読み書きが困難な人は多様

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2020.01.17

読み書きが困難な人は多様

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■  連載:読み書きが困難な人は多様
■□ 連載:「気になる」子どもたちと私の関わり~小学校低学年編
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 ■ 連載 ディスレクシアとは?
       第6回 読み書きが困難な人は多様
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読み書きが困難だからと言ってディスレクシアとは限らない。実に様々な理由で読み書きに困難さを覚えることがある。 

読み書きに困難を覚えるのは視覚障害者であると思われていた。各種の福祉サービスや法律などもその考えのもとに作られていた。しかし、デジタル化が進み、その恩恵を被る人は多岐に及ぶことが分かってきている。従来の拡大、白黒反転にとどまらず、フォントの変更、音声化、ルビをつける、レイアウトの変更から、ページをめくることまでができるようになってきている。大部分の機能は汎用性のあるタブレットやPCで対応が可能になってきている。

視覚障害者と言っても全盲から弱視、色覚特性によって読みにくいという困難さ以外に、視機能の問題で読みにくい人たちがいることもわかってきているし、ゲーム機や室内での遊びが多くなり、近視が増えているとの報告もある※1。

※1 小中学生の近視増加傾向への警鐘-都内小学生の約80%、都内中学生の約95%が近視- 慶應義塾大学医学部 

目の使い方が下手であったり、視力や視機能に関連しないで読み書きに困難があるのはどのような場合だろう。

知的障害であっても複雑な漢字になると読むことが困難になることがある。でも、有名な書道家の金澤翔子さんのように、知的障害者のほうが立派な字を正確に書ける人たちがいる。ルビを振ればある程度理解ができる場合も多いがスウェーデンで行われている、年齢相応の内容を読める「Easy-to-read books for adults」※2のように記者が選んだ記事を読みやすく形を変えた出版物などがある。これらはオーディオブックでも作成されている。

※2 Books, news and other information in easy-to-read Swedish 

発達障害の中でもディスレクシアの他にも不器用な人たちがいる。発達性協調運動障害や眼と手の協応がうまくないなどが要因で、読みや書きが困難な場合である。また、注意集中に困難さがあると、どこを読んでいるかわからないとか、行を飛ばすなどの困難さが出てくることがある。また、肢体不自由な方たちはページをめくるのが大変だったり、体を一定の姿勢に保つことが難しいために印刷された本を読むことが困難であったりもする。

最後に、外国人や外国につながりのある人たちも日本語の読み書きに関して困難さがある。文部科学省でも外国人児童生徒等における教科用図書の使用上の困難の軽減に関する検討会議※3を開き、これまで障害がある児童生徒に供与がされてきた教科用図書を外国人児童生徒等にも供与できるよう検討をしているところである。デジタル教科書にも特別支援教育に対応した機能が組み込まれているのだが、その機能を使えるようになるだろう。読書バリアフリー法に関連しても外国人等への適用が検討されている。外国人等というのは単に国籍が外国籍というだけではなく、帰化していても両親が外国人、片親が外国人、インターナショナルスクールで育つ、海外の学校に通っている純然たる日本人までも含んでいる。

