やる気を引き出す効果的な質問

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2015.12.11

やる気を引き出す効果的な質問

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■ 連載:やる気を引き出す効果的な質問
■ 特集:子どもの困りに関するイベントの紹介・その4
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■ 連載:ペアレント・トレーニングの活かし方
(第5回)やる気を引き出す効果的な質問
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子どもの年齢が高くなってくると「ほめる」ということが難しくなります。
いくらこちらが「いいね!」とほめたところで、子ども自身の納得がいかなければ、嬉しいどころが「馬鹿にしているのか!」と不快になるでしょう。
ほめ言葉のところで少し触れましたが「ほめる」というのは、相手を認めるということでもありましたね。とは言っても、すぐに認める、尊重する、といったことは、そうそうできません。相手が幼い子どもでしたら仕方ないと思えることも、思春期が近づいた年齢にもなると、ついつい黙っていられず指示したくなります。前回述べたCCQ(Calm:あなた自身が穏やかで、Close:子どもにもう少し近づいて、Quiet:声のトーンを控えて)では、気持の抑制が利かなくなってくるのが親心でもあります。

そんな時は、子どもに指示するのではなく、子ども自身に考えてもらうための質問をしてみましょう。

【クローズド・クエスチョンとオープン・クエスチョン】
質問には「クローズド」と「オープン」の二通りがあります。クローズド・クエスチョンは、YES、NOで答える事が出来る質問です。例えば、「今日は行く?」という質問には、「行く」「行かない」のYESかNOで答えることができます。この場合には、考えるというよりは、事実や意見を明確にするために用いられ、確認や行動の具体化に役立ちます。

前回の選択肢は、「どれにする?」「どっちにする?」と提示された答えから決めるものでした。YES,NOのどちらかを選択するということで、これに近いものがありますね。

それに対して、相手に考えさせたい時に有効的な質問がオープン・クエスチョンです。オープン・クエスチョンは、5W1Hのうち、「なぜ」以外の4W1H(いつ・どこ・だれ・なに・どのように)を用いて質問します。「なぜ」という質問は、詰問になってしまいがちな言葉なので、質問の仕方に慣れるまでは用いらない方が良いでしょう。

では、もし子どもが「勉強する気になれない」と言ってきたらどのように質問したらよいでしょう。4Wを使った一例を作ってみましょう。

いつ・・・どんな時間(いつ頃)だったら勉強する気になれるかな?
どこ・・・どこでなら楽しく勉強できそう?
だれ・・・誰と一緒だったら勉強できそう?
なに・・・なんの勉強が嫌なの?

いかがでしょう、みなさんだったらどのような質問ができますか。

更に、このように聞かれたら、どう答えますか?
(1)なぜ、テストができなかったの?!
(2)なぜ今まで何もしなかったの?!
(3)どうして何も言わなかったの?!

いかがですか、答えられましたか?
また、どんな感じがしますか?
(1)は何で!という強い印象が残り、責められているような居心地の悪い感じがします。
(2)は、なぜと言われても・・・と答えに詰まってしまいます。
(3)は、言ったら何か変わるのか、あるいは言ったことで自分にメリットがあると信じられなければ言わないでしょう。

それでは、これらの質問をオープン・クエスチョンに置き換えてみましょう。

(1)テストのできない理由はなんだろうね?
(2)これから何をしていけばいいと思う?
(3)ママにできることはある?

オープン・クエスチョンの答えの内容は様々であって、その答えは自分の中にあります。そして、その答えは具体的であればあるほど、行動とつながっていきます。小さな幼い子どもであれば、行動を指示して好ましい行動を促しますが、年齢が高くなってきた時には目標を達成するための好ましい行動は何なのか、を自分で考えさせるのです。そして、私たちはその行動ができるように質問を重ねていきます。

例えば、「いつだったら出来そう?」という質問には、「明日」だったり「一時間後」だったり、自分の力量や都合との兼ね合いを考えて答えるでしょう。仮に「一時間後」と答えたとして、一時間後に出来なかった時には更に「どうしたらできそう?」「何があったら出来そう」など、出来なかった原因ではなく、出来るようになる方法を考えさせる質問を出すことで、何をしたら(どんな行動をとったら)達成できるのか、ゴールに具体的に近づいてくことができます。これらの方法を着実に進めていく中での達成であれば、おのずと褒めところは見つかることでしょう。さらに、達成した結果だけではなく、達成するまでのプロセスを褒めることは次への意欲にもつながります。指示を出して行動を決めてしまうことよりも、自分でどんな行動がいいのかを考えさせ、道筋を立てさせる言葉かけのほうが、自主性が解放され自分自身で行った実感が持てて良いのです。

