特別支援教育のさらなる充実と家族への期待

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2012.07.06

特別支援教育のさらなる充実と家族への期待

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■ 報告:全国LD親の会第11回公開フォーラム・2
■ 連載:自閉症のトムくんの成長物語・6
■ グッズレポート:SSTワークシート
■ イベント:学習会「認知機能の発達と学び」at 三重大附属特支校
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■ 報告:全国LD親の会第11回公開フォーラム・2 講演
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6月17日に行われた標記フォーラムでは、野沢和弘(毎日新聞論説委員・情報誌 PandA-J 編集長)の「発達障害者とこれからの社会」、篁倫子(お茶の水女子大学大学院教授)の「発達障害児の親のメンタルヘルスの様相と援助の方向性」という講演と研究発表がありました。そのお二人については、後日改めて紹介する機会を持てればと思います。

今回は、「これからの時代の保護者の役割」についての講演を紹介させていただきます。

●特別支援教育のさらなる充実と家族への期待
--柘植雅義・国立特別支援教育総合研究所

特殊教育から特別支援教育と名称が変わりました。異なるのは、保護者の関与の質的・量的増大が求められるということです。ほしいサービスがあればサービスを提供してくれる人や機関に伝えることが大切です。

障害のある子どもの家族は、その子どもの代弁者として、安心で、信頼的で満足した学校生活や社会生活を可能にしていく最大の援助者です。障害のある子どもの家族は、親として、きょうだいとして、学校や地域での障害の理解推進を進め、共生社会を実現していく際の、最大の推進者です。

1.共生社会の実現に向けて

横浜市は目指すべき姿を「自閉症にやさしいまち」とするビジョンを掲げました。そのことで、市民の意識が変わりつつあります。

柘植氏はこれまで、兵庫教育大学大学院での現職教員のレベルアップや、東京大学大学院での日本のかじ取りを期待される人たちへの講義に、障害のある子どもの親・きょうだいに登壇して話をしてもらい、好評を得てきました。

障害のある人が社会で果たせる役割や、それを実現するために市民が知るべきこと、できることを理解してもらうためには、保護者の活動がとても大切です。

2.学校教育のさらなる充実に向けて

学校という場にも保護者にはたくさんの役割があります。

学習指導要領では、特別な支援が必要な子どもには「個別指導計画」を立てそれを実行していくことが定められています。学校にはそれを実行することに関して、保護者への説明責任があり、結果についての責任があります。

教師には他の業務もありますが、上記をなすことは法令上、定められたことであり、それが実現されるように保護者は関与することが求められます。

・子どもへの実態把握への情報提供
・個別指導計画の提示、説明の要求
・授業参観での確認
・特別支援教育コーディネーター(校内の特別支援教育推進の司令塔)との
情報交換
・保護者面談や通知表を通しての確認

3.親の会への期待

これまで特別支援教育では生活支援が中心でした。これからは一歩進んで、「確かな学力の向上」を求めるべきです。発達障害の子どもは様々な学習上のつまずきがありますが、それに気づき、対応することに最大の関心を払うべきです。

全国LD親の会と協力して、発達障害向け教材教具のデータベースの構築に携わってきました。1000以上の教材・教具が教科・単元や場面ごとで選択できるようになっています。活用いただければと思います。

発達障害児のためのサポートツール・データベースはこちら>>

参考文献: 『学習障害(LD)-理解とサポートのために』 柘植雅義 中公新書2002
詳細はこちら>>

 

また、保護者が知っておくべきことにアドボカシー(権利擁護 advocacy)があります。何が法律で守られているか、どこまで保障されているかを知っておくことが重要です。ロサンゼルスの日本人親の会が作成したリソースブックが参考になります。
『手をつなぐ親の会』 (JSPACC) 日本語リソースブックはこちら>>

 

日本の個別指導計画には定義がありませんが、北米のIEP(Individualyzed Education Program)には、自分の子どもの教育に保護者が関わる内容も盛り込まれて作られます。もっともっと保護者が関与することが、よりよい教育の実現に必要だと考えます。
なお、IEPのQ&Aの文献 "All About IEP" を柘植氏と他2名が翻訳中で、中央法規出版から出版予定とのことです。期待したいと思います。

 

■ 連載:自閉症のトムくんの成長物語・6
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『2度目の訪問 (2010年9月の記録)』

一度目の訪問で、今後の課題や方向性についてトムくんのお母さんと話し合った際、「今後、こんなことができるようになればいいなぁ」と互いに確認しあった課題は、その時のトムくんの姿から「できるようになる」とは想像しずらいものもたくさんありました。

しかし、4ヶ月しか経っていない今回の訪問で、まだ遠い先の話として取り合えず言語化していた課題のほとんどがすばらしい進歩を遂げていて、期待以上の成果をあげているのがわかりました。

トムくんのできることは急激に増えていました。
パソコンで『こども脳機能バランサー』というゲームを扱えるようになり、文字を覚えてマッチングさせる活動もできるようになっていました。以前は常に夢の中のようなぼんやりした意識の状態だったのが、自分の意志や意欲を持って何かしている時間が増えていました。

