夜中に犬に起こった奇妙な事件

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2013.08.16

夜中に犬に起こった奇妙な事件

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■ 連載:米国の個別支援計画その2
■ グッズレビュー:ことばつかいかた絵じてん
■ 書籍:夜中に犬に起こった奇妙な事件
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■ 連載:ボストンからの発達障害レポート
第6回 米国の個別支援計画その2
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前回は、IEPs(Individualized Education Plan:個別支援計画)について、大まかな紹介をさせていただきました。今回は、IEPsの内容をもう少し詳細に説明したいと思います。全米を通して内容はほぼ同様ですが、今回は私が住んでいるマサチューセッツ州で使われている書式に沿って、解説していきます。

1)保護者/本人の懸念
IEPsを受ける子どもの教育的効果を高めるために、保護者および本人が現在どんな懸念を持っているのかが記入されます。また、今後の取り組みでどんな成果を期待しているか、現在受けているサービスについて気になる点はあるか、なども記入されます。

2)アセスメント結果
その子の長所、強みや、どんなことが好きか、これまで成功した体験など、プラス側面をまず記載し、その上で、普通教育を受ける際に影響のある障がいはどんなことがあるかが述べられます。

3)展望
今後1~5年後の目標が子ども本人の夢や希望、興味と合わせて書かれます。そして、実現への問題点とその希望をどう達成していけるか、また、学校の内外での進歩が書かれます。さらに、14歳までに学校生活を終えた後の環境や目標もこの項目で述べられます。

4)現在の成績
A:普通教育
国語、社会、理科、数学、その他の教科で、生徒の障がいが影響を及ぼしているもの、それがどんな風に影響しているのか、どんなAccommodation(援助)があれば、より効果的に学べるのか、どんな指導法が生徒の成果をあげるかが書かれます。

B:その他の教育的必要性
行動療法、点字、代替コミュニケーション機器、手話、職業訓練、作業療法、運動療法、言語療法、母国語が異なる生徒へのサポートなど、特別支援教育における成果、問題点、改善点などが書かれていきます。

5)現在のパフォーマンスレベル(実力レベル)、年間目標
現在取り組んでいること、できることと合わせて、達成できそうな年間目標や挑戦課題を設定します。それを達成できたかどうかをどのように評価するか、その際の指標や、目標を達成するために必要なことも述べていきます。

6)サービス介入
行動療法、作業療法、運動療法、言語療法など、その生徒が目標を達成するために必要なセラピーサービスを、どの担当者がどのくらいの頻度で、どのくらいの期間行うかが、特に重視する目標とともにリストアップされます。

7)スケジュール
特別支援を受けるのに通常のクラスから離れること、時間割りの変更や調整について書かれます。

8)交通手段
アメリカではスクールバスや保護者による車での送り迎えが主流なので、子どもの登下校方法が記載されます。車いす専用車など、特別な車が必要かどうかも書かれます。

9)州学力診断テスト結果
マサチューセッツ州には小学生から高校生までが受けるMCAS(Massachusetts Comprehensive Assessment System)という学力診断テストがあり、その結果が書かれます。

10)その他の情報と署名
ここまでに書かれた以外の、子どもの成長にとって有益な情報や、必要事項などとともに、このIEPsに書かれた内容が納得できるものであることを保護者に署名してもらう欄です。

以上がIEPsに含まれる事項です。

この中で私が特に驚いたのは3)で、14歳までに学校を終えた後の将来設計を組み込むところです。そして、その計画は16歳までに具体的に開始されなければなりません。例えどんなに難しい職業を夢に掲げたとしても、どこまでが実現可能な範囲で、その目標に近づくためにどんなカリキュラムが繰り込まれるかということまで記載されます。

IEPsのミーティングには、14歳以上であれば基本的に子ども本人も同席することになります。自立した生きがいを持った生活を送るために必要なことは何か、と徹底的に将来に目を向けた計画が立てられます。

人間は学校生活を終えた後の人生の方がずっとずっと長いです。より豊かな人生を送るために、学校を離れた後の人生を考えるのはとても重要なことですよね。

次回は、IEPsミーティングをご紹介したいと思います。

(礒恵美)

礒さん編集facebookページ "All 4 Variety"はこちら>>

 

■ グッズレポート:ことばつかいかた絵じてん
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「すわる」はわかるけど、「こしかける」はどういうこと?
「きる」と「きせる」の動作の違いは?

言葉は知っていても、どういう場面で使うのかを知るのは難しいものです。また、動詞や形容詞など形が変わる言葉もあり、どういう時に形が変わるのかも知らなければなりません。

この事典(辞典?)は、こんな風(下記リンク参照)に日常よくある場面が描かれ、さまざまな動作をしている登場人物の姿を見ながら、言葉の使い方を学ぶことができます。
★絵じてんの特徴と使用例はこちら>>

ヴァラエティカフェ・グッズレビューはこちら>>
レヴュアー: 小林 雅子

 

■ 書籍:夜中に犬に起こった奇妙な事件
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アスペルガー症候群の世界を知るために、子どもあるいは発達障害児・者と関わる全ての人に、必ず読んでいただきたい本の一冊です。題名は子ども向けになっていますが、英国で出版された原作では子ども向けの本と同時に、装丁を変えた一般書籍が同時に出版されています。

高度な数学を理解するが一般的な社会生活に困難を持つため、特別支援学校に通う15歳の少年が主人公です。学校の先生から与えられた、近所の犬が殺された事件を本にする、という課題に取り組む彼が、身の回りに起きるできごとや社会事象を全編一人称で描いていきます。名作「アルジャーノンに花束を」と比較されますが、一般の人と異なる発達障害児・者の感性や思考を実に的確に表現している点は、ノンフィクションと言ってもよい仕上がりだと思います。

筆者は、東京のある区の教育委員会から研修を依頼され、出席する教員の方々に「発達障害児の世界を体験させてほしい」とリクエストを受けました。8月末にその研修会を行いますが、ちょうどそのタイミングで、奇しくもこの本に出会えたことに感謝しています。

この本を読むきっかけとなった書評も次に紹介させていただきます。原作が脚本化され、ロンドンで上演されて、今年4月に賞も受けているようです。
機会があればぜひ見てみたいものです。
★書評(産経ニュース書評倶楽部)はこちら>>

夜中に犬に起こった奇妙な事件
マーク・ハッドン著、小尾芙佐訳、早川書房
2003年6月発行、B5判、373ページ、1700円(税別)
★詳細はこちら>>

 

■ あとがき
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メルマガNo.72で紹介した「あたし研究」の続編、「あたし研究2」が発売になりました。
★詳細はこちら>>

こんな素敵なイラストを描く小道モコさんが、小学生のころ図画工作の写生の時間で、風景を描けと言われて、何をかいたらよいか困ったエピソードは子どもの困り感を的確に表しているように感じました。

次回メルマガは、1週間夏休みをいただいて、9月6日(金)にさせていただき
ます。暑い夏、十分、ご自愛ください。

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