子どもゆめ基金のデジタル教材

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2020.11.27

子どもゆめ基金のデジタル教材

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■   連載:コロナ禍 教育現場において
■□  新シリーズ:子どもゆめ基金のデジタル教材
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 ■ 連載:アメリカ便り コロナ禍
                     第2回 教育現場において
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前回は筆者が在住するマサチューセッツ州が、どの様にコロナ渦に巻き込まれていったかをお伝えしました。今回は学校や保育園が、休校・休園中にどの様な対応を取ったかを書きたいと思います。

最初に幾つかの公立学校が休校措置の発表したときは、あくまで3週間と言うことでした。
米国は一般的に夏休みが長く、多くの州で2ヶ月半の休みがあるので、それに比べると3週間はさほど長いと感じさせません。ワークシートなどをeメールで配信する事で休校中の対応をしようとしていた地区が殆どでした。

しかし、日々の新規感染者数・死亡者数は減るどころか増え続けるばかりで、3週間で元に戻れる様相でないことは明らかでした。それからの対応は、各市町村で大きく差があった様です。

そもそも、公立学校の教員はこれまでリモートで教える事態を想定してトレーニングをしていませんでしたし、教員の年齢によってもITスキルの差があるのは普通です。スマートフォンやタブレット端末が生活の一部として当たり前である時代に教育を受けている20代前半の教員と、教員のキャリアの殆どを手書き・手作りで過ごしてきた60歳以上の教員では、オンライン教育のスタートラインが異なって当然です。休校措置が相当な長さになるであろうと予想できた市では、最初の1、2週間を教員のトレーニングや準備期間に充て、今後も使えるリモートラーニングのプラットフォームを市全体で作ったところもあります。

マサチューセッツ州は、冬に大雪で学校を閉めなければならないことがあります。1シーズンに1度しかない年もあれば、大雪続きで週に3回しか登校できないことが1ヶ月続いた年もあり、予想以上に休校が多い年は夏休み開始を遅らせなければなりませんでした。一度プラットフォームを作っておけば、今後はそう言った場面でも使えるという判断だったようです。

毎週月曜日の朝にオンラインのシステム上で課題を配り、終わったらオンライン上で提出できるプログラムを作り、午前中は先生がオンラインで常に待機しているから、自宅で自習していて質問がある人はいつでもコンタクトをとれる体制を取っていました。朝の会、音楽、体育などもオンライン上でできる様にして、子供達同士が顔を合わせて意見を交わせる時間も設けました。

とある市では、全て担任教員の裁量に任せていたため、兄弟が通う同じ小学校で、4年生のお兄ちゃんは週に2回テレビ会議電話を使った朝の会とプリント学習、キンダーガーテン(日本の年長にあたる、小学校に併設される入学の前の1年間の公立学校)の弟はワークブックを配られただけ、という場所もありました。

3月中旬に休校措置に入ってから6週間ほどが過ぎた頃、世界中でオンライン教育のリソースも増えてきて、もしかしたらマサチューセッツ州は年度内に再開はできないのかもしれないという空気が漂い始めた4月下旬頃からは、殆どの市町村で日常的なテレビ会議による朝の会や授業が取り入れられる様になってきました。必要な家庭にはタブレット端末やインターネット設備なども整えて、アクセスできない子がいない様に配慮もしました。

先にも述べた様に、大多数の教員はオンライン教育のスペシャリストではなかったので、毎日が試行錯誤だったはずです。そして、特に低学年の子供を持つ家庭の保護者にとっても、毎日が試練だったに違いありません。家で仕事をしながら、子供の教育までも担うことになり、SNS上では自分がやっていることが十分なのか、子どもに後々影響が出るのではないかと、その責任の重さに押しつぶされそうになるとつぶやく知り合いが沢山いました。

