間を過ごす教室空間の機能が曖昧なままになっています。

発達の課題のある子どもたちにとっては、一つの教室の中で何もかもが行われてしまうことは苦痛でしかありません。要領よく立ち回るのが苦手で、さまざまなルール、変化に対応することができないからです。

〇SNECの特徴

まず、心理検査体制を整備しています。WISC-IV、WAIS-III、KABC-IIが三大基本心理検査なのですが、これらの検査は欠かさず、入学した生徒は3年ごとに必ず、ブランクがないように受けてもらっています。その理由としては、心理検査の結果次第で、将来、障害者手帳を取得するか否かの話し合いのステージに乗れないからなのです。

検査結果には、生徒の言語面や行動面における課題、強みや弱みなども現れます。
心理検査は、生徒自身を正しく理解するための材料をたくさん提供してくれる道具でもあるのです。

それを支援に活かす。
使わないと損なのです。
とはいえ、中学、高校にかけては、本人が嫌がるのですね。
検査って、聞いただけで嫌だと。
親御さんも嫌がります。

自分をよりよく知る道具、学びづらさの正体を突き止める道具であるとアサーティブに(相手も尊重した上で、誠実に、率直に、対等に)、生徒や保護者自身が得することを説きます。
結果が出た後の使い道を説きます。
生徒と保護者が助かる面を説きます。

これまでもスクールカウンセラーや教育センター、発達支援機関から勧められて一旦は「じゃあ、受けてみよう」という気になったにもかかわらず、日が経つとその気が失せた、という話をたくさん聞かされました。
われわれアットマーク国際高校、明蓬館高校でも、検査を勧めてようやく納得してもらえたことはあります。

大学病院に予約したら、検査は4カ月先と言われ、「もう、嫌になってしまった」というケースをたくさん見てきました。
「心理検査のハードルをいかに下げるか」ということが、私の大きな願いだったのです。
ですから、念願久しく誕生したSNECでは、いつでも心理検査が行える体制にしたのです。

この心理検査に基づいて、次なる支援計画が始まるのです。
だから重要なのですが、よくあるケースとしては、公的な心理発達センターや発達障害支援センター、教育センターなどで実施検査を受けて、報告書を見せてもらったものの、結局、渡してもらえないことがあります。
さらに、単なる数字の羅列や棒グラフだけで、ほんの十分くらいの説明しかされなかったという例もあります。

正直、「覚えていません」というお母さん方も、とても多いです。
心理検査においては、非常に残念な運用が多いので、SNECでは正しくステップを踏んで検査を行い、その結果を次の個別教育支援計画に応用しています。

個別教育支援計画、いわゆるIEPですが、SNECでは、必ず提示することにしています。
保護者をリクエストを出す人(リクエスター)とし、生徒をニーズを提供するニーザーとして位置付けています。
障害特性を持つ人はスペシャルニーズを持つ人です。建築物で言えば、その人仕様の「設計図」があって当然です。
航海で言えば、羅針盤になります。
そこには進行表と進行台本、役割分担表が書かれるものです。

逆にいうと、設計図なしで建築に取りかかるとすれば工程や関わる人や材料、そもそも建物の心臓部、機能、それを実現するための方法、手段などが明確になりません。関わる人も役割分担もはっきりしないまま、思惑違いが次々に露見してくるのが必然です。

欧米では、障害を持つ児童生徒には必ず個別教育支援計画がたてられ、関係者全員で合意を取り結ぶことが法制化されている経緯とその必然性にこうべを垂れないければなりません。意味、意義があるからです。

入学前から、生徒本人、保護者からの聴取、これまで教育、療育、医療などに関わってきた方々からの聴取も行います。アセスメントも計画化し、実施をして行きます。
IEPを作る上でも、学校の教職員間と、また保護者との間で共通理解を図る上でアセスメントは欠かせません。
学習面は支援計画、指導計画。行動面の支援計画。対人関係面の支援計画。
年に一度の本校(福岡)スクーリング参加にあたっての準備計画、就労もしくは進学に向けた支援計画も重要です。
また、手帳の取得も含めた、行政からの相談支援、計画相談から始まる支援を頼むための手立ても計画化し、進めて行きます。

現在、SNECが全国に生まれつつあります。
私どもによる直営のSNECが、東京・品川、立川と横浜・関内、福岡・博多にあります。
これ以外にも、全国主要都市に、パートナーと共同で運営するSNECができています。
これは広域通信制高校の中でサポート校という、連携形態です。

通信制高校本体の苦手とするきめ細かい通学・通所による対面指導、対面補習に加え、支援と伴走をパートナーにお願いして協業しながら生徒と保護者をサポートしていくのです。
パートナーの事業者さんも、長年、様々な福祉事業を営んでおられて、就労の現場をお持ちなので、将来の進路に対しても、明るい展望が持てます。
そういう団体と一緒にやっています。

私は、発達の課題を持つ子どもたちに対し、高校生活における貴重な一年、二年、三年間を過ごせる場所を提供したいと思います。
ここで人生が変わる、変えられる、という場所。
それまでいろいろなことがあったにせよ、三年あれば、変わる可能性は十分にある。
発達の課題のある生徒たちの無限の可能性に寄り添い、伴走することは大きな可能性に満ち満ちています。

日野公三(ひのこうぞう)
明蓬館高等学校校長兼SNEC総センター長

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─■ あとがき
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坂本先生の連載は、いったん今回で終わりますが、秋に続編を書いていただくことになっております。ご期待ください。

次回メルマガは、7月20日(金)の予定です。