自立の考え方-課題分析

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2011.05.27

自立の考え方-課題分析

5月25日、日本テレビ系『ザ!世界仰天ニュース』で紹介された笹森理絵さんの番組がTwitter等で、話題になりました。

http://tv-blog.blog.so-net.ne.jp/2011-05-25-1

ADHDやアスペルガー症候群という症状自体も、まだまだ一般的に理解されていませんが、それらが度々、複合することはさらに知られていません。ADHDと学習障害(LD)も複合することが多く、感覚過敏は発達障害全般に見られる特徴です。極論をすれば、自閉症スペクトラムを拡大し、発達障害スペクトラムとして捉えるべきで「一人ひとりが異なる困難さを持っている」ことを認識するきっかけになる番組だったと評価しています。

今号で取り上げる課題分析は、自分の関係する子どもがどんなことができて何がにがてなのかを認識する手法です。発達障害児だけでなく、お子さんのにがてな教科の学習や、体育、図画工作、音楽の実技について、支援の方法を考えるためにも有用です。参考にしていただければ幸いです。

なお、笹森さんとは縁があって、Twitter で相互フォローさせていただいております。Twitter は実にいろいろな人の考えを知り、その人に意見を伝えることもできます(先方が読んでいただけるかは確実ではありませんが)。
もし、まだ利用されていなければ、お勧めします。

例えば、編集の五藤のTweet はこんな感じです。
http://twitter.com/#!/gotoledex

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【目次】
(1)自立の考え方・2 -課題分析
(2)小児発達医・まなみの診察室 第5話
(3)おすすめコンテンツ わが子の「やる気スイッチ」はいつ入る?

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(1)自立の考え方・2 -課題分析

五味純子・心理士の資料紹介の最終回です。ご本人にもチェックいただいていますが、編集者が加筆している点があることをご承知おきください。

今回は「課題分析」です。
自立に向けて支援を組み立てていくための評価の方法の一つです。

1.ぴったりな支援があると・・・

一人ひとり、認知機能の発達状況の異なる子どもに、ぴったりな支援があると、子どもたちは、

・安心できる。納得できる。
・興味・関心が強まる。
・やりたくなる。意欲がわく。楽しい。
・達成感を感じる。
・一人でできることがふえる。-自立的
・自分で考え始める。-自主的
・自分から行動する。-自発性

その結果、自尊心(自己効力感)が育ち、行動が広がり、学べ、チャレンジし始めることで、「発達」することができます。

2.その子にあった支援をするためには・・・

それには、子どもを理解する-評価(アセスメント)が必要になります。

評価の方法は、フォーマルな評価(発達検査、知能検査)とインフォーマルな評価(行動観察など)があります。

・何ができて
・何が好き
・何に関心があるか
・強いところは?

を確認できれば、できること、工夫すればできること、できないことに分けて、子どもに適切な課題を提示することができます。

インフォーマルな評価方法の1つに課題分析があります。

課題分析-task analysis とは、
・活動(仕事)の手順を、小さな行動単位に分けて時系列に並べて記述。
・いつも同じ手順で、同じ最小限指示で、活動を自律的に導くために必要な分析
1) 活動の始まりと終わりの状態を決める。
2) その間の行動を、単位行動に時系列順に並べて記述する。
3) それぞれの単位行動を観察して、その際の評価(○×△)と現在の援助の状況を記録する。
「ひとりでできる」       ○
「できない」「やらない」    ×
「取り組むがうまくできない」  △
4) 観察の結果から、支援を組み立てる
「ひとりでできる」       ○ → ひとりでできるように
「できない」「やらない」    × → やらなくてよい。手伝う。
やらずにすむように環境を調整
「取り組むがうまくできない」  △ → 教える、一人でできるような工夫をする。
5) ×△の項目をさらに、細かい単位行動に分けて、評価して支援を組みたてる。

3.課題分析の例

ア.ある児童の「ズボンをはく」行動の課題分析と支援を検討した事例

単位行動        評価 現=現在の状況
配=自立のための配慮・支援
(1) たたんであるズボンを広げる  ○
(2) 前を上にしておく       × 配:広げて置いておく
(3) 両脇を持つ          △ 現:持つ位置を教える
配:持つ位置に印をつける
(4) 立ったまま片足を通す     × 現:立ったままはけない
配:イスに座ってはくように設定
(5) もう片方を通す        × 現:立ったままはけない
(6) ズボンを腰の上まで上げる   ○
(7) 上着をズボンの中に入れる   △ 現:前だけ直す
配:後は介助してズボンに入れる

