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■ レポート:認知療法・認知行動療法のスキルを学ぶ
■ 連載:ビジョントレーニングという新しい可能性 第2回
■ グッズレポート:ドレミの位置がわかる「どれみっち」
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■ 認知療法・認知行動療法のスキルを学ぶ
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うつ病や統合失調症などの精神疾患、発達障害の環境への適応などに適用される認知療法・認知行動療法を、一般に公開する催しがありました。
11月24日(土)幕張メッセ、講師は国立精神・神経医療研究センターの認知行動療法センター長であり日本認知療法学会理事長でもある大野裕先生です。
1.認知療法・認知行動療法とは
私たちの気持ちや行動は、その時に頭に浮かぶ「考え」(認知)によって影響を受けます。自然に頭に浮かぶ考えやイメージを「自動思考」と呼びます。
ポイントは、「ものごと」そのものが影響を与えるのではなく「自動思考」が影響を与えることです。そして、そこで引き起こされた気分や行動はさらに「自動思考」を引き起こします。つまり、よきにつけ悪しきにつけ、循環が起きます。
認知療法・認知行動療法(以下、CBTと略す)は、
1)その認知のあり方を修正し
2)問題に対処することによって
3)気分の状態を改善させる
ことを目的とした、短期の構造化された精神療法(心理療法)です。
2.4つの感情と学習性無力感
喜怒哀楽といいますが、CBTでは、感情には以下の4つがあるとします。
喜び、怒り、悲しみ、不安 同じ1つのできごとでも人によって、また、その人の状況によって、異なる感情が生まれます。例えば、会合で会った人が挨拶もしない、視線を合わせようともしないこんな時に、3通りの感情が引き起こされるかもしれません。
1)挨拶くらいしてくれてもよいのに、ひどい人だ
→不当⇔怒り⇔攻撃
怒りは相手の怒りを誘発し、悪循環に陥ります。
2)誰も私のことなんか気にかけてくれない
→喪失⇔悲しみ⇔退却
何かを失くしたかもしれないという気持ちが悲しみです。そんな時に、人はその現実から退却し、引きこもって守りに入ります。
3)あの人を何か怒らせるようなことをしただろうか
→危険⇔不安⇔回避
これらの感情で、次のような考え方をするとつらくなります。
・いつも…、決して… 時間的広がり
・何をやっても… 空間的広がり
・私が悪い… 過剰な責任感
そして、あきらめてしまうと何も起こらず、結果的に、学習性無力感(マーティン・セリグマン)という状況に陥ります。
3.認知の2つのレベルとCBTのポイント
自動思考は、その人の状況によって異なりますが、簡単には変わらないものがあります。それがスキーマ(Schema)です。スキーマは、心の奥底に常に存在するその人特有の絶対的な世界観・価値観で、潜在的なルールとして作用します。
このスキーマを使い、また現実に目を向けて、自動思考を見直すのがCBTということができます。
その際、重要となるのは、ものごとには見方を変えると長所にもなり、短所にもなる、という点です。例えば、「物事に細かい」正確は、「ていねい」という見方もできます。ですから、自分が短所と思っている性格なども、それを活かす方法を考えてみると、長所に変えることができるのです。
この後、CBTを行うためのスキル研修が約1時間ありました。そこまでの関心がない方もいらっしゃるでしょうから、大野先生のサイトをご紹介することで、それに代えさせていただきます。
有料ですが1週間無料利用ができ、おそらく、その期間にCBTのスキルやうつになりにくい考え方をするヒントも得られると思います。一度、ご覧いただければと思います。
★うつ・不安ネット:心のスキルアップ・トレーニング はこちら>>
(五藤博義)
 