【チャンクダウンと具体化】
このように細分化して考えていくことで達成に近づくことが出来ます。こうした一連をチャンクダウンといいます。チャンク(chunk)とは「かたまり」の意味、チャンクダウンは、「かたまりをほぐして具体化していく」ことをいいます。

「勉強をがんばりなさい」という声かけをしたことはないでしょうか、「はい」と答えるのは簡単です。しかし、頑張るって一体どういったことをするのでしょう。抽象的な表現で行動が見えてきませんね。こうした時にこそ、チャンクダウンして、具体的な行動を促しましょう。オープン・クエスチョンを使って子どもとのやり取りを楽しみながら、ほめところを探していきましょう。
※チャンクダウンと質問の例 (図はこちら>>
◯参考文献「コーチングマネージメント」日本経団連出版

柳下記子
視覚発達支援センター 学習支援室室長

 

■ 特集:子どもの困りに関するイベントの紹介・その4
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今回は国の施設で、定期的に一般公開のイベントを行っている2つの機関をご紹介します。

◯国立特別支援教育総合研究所(特総研)

文部科学省が管轄する、特別な支援を必要とする子どもの教育を考える機関です。神奈川県の三浦半島の先端近くにあり、京急線久里浜駅からバスが出ています。外部への情報提供にも力を入れており、図書室は公開されており、外部から蔵書を検索することもできます。さらに、特別支援教育に関する情報データベースも公開され、多くの資料の全文を閲覧することができます。

・国立特別支援教育総合研究所 (ホームページはこちら>>
・図書室 (詳細ページはこちら>>
・教育情報データベース (詳細ページはこちら>>

同施設は筑波大学附属久里浜特別支援学校と隣接しており、研究と実践でお互い、協力して活動を行うことも多々あります。その最たるものが、研究所公開イベントと外部向けの講演会の同時開催です。研究所が収集し、あるいは研究所メンバーが独自に開発した多数の支援機器を手に取り、実際に試用することが可能です。また、特別支援学校の公開授業では実際に子どもたちがどのような活動を行っているかを知ることができます。

下記は、筆者が研究所と特別支援学校の共同イベントに参加した際のレポートです。
・2011年11月25日号 (バックナンバーはこちら>>

もう一つのイベントは全国の教育関係者向けに実施するもので、毎春、都内の国立オリンピック記念青少年総合センターで2日間に渡って開催されます。
この特別支援教育セミナーでは、最新かつ重要なテーマが紹介され、国内の特別支援教育の充実に大きな役割を果たしています。

下記は、筆者が2年前に参加してレポートした ICF(国際生活機能分類)の紹介です。
・2013年2月8日号 (バックナンバーはこちら>>

こういった情報は、研究所が発行しているメールマガジンを購読しておくとタイムリーに入手することができます。興味のある方は下記からお申し込みください。もちろん購読は無料です。

・研究所メールマガジン (詳細ページはこちら>>

◯国立障害者リハビリテーションセンター

埼玉県所沢市にある厚生労働省の管轄の施設です。他にも全国7箇所に視力障害や重度重複障害に関する施設があります。見学を随時受け付けていますので、興味がある方は下記ページを参照してお申し込みください。

・国立障害者リハビリテーションセンター(国リハ)(ホームページはこちら>>
・施設の所在地と見学申し込み (詳細ページはこちら>>

発達障害に特化したページを持っているのも特筆すべき点です。乳幼児期、学童期、思春期、青年・成人期と情報を分けて掲載しており、自分に必要な情報を探しやすくなっています。下記ページを一度ご覧になってください。

・発達障害情報・支援センター (ホームページはこちら>>

国リハと近くにある障害者自立施設、秩父学園は、公開イベントを年に数回行っています。下記にイベント情報をまとめたページがありますので、ときどきご覧になることをお勧めします。

・国リハ イベントページ (詳細ページはこちら>>

支援者のための企画の他に、障害児・者のためのイベントもあります。下記は、障害者自身がモデルになって行われる国リハコレクションのページです。

・国リハコレクション2015 (詳細ページはこちら>>
・同2012レポートページ (詳細ページはこちら>>

(五藤博義)

 

■ あとがき
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次回メルマガは年内最後の号で、12月25日(金)を予定しています。

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