イ.ある児童の「カップヌードルを作る」行動の課題分析と支援を
検討した事例

単位行動        評価 現=現在の状況
配=自立のための配慮
(1) 包装紙を破る         △ 現:破り始めを介助する
(2) 包装紙を捨てる        ○ 配:ゴミ箱をそばに置く
(3) ふたを途中まで開ける     △ 現:ふたを全部取る
配:折る位置に線を引く
(4) 中からスープとかやくを出す  ○
(5) スープとかやくをはさみで切る △ 現:切る位置を示す必要あり
(6) スープとかやくを麺にかける  ○ 現:こぼすができる
配:こぼすのは大目に見る
(7) スープとかやくの袋を捨てる  ○ 配:ゴミ箱をそばに置く
(8) お湯を注ぐ          △ 現:線を指し示す必要あり
配:お湯の量を予め調節
(9) ふたをする          △ 現:すぐに食べようとするので注意
(10)タイマーの3・0・0とスタート
ボタンを押す         ○ 現:押すボタンを紙に書いておく
(11)タイマーが鳴るまで本を見て待つ△ 現:途中で食べようとする
(12)タイマーが鳴ったら止める   ○
(13)ふたを開けて捨てる      △ 現:ふたを途中まで開けただけで
捨てない
(14)箸でかき混ぜる        × 現:すぐに食べ始める

4.将来に向けて考えていきたい小さな生活課題

1) 生活スキル
・ひとり寝の開始、抱っこや身体接触の制限
・パブリックとプライベートの違い
操作してよいものといけないものを教える・・・自分のTV、家族のTV
・ヘッドフォン、耳栓の利用
・食事のマナー ・入浴 ・髭そり、デオドラント等 ・登下校
・お出かけ 誰と、どこへ、どのくらいの頻度で?

2) 地域生活スキル
※どれだけバラエティに富んだ生活をしているか?
いろいろはきらいだが、生活リズムの見通しが立って、ルーティンになれば楽しめる。
・家族以外の人とどのように活動するのか?
子どもにとっては、近い年齢の方がよい。
ボランティア、ガイドヘルパー
見つからない場合は家族間で子どもを交換。
・行く場所はどのくらい、あるのか?
・どのような交通手段を使えるのか?

5.Let's try! さあ、やってみよう!

うまくいかなかった時
どこがうまくいかなかったのか、考える。
→うまくいかなかった部分を、子どもに合わせてやりやすいように工夫し直す。
→うまくいかなかったことを、工夫し直す。

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(2)小児発達医・まなみの診察室 第5話

前号に引き続き、男脳と女脳について触れたいと思います。

男性と女性の脳を比べて、どちらがより優れているかという議論ではなく、それぞれのジェンダー(性)によって向き・不向き、あるいは得意・不得意の分野があるということです。男性は女性に比べて一般的に空間認知に優れ、女性は男性に比べて言語的にも非言語的にも(たとえばアイコンタクトや場の空気を読むなど)コミュニケーション能力が優れていると前号にも書きました。

確かに女児の方が言葉が早いし、男児の方がパズルやブロックが得意だとうなずかれる方は多いと思います。小児発達医として、7歳男児・3歳女児の二人の子どもの母親として、子どもたちの【遊び】に関しても、男女脳の違いがあるのではないかと思っています。

幼い男の子の遊びは?と聞かれた時に、私たち大人が思い浮かぶのは電車や車あるいはヒーロー戦隊モノではないでしょうか。プラレールやトミカといった電車・車遊びはいわば「対―物(物体)」遊びであると私は分類しています。レールを作り上げたり、車を走らせてその様子を眺めたり、車種をコレクションしたり、自己とその玩具(物体)で完結する遊びで、遊びの中で言語的な会話は成立していなくても、視覚的、触覚的に玩具を操作して遊べるものです。

