生活の中に構造化をとり入れよう

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2011.04.29

生活の中に構造化をとり入れよう

ゴールデンウィークが始まりました。まだまだ大変な環境にいらっしゃる方も多いと思います。現地で、こいのぼりや凧揚げで子どもたちを元気づける企画も耳にします。被災地の方々、遠隔地に避難されている方々も、時には気分を変えていただければと願っております。

さて、先日、サムライ・ベンチャー・サミットという起業家の情報発信イベントに参加し、若者たちに交じって、発達障がい児への社会としての対応の必要性を訴えてきました。雰囲気は、次のページの写真で。
http://techwave.jp/archives/51656006.html
記載の講師、赤羽さんには、レデックスを継続して支援いただいています。

レポートは次のページで。ITビジネス界では有名な Dr.本荘(ほんじょう)が、本メルマガの編集者、五藤を紹介してくれています。
http://blogs.itmedia.co.jp/honjo/2011/04/samurai-venture-82f0.html

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【目次】
(1)生活の中に構造化をとり入れよう
(2)小児発達医・まなみの診察室 第3話
(3)おすすめコンテンツ「崖の国物語」

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(1)生活の中に構造化をとり入れよう

神奈川県大和市保育家庭課の五味純子・心理士の資料紹介の続きです。
意味理解障害である自閉症児に対してもちろんのこと、認知機能の発達途上である子どもに、伝えたいことを的確に伝える技法「構造化」の具体的方法を解説します。まず、前回のおさらいです。

「構造化」は、今何をする時間か、次にどうなるか等、世の中を「その人に合わせて分かりやすく示す方法
→伝えたいことを分かりやすく伝えるためのコミュニケーション手段
→目に見えにくい意味を分かりやすく伝えるための方法

今回は、構造化の具体的な内容を紹介します。

1.物理的構造化:環境に意味を与えよう!刺激量をコントロールしよう!

A)明確な物理的視覚的な「境界」を設定
棚や家具の配置、じゅうたんを敷く、ついたて、間仕切りのカーテン等

B)活動と場所を1対1対応させる
家の中で必要な場所は、次のもの
1)おやつの場所/食事の場所
2)自由遊びの場所
3)テレビ、ビデオを見る場所
4)勉強(課題遊び、自立課題)の場所
5)寝るところ
6)着替えるところ
7)歯磨き/手洗いの場所
8)スケジュール(後述)を表示する場所 etc.

C)妨害刺激の除去
集中すべきことに集中できるように、ついたてやカーテンを使う。
机の向きを工夫する。

D)家具のサイズ・動線・もののとりやすさ

◎留意点
子どもに合わせた工夫をする。敷物の変化が見分けられるか、家具で仕切りをつけた方がよいか、集中度合いによってついたてが必要かどうか 等。

2.スケジュール

どんな活動をするのか、その流れがどうなっているのかを視覚的に示す。
順序立てが苦手なので、どの順序でやるのかを視覚的に示す。
ことばの指示の理解が困難なこと、見通しがないと不安なことに留意。
これから起こる出来事を知る機会を絶え間なく与えることで、「注意」の問題に対応できる。
その際、分かるものは人それぞれ、という点にも注意。

A)スケジュールのタイプ
1)何で伝えるか: 具体的なもの/絵・写真/文字 等
2)いくつの活動を伝えるか: 次の活動だけ/3つ先まで/半日/1日/1週間 等
3)提示の方法:
手渡し/カード/シート(紙)/手帳 等
移動/固定/持ち歩き 等

B)一人ひとりにあったものを作る(個別化)

◎スケジュールを取り入れる時の鉄則
1)本人が確実に理解できる(ピンとくる)方法で示す
2)やってほしいことリストにしない
管理監督のためではない。子どもが安心で楽しい生活を送るため。
3)普通の生活を、無理なく、そのままスケジュール化する
今の生活の活動の単位を考慮し、その表わし方を教える。
4)子どもにとって楽しい活動、意欲がわく設定の仕方を工夫

3.ワークシステム: 自立的に活動するために必要な情報を伝える方法

4つの原則をきちんと伝える
1)何をするのか
2)どれだけするのか
3)どうなったら終わるのか(終わりの概念が、やる気に関係)
4)終わったらどうなるのか

A)ワークシステムのタイプ
1)左から右/上から下
2)マッチング(色/形/文字/字・数字絵 等)
3)リストを使う(単語/文章 等)
4)フィニッシュボックス(終了箱 等)の使用 etc.

