診断基準 DSM が変わる

MAILMAGAZINE
メルマガ情報

2012.02.24

診断基準 DSM が変わる

-TOPIC───────────────────────────────
■ レポート:高橋雄一医師講演会から:診断基準 DSM が変わる
■ グッズレポート:ひとりでとっくん『じょうしき1』『じょうしき2』
■ イベント:平岩幹男医師講演会「発達障害に送るメッセージ」
■ イベント:兵庫県西脇市子育て支援者研修会-発達障害支援実践
──────────────────────────────────

 

■ レポート:高橋雄一医師講演会から:診断基準 DSM が変わる
──────────────────────────────────

前号で紹介した、神奈川県発達障害支援センターが医療従事者向けに実施の高橋雄一医師(横浜市立大学附属市民総合医療センター)の講演会の報告です。発達障害に関する基本的な内容が多かったので、メルマガ読者にも興味深いと思われるDSM(ディーエスエム)の改訂についてレポートします。

DSMとは、発達障害を含む認知機能や精神障害の分類で、アメリカ精神医学会が定めたものです。似たものに、世界保健機関(WHO)のICD-10(アイシーディー・テン)があります。こちらは、精神疾患を含む全疾病疾患の分類で、日本では主に統計に使われているのに対し、DSMは手帳の発行など、診断に使われています。

DSMはこれまで何度か改訂され、その度に新しい疾患名が追加されたりしてきました。現在は、DSM-4TR(フォース・ティーアール)という第4版改訂版で来年、第5版、DSM-5(フィフス)が出される予定です。正式発表前に、現在の案が発表されており、それが一般紙のみならず経済紙にも取り上げられるなど、大きな反響を呼んでいます。

DSM-5の公開ページはこちらです。

主なポイントは以下の通りです。高橋医師の解説だけでなく別の情報も盛りこんでおりますので、文責は五藤にあります。また、来年の正式発表までに変更される可能性もなくはないことを申し添えます。

(1) 発達障害が大きく2分割
(2) アスペルガー等がなくなり、自閉症スペクトラム(ASD)として一本化
(3) ASDの診断基準として、感覚過敏が追加
(4) 知的障害の程度が、IQでなく、生活の困難さに変更
(5) 行為障害がADHDと切り離されて、独立した分類が新設
(6) ADHDとASDなど、2つの診断名の併記が可能

以下、項目ごとに解説していきます。

(1) 発達障害が大きく2分割

これまでは「通常、幼児期、小児期または青年期に初めて診断される障害」として、すべての発達障害は1つにまとめられていました。今回の改訂では、以下の2つの大きな分類が設けられます。

ア)神経発達障害
イ)破壊的、衝動統制及び素行の障害

※ここでの訳語は高橋医師が作成したもの。原語は前述DSM公開ページ参照

(2) アスペルガー等がなくなり、自閉症スペクトラム(ASD)として一本化

前述のア)神経発達障害は、以下の6つの下位分類に分かれます。

1)知的発達障害
2)コミュニケーション障害
3)自閉症スペクトラム障害(ASD)
4)注意欠如/多動性障害(ADHD)
5)学習障害(LD)
6)運動障害

これまではこの次元の分類として「広汎性発達障害(PDD)」があり、その下位項目として、自閉性障害、アスペルガー障害、特定不能の広汎性発達障害などに分かれていました。今回は、アスペルガーなどの分類はなくなり、自閉症スペクトラム障害(以下、ASD)として一本化されることになります。

このことで、障害と診断される人の数が減るのでは、という疑問や、同一の障害とされることへの反発などがあるようです。

(3) ASDの診断基準として、感覚過敏が追加

これまでの診断の基準には、いわゆる3つ組といわれる、対人関係、コミュニケーション、想像力やこだわりの困難さだけでしたが「感覚過敏」が追加されます。本人がもっとも苦しんでいるのに、他の人には想像がしにくかった様々な感覚の過敏さ、あるいは鈍感さが明記されたことは、ASDの理解に少なからず寄与するのではないかと思います。

(4) 知的障害の程度が、IQでなく、生活の困難さに変更

これまではIQだけで重度、中度、軽度が分けられていましたが、生活での困難さの程度で軽重が分けられることになります。今後、日本でも療育手帳の発行などに影響が出てくる可能性があります。また「精神遅滞」という表現がなくなり、知的発達障害(Intellectual Developmental Disorders)という概念で統一されます。

ASDにおいて、分類名が困難さの内容や程度を表していたのが今後、レベル1~3と分けられることとも共通性があるように思います。

(5) 行為障害がADHDと切り離されて、独立した分類が新設

これまでは、ADHD の中に反抗挑戦性障害などの行為障害が含まれていましたが、新基準では (1) で記載したように、大きく別項目として扱われるようになります。

多動性や注意欠如に対して、周囲が頻繁に叱責しすぎると、うっ屈した性向を作ってしまうことがあるので、十分な注意が必要です。そのこととは別に、これまで同じ分類になっていたことで、ADHD の子には反社会的な性格に育つ可能性があるという偏見を、払しょくする意味で、適切な判断だと思います。