一方、戦隊キャラクター遊びは、今も昔も変わらない「正義の味方が社会の人々のために悪者と戦う」という普遍的なストーリーを元に、遊びが展開していきます。戦隊モノ遊びでは、いわゆる自己陶酔型~ソフビと呼ばれるキャラクター人形を自己の空想イメージの世界のなかで操作する遊び方と、キャラクターなりきり型~友人や家族を相手に配役を決めてストーリーに沿って演じる遊び方があります。いずれの場合でも、言語と場面をイメージしながら仲間のヒーロー役、怪獣役、市民役などの相手役に対して協力したり、戦ったり、和解したり、感謝したり、駆け引きしたり、いわゆるコミュニケーション技能が遊びの中で必要となる「対―人」遊びなのです。

※ソフビ・・・ソフトビニール

そういう意味で、私は子どもの好みの遊びを通してもコミュニケーションの得意不得意が分かるのではないかと考えています。駅名や車種を暗記してスラスラと言えるような子どもの方が記憶力や観察力が優れていて、知的に高いイメージと思われるかもしれません。ヒーローごっこでパンチやキックをしている男の子は乱暴で粗雑だと思われるかもしれません。でも、コミュニケーション力が高い遊びは、車よりも戦隊モノです。

一方で、女の子の遊びは、ままごと遊び、お母さんごっこ、お買いものごっこ、お人形遊びなどの「対―人」遊びが一般的です。ここでいうお人形やヌイグルミを女児は擬人化したり生きているものとして遊ぶことが多いので、玩具という「物体」というよりは、生命ある「相手」としてコミュニケーションを持って接しています。

こういった男児と女児の遊びから考えても、女児の方が幼い時期からもコミュニケーション能力が高いと裏付けられるのかもしれません。

また前回も書いたとおり男児は女児に比べて少々こだわりが強いのか、電車や車遊びの中でも、車体の一部の形やマークを見て車種を当てたり、年式やメーカーなどにこだわるようなマニアックともいうべき子がいるのも特徴ではないかと思います。駐車場や道路で車名を次々に言い当てながら笑顔でいる男子には出会いますが、お人形の髪の毛の色や顔の一部でお人形の名前を当てる女子はあまり見ません。お人形を揃えてコレクションする場合も、男児の車・電車コレクションとは違って、お人形の家族やお友達を増やしてあげるといったコミュニティ作りのためのコレクションが多いようです。

いずれにしても、どの遊びが優れていて、どの遊びは良くないということではなく、性別や持って生まれた得意能力によって、子どもの好きな遊びも決まっているということです。

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(3)おすすめコンテンツ わが子の「やる気スイッチ」はいつ入る?

ズバッと解決の中心人物である、阿部利彦先生(埼玉県所沢市教育委員会)の師匠、菅野純・早稲田大学人間科学学術院教授の代表著作です。帯には、「子どものやる気」取扱説明書、見開きページには、子どもだけでなく、親のやる気も応援します!と記載されています。

やる気の分析から始まり、その土台となる「人間のよさ体験」「心のエネルギー」の大切さを伝えます。さらに、失敗の具体例を挙げて、やる気がなくなるメカニズムを解説します。

巻末には「やる気を育てるママですか?」チェックリストが用意され、お子さんが「もっと認めて!」タイプ、「もしかして寂しい子?」タイプなどになっていないかを確認できるようになっています。

章立てを見ていただけば、内容を想像いただけると思います。

第1章 「やる気がない」の正体をつかめ!
第2章 心の土台は育っていますか?
第3章 わが子の「やる気育て」に失敗するとき-ケースファイル
第4章 思春期はやる気を見失うとき
第5章 やる気のスイッチを自分で押せる子に
第6章 子どもの心にたくさんの○を!
第7章 「お子さんに勉強のやる気は感じられますか?」菅野流アドバイス

「わが子の「やる気スイッチ」はいつ入る?」 菅野 純
主婦の友社、2009年6月発行、四六判、192ページ、1365円(税込)
https://www2.shufunotomo.co.jp/webmado/detail/978-4-07-266979-2

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6月2日~4日に東京で、6月15日・16日に大阪で、New Education Expoが開かれます。子どもの学びを、さらに豊かにしようという製品・サービスの展示に加え、充実した講師陣によるセミナーが多数、開かれます。札幌、福岡では、6月2日~4日にサテライト会場が設けられ、東京でのセミナーの受講が可能です。いずれも、事前登録で無料です。

デジタル教科書など、学習に困難のある子どもの支援についてのプログラムもあります。下記ページを参照して、検討されてはいかがでしょうか?
http://edu-expo.org/

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
次回は、6月10日金曜日の刊行予定です。

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