新連載:ペアレント・トレーニングの活かし方

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2015.10.16

新連載:ペアレント・トレーニングの活かし方

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■ 新連載:ペアレント・トレーニングの活かし方
■ グッズ:《読む》《書く》に特化したワークブック・2
■ 公募:デジタル認知テストのための情報提供のお願い
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■ 連載:ペアレント・トレーニングの活かし方(第1回)
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子育て中に思ったように上手くいかないことって、必ずと言っていいほどあります。それでも子どもとのやり取りの中から、少しずつ上手くいくコツをつかみながら日常の中で良好な親子関係を少しずつ育んで成長していきます。ところが、発達障害を持つ子どもたちや育てにくさを持つ子どもの子育てはその上手くいくコツを探すことがなかなか難しいのです。そこで、子育ての具体的な考え方の手立てとして、ペアレント・トレーニングや子育てコーチングといった子育てのスキルトレーニングが注目されるようになりました。

ペアレント・トレーニングは、発達障害を持つ子どもの親訓練プログラムとして、これまでにたくさんの書籍が出ています。読者の中にも何人かの方はこのトレーニングを経験されたことと思います。それらのほとんどは、UCLA神経精神医学研究所(NPI)のペアレントトレーニング・プログラムが基となっています。それは子どもの行動における心理やパターンを理解し、問題行動を減らし、望ましい行動を増やしていくようにスキルを獲得していくものです。このトレーニンングは、あくまでも、親訓練ですから、子どもを変えようとするのではなく、親が子どもへの対応を変えることで、子どもの好ましい行動を引き出そうというものです。

私はこれまで、講師としてペアレント・トレーニングをなんどもおこなってきました。しかし、手順やマニュアル通りではいかないこと、また、ペアレント・トレーニングだけでは補えないものがあると感じてきました。そこで、昨年から開始した視覚発達支援センター学習支援室でのペアレント・トレーニングでは、書籍「こうすればうまくいく発達障害のペアレント・トレーニング実践マニュアル」※1を基本ベースとして、参加者の子どもの様子(特性)に合わせながら、コーチングの要素を入れつつ、独自の子育てセミナーとして開催することにしました。

※1 こうすればうまくいく発達障害のペアレント・トレーニング実践マニュアル (詳細はこちら>>

【ペアレント・トレーニング】
子どもの好ましくない行動に対してはつい、「ダメでしょ!」「悪い事ばかりして!」と叱ってしまいます。叱られた子どもが素直に謝らなかったり、ふくれたりすると、さらに激しく「この子ったら、ちっとも言うこと聞かない」などさらに言葉が荒々しくなったり、大きな声で怒ったりしてしまいます。子どもはいつも叱られていることで叱られ慣れもしますし、余計に反発したり、自分はダメな子だと自己肯定感が下がったりしていくのです。親もイライラして怒ってばかりいる自分を自己嫌悪したり、子育ての自信を失ったりするのです。

このサイクルを変える為にペアレント・トレーニングでは、子どもの行動のみに注目します。子ども自身の存在を大切にし、『その行動は良くない事』というメッセージを送るのです。これらを「行動療法」※2の考え方を基に進めていきます。

※2 行動療法 Wiki (詳細はこちら>>

[行動のABC]
ある行動をB(Behavior)とすると、その行動を引き起こす要因や状況、つまり先行刺激となるものA(Antecedent)が必ずあります。そして、Bの行動の後には、結果C(Consequence)があります。例えば、買い物に出かけるといつもお菓子を買ってと大騒ぎする行動Bがあったとします。いつもお菓子屋で騒ぐと解っているのなら、その前を通らないようにする、つまり先行刺激Aを変えることで、行動Bを防ぐことができます。また、大騒ぎする行動Bの結果Cとして、静かにさせる為にお菓子を買ってしまえば、騒げば買ってもらえると学習し、「買って欲しい時には騒ぐ」という行動を生み出すサイクルになっていくのです。しかし、どんなに騒いでも買わないというように結果Cを変えることで「騒いでも買ってくれない」と認識させ、騒ぐ行動Bを減らしていきます。

※問題行動を生み出すサイクル (イメージはこちら>>

このように、行動に注目していくため、普段の行動を3種類に分けていきます。1)好ましい(増やしたい、継続してほしい)行動、2)好ましくない(減らしたい)行動、3)許しがたい(危険な)行動に分けます。レッスンは週一回、隔週(二週間に一度)で行いますので、次回までにお子さんの行動をしっかり見て行動を分けてきてもらうのです。

好ましい行動が見つからない!という方がよくいますが、普段の当たり前の行動こそ、好ましい行動なのですね。また、好ましくない行動を見ていくと意外と、好ましくないという行動の中に良い行動が隠れていることに気が付くことがあります。通常参加者は5~6名で行いますので、お互いが3種類に分けた行動リストを見て、共感したり気が付いたり、お互いに相乗効果が生まれます。参加した方々には、こうして3種類に行動を分け、好ましい行動は「ほめる」、好ましくない行動は「反応しない」という対応を習得していきます。

次回は、この「ほめる」について解説します。

柳下記子
視覚発達支援センター 学習支援室室長

 

■ グッズ:《読む》《書く》に特化したワークブック・2
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小学生の《読む》《書く》に特化したワークブックを2回に分けて紹介しています。前回は、読解に軸をおいたワークブックとして、論理エンジンの「読解・作文トレーニング 読む力・書く力をぐんぐんのばす(小学生版)」をとりあげました。

