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通級指導教室でのLD児の指導

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| まえがき
| 新連載:通級指導教室でのLD児の指導
| 連載:柳下先生の質問コーナー:親の教材の自作について
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──■ まえがき
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文字が書けない、覚えられない、という子供の数は、言語の種類によっても異なりますが、5%以上ということを、多くの研究者たちが述べているようです。それらの子供たちは、それ以外については他の子供たちとあまり変わらないので、通常のクラスに所属しながら、その子に必要な支援をしようと考え出されたのが「通級指導」という方式です。数多くの自治体がこの方式をとりいれて支援を行っています。一方、東京都では、子供の方が通うのではなく、教師が子供のいる場所に出向いて支援を行うというやり方を始めており、どのような成果が出るのかに注目しています。

通級指導では、どのような指導が行われているのかを、実際に現場で活動されている、坂本條樹(さかもとじょうじゅ)先生にお願いし、今号から解説していただけることになりました。

坂本先生にはたくさんの著作があり、坂本先生のご紹介に代えて、その近著を紹介させていただきます。

「決定版! 授業のユニバーサルデザインと合理的配慮: 子どもたちが安心して学べる授業づくり・学級づくりのワザ」金子書房(分担執筆)
(詳細はこちら>>

「基礎脳力アップパズル: 発達障害のある子の認知機能を高めよう!」学研ヒューマンケアブックス
(詳細はこちら>>

「クラスで気になる子の支援 ズバッとファイル V3」金子書房(分担執筆)
(詳細はこちら>>

 

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─■ 新連載:通級指導教室でのLD児の指導
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〇はじめに

私は、発達障害のある児童の支援を行う「発達障害通級指導教室」に勤務しています。通級指導教室は、通常の学級に在籍する児童に対して特別支援教育を提供する一形態であり、児童は自分の学校で学ぶことに加え、通級指導教室において「通級による指導(特別の指導)」を週当たり数単位時間受けます。通級指導教室を利用する児童の中には、字を覚え、書くのが苦手であることを訴える、学習障害(LD)が疑われる子がいます。

そこで今回は、通級指導教室でのLD児の指導、中でもLDの中核をなす発達性読み書き障害の指導について述べたいと思います。

〇字を覚え、書くための力

大多数の大人は、文字を読み・書くことを習得しています。しかし、会話が自由にできるようになったばかりの幼児には、新聞を読んだり自分の名前を漢字で書いたりすることは、まだできません。ここに「発達」と「学習」の関わりが端的に現れています。

人類史的に見ると、ヒトが音声言語により他者とコミュニケーションをとり始めた時代と文字を活用するようになった時代には、諸説あるものの、何万年もの差があります。ヒトが文字を発明し、使い始めて何千年か経ってはいるものの、多くの人が文字を読み書きするようになったのは、近世になってからです。これを現代の子どもは、生後5、6年で行わなければなりません。さらに、生物としてのヒトの脳には、読み書きに特化した特定の機能は備わっていません。ヒトが持つさまざまな知覚機能や情報処理機能、運動機能を援用して読み書きを行っている、というのが実情です。

〇話し言葉から文字への発達的順序性

子どもは、生後数年間(およそ3~4年)で会話の自由を獲得します。会話の自由(聴覚性言語)の一応の完成をみてから文字を読める段階、そして読んで書ける段階へと進みます。

子どもの中には、聴覚性言語が完成しないままに、文字を獲得してしまうタイプも時折見られます。この場合、視覚性言語が先に発達し聴覚性言語があとから発達するという意味で、典型発達でない子であるといえます。

〇文字学習の認知的背景

通級指導教室には、一般的な知的能力には問題がないのに漢字が覚えられない、読めない書けない、がんばって書いているのに、字のバランスがよくなかったり、細かい書き間違いがあったりする。このような訴えで指導を受けている子がいます。

通級指導では、字を覚え書くことについての指導で最初に行うのが「子どもの苦手さの種類を同定すること(心理・教育的アセスメント)」です。

文字学習の認知的背景について考えましょう。文字を見て覚え書く過程は、次のような3つの過程に大まかに分けることができます。

(1) 入力は、文字を見分けたり聞き分けたりする過程です。さらに触る・感じる、という入力形式も含まれます。

(2) 処理は、入力されたものを覚えたり、保持したり、思い出したりする過程です。記憶することやイメージ(表象)レベルでの再生にかかわる過程です。さらに、思い出したものを組み合わせるのもこの過程に含まれます。

(3) 出力は、表象されたものを手指や声によって外へ出す過程です。ここには、単に出すだけでなく、調節するということも含みます。

この(1)から(3)までの過程(入力・記憶/想起・出力)のどこか一つにでも弱さがあると文字学習に困難さが現れます。また、つまずきの原因も、どこか一つではないこともあったり、さまざまな要素が複雑に影響し合っていることがあったりします。ですから、一人一人の困難さを見極めることが大切なのです。

