子どもの生活機能の獲得を支援する

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2020.08.21

子どもの生活機能の獲得を支援する

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■   新連載:子どもの生活機能の獲得を支援する
■□  連載:北海道のある中学校で、タブレット端末の使用許可を得るまで
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 ■ 新連載:子どもの生活機能の獲得を支援する
         第1回 生活機能発達支援プログラム Life Skills(ライフスキル)
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8月4日に念願の新サービス『生活機能発達支援プログラム Life Skills(ライフスキル)』を公開しました。これは、レデックスの主力製品、『脳バランサーキッズ』を導入していただいている放課後等デイサービス(以下、放デイ)からの要望に応えるクラウドサービスです。

※機能イメージ

放デイの目的は多様ですが、そのもっともシンプルなものは、子どもたちができることを増やしてあげたい、というものです。ですが、それを行うのを阻むものは次のようにたくさんあります。

1) できるようにしてあげたい(身につけさせたい)ことが多様
2) 身につけようとする子どもの、発達が多様でまた測定が困難
3) 1)と2)の組み合わせに対しての解をもつ専門性が高度

レデックスでは、上記の3つの問題に次のように対応してきました。

1.協力者チームの構築

子どもの発達に関わる専門資格には、医師、教師、心理士、言語聴覚士など多数があります。発達に関して多くを学んだ、国立成育医療研究センターの橋本圭司医員との長年の交流から、直接一緒に活動して、子どもの様々な問題を解決する専門資格として「作業療法士」が開発パートナーにもっとも合致していると考えました。そこで、かねてから交流のあった鴨下賢一氏(リハビリ発達支援ルームかもん代表)に相談し、下記のメンバーによる協力者チームを構成することができました。

 ・小玉武志(北海道済生会みどりの里)
 ・戸塚香代子(川崎市中央療育センター)
 ・池田千紗(北海道教育大学 准教授)
 ・須鎌康介(湘南医療大学)
 ・荻野圭司(医療法人ひまわり会 札樽病院 )
 ・佐藤匠(北海道済生会みどりの里)
 ・高橋知義(株式会社LikeLab 保育所等訪問支援  Switch)、
 ・松井匠(桜十字病院)、
 ・東恩納拓也(みさかえの園総合発達医療福祉センターむつみの家)
 ・前田航大(社会福祉法人ことの海会ふわり諫早)
 ・善明史恵(社会福祉法人おおぞら 児童発達支援センター ポランのひろば
 ・木村基(kamikamiclub) ※敬称略・順不同

2.「身につけさせたいこと」のリストアップと体系化

生存から快適に過ごすまで、日常生活でできるようになってほしいことは生活機能といわれます。また、就業など社会的な活動に必要な行動や態度、技術は社会機能といわれます。それらの、身につけさせたいことを明示することは子どもたちの目標設定にもなります。そこで、協力者チームと相談し、生活・社会機能(以下、ライフスキル)を整理し、24領域にまとめました。さらに、各領域で獲得目標となるライフスキルを選別し、約120の項目を設定しました。

※ライフスキル24領域 受容・表出・読み・書き・健康管理・食事・整容・更衣・排泄・作業・掃除洗濯・調理・自己認識・時間管理・自己統制・移動・買い物・電話・パソコン・対人関係・遊び・学校生活・気配り・責任感

※ライフスキル項目例 人の話を、少なくとも30分間聞くことができる(受容)、頼まれたものを買ってくることができる(買い物)等

3.デジタルパズルによる発達の測定

ライフスキルを行うには複数の認知機能が必要になります。子どもは日々、発達していますので、それらの認知機能も変化しています。それをダイナミックにとらえるために、9つの認知機能を選び、それらの認知機能と関連するデジタルパズル(以下、タスク)を15種類設定して、レデックスの保有する特許(出願中:2018-106469「認知機能測定システム」)に基づいて、それほど数多くのタスクを試行しなくても、必要な認知機能バランスを測定し、グラフ化できるようにしました。