今回は、「書く力をつける 国語力の基礎(自分学習シリーズ)」(学研教育出版)です。

※ワークブック2種 (画像はこちら>>

書きことばを学習することに特化したワークブックで、前書きには「作文を書く一歩手前に導くための参考書」とあります。字が大きく絵もたくさんあり、ぱっと見た感じはとても簡単そうです。

「ことばのルールを学ぶ(文法)」「発想の訓練(ことばを操作し、ものごとを描き出す方法)」「構成を学ぶ(論理性や整合性に気を配る)」という3つの柱から成り、この柱を螺旋を描くように順番に学んでいくと、はじめのうちは簡単だった問題が少しずつ難しくなっていきます。

正しく句読点を打つ問題、長い文を短く分ける問題、文の順番を入れ替える問題、意味不明の文章を書き換える問題、4コマ漫画を説明する問題など。

長文のどこに読点を打つのが理にかなっているかなんて、そもそも唯一無二の正解なんてないですし、大人にも難しいです。曖昧さを曖昧なままで受け止めることも必要になります。でも、曖昧さを受け入れがたい子どもにとって、それはとてもハードルが高いのです。教えているこちらも相当の忍耐力と応用力が必要です。

同じく前書きに、「『書きことば』というのは、話しことばと違って、吟味し、熟慮し、練りに練ったことばです。(中略)『書きことば』をしっかり身につけることによって、本当の意味での国語力がつきます。『書きことば』によってこそ、ことばを客観的にとらえられるようになります。慣れによって反射的に用いるのではなく、知性によってことばを操作できるようになります。」と書かれています。

前回の「読解・作文トレーニング 読む力・書く力をぐんぐんのばす(小学生版)」、今回の「書く力をつける 国語力の基礎(自分学習シリーズ)」のいずれも、国語の勉強というより、日本語の勉強ととらえていいと思います。

本をたくさん読みこなしている子は、たぶん感覚的に身につけているであろう《読む》《書く》のノウハウを、読書からでは学べなかった子に徹底的に教えてくれます。あるいは、本をたくさん読んではいても、慣れによって反射的にしかことばを使いこなせなかった子にも。

多読の習慣のない子や、正確さと合理性を重んじるタイプの子は、曖昧さのある日本語を曖昧なまま会得することは難しいのでしょう。英語学習にグラマー(文法)の単元があるように、日本語も文法を独立させて学校で教えていただけたらと常々思っていますが、そこを補うタイプの教材になっています。

机に向かってドリルをやる感覚ではなく、ワークブックを間に挟んで親子で言葉遊びをするように、このワークブックを使ってみてはいかがでしょうか。

国語というよりも日本語につまずいている、数学好きなお子さんにおすすめの2冊です。

論理エンジン公式サイト (サイトはこちら>>
「書く力をつける 小学中学年用 改訂新版」 (書籍の詳細はこちら>>

レヴュアー: yoshiko

 

■ 公募:デジタル認知テストのための情報提供のお願い
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認知テストは、認知機能の発達状態を調べるのに有用ですが、現在はWISC-4など、専門家が対面式で実施するものがほとんどです。また、内容が定型化されていますので、連続して実施するには一定の期間を開ける必要があります。数か月で大きく変化することのある子どもの認知機能を、手軽にパソコンを使って調べることができないかと、明星大学心理学教室の竹内康二准教授が中心になり、こども脳機能バランサープラス(以下、CB)とWISC-4の相関を調べることになりました。

そこで、CBの使用データと、18か月以内に受検したWISC-4の、両方のデータをご提供いただける方を募集することになりましたので、メルマガ読者の皆様にご案内させていただきます。

具体的な方法としては、パソコンの中に自動的に生成されているCBのデータ(ドキュメントフォルダの中のLEDEXフォルダの全内容)をコピーして、メールあるいはCD等に保存して、WISC-4の結果コピーと一緒にお送りいただきます。その際、お名前や住所等の個人データは、使用しませんので、マジックインク等で塗りつぶしていただきます。協力してもよいと思われる方は、まずはメール(または電話、ファクス等)でお問い合わせいただければ、竹内先生からの詳しい依頼文書をお送りします。

どうぞよろしくお願いいたします。

●募集締切 2015年10月31日
●募集の人数 50名 (5歳以上12歳までのお子様)
※事前に受付を終えてから、ご送付ください。
●お礼 以下のどちらかご希望のものを進呈
・レデックス制作パッケージソフトのいずれか1つ
・QUOカード 2000円分
※WISC-4の結果をお持ちの方で、CBをやってもよいと思われる方は、事前に
お礼の品としてCBをお送りすることも可能です。
●問い合わせ先 五藤(レデックス株式会社)

 

■ あとがき
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今回から連載くださる柳下記子(やぎしたのりこ)さんは、幼稚園教諭の経験をベースにして、発達障害やつまずきを持つ児童、家庭、学校、地域、療育機関と連携して、長年、学習支援、家族支援をおこなってこられました。
東京都武蔵野市個別支援教室で指導員も担当されています。今まであまり扱ってこなかった保護者支援の立場から、いろいろな情報を提供してくださると思います。

著書に
『発達障害がある人のための みるみる会話力がつくノート』講談社、
『教室の気になるあの子から発想した教材教具』学事出版、DVDに『DVDで学
ぶ特別支援教育』 中島映像教材出版
などがあります。
※DVD YouTube動画 (動画はこちら>>
次回メルマガは、10月30日(金)を予定しています。

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