教材「調べる 考える 表現する 身の回りのデータ」

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2022.03.04

教材「調べる 考える 表現する 身の回りのデータ」

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■   シリーズ:子どもゆめ基金のデジタル教材ー(連載)調べる・考える・表現する 身の回りのデータ(最終回)
■□  連載:情報活用の鍵(ハマりやすい落とし穴)の話
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 ■ シリーズ:子どもゆめ基金のデジタル教材
            連載   :子どもたちの豊かな科学的体験を支援
                          第3回 教材「調べる 考える 表現する 身の回りのデータ」(最終回)
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私が公益財団法人学習情報研究センターの業務に関わって2年。着任のころは、新型コロナ感染症が広がり学校閉鎖が行われる一方で、小・中学校の児童生徒1人1台のICT端末を整備するGIGAスクール構想が強力に推進されている状況でした。

ICT機器が整備されることと併せて、学校の先生方の指導力向上の支援という、重要な役割を果たしていく必要があります。ICTの活用が進む中で、指導に当たる現場の先生方の不安の声が寄せられていることから、機関誌やメルマガ、セミナー開催等による積極的な情報提供を心掛けています。

学校ももちろんのこと、インターネットの普及と情報端末の多様化のおかげで、私たちの生活は、さまざまなデータに接する機会が増えました。身の回りの溢れるデータを正しく読み取る力が重要になっています。また、データを整理してグラフなどで表現し、発表・説明・討議する力も必要になっています。そこで開発したのが今回ご紹介する教材です。

〇教材「調べる 考える 表現する 身の回りのデータ」
GIGAスクール構想の推進により、小中学校でも、ICT機器を活用して探究的な学習などが盛んに行われるようになりました。インターネットからさまざまなデータを集めることが容易にでき、さらには集めたデータを読み取ることで世の中の動きを知ることができるようになりました。

ただ、中には、ニセのデータや無関係なデータの組合せも存在するので、データを正しく読み取る能力が重要になっています。そして、誤解を与えないようにデータを整理してグラフなどで表現し、発表・説明する力も必要です。この教材は、こうした力を子どもたちが身につけることを目的に開発したものです。

〇教材の概要
この教材は子どもたちが、データを正しく読み取る力やデータを整理し表現する力を、クイズやグラフを作成できるツールなどを使って、楽しみながら身につけられるような構成になっています。

※教材サイト「調べる 考える 表現する 身の回りのデータ」

この教材では、以下のことを目指します。

・「データリテラシー」を身につけること
・「データ」を調べて収集すること
・「データ」を読み取って正しく理解すること
・「データ」からわかったことを知らせる表現力を育むこと

指導者の方には、子どもたちがこの教材のコンテンツを「使う」だけでなく、使った結果、何がわかったか、何を表現したいのかをコミュニケーションすることで子どもたちの学びをサポートいただければと思います。

〇教材の構成
この教材は、以下のようなコーナーで構成されています。

・「データってなんだろう」
・「データを調べてみよう」
・「データから考えよう」
・「データを表現しよう」
・「指導者の方へ」

「データってなんだろう」では、データと情報、データを使った問題解決法、データのかたち、世の中のデータについて解説しています。

※教材サイト「データってなんだろう」
 
データというと数字の集まりだと思っている方も多いと思います。そもそも「データ」とはどういう意味でしょうか?

総務省統計局のホームページによると「ものごとの推論の基礎となる事実のこと(「なるほど統計学園」統計用語辞典より)」とあります。
「ものごとの推論」とは、問題や課題に対して、解決に向けた道すじを考えることです。データは、考えるための基礎となる「客観的な事実」なのです。したがって本当のことがらであり、嘘であってはなりません。

つまり、「データ」は問題解決のためのとっておきの材料なのです。材料が適切でなかったり、材料を正しくあつかえなかったりすると、料理でも工作でもうまくいきません。データも同じです。問題が解決しないことになります。データそのものだけでは解決しません。