(6) ADHDとASDなど、2つの診断名の併記が可能

これまでは、ADHDの特徴があっても、自閉症などPDDの特徴があると、PDDとして診断されていました。今後は、ADHDかつASDといった2つ以上の診断併記が可能になります。

五藤は発達障害のそれぞれの特徴(三つ組、多動性や注意欠如、読字障害、感覚過敏などなど)は独立して考えるべきと、以前から考えてきました。それぞれの特徴の「困り感の程度」を知ること(アセスメント)が、適切な理解(周囲だけでなく本人にとっても)と、支援の実現に、もっとも必要な要素の一つと思います。そういった考え方に合致する新基準だと思います。
(五藤博義)

 

■ グッズレポート:ひとりでとっくん『じょうしき1』『じょうしき2』
──────────────────────────────────

家庭の中だけで生活していた時期から、成長に従い、保育園や幼稚園に通園するなど、他の人と一緒に生活する場面もだんだんと増えていきます。そんなお子さんに、予習の意味で、遭遇するかもしれない場面を知らせ、そこでのふるまい方を伝えることに役立つ冊子の紹介です。
元々はお受験用のものですが、必要なものを対象を広げて探しだし、見つけ出す努力と知恵に感心しました。

グッズレポートはこちら>>

 

■ イベント:平岩幹男医師講演会「発達障害に送るメッセージ」
※終了しております
──────────────────────────────────

小児科医、小児神経科医の立場から、発達障害をメインとして幼児や児童への豊富な臨床経験を持つ平岩先生から、医療現場から見た発達障害のある人への支援と、家族への支援について、お話が聞けます。

★ 日 時 平成24年3月6日(火)午後2時~4時
★ 場 所 浦和コミュニティセンター 第15集会室(浦和パルコ9F)
さいたま市浦和区東高砂町11-1 TEL 048-887-6565
JR浦和駅東口 ロータリー徒歩1分 有料駐車場あり
★ 定 員 150名(無料)
★ 申 込 ファックスまたはメール
★ 問合せ先 埼玉親の会「麦」 メール ldmugi@hotmail.com ←@を小文字
Tel&Fax 048-924-5189(木村)
★ 内 容
〇講演  発達障害に送るメッセージ
講師 平岩 幹男・医師
Rabbit Developmental Research 代表、東京大学大学院医学系研究科非常勤講師
受賞:母子保健奨励賞、毎日新聞社賞
pdfはこちら>>

 

■ イベント:兵庫県西脇市子育て支援者研修会-発達障害支援実践
※終了しております
──────────────────────────────────
たまには関東以外の情報を。直前情報につきご容赦。(以下チラシから)ハルヤンネこと奥平綾子氏が自身の経験をもとに、自閉症の人のためにどのように環境設定をすればいいのか、どのように表現してもらえばいいのかなどを視覚的・具体的・肯定的な視点からお話されます。明日から実践できる具体的な内容です!

★ 日 時 平成24年2月27日(月)午後2時~4時
★ 場 所 西脇市生涯学習まちづくりセンター 3階ホール
兵庫県西脇市郷瀬町605番地 電話:0795-22-3111(代)
西脇市へのアクセス はこちら>>
★ 対 象 保育士、幼稚園・小・中教諭、行政職員、学童保育指導員、福祉関係従事者、子育て支援に興味のある方、ボランティア
★ 定員・費用・申込 お問合わせください。
★ 問合せ先 西脇市総合市民センター
TEL 0795-22-5995 FAX 0795-22-6015
メールアドレス kosodate-gakusyu@city.nishiwaki.hyogo.jp
※上記の@を小文字に
★ 内 容
〇講演 発達障害支援実践~まだまだできる!支援のコツを具体的事例から
講師 奥平綾子(株式会社おめめどう社長)
webサイトはこちら>>

 

■ あとがき
──────────────────────────────────

猛威をふるったインフルエンザも少しずつ収束の方向に向かっているようです。見逃されがちですがインフルエンザは経口感染で、ウィルスが口に入らなければ感染しません。そして、予防には「手洗い」がもっとも大切です。

五藤が最終審査員を務める、中高生のWeb教材作成コンテストの応募作品に、こんな分かりやすい「正しい手洗いの仕方」動画があります。

家族の方と一緒にご覧いただいて、インフルエンザにならない生活習慣を身につけてるのに役立てていただければと思います。

次回メルマガは、3月9日(金)の予定です。

メルマガ登録はこちら

本文からさがす

テーマからさがす

全ての記事を表示する

執筆者及び専門家

©LEDEX Corporation All Rights Reserved.