眼球運動はなぜ大切?

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2015.02.27

眼球運動はなぜ大切?

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■ 連載:「見る」機能と学習 視機能・2 眼球運動はなぜ大切?
■ 書籍:学び方がわかる本 ~勉強は楽しい!!
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■ 連載:「見る」機能と学習 第3回 眼球運動はなぜ大切?
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1.B君 8歳

通常級に通っているB君は、行をとばしたり、同じところを何度も読んだりして教科書が上手に読めません。学習理解度も思わしくないということで、浦安市の教育センターが視覚発達支援センター(注1)を紹介し、受診に来訪されました。本人の話では、板書が時間内に終わらずいつも最後まで写せないので泣きたくなるが、それでもがんばっているとのこと。学校の視力検査でC(0.3以上0.7未満)だったので、眼科で処方された近視の眼鏡を掛け視力は0.8~0.9となっています。
(注1)視覚発達支援センターのサイトはこちら>>

視覚発達支援センターで眼球運動検査をしたところ、注視は持続し、基本的な眼球運動に問題はないのですが、読字に関係する心理学的眼球運動検査DEM(注2)を実施すると、読み飛ばしや読み間違いが多く、これが読書や板書の苦手さに繋がっているようです。
(注2)DEM(Developmental Eye Movement Test) DEMは、文章を読んだり、文字を書き写したりする時に使う眼球運動(視覚探索)を確認する検査。6才から13才11ヶ月のお子さんを対象としています。

そこで簡単な3種類の眼球運動トレーニング:1Scale法(注3)、コラムサッケード(注4)、コンピュータソフト:しっかり見よう(注5))を実施したところ、1ヶ月後には行とばしが減り、読書が改善してきました。板書も他の子どもに比べるとまだまだゆっくりですが、何とか時間内に写せるようになってきました。

(注3)1Scale法  定規の両端と中心に貼ったシールを水平に持ち、指示に従って交互に見るトレーニング。最初は指さしをしながら取り組んでもらった。

(注4)コラムサッケード  行がえ時の眼球運動トレーニングの方法で、左端と右端の文字だけを声をだして読みます。
下図では“あ→な→あ→は→に→い→・・“などと読みます。
★図はこちら>>

(注5)しっかりみよう 理学館から販売されている眼球運動トレーニングソフトです。
★詳細はこちら>>
※編者注)2005年の製品です。同ソフトの監修者の一人、北出勝也氏監修で2012年に眼球運動トレーニングソフト「ビジョントレーニングII」をレデックスが発売しています。

2.視覚認知と眼球運動

人は眼を開けば眼前に拡がる景色全体が 鮮明に見えていると感じますが、実は鮮明に見えているのは視野の中心部のごく一部だけなのです。これは眼の構造に起因しています。

網膜で分解能が高い場所は、図1に示すように黄斑部(おうはんぶ)中心窩(ちゅうしんか)のみです。中心窩での視力が1.2の時、中心外2度では0.5、中心外5度では0.1程度しかありません。

図1網膜の構造と視力
★図はこちら>>

つまり事物の詳細を把握するには、中心窩にその網膜像を位置させ、そして維持すること、つまり視線(注視)の安定が必要です。その際重要な役割を果たしているのが眼球運動です。

眼球運動には、旧タイプ(2種類)と新タイプ(3種類)の2つのタイプがあります。

旧タイプの2種類の眼球運動は、「前庭動眼反射(VOR: Vestibulo-ocularreflex)」と「視運動性眼振(しうんどうせいがんしんOKN: Opto-kineticNystagmus)」で、頭部や外界の対象が動く時に、その網膜像を中心窩に安定した状態に保つ働きをします。

新タイプの眼球運動は、関心ある対象を意識して見る眼球運動です。衝動性眼球運動(サケード:sacade)、追従性眼球運動(パスート:pursuit)、輻輳(ふくそう)・開散(かいさん)運動があります。