※ライフスキルに必要な9の認知機能 自己認識力、空間能力、注意集中、協調運動、遂行能力、抑制力、言語機能、計算力、記憶力

4.助言データベースの作成

ライフスキル120項目の到達段階を複数に分け、それぞれの段階に到達するために子どもが取り組む(支援者が行う)べきアプローチ方法を協力者チームがまとめ、データベースにしました。

5.身につけさせたい項目の選択と、測定した発達に基づく助言

子どもがタスクに取り組む度に、9つの認知機能が更新されていきます。メニューから子どもに身につけさせたいライフスキル項目を選ぶと、その子の最新の認知機能の状況に基づいて、その子がその時に取り組むことについての助言が提示されます。また、そのライフスキル項目に必要なタスクも選定され、提示されます。

提示されたアプローチ方法を、本人(と支援者)がやること、また、そのライフスキルに必要な認知機能を高めることの2つの側面から、ライフスキルの獲得を支援しようという訳です。

6.サービス概要

利用は、3種類のコースから選択し、家庭あるいは放デイなどの施設が、一定人数までの子どもについて自由に使っていただく形です。子どもは自由にタスクに取り組め、ライフスキルの選択と助言の表示は、管理者(保護者や支援者)が行います。

                      (価格は税別)
・パーソナル  月額 1,000円 利用人数  3人まで 管理者 2人まで
・スタンダード 月額 8,000円 利用人数 50人まで 管理者 5人まで
・プレミアム  月額28,000円 利用人数 250人まで 管理者 15人まで

利用する機器は、インターネットに接続できるwindows、Mac、iPad、Androidなどです。スマホも利用できますが、視覚性注意のタスクなどを正しく行うには大きめの画面が望ましいです。

次号から、協力者チームの方々に「ライフスキルを身につけるために必要なこと」を順次、解説していただく予定です。
                        
◆五藤博義(レデックス)


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 ■ 連載:北海道のある中学校で、タブレット端末の使用許可を得るまで
        第2回 交渉の結末と、この経験を伝えたい思い
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〇 保護者の決断と実際の中学校等との協議プロセス

小学6年の3学期は、書字障害を担任教諭に理解されず、書く事を強要され、同級生からのいじめにも合い、不登校になった。「卒業式にも出たくない」というくらい、教員と学級の子どもたちに不信感がいっぱいな状態だった。その結果、息子と相談し不登校を選んだ。

※小学高学年の時の計算テスト

私は、不登校は悪いと思っていない。ただ、生活リズムを崩させたくないという思いと、大人や同年代の人を信じることだけは諦めてほしくないという思いで、タイピングを教えてくれる放課後等デイサービスに通所することにした。もちろん登校日数になった。

指導を施設スタッフにしていただき、自宅以外の場所でタイピングスキルに取り組んでタイピング検定を受験した。見事合格。不登校の時間を、自分の弱点を代替(alternative)し、生きるためのスキルを身につける時間として使い、結果、自信につながったと思う。
私の考えに協力していただき、不登校を後ろめたい時間と感じさせず、タイピングスキルを伸ばしてくださったデイサービスの関係者には感謝しかない。
 
その頃、保護者がした一番の大きな決断は、弁護士を立てる事であった。
中学校側、教育委員会との交渉が全く進まないため、大学病院の主治医に相談した。
中学校側から断られる様々な理由が考えられたので、その旨も主治医に相談した。
結果、弁護士と契約をして、示談交渉をしてもらうことにした。

※中学校での英語のテスト
※中学校での社会科のテスト

いろいろと考え、私たちが住んでいるエリアの弁護士会の弁護士ではなく、北海道の他の地域や本州で活動されている、学習障害の専門ではなかったが、札幌の弁護士さんに依頼をして示談交渉を開始。示談交渉の相手は、町教育委員会と中学校、小学校である。

我が家の子どもたちと関わる町の機関も含め、一つひとつ、書面でやり取りをして、必要書類に印鑑をいただき、交渉を進めた。そして3月5日にようやく中学校、教育委員会と保護者の間で、息子が学校で端末を使う事を認める合意形成に至ることができた。