かくいう私も、4歳の子供が家にいる状態で仕事をすることになり、しばらくの間は非常に多くのストレスを抱えました。私が働く保育園では、3月15日の週から閉園措置を取り、園側から「閉園中は家でできるアクティビティを毎日2つメールで送る」と保護者に連絡がいきました。その後、保護者からの要望もあり、テレビ電話を通して毎日30分の朝の会、運動の時間(ダンスやヨガなど)、スペシャルタイム(音楽、ダンス、紙芝居、マジック、実験、子どもクッキングなど)を提供しました。アクティビティの作成(PDFフォーマットに写真入りで必要なもの、手順、目的などをまとめる)も続け、最後の1ヶ月は個人面談時間も設けました。

繰り返しますが、私には4歳の子供がいます。自分の子どもを放り出し、時に「今から仕事なのだから静かにして!」と声を荒げ、そして画面の向こうの何人もの3歳児たちに笑顔で対応している自分を客観的に眺めた時、虚しさで働くことの意義を見出せなくなったことは1度や2度ではありませんでした。

決して、自分の担当するクラスが嫌いなわけではありません。仕事が嫌いなわけでもありません。ただ、不可抗力の緊急事態の中、命の危険もあるかもしれない中、自分が守らなければいけないものは何だろうと考えた時、今までの自分の価値観が分からなくなってしまったのです。私の様に感じてしまった教育関係者も多かったのではないかと思います。

過去の連載で書いたことがありますが、米国の保育料は総じて高く、マサチューセッツ州の保育料は全米で2番目に高いです。15ヶ月までの乳児を週5日預けるには、毎月25万を払わなければならないことも多いです。5歳児でも15万円程度はかかります。それだけの保育料を納めている保護者からすると、休園中に何かを求めるのは当然です。

保育園の対応はそれぞれで、私の働く園のように保育料を収めてもらい、スタッフの給料支給も維持したまま、その代わりにできるだけの対応をするところ、一切を閉めて保育料も取らないところ(母体が教会などで、場所代もかからず資金源が保育料以外にもあるところはこの様な対応もできた様です)、登録料として数万円だけを請求し、週に1度だけテレビ電話をしたところ、残念ながらビジネスを継続するのが難しく、閉園せざるを得なかったところ、など様々でした。

保育の現場ではソーシャルディスタンスを保つことは不可能なので、感染の心配が全くなかったわけではありませんが、園が再開できそうな目処が立った時は、安堵したのも事実です。

公立学校の9月からの新年度は、生徒を学校に戻すことで感染を増やさない様にと、完全なリモート教育から始めた市と、リモートと登校を混ぜたハイブリット教育にした市が殆どでした。登校に関しては選択の余地があり、完全リモート教育を選ぶこともできます。教員の子や、リモート教育だと難しいと判断された子など、必要に応じて毎日登校できる子もいます。しかしながら、11月中旬以降になって、春の第1波のピーク時を越す新規感染者数を記録する日が、残念ながら出てきてしまいました。

ワクチンが12月中旬以降接種開始できそうだというニュースも入ってきたので、これ以上に健康、経済、教育などに被害が広がらないことを祈る毎日です。

次回は、コロナ禍においてマサチューセッツ州の障がい児教育の現場ではどの様な対応がなされたかをお伝えしたいと思います。

◆礒恵美(いそ めぐみ)
ボストン在住


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 ■ 新シリーズ:子どもゆめ基金のデジタル教材                   
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子どもの体験活動や読書活動を支援することを目的に設立された『子どもゆめ基金』※1※2。関連する活動の助成金を出す他に、活動に役立つデジタル教材の開発にも助成しており、教材は無償で一般の方々に提供されています。活動は10年以上続いており、デジタル教材の予算だけでも毎年約2億円。過去に多くのデジタル教材が開発・公開されています。