B)一人ひとりに合ったものを作る(個別化)
1)視覚的手がかりに何を使うか(文字/マッチング/ものの移動 等)
2)進行過程と終わりの概念(チェックマーク/ものの移動/場所の移動/終了箱 等)
3)動機づけや関心への配慮 etc.

4.視覚的構造化: 見ただけで分かる工夫をしよう

材料を見る前に(見ると同時に)教示がなされるように配慮する。

A)視覚的指示: 課題を達成する流れを視覚的に示す
何をするのかがはっきりした材料にする/絵や写真で指示する/ジグ(カットアウトジグ)の使用/作業指示書/できあがり手本 等

B)視覚的明瞭化: 重要な情報を視覚的に強調する
容器の使用/色や印をつける/場所を区切る

C)視覚的組織化: 材料や空間を組織化(整理整頓してしまえ)
材料を容器に入れ分けて配置(カゴや箱の利用)/左から右・上から下の手順/領域を限定(感覚刺激を調整し、気が散るのを抑える)

5.ルーチン: 習慣や同じ手順

1)同じ流れで課題を達成する 左から右・上から下
2)生活の中でよいルーチンを構成する
着替えてから遊ぶ/手を洗ってから食べる/食べる→歯磨き→遊ぶ/おもちゃを出す→遊ぶ→片づけ/食べ終わったら食器を下げる/鼻をかんだらティッシュはゴミ箱に 等

◎最後に
構造化は、1回で終わるものではありません。この子に合わないという前に子どもに合わせて合うように作り変えることが大切です。どこがうまくいかなかったかを考えて構造化し直し(再構造化)ましょう。そして、再構造化を繰り返します。

初めての時、ピンとこない時は、ピンとくるまで手をとってやらせて教える必要があることもあります。

支援する側は失敗から学べます。しかし、本人は失敗からは学べません。学べるのは、成功体験からだけです。再構造化を繰り返すことで、本人が少しずつ学んでいけることを銘記いただければと思います。

支援(かかわり)の基本は、
×言えば分かる
○「言わなくても動ける」環境設定、見せ方の工夫
→指示待ちにならないように、本人が判断したり、表現できる機会をつくるように配慮することも必要です。

×言い聞かせる
○「見せて伝える」「見れば分かる」「モデルで示す」
→しっかり分かることが大切です。支援の形態と指導の目標は「背伸び」する必要はありません。また、本人の調子のよい時ではなく、調子の悪い時に合わせた支援に心がけてください。

「私たちに失敗はない、学ぶことがあるだけだ」… G.メジホフ

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(2)小児発達医・まなみの診察室 第3話

こどもの発達は本当に面白いと前回号にも書きました。

日々の発達外来診療の中で私が特に大切にしていることは『感覚』の発達です。感覚にはいわゆる5感~触覚・聴覚・視覚・味覚・嗅覚~があります。
他にも「前庭覚(平衡感覚)」と「固有覚」といわれる感覚があります。

「前庭覚」というのは耳の中の器官で感知するもので、立っているのか寝ているのかなど重力に対して自分の体の位置やバランスがどうなっているのかを感じ取る感覚です。一方、「固有覚」は力加減や手足の動きなど自分の筋肉や関節などを通じて感じ取る感覚です。

さらに、自分ではなかなかコントロールできない感覚の一つに「内臓感覚」というものもあります。「内臓感覚」とは頭痛や腹痛、空腹あるいは尿意や便意といったものが含まれます。空腹や尿意は生まれたての赤ちゃんでもありますが、それを感じ取ったり(意識したり)、意識下にコントロールできるようになるのが発達です。

こどもの発達は大きく分けると知的発達と運動発達となりますが、両者とも前述した様々な「感覚」発達を礎としています。

つまり発達の順番は、(1)感覚の発達を獲得して (2)姿勢やバランスを保つ能力となり (3)自分の身体をイメージすることが出来るようになって (4)見通しをを立てて計画通りに行動できるようになり (5)形や物・数といった概念的考えを獲得し (6)注意や集中、自信、自己統制能力といったいわゆる高次の脳機能を獲得するというわけです。

自分の身体をきちんとイメージすることが出来なくては (5)以降のいわゆる「学習」という段階には至らないのです。成績の良い子が、姿勢も良いのはそのためだと私は考えています。逆に子どもの姿勢が悪く、いつもダラダラしているのは固有覚や前庭覚が未発達の可能性もあり、そういう子どもは自分が何をやらなければいけないか計画を立てることもできず、集中もできず、何をやってもダメな僕(あるいは私)というように自分への自信ももてないといった悪循環となるのです。