そうした急成長中、伸び悩んでいたのは、『対話のやりとり』でした。「絵カードなどで学んでいる対話のパターン」と「現実に使える場面」がつながりにくいことに原因がありそうでした。

トムくんは「場面に合った言葉や記憶を検索すること」に困難を抱えている上、「類推する力」もとても弱いのです。「類推」とは、すでに知っている知識を応用して、同じ条件にある未知の物事について多分そうではないかと判断を下すことです。

トムくんの対話力は、「~ください」という要求語から抜け出せずにいました。といっても、4ヶ月前のそれは、おぼつかない様子で、勝手に食べ物を奪い取ろうとするところを、「○○ください」と大人にうながされて、ようやく真似するというものだったのです。

しかし現在は、自分の「欲しい」という内側からの要求を感じ取って、言葉にできるようになっていました。

これって、子どもがトイレトレーニングをするとき、きちんと自分の尿意を感じ取って、大人に告げられるのと似ています。この「自分の内側の要求を感じ取っている」という点こそ「今のトムくん」が以前のトムくんと一線を画する部分なのです。

案外、最も進歩が感じられない部分こそ、水面下では最も大きく変化していた部分なのかもしれません。まだパターンをなぞるだけで本当の意味で対話には至っていないとはいえ、内的な要求を感じて、伝えたい、表現したいという思いで必死になって、何かを言おうとしたり、妹さんの言葉をそのまま借りてきて近い場面で使う姿があったのです。

4ヶ月前まで、トムくんの目には他人が透明人間のように映っているようでした。トムくんのまなざしが私を見ていることを感じたのは、ブランコに乗っていて、足先を私にぶつけようとして、ゆらゆらしている瞬間くらいだったのです。それが今回は人への興味が強くなって「関わりたい! いっしょに遊びたい! 甘えたい! 自分の要求をかなえて欲しい!」という気持ちが全身からあふれるように映ることがたびたびありました。

びっくりしたのは、トムくんがひとりで廊下に設置してあるブランコをこいでいた時に、何メートルか離れた位置にいる私を目にとめて「な~お~み~せんせ~い、いっしょに遊ぼ~!」と大きな声で呼んだことです。

この「な~お~み~せんせ~い、いっしょに遊ぼ~!」は、妹のジェリーちゃんが四六時中連呼していた言葉なので、口真似と言えばそれまでではあります。でもトムくんは私が近づいてくるのをワクワクが抑えきれないような表情で待っていて、実際、自分が呼んだ言葉が通じて私が来たことを確認すると、ブランコから落ちんばかりの喜びようで、私の手足にじゃれて遊びだしたのです。それはトムくんがただのオウム返しではなく、自分の内面の要求を言葉にし始めていて、それが通じた喜びを体中で感じ取っている証拠のように思われました。
(未来奈緒美)

 

■ グッズレポート:SSTワークシート
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ソーシャル・スキル・トレーニング(略してSST)は、社会生活の様々な場面に遭遇した時の対応策を学ぶことです。社会性を習得することが難しい自閉症スペクトラム障害の子どもばかりでなく、円滑な対人関係を構築するために有用な技術として注目されるようになってきました。

ところが、それを学ぶには専門的な知識が必要で、そういった環境が容易に得られない子どもたちに、保護者自身がSSTを行うための教材として推奨されるのが本書です。

子どもたちが遭遇しそうな状況が多数描かれ、そこで取るべき行動を選択肢から選ぶという進め方ですので、保護者も一緒に考えながら取り組まれるとよいかもしれません。

グッズレビューはこちら>>

(レヴュアー:小林雅子)

 

■ イベント:学習会「認知機能の発達と学び」at 三重大附属特支校
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東京大学先端科学研究所「魔法のプロジェクト」の実践発表で注目を集める三重大学教育学部附属特別支援学校の多目的ホールで、お話をさせていただけることになりました。認知機能と学習の話題に加えて、今年1月~3月に実施した、こども脳機能バランサー・プラスのモニター調査の結果についても発表させていただきます。

主催:四附ユニバーサル授業研究会
日時:2012年8月2日(木) 午後2時~午後4時
場所:三重大学教育学部附属特別支援学校ひまわり多目的ホール
講師:五藤博義(レデックス)
資料代:500円
詳細と申込はこちら>>

 

■ あとがき
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こんなWebページがTwitterで話題になっていましたので、ご紹介します。

「アスペルガーの子供達に教えてあげたいセルフ・アウェアネス:社交辞令編」
(ツィートのまとめはこちら>>)

ご自分のお子さんが通う学校が行っているセルフ・アウェアネスとコーピング・スキルを、チャビ母さん(Twitter: @chubby_haha)が連続Tweetされた内容がまとめられています。

・セルフ・アウェアネス(Self-Awareness):自分以外の人達の考え方を知って、自分を見つめ自分を知る。

・コーピング・スキル(Coping Skill):自分と他者の立場を知った上で、どう行動すれば自分も周りの人達も気持良く過ごせるかという問題解決。

 

次回メルマガは、いつもより1週間先の7月27日(金)節目の第50号になります。

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