※1 独立行政法人国立青少年教育振興機構『子どもゆめ基金』 
 
これまではあまり世間から注目をされてきませんでしたが、新型コロナウイルスの影響で利用者が急増したサイトもあるようです。そこで、当メルマガの読者がもしかしたら関心をもたれるかもしれない教材を開発した団体にお願いし、シリーズとして今後、紹介していきたいと思います。次号からは、編集部がお勧めする教材の開発団体自身に、解説をしていただきますが、今回はその導入として、ゆめ基金のページで公開されているものを紹介してみようと思います。

以下が、該当のデジタル教材ページになります。少々見つけにくいのですが、前述の子どもゆめ基金のトップページ、上部のタグ「助成活動紹介」をクリックすると開きます。

 
構成としては、ジャンルごとに分かれており、上から自然探検、環境保全、科学体験、職場体験、創作体験、読書活動、その他という順です。前述したように実際に開発された教材の数はもっと多いはずですが、このページに掲載されているのは26本となっています。

各教材の項目には、教材名、対象者、内容、教材を使った感想、開発団体名、開発年度が並んでいます。開発年度を見ると平成29年度から31年度までで、新しい教材だけが収録されていることが分かります。

教材の対象としては、子どもの他に、保護者、指導者というものがあります。つまり、子どもの活動のために、保護者または活動の指導者が使う教材という位置づけです。

内容としては、各体験活動と読書活動の他に、その他として、子どもの特性(精神障害や発達障害等)に関する情報や、ICTを教える、あるいはICTから子どもを守る、スポーツの教え方を学ぶ、怒りなどを抑える、等々の多様な領域が含まれています。

団体名を見ると、一般社団法人、特定非営利活動法人、公益法人、企業から、学会や研究会などの任意団体までが含まれており、アイデアとデジタル教材の企画力があれば、助成金を得られることが分かります。なお、プログラムの開発については、ほとんどの教材が専門の企業・団体やフリーランスに依頼して、その費用を助成金で支払う形で開発されているようです。

なかでもユニークな項目が「教材を使った感想」です。その教材を使った子どもや指導者から得たコメントが掲載されており、具体的な使い方をイメージできたり、こんな効果があるなら使ってみようかという気にさせてくれたりします。

2つほど「感想」を同ページから引用してみます。

〇「海でも、海に行かなくてもできる!」多様な研究者と作る 体験型海洋学習教材『Lab To Class』 特定非営利活動法人海の環境教育NPO Bridge
・指導者のコメント:普段よりも子どもたちの観察眼が鋭くなり、泳ぎ方や動きの特徴などをじっくり見ていた。また、今と昔の生物の違いなどに興味を持つ子もいた。
※4 体験型海洋学習教材「Lab To Class」 

〇子ども情報ステーション(精神障がいについて学ぶ教材) 特定非営利活動法人ぷるすあるは
・保護者のコメント:子どもが気持ちを表現できるようになってきた。SOSを出していいという気持ちになってくれつつある。
※5 子ども情報ステーション 

これらの教材は前述のページからリンクが貼ってありますので、クリックするだけで使うことができます。興味をひく教材があるようでしたら、ご試用されてはいかがでしょうか?

次号では、シリーズの第一弾として、「仮想現実の技術を応用した職場体験学習教材の制作と普及」について、学術普及連合会から寄稿いただく予定です。

※6 バーチャル体験学習 

◆五藤博義(ごとうひろよし)
レデックス株式会社 代表
 
 
■□ あとがき ■□--------------------------
「スマホとネットで西日本国際福祉機器展」が開催中です。従来は会場で行われていたイベントですが、今年はコロナの関係でネット開催になりました。多数の出展者がさまざまな福祉機器について動画等で紹介しています。また、各企業製品ページには『何でも聞いてね チャット風伝言板』が設置されており、興味を持った来訪者は自由に、企業に質問などの連絡をとることができます。開催は、2021年2月12日(金)までです。

レデックスも出展し、「生活機能発達支援プログラム:ライフスキル」などの動画を公開しています。

第22回西日本国際福祉機器展 

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