では、子どもの苦手さを同定するには、どうしたらよいでしょうか。
私たちの通級指導教室では、図1(画像はこちら>>)に示したような、複雑図形を使って、一連のどの過程に困難さがあるか見きわめます。このような複雑図形を使ったアセスメントは、もともとは脳損傷患者等の視空間知覚・構成機能と非言語性視覚記憶を測定する神経心理学検査の一つです。もっとも有名なのが「Rey-Osterrieth Complex Figure Test(レイの複雑図形検査)」といわれるものです。これを小学生対象に調査した久保田ら(2007)の研究を参照していただければ、詳細がお分かりいただけると思います。

※参考文献
久保田、窪島(2007)「発達性ディスレクシアのアセスメントにおけるRey-Osterrieth複雑図形(ROCF)の有効性の検討 小学生におけるROCFの発達的変化と書字エラーとの関連」滋賀大学教育学部教育実践研究指導センター紀要 15, 65-77

この図を、子どもに合計3回描かせます。1回目は「模写」、2回目は3分後に「直後再生」、そして3回目は、およそ30分後に「遅延再生」として描かせます。2回目、3回目は手本を見せません。また、模写の段階でも図形を覚えるよう求める教示は行いません。

実施方法は、次の通りです。

(1) 図版と白紙(ともにB5版)を渡し、手本や用紙は回転させずに図を見ながら模写するように指示します。子どもが作業中に検者は子どもがどこから描きはじめたか、描いた順番、線のつながりやまとまり、描き終えた時間を記録します(模写段階)。また、合計3回描くことや、2回目以降には手本無しで描くことは予告しません。

(2) 図版と描き終わった用紙を回収し、視空間知覚や視覚記憶とは関連しない課題(例えば日常会話など)を3分ほど行います。

(3) 3分後、白紙だけを渡し、「さっき描いた図を思い出して描く」よう指示します。描き方の記録は模写段階と同様です(直後再生)。

(4) 授業など通常の活動を30分行った後(算数の図形を扱うような活動は避ける)、白紙を渡し、「もう一度思い出して描く」よう指示し、様子を記録します。

この一連の作業には、「模写段階」では図を見てとらえ描く力が、「直後再生段階」では視覚的な短期記憶の力が、「遅延再生」では記憶したものを想起する力が反映されると考えられます。

漢字をおぼえて書くのが苦手なAくんを例に、指導経過を見ていきましょう。

〇漢字をおぼえ書くのが苦手なAくん

Aくんは元気な男の子で、人と話すのも得意です。幼稚園のころから先生に落ち着きのなさを指摘されることはありましたが、保護者は特に心配はしていませんでした。小学校に入ると、ひらがなを何度も書き写し復習しましたが、完全に習得するのに時間がかかりました。教科書の読みは文字を飛ばすことはありましたが、文章でもすらすらと読むことができました。漢字の学習が始まると、ひらがなを覚えることよりも一層、困難さが増しました。学習する漢字の数が3年生になって増えたこともあり、今では書くこと自体もいやになってしまいました。

Aくんのアセスメントの手順は次の通りです。

Aくんは知的発達については年齢相応でした。語彙の数、抽象語の理解、文法理解も特に問題となるところはありません。また、言葉の記憶も良いことが分かりました。しかし、ひらがな・カタカナ・漢字の読み書きについて調べると、読むことはまったく問題ありませんでしたが、書字では苦手さを見せ、特にカタカナ・漢字の成績は著しく低下していました。

これらのアセスメントに加えて実施した、複雑図形検査の結果は次のようなものでした。

(1) 模写の段階では、全体の形は正確であり、細部の描き忘れもありませんでした。しかし、一つのまとまりとして知覚されやすい「良い連続」を意識した描き方ではなく、細かい部分に分割して描いているところが見られました(図2:画像はこちら>>)。

(2) 直後再生では、まとまりのある形として描いたところは思い出せましたが、細かく分割してしまった部分は思い出せませんでした(図3:画像はこちら>>)。

(3) 遅延再生では、直後再生で描けた部分は確実に思い出し描くことができました(図4:画像はこちら>>)。

直後再生と遅延再生に成績の差がないことから、Aくんは記名力(記憶・想起)自体に問題はないようです。しかし、図形の中に見いだせる形のまとまり、例えば外側の四角形や大きな十字といったような意味づけられるいくつかの部分のまとまり(構成要素)を意識した描き方をした部分としなかった部分で、再生率に大きな差がありました。構成要素を意識して模写した部分は思い出せ、そうしなかった部分は忘れていたのです。

また、Aくんは図形を独自のまとまりに分けてとらえ、描きました。例えば、「男」という漢字は「田」と「力」に分けて考えることができます。アセスメントに使った複雑図形でも、このように意味づけられるまとまりを発見できます。しかし、Aくんは、この全体像と細部(構成要素)を意識した模写ではなく、独自のまとまりを描いていました。「男」で言うなら「甲」と「フ」に分けるような考え方でした。

Aくんは記銘力それ自体に問題がないため、音読や読解に問題が出ませんが、構成要素を分けて考えるという方略を利用できないため、漢字を書く際には困難が生じるのではないかと考えます。