■ 連載:ビジョントレーニングってどうなの? 第2回
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もう一つの大事な視覚機能の力が、視覚認知力です。脳の中での視覚統合の能力ということもできます。具体的には、文字の形を上手く認識ができないので字の形を覚えることができない、図形の認識が弱いといった問題が出てきます。文字の線がどのように交わって構成されているのか認識が難しく、字を書き写すことが難しいことで、なかなか覚えられないということがあります。
WISC検査※1においては、見た形を捉えることが難しい視覚機能の力が低い人は、積木、組み合わせ、記号などで低い数値が出てしまうことがあります。一方、眼球運動が苦手な人は、符号において低い数値が出やすくなります。
このような、形の認識力は見本の形を手を使って模倣して作るトレーニングで高めていくことができます。文字を見て形を認識しづらい場合は手を使って粘土などで文字を作ることで認識がしやすくなることが知られています。手の運動・触覚などを使うことで、見て認識する経路以外の入力情報経路が使われ、認識を補助すると考えられます。別の入力情報経路を使いながら、情報を入れていくうちに形を認識する脳の部分が育ってくると私は考えています。
ジオボードというビジョントレーニングのグッズなどがあるのですが、ジオボードで線や形を輪ゴムで作ることで線や形が認識しやすくなってきます。文字などもジオボードで作ってみることで認識できるようになって、普通に書くやり方では覚えられない人が覚えられるようになっていきます。
書いて覚える方法では難しい人は、いろいろな感覚を使って覚える方法を試してみるとよいでしょう。お手本の文字も大きく太く色をつけたりすると認識しやすくなります。
ビジョントレーニングですが、たとえば眼球運動と視覚認知力に問題がある場合、1日各10分ずつ合計20分も行えば十分です。それが難しければ、出来るだけの時間でよいのです。能力が身につくには最低3ヶ月は続ける必要がありますが、一旦身についてしまえば、それ以上続ける必要はありません。
遊び感覚で楽しく続けるとよいのですが、すぐに飽きてしまうこともあるかと思います。最近のお子さんはゲームに慣れているので、単調なトレーニングが中々続かないということもあるでしょう。パソコンソフトを使ってゲーム感覚で出来ると行いやすいという人はそれを使ってもらうといいでしょう。市販のゲームでは携帯型ゲームよりは、テレビ画面を使って大きく体を動かして遊ぶゲームがよいでしょう。
昔ながらの遊び、お手玉やけん玉、ビー玉、コマ回し、カルタなども眼球運動のトレーニングになります。本来は外遊びをすると、自然に眼と体を動かすトレーニングになっていたのですが、最近では中々外遊びをする機会が減っています。
保護者の皆様は、休日には家族で外へ遊びに出かける機会を出来るだけ作るようにしてみてください。山や海に出かけて体をいっぱい使って遊ぶということが何よりのビジョントレーニングになりますし、親子のコミュニケーションにもつながります。遊びながら、楽しんで能力を伸ばしているご家族もいらっしゃいます。本来はそれが一番のトレーニングなのでしょうね。
困っている子どもたちはやる気をなくし自信を失っています。
通信制の高校の養護の先生から、その高校に通う26歳の男性のことで報告を受けました。
「学力はやや低いのですが、日常観察で不注意優勢が強いなと感じていました。彼は小学生時代、なかなか漢字が覚えられなかったそうです。居残りで何度も漢字を書いても覚えられなかったので、『俺はあかん。頭が悪い』と思ってきたそうです。すべての感覚を使って学習する方法や、学習環境を整理する話をしたら、テストで50点前後の成績が取れるようになり、『小学生の時にこの方法で学習してたら、劣等感をもたんで済んだのに』『俺って、やったらできるやん』と言ったそうです。バイト2つを掛け持ちして生計を立てていますが、卒業して定職につくのが、今の彼の目標です。」
彼も視覚認知の力が弱かったのかもしれません。いろいろな感覚を使って字を覚えることが出来ること、字が覚えられないことで劣等感を持つ必要はないということをもっと伝えていきたいと思います。
視覚の機能が改善してもまだ言語・コミュニケーション能力などそれ以外の問題があることもあります。それでも視覚の機能を伸ばすことで、少しでも自信をつけて、自分の好きなこと、得意なことを見つけてもらいたいのです。
私のところに通っていた不登校の中学生の男の子がいました。彼には音韻性の読みの問題があり、ビジョントレーニングで彼の問題をなかなか改善することは出来なかったのですが、私は彼に「君の人生だから、他の人のものでなく、君の描いた人生を生きなさい」と伝えました。彼は高校からカナダに留学し、好きなコンピュータグラフィックを勉強して帰国しました。今、彼は日本の大手ゲーム会社でグラフィックの仕事をしています。自分の描いた人生のビジョンを達成しているようです。
ビジョントレーニングのビジョンには視覚能力という意味と人生のビジョンという意味が込められています。ビジョントレーニングが多くの方々の人生のビジョンを達成するためのお役に立つことが私の願いです。
(北出勝也)
★北出先生のサイト:視機能トレーニングセンター「ジョイビジョン」 はこちら>>
 
■ グッズレポート:グッズレポート:ドレミの位置がわかる「どれみっち」
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ピアノのキーに「ドレミ」が書いてあれば弾きやすいのに、、、って思ったことのある人はいませんか? 口には出しにくい、そんな願いを適えてくれるアイデア商品がちゃんとありました。
軽いビニール製で、キーボードの上に置くだけ。外に持って行ってこっそり使うこともできそう。ピアノの習得よりも、まずはピアノの音が聞きたいという人にお勧めです。
使っている様子の動画もあります。まずはレビューページを見てくださいね。
ヴァラエティカフェ・グッズレビュー はこちら>>
レヴュアー:yoshiko
 
■ あとがき
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2012年最後のメルマガはきりのいい60号になりました。永くお読みいただきありがとうございました。
年末年始お忙しいでしょうけれど、お時間がとれた時に本メルマガについて感想や今後、こういった内容にしてほしい等のご意見を、メール等でお寄せいただけるとうれしいです。バックナンバーも最新号を除き、下記ページで公開しております。
★メルマガのバックナンバーはこちら>>
新年最初のメルマガは、1月11日(金)です。
ご家族、ご関係の方々が、よいお歳をお迎えになられますことを、心よりお祈り申し上げます。										
									
									
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