データはひとつひとつの客観的事実です。たとえば、天気について考えてみると、日々の気温や天気、雨雲の流れなどたくさんの観測事実は記録され「データ」となります。

このデータを使って「情報」になったのが、天気予報や気象情報です。過去のデータを調べ、分析した結果、明日の天気を予測したり、台風や大雨洪水など注意を呼びかけたりする情報となるのです。

つまり「データ」を目的(問題解決)にあわせて、人の役にたつようにしたものが「情報」です。こうして「データ」や具体的なデータについての理解を深めたうえで、データ分析、データを使ったグラフの書き方、グラフの特徴、データを読み解いていく力をつけ、さらに、グラフ作成ツールを使って、データを表現する力をつけていきます。

〇教材の普及・活用
この教材は、本センターの子ども向け教材、開発教材・普及活動のサイト※で利用できます。この教材サイトのトップページには毎月120件程度のアクセスがあります。

子どもたちに、データの意味、重要性を理解し、先行き不透明な時代を生き抜くための「情報」として表現し、生かしていけるように、この教材を活用していただくことを期待しています。

また、こうした教材等の活用により、先生方の指導力の向上が図られることを願っています。

※教材サイト 

〇最後に
今回の連載で紹介した3つの教材の他にも、ゆめ基金を活用したデジタル教材を当財団のWebページで公開しています。ただ、サービス提供を終了したプログラム等を使用し、十分活用できないものもあります。新たな技術に置き換えて再生したり、更に進化した教材開発の一助として活用されたりすることを期待しています。

◆山本惠一
公益財団法人学習情報研究センター
常務理事・事務局長 


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 ■ 連載:暮らしの中の情報教育【いつでもどこでも情報活用】
              第2回:情報活用の鍵(ハマりやすい落とし穴)の話。
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生活の中の題材を使って、情報をどう活用していくかを考えていきます。

基本は、〔確かな情報源を探そう〕、〔事実と判断・噂 を切り分けよう〕。

前回は、
 〔データをもとに考えよう〕
 〔確かでわかりやすい情報源を持っておこう〕
 〔情報は目先ではなく、全体を見よう〕
ということで、特に、数値データとの付き合い方について考えました。

よく聞く当然の話 ですが、意識していないとドボンです(落っこちます)ね。

ところで、情報は数値データだけではありません。日常的処理しているのは、むしろそれ以外の情報(報道・伝聞・知識)が圧倒的です。
それでも〔確かな情報源を探そう〕、〔事実と判断・噂 を切り分けよう〕はいつでも基本(大切)。

国内で入手できる比較的確かな情報は〔報道〕。その中から〔事実と判断・噂 を切り分ける〕のは、一見簡単です。伝聞や対談には〔判断〕が相当入る…、と警戒すれば、ニュースとワイドニュースの違いも見えてきます。私は、ワイドショーは見ません。

しかしニュースから、事実を読み取るのはなかなか微妙。
 ・文章表現 から微妙なニュアンス(アレンジ、脚色など)を読み取る
これは、そうとう高等技術ですが… でもね、
 ・出典 を確認する
 ・複数の情報を比較する
ことで、相当確かな情報に行きつきます。

〔複数の情報を比較する〕のは、特に有効です。外国語で書かれたニュースを読むことができると、なおさら強い!(これが日本の弱点ね…)
そうやって、ある程度以上の確かな情報から事実を知った後の話を、今回は考えてみましょう。

何か新しい局面(課題)に出会うと、情報を集めます。最初は新しいことずくめで、次から次へと疑問も生じます。調べます。調べます。調べます!
知識がどんどん増えていきます。〔よく知る〕状態になっていきます。そのうち〔理解〕が生まれます。

例えば、コロナ。2020年の春の頃は、噂や摩訶不思議な情報が散乱。その中で多くの人が情報収取を行いました。〔感染者が座った後の席に座っただけで感染する〕という話もあったっけ(^^;;