1)衝動性眼球運動
たとえば、お店に並んだ多くの商品から目的とするものをみつける時に行う眼球運動です。また、本を読む時も衝動性眼球運動を行っています。衝動性眼球運動がすばやく、正確にできないと、読みとばしが増えたり、読んでいる場所を見失ってしまったりして読書効率が落ちてしまうことがあります。

図2 読書時の衝動性眼球運動(イメージ)
★図はこちら>>
※文字の上の赤丸の大きさは、視線停留時間を表しています。

2)追従性眼球運動
私たちが見ようとするものは止まっているものとは限りません。飛んでいる虫を目で追ったり、投げられたボールを見たりする時の眼球運動が追従性眼球運動です。生後6ヶ月くらいまでに水平180 度の範囲を追えるようになるといわれています。学習障害(LD)児では追従性眼球運動がスムースに行われず、衝動性眼球運動が混入する比率が高いことが報告されています。

3)輻輳・開散運動
近くのもの、遠くのものを両眼で捉える機能で、輻輳は両眼視線をよせる眼球運動、開散は両眼視線を開く眼球運動のことです。屈折、調節といった他の目の機能と密接に関係しています。また安静位での両眼視線の相対的ずれを調節し両眼視機能の成立における運動面からの基礎となっています。

眼前正面に置いた視標を両眼で見つめながら徐々に顔に近づけた時、単一視できる最も近い点を、輻輳近点(通常鼻根部より8cm程度)といいます。輻輳近点が遠い(輻輳力が弱い)と、近方での読書などの近方作業に支障があることが報告されています。

3.発達障害をもつ児童の視機能

視覚発達支援センター受診者の視機能に関するデータ(対象:2002年8月から2009年3月までに視覚認知検査を受けた6歳~12歳818名)では、眼球運動が上手にできない児童は63.5%とかなりの割合を占めていました。10秒間指定された視標を注視できない児童も16%存在し、輻輳力が十分でない児童は20%、また10~12%の児童に斜視がみられました。本症例のB君のように発達障害のある児童は、視機能の不調に対して適切な対処がされていない場合があります。

【参考文献】
川端秀仁:視覚認知に問題のあるLD (Learning Disorders、LearningDisabilities )児への対応-眼科の役割について。日本ロービジョン学会誌10:31-28、2010

(川端秀仁・かわばた眼科院長)

 

■ 書籍:学び方がわかる本 ~勉強は楽しい!!
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「学んだことを使うために勉強するのです。」-私にとって、この点がこの勉強の技術で一番大切なことでした。(後略)
この本のブックカバーに記載された、読者からのお便りの一部です。

生まれつき、学ぶことが好きな子はたくさんいます。でも、勉強することの目的が分からない子もいます。また、学んでいる途中で、「障害」に出くわす場合があり、その障害を切り抜けることができないと勉強がきらいになってしまう場合があります。

この本では、勉強することの意味、学ぶ途中に出会う3つの「障害」とそれを乗り越える具体的なやり方が、イラストと分かりやすい文でまとめられています。

特に、言葉の意味が分からなかったり、取違えたりすることで発生する障害:「誤解語」の多岐に渡る解説は、きっと役に立つと思います。

また、「空っぽ」で「くたびれ果てた」感じ、「そこにいない感じ」、「神経質になったり動揺したり」「他の人を責めたりし始める」といった気持ちや症状を表すたくさんの表現は、ご自分やお子さんが出会っている問題の所在に気づくヒントになるのではないでしょうか?

大人の人なら一通り読むのに30分もかからないと思います。まずは図書館や大型書店でざっと読み、お子さんに与えたいと思われたら購入することをお勧めします。

学び方がわかる本 ~勉強は楽しい!!
L.ロン ハワード原作、日本 使える学習法の会編著
2003年8月発行、ニュー・エラ・パブリケーションズ・ジャパン株式会社
B5版、144ページ、950円(税別)
★詳細はこちら>>

(五藤博義)

 

■ あとがき
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川端先生原案・監修の視覚認知バランサーがiPadアプリになりました。
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また、レデックス全パッケージ商品2割引きキャンペーンは2015年3月2日月曜日までですのでお忘れなく。
※キャンペーンは終了しております

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