小児発達医・まなみの診察室

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2011.04.01

小児発達医・まなみの診察室

被災地の方々には重ねてお見舞い申し上げます。環境が日々、好転していくことを願っております。

さて、昨年10月に東京・二子玉川にオープンした、ニコこどもクリニックの院長、本田真美先生による新シリーズが今号から始まりました。ニコこどもクリニックは、プレイルームも備えた、子どもが楽しく通える新タイプの小児科です。待合室にはこども脳機能バランサー・タッチもあります。

ニコこどもクリニック
http://www.nicoco.jp/

本田先生の監修、五藤の執筆というペアで、Yahoo!きっずの保護者向け新コーナーも担当することになりました。

Yahoo!きっず「うちの子の学力は大丈夫かしら・・・」
http://event.kids.yahoo.co.jp/spring2011/

どちらも皆様のご要望にできるだけ沿う内容にしていければと思います。ご意見ご感想を、ぜひお寄せください。

メルマガの意見・感想メール: info@ledex.co.jp

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【目次】
(1)脳科学から見た自立支援の指導法を考える
(2)小児発達医・まなみの診察室 第1話
(3)おすすめコンテンツ「福祉のまちづくりデザイン」

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(1)脳科学から見た自立支援の指導法を考える:発達の脳科学的研究

2月11日~13日に群馬県の国立赤城青少年交流の家で行われた「青少年自立支援者のための研究交流フォーラム」基調講演のレポートです。「脳科学から見た自立支援の指導法を考えるII-発達障害への対応を想定して」講師は、国立特別支援教育総合研究所、上席総括研究員の西牧謙吾氏です。

同フォーラム案内チラシ表 pdfファイル
http://akagi.niye.go.jp/kikaku/h22/08jiritusien/c1.pdf
裏 pdfファイル
http://akagi.niye.go.jp/kikaku/h22/08jiritusien/c2.pdf

1)出生時にもつ赤ちゃんの感覚能力と母国語

赤ちゃんはあらゆる多様な情報に反応するような状態で生まれるが、生後一定期間の環境との相互作用で、特定の情報(刺激)に強く反応するようになり、他の情報への反応は退化する。

例えば、言語に含まれる音素について、子宮の中にいる時からあらゆる音を認識しているが、1歳になるまで(敏感期)に母国語に含まれない音は認識されなくなる。
筆者補足:日本語でいえば、lとrの違いやthやfの音は認識できなくなる。

母国語については、2歳で話し言葉で会話ができるようになる。6歳で母国語の学習をほぼ完了する。

バイリンガルも、母国語は脳の左半球で処理しているが、第二言語は、両半球で処理している。

文法には敏感期があるが、語彙学習には敏感期はない。つまり、母国語のようにはならないが、意味と語彙は生涯に渡って習得が可能である。
(Chomskyの生成文法 → 特異的言語障害)

2)読み書きの学び

読み書きは、話し言葉の基礎の上で習得される。
言語中枢は、音の処理に関係。

言語中枢は、音の処理に関係する。
手話に反応する場所も同じ。

音声と文字の関連で、読み書きができるようになる。

Shaywitsの研究:fMRIを利用して読みの神経機構の解明

側頭・頭頂領域 → 単語分析
後頭・側頭領域 → 単語形態
前頭部(下前頭回:ブローカ領域)→ 発話/単語分析

ディスレキシアの人の脳では、後頭・側頭領域の活動が見られない。

運動障害があれば、文字を書く能力に影響が出、読み書きにも影響。

3)脳性マヒ療育の反省と夢

脳性マヒの脳の病変は「非進行性」。乳児期から継続する姿勢と運動の発達障害が一次障害。

それ以外は、二次障害。つまり、身体の様々な症状は予防が可能か?
例えば、身体のけいれんなど。

リハビリ医療の研究から、脳内の神経細胞の再構成という方法も研究。

以上、筆者の理解不足で不十分な解説になった点、ご容赦ください。まだ、決定的な解決法というレベルには到達していないものの、今後の脳の研究により、新たな地平が見えてくるのでは、というのが率直な感想でした。

脳科学については、今後もモニターと、筆者自身の理解を深める努力を続けてまいります。最後に、西牧先生からぜひ見てほしいと紹介された資料の所在をご紹介して、まとめとさせていただきます。

「病気の子どもの理解のために-こころの病編- 他、資料多数
http://bit.ly/drymZx

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(2)小児発達医・まなみの診察室 第1話

まずは私の略歴から紹介いたします。

平成10年に東京慈恵会医科大学を卒業し、小児科医となりました。医者の家系に生まれたわけでもない私が医師(当初から小児科医でした)を志すようになったのは、小学校5年生の時に観たNHKの1本のドキュメンタリー番組がきっかけでした。内容はアメリカ、フロリダ州で自閉症児におこなわれているイルカセラピーを取材したもので、人とコミュニケーションをとることが難しい自閉症児が、愛嬌ある賢いイルカたちと一緒に泳ぐことで笑顔になり言葉を話し始めるという感動的な内容でした。