感染した人が非難され、それを苦に自殺する人も出ましたね。インターネットを入り口に、人の愚かしさ・哀しさ・強さ・絆… がまざまざと見えてきました。

世界の情報も集まります。2021年4月、インドでコロナの死亡者が急増しました。〔私は高齢だから若い人に譲って…〕と、自ら死を選んだ方の話も読みました。世界中から、緊急支援が送られました。その時、〔酸素ボンベ〕の重要さを知りました。
※ 今でも〔コロナ・インド・酸素〕などのキーワードで、当時の現地報道が読めます。

人間に酸素が大切だということは、誰もが知っています。病状が悪化すると〔酸素吸入〕も常識です。しかしそのための酸素ボンベが不足すると、(コロナ直接ではなく)酸素不足で体中の細胞が機能しなくなり亡くなる。それがインドの死亡者急増の原因だと知りました。〔酸素濃度を下げてはいけない〕⇒〔細胞が死んでいくから〕 と、強くインプットされました。

その後かれこれ1年半後… オミクロン爆発です。しかし多くの人は2年前ほど不安になることなく、マスク生活・仕事をしています。人との距離を置き、対面での会話を避け、免疫力を保持していれば、さほど恐れることはない とわかってきたからでしょう。
しかし、高齢者の感染は要注意。あっという間に容態急変。これもよく知られ、高齢者からブースター接種が始まりました。

私の父は、99歳。近くの高齢者施設でお世話になっています。他人事ではないので、高齢者の方の感染情報にはアンテナ貼っています。
父のブースター接種が終わった一週間後(2月初め)、居住しているユニット(施設全体をいくつかのユニットに分けています)から、コロナ感染者が出たためユニット閉鎖を行いましたと連絡。翌日、2人。次にまた二人。そして父も感染したと連絡が入りました。父のユニットの居住者の半数以上です。
高齢者施設で一人感染者が出れば、一気に広がります。特にオミクロンは無症状(自覚症状ナシ)の人が多く、施設でのクラスタ発生の回避(高齢者の感染防御)は難しい。その後の対応と本人の免疫力で勝負です。

●重症者受け入れができる病院を希望しますか? 通常の病院にしますか?
 (一度入院したら転院は困難。重症者受け入れ病院は待ちの状態。)

これが最初に聞かれたこと。施設のドクターからは、
▲酸素濃度が下がっている。高齢者は容態が急変するので、覚悟はしておいてください。

インドの話が頭の中でフラッシュ。
◎どこでもよいので、受け入れてもらえる(酸素吸入できる)病院を探してください!

しかし、病院が見つからない。保健所からの連絡をひたすら待つのみ。一晩明けた翌朝、再度医師から連絡。
▲熱が下がらない。酸素濃度もさがったまま。咳も出てきている。今夜が山場です。覚悟をしておいてください。

エッツエッツ! 何それ!
急いで施設に飛んでいった。ここ2年近く、月に二度の窓越し面会だけで、施設の中には〔最期の看取り〕の家族以外は入れない。わかっちゃいるけと、家でただ連絡待ってるなんてできない。ところが…!!
飛んで行ったら、完全防護服に着替えて、父の部屋に入っていいと言う。

エッツエッツ! 何それ!
オロオロウルウルもので父の部屋に行ったら、重装備のゴーグル越しの私をわかり、穏やかな笑顔。手を握ると確かに熱いが、施設の小さな酸素ボンベから酸素をもらって、さほど苦しそうではない。手を握っているうちに、寝息を立てて寝始めた。ホッツ…
でも、急変するかもしれないのよね… 命のはかなさをリアルに実感。

そこへ施設長がやってきて、いま病院が見つかったと連絡ありましたが、相談です。
●救急車の手配ができない。民間の救急搬送車でいいですか?
 (家族の同乗は不可。搬送途中で急変がおきたときの証人として、医者の同乗が望ましいが、いま施設では医者の準備ができないので、お1人での搬送。)

?!?! なにしろ入院して、高濃度の酸素吸入や薬の服用開始してもらわなくちゃ…
ということで、
◎なんでもいいので、入院お願いします!