〇図形を分けて考える教材

図5(画像はこちら>>)は、「ジオボード(格子点)」と呼ばれる教具です。手本の図形(図6:画像はこちら>>)を5×5の点を手がかりに、複数の輪ゴムを使って自分の手でピンに輪ゴムをかけて再現することで、図形を大きなまとまりで見られるように練習することができます。Aくんは、漢字を覚えようとする時、まとまりを意識することが苦手です。また鉛筆を使うことにも抵抗があるため、漢字練習が「苦行」になってしまいます。ジオボードでは、あらかじめ形が決まっている輪ゴム自体が一つのまとまりになっているため、自然にまとまりを意識するようになります。また、ゲーム感覚でできるのでAくんに苦手さを意識させることなく取り組めます。

さらに、音声言語での表現が豊かなAくんには、「うそっこ漢字(画像はこちら>>
」という漢字に模した複数の多角形を使った練習も有効でした。「うそっこ漢字」はヘンとツクリやカンムリとアシを持った複合図形です。「漢字」と名前がつくだけで抵抗のある子どもには「変な形」と言っています。この図形を使って、構成要素を自分でさがし、言語化して覚える学習をすることで、図形のまとまりを意識すると同時に自分流の記憶方法が見つけられるように指導しています。
※Aくんの方略の一例 (詳細はこちら>>

坂本條樹(さかもとじょうじゅ)所沢市立泉小学校教諭

 

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─■ 連載:気になる行動の捉え方
第5回 柳下先生の質問コーナー その2
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〇質問
柳下先生に質問です。片道3時間をかけ大学病院に受診をして、わが子の診断を受けました。書くこと、読むこと(特に英語)の困難さが明らかになり、自閉症スペクトラムの診断を受けました。また、視覚的情報の受け取り方にも課題が見つかりました。そのため、小学校でデジタル教科書を使用したり、タブレットを活用したりして学習の困難さを軽減できる配慮を求めています。ハード面の環境は整いました。しかし、学校の先生方も多忙であるとは理解していますが、我が家の子供たちに合う教材研究を母親がして、先生方がその教材提示を待ってしまうという状況が起きてしまい、母親としての負担が大きくなって困っています。どうしたらよいのでしょうか?母親なので仕方がないことなのでしょうか? 教えてください。

〇回答
ご質問は、「母親が子どもの教材を考えることは、仕方ないことなのでしょうか」ということですが、この部分だけを考えると、子どもの解り易い方法を考えるのは、母親だけに限らなくても良いのではないでしょうか。もちろん、ご家庭で工夫を楽しまれている方もたくさんいらっしゃいますから、そういった方の教材や方法を参考にしても良いと思います。また、ご質問の意図には、学校側で適切な教材や方法を考えて欲しいという想いが含まれているようにも思われます。ご家庭(お母様)と学校との具体的な話、共通の理解を深めることをお勧めいたします。

今回のケースでは、診断があり、それに対しての配慮が欲しいということですから、学校とご家庭で具体的な「個別指導計画」を立てることで共通の理解、計画の確認ができるはずです。それには、配慮を要する側も具体的にどのような困難さがあり、それに対しての配慮を具体的に提示するとよいでしょう。そのうえで、学校がどこまで受け入れることができるのかを予め、共通理解することが大切です。(合理的配慮については、私立校においては学校の努力範囲となります)。また、地域によっては、通級指導教室や特別支援教室、巡回指導といった制度があります。学級や全体指導の中での対応が難しい場合には、個別の配慮や指導を専門に対応していただき、そこでの教材や方法を学級でも取り入れてもらうことも有効でしょう。さらに、子どもの年齢によっては、周囲からのサポートや配慮してもらっていることを自己理解していき自身で発信できるスキルを身に付けなくてはいけません。どうやったら、何があれば自分はできるのか。それを知り、時には他者や周囲に自分でお願いできるようすることで、自分が自分らしくできる(いられる)方法につながるでしょう。

東京都教育委員会HPの「ICT機器活用事例集」や「通常の学級における個別指導」があります。参考にご覧ください。
※東京都教育委員会 (詳細はこちら>>

年齢がわかりませんが、教材についての参考に下記などいかがでしょう。英語が苦手ということでしたので中高学生かもしれませんが。

・CD-ROM付き特別支援教育をサポートする読み書きにつまずく子への国語教材集 ナツメ社
(詳細はこちら>>

・CD-ROM付き 特別支援教育をサポートする読み・書き・計算指導事例集 ナツメ社
(詳細はこちら>>

・教室の中の気になるあの子から発想した教材・教具 学事出版
(詳細はこちら>>

・読み書きが苦手な子どものための英単語指導ワーク 明治図書
(詳細はこちら>>

柳下記子
視覚発達支援センター 学習支援室「グッドイナフ」室長

 

──■ あとがき
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今回は、公立校の特別支援についての連載が始まりました。次回から、通っていた学校に行かなくなった子供を対象にした通信制高校について、その分野の日本の草分けともいうべき、明蓬館高校の創設者、日野公三(ひのこうぞう)先生に連載をしていただきます。ご期待ください。

次回は、6月8日(金)の刊行予定です。