今から30年近く前のことですが、その時の衝撃は鮮明に覚えています。当時の私は『自閉症』という言葉すら知りませんでしたが、将来必ずこれを仕事にするんだ!と意気込み、『イルカ』と『自閉症』に夢中になりました。『イルカ』については水族館に行ったり、ビデオや図鑑を見ることで色々な知識を得ることが出来ましたが、『自閉症』についての情報は当時は全くと言って良いほど得ることが出来ませんでした。

それは7年後に医学部に入学した後もほとんど変わりませんでした。私の医学部時代に学んだ『自閉症』は教科書の数行のみでしたし、同じく発達障害に分類される『注意欠陥多動症(ADHD)』は『微細脳損傷症候群』という脳に小さな損傷がある症候群であるとだけ習いました。ここでいう発達障害とは自閉症スペクトラム(広汎性発達障害や自閉症、アスペルガー症候群)、学習障害、注意欠陥多動症などを指します。

今では児童100名のうち3~5名(3~5%の罹患率)、多い報告では10名(10%)が、何らかの『発達障害』に該当すると言われ、医学界だけでなく教育界からも認識されるようになりましたが、『発達障害』という概念はここ10年でこれほどまでに注目されるようになったと言っても過言ではないのです。

そういうわけで、私の医師としての10数年は、発達障害の時代の変容とともに過ぎてきました。自閉症は1950年頃に提唱され、当時は母親の育て方に問題があり、自閉症児の母親は冷蔵庫のように冷たい女性が多いとすら言われました。

今では、こういう考え方は全て誤りで、自閉症だけでなく発達障害の根本は脳機能の問題であると認識されています。脳機能というと漠然として分かりにくいかもしれませんが、例えば言語機能や運動機能、注意・集中や記憶、意欲、抑制、遂行機能(物事を計画通りに実行する)などがあります。

私のやっている発達外来には、幼稚園入園前であれば言葉が遅い、運動が苦手(歩き方がぎこちない・ジャンプできないなど)、幼稚園に入ると動きが多い(多動)、集団活動が出来ない、お友達とうまく関われない、小学校に入学すると計算が苦手、字が覚えられないなどの問題を訴えて毎日数多くのお子さんや親御さんが訪れます。数多くの子どもやその親にお会いして、発達に問題を抱える子どもも、そうでない子どもも、そして彼らの親も、物事の認知(判断したり理解する過程)は個人個人の偏りというものが実に多彩であることに気づかされました。

私は医師をしていますが、主人はデザイナーをしています。私は話したり書いたりするのが比較的得意ですが、会った人の顔を覚えるのが苦手です。主人は言葉数は少ないのですが、アイカメラを持っているのではないかと思うほど、目で見た風景や場面を記憶するのが得意です。夫婦はそれぞれの認知特性にあった職業を選んでいるのだなぁと日々感じます。

子どもの発達も同じなのです。次回以降、子どもの発達や認知について書いていきたいと思います。

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(3)おすすめコンテンツ「福祉のまちづくりデザイン」

今回ご紹介するのは、全文のpdfファイルがインターネットで入手できる書籍です。これから復興を進める東北のまちづくりに参考にしてもらいたいと、著者と出版社が公開されました。

著者の田中直人氏は、ユニバーサルデザインの第一人者で、阪神・淡路大震災に遭う前の、神戸のまちづくりデザインに参画していました。福祉を念頭に設計したまちが、震災に遭ってみると不備な点が多々あることに気づかされたそうです。そして障がいをもつ人と、彼らを支援してきた関係者に話を聞き、今後のまちづくりの課題となるべきデザイン方法を提示しようと本書を著したとのことです。

次の言葉が、田中氏の考えを明確に示しています。

「なによりも、人は社会性を必要とする動物である。高齢者であっても、障害者であっても、社会の一員として参加できること、これに勝る喜びはなく、そんな喜びを奪わないように、全ての人が社会参加できる環境を実現すること、それが「福祉のまちづくり」の基本だと考える。」

目次は、下記ページで見ることができます。
http://www.gakugei-pub.jp/mokuroku/tosi/578fuku/mokuzi.htm

全文は、以下のページから入手できます。
http://www.gakugei-pub.jp/higasi/12fuku.htm

全部で 208ページの大部ですが、第3章 福祉のまちづくりへの提案 46ページが中心となる提案です。

直接、今回の被災地に関わらない方も、ご自分の住んでいるまちの高度化に向け、見識を深めるために好適な一冊です。

「福祉のまちづくりデザイン」田中直人著
1996年8月発行、学芸出版社、A5判、208ページ、2472円

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まもなく新学期。すべての子どもたちが一日も早く安心して学べるようになりますように!

次回メルマガは、4月15日(金)です。

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