その日の午後の入院と決まり、その時刻に義妹と遠巻きに様子を見ていた。やってきたのは、白い中型バン。防御服の運転手さん一人だけ。ストレッチャーに酸素吸入を外した父が一人寝かされ、後ろの荷台に。荷台と運転席の間はアクリル板で完全遮断。

なぜ、質問されたのか状況把握。誰も見ていない、手当てもできない状態で病院までコロナ患者を運ぶだけ。搬送途中の急変が起きたら、アウト… ヤバ!
と家に走り戻り、車を出し、施設に戻ると妹が、さっき出たところよ! 
車に乗せ、あとを追いかけた。以前、入院する家人の救急車の後を追いかけたことがある。あれよあれよと引き離され、追いつけるもんじゃあなかった。救急搬送車には、難なく追いついた。信号で止まる。歩行者も優先。普通の車と同じ。
病院についたが、後ろの扉が開かない。順番待ち。ヤキモキすること数十分。やっと、病院のストレッチャーが到着。後ろの扉が開き、父の大きな声が聞こえてきた。ホッツ。酸素もすぐ吸入開始。後は、お任せするしかないわね…

とまあ、こういうことがありました。前後して、受け入れ先がなく搬送中の救急車の中で亡くなられた高齢者の方のニュースが流れ、その後、杉並区は毎日、救急車のサイレンの音がよく聞こえます(出動が増えています)。父は17日間の入院で、施設に戻ってきました。

高齢者の感染、都内の状況、治療方法… よく知って、理解していたつもりでした。でも実際は、違いました。何が違うって、起きていることも事実も同じです。でも、知っている(理解している)ことと、わかる(その場を体験する)こととは、とてつもなく重みが違うのです。そしてその違いを体験した後は、同じニュースを読んでも、受け取り方(心への響き方)が違うのです。痛みや苦しさ、悔しさに、心が共振するのです。

その場にいる、その空気の中にいる ということは、〔理解〕と〔わかる〕を分ける鍵なのだと実感しました。

〔よく知る〕〔理解する〕の伴わない体験は、心は動くでしょうが〔わかる〕までは至りません(単なる感情。時とともに薄れます)。
しかし〔理解と言えるほどまでよく知る〕ことができても、しっかりと自分の芯にまでいきわたらせる〔わかる〕ためには、その空気に触れることが大切です。そこに〔体験〕の重要性があります。逆に、豊かな体験があれば、その後の学びが深く定着もします。

情報教育が、結果ではなく〔経過を重視する〕理由も、そこにあります。繰り返し繰り返しの実践(体験)から、多くの気づきを得ることが、深い学びに繋がると考えているからです。

いま、ウクライナが世界中から注目されています。先日、渋谷に行ったら、ハチ公前は大渋滞でした。ちょうど、ウクライナ支援のために人が集まっていたのです。中には、ウクライナを訪れた(あるいはウクライナが故郷)の方もいたでしょう。災害や不可抗力で家や家族を失った人、つらい別れを経験した人… 多くの人がそれぞれの痛みと重ね、今回の攻撃を受け止めています。
あえて重い空気を体験させよう とは言いません。しかし空気を想像できるだけの体験は、平和な時でも学習させていくことが、人間育成につながるのだと思います。

テントでのキャンプ生活、飯盒炊飯、延々と続く山登り… 学校行事からどんどん消えたり、つらくない楽しいイベントになったりしてませんか?? 
 
◆小田 和美
情報ネットワーク教育活用研究協議会(JNK4)理事、聖心女子大学非常勤講師、大妻女子大学非常勤講師
教育情報化コーディネータ検定、情報支援員認定、情報モラル指導モデルカリキュラムや情報活用能力評価カリキュラムの作成、情報教育ポータルサイト構築など、情報教育の研究・推進活動を行っている。
 
■□ あとがき ■□--------------------------
次回は、3月18日(金)を予定しています。

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