早期教育という言葉をよく耳にします。0歳児からの英語教室やリトミック体操などは妊娠中から既に予約待ち、あるいは速読やフラッシュカードによる右脳開発のための高価なCDやDVDや教材が通信販売で飛ぶように売れていると聞きます。少子化のために一人一人の子どもにかける教育費は高くなったそうですが、早期教育を考えるご両親に私がお伝えしたいことは、まずは「感覚」を鍛えましょう!ということです。

フラッシュカードも英語教材ももちろん否定はしません。きっと素晴らしいメソッドによって素晴らしい効果が期待できるのでしょう。だからそれなりのお金が必要なのかもしれません。でも、まず赤ちゃんが生まれて何かの教育を考えるとするなら、私は何より先に「感覚」を鍛えることをお勧めします。

では、「感覚」を鍛えるとはどうすればいいのか? それはとっても簡単です。色々な経験を子どもにさせて、様々な刺激を与えるのです。例えば一番分かりやすいのは「触覚」刺激でしょうか。手掌、足裏は物を認識するためにも触覚が過敏に出来ている所です。赤ちゃんの時期なら手づかみ食べを汚いと思わずに、グチャグチャと手で握らせたり、ブツブツ・ザラザラ、固い物や軟らかい物、冷たい氷や温かい物、危険のない範囲で色々な触覚刺激を与えてみましょう。我が家は子どもたちをいつも裸足で色々なところを歩かせるようにしていました。砂場や砂利、コンクリートの上を歩くと子どもたちはその路面に合わせた歩き方をします。ドロ団子作りもスライム遊びもハンバーグやクッキー作りも立派な早期教育になるのです。

もう一工夫した触覚を鍛える遊びに、大きな布袋の中に色々な物をいれて、袋の中を触っただけでその物を当てるといったゲームも我が家の定番です。また公園でのすべり台やブランコ、シーソーは「前庭覚」を鍛えるのに非常に有効ですし、鉄棒も「固有覚」を鍛えます。あえて公園に行かなくともパパとの「高い高いあそび」や「肩車」「でんぐり返し」も前庭覚や固有覚を鍛えてくれます。他の『早期感覚教育』についても、僭越ながら私の著書『頭のいい子は3歳からの遊びで決まる』に書いてありますので、ご興味ある方は是非ご一読くださいませ。

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(3)おすすめコンテンツ「崖の国物語」The Edge Chronicles

ゴールデンウィークはお子様と一緒に、不思議な挿絵とワクワクするストーリーでリフレッシュするのはいかがでしょうか? このシリーズはすべて、イギリス人作家と南アフリカ人画家がディスカッションしながら生みだした冒険活劇ファンタジーです。

題名の崖(がい)の文字が示すように、大地の末端の切り立った崖のエリアが舞台です。そこには、多彩な自然があり、多様な動植物が生息しています。空には、鎖で繋がれ宙に浮かぶ巨岩があり、その上に、このエリアを支配する人間たちの都市が築かれています。

動き回る植物を含め、言葉を話す様々な種が存在します。指輪物語とは異なり、種自体が善悪に分かれるのではなく、人権や環境(水や土地)といった守るべきものを破壊しようとする側と、それを阻止しようとする側に、様々な種の登場人物(ヒトでない種も含まれます)が分かれ、戦いを繰り広げます。主人公は、血のつながった父、子、子孫。それぞれ3巻がひとまとまりの話になっています。種ごとに多様な能力や性格を持っており、それぞれの長所、短所を補い合って、問題を解決しながら進んでいく様子が、子どもたちに、個性を尊重し合い、協力することの大切さを教えてくれると思います。

「崖(がい)の国物語」1~10、他に外伝
ポール・スチュワート作、クリス・リデル絵、唐沢則幸訳、ポプラ社
同物語1 2001年7月発行、195×135、390ページ、1680円(税込)
http://www.poplar.co.jp/shop/shosai.php?shosekicode=86900040

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4月25日に開かれたデジタル教科書教材協議会の成果報告会にも顔を出してきました。期待していたのですが、利用シーンや利用者の特性といった具体的な場面の想定が曖昧で、タブレットPCやクラウド化がどのように、子どもたちの学習を助けるのかが見えてこないと感じさせられました。

下記ページが報告会の様子をご覧いただけます。
http://resemom.jp/article/2011/04/26/2180.html

第一次提言書は近々Webにアップされるようです。その前提となったアクションプランは、下記ページでご覧いただけます。
http://ditt.jp/report/

次回のメルマガ発行は、5月13日です。

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