秋からの交渉期間は6か月間。さらに、我が家にとって負担となる、多額の弁護士費用がかかった。計り知れないほどの精神的苦痛と肉体的苦痛であった。

※中学校でタブレットを活用する様子
〇 実現のポイントは事例活用と理解者探しを諦めないこと

今は新型コロナウイルスの流行と、GIGAスクール構想※が叫ばれているため、ICTの活用を認めないとはっきりいう管理職は少なくなっていることを願ってはいるが、ゼロではないと思う。

 

今回私たちが直面した問題の解決に、同じ思いの保護者が集まり、声を上げられていたら、行政側が動くのはもっと早かったと思う。

しかし、私の住んでいる地域は、医療サイドでの、発達の困りに関する専門医がいなかった。また、教育サイドの、町の発達相談センター教育局等の専門チームといわれる方々でも、知的に困難さがない場合、書字や読字、計算の困難さに苦しんでいる子どものいることに気が付けないのが現状だった。このような地域で、保護者同士で仲間づくりをするのは非常に難しい。理由はただ一つ、その地域の教育分野の専門家や教員が、書字障害等の症状や困り感の具体的な症状や指導方法、関わり方を知らないので、保護者に情報がきちんと周知がされていないからだ。運よく言葉を知っていても、具体的な指導方法や関わり方、進路活動の進め方を知らないからだ。

この地域の教育の専門家や教員の方々は自分の知らないことを言う保護者を、学校に敵対する行動だと捉える。人口の少ない地域で新しい学びのスタイルを希望する行動を起こそうとすると、教育の専門家や教育行政と言われる立場の意見を信じるので、当然、私たち親子の行動は偏見の目で見られることになる。
そうなると、地域で生活すること自体が苦しくなる事を、簡単に想像していただけるのではないだろうか?

自分の子どもが困っているのに、諦めない(諦めが悪い?)私は、レデックスさんのメールマガジンで取り上げられていた専門家の考え方や当事者の実体験等を根拠として、これまで学校と話をしてきた。そのようにしても、次から次に様々な課題が出てきましたが・・・。

私としてはこの事例が、校内のネット環境の整備がされていなかったり、学習障害の理解が不足していたりする地域の保護者の方々の一助になればと考えて、メールマガジンに投稿させていただきました。個人のタブレット端末を学校に持ち込み活用することで、学習や生活の幅が広がる可能性があると考えて、学校・教育委員会等の学校行政と話し合いや交渉をされる際の何かの参考にしていただければと思います。

昨年度(2019年度)の息子は、町教育委員会、学校管理職や担当教員、学校コーディネーターから理解されず、学校に行く事を渋っていました。しかし、今年度の息子は自分に必要な配慮を伝えることで、プリント類も全てデータでもらえるようになり、特別支援弱視学級に籍は置いていますが、ほぼ全ての科目の授業を通常学級で学習しています。現在は、高校の学校見学を終えて、公立高校の受験をめざして取り組んでいます。この環境は、実は大きな出会いとご縁があったからこそできました。そのお話については、後日改めて投稿させていただきたいと思います。

◆大久保 育美
2児の母親。現在は、息子と娘の学習環境を整える事が仕事。
看護師・保健師・養護教諭2種免許をもっている。
文部科学省の指定事業を受けていた高校で支援員として勤務していた経験がある。
ロストジェネレーションという年代で生きてきているので、医療現場、保健分野、教育分野で勤務していた。


■□ あとがき ■□-------------------------- 
将棋の藤井棋聖が王位戦に勝ち、二冠になりました。生家が近く小中学生の頃に真剣に将棋を指していた編者には感慨深いです。その指し手、特に終盤は無駄なく勝ちを目指し、他の棋士とは一線を画します。ネットで無料の実況がありますので、お子さんと一緒に一度、ご覧になられてはいかがでしょうか?

ABEMA 将棋チャンネル 

次号は、9月4日(金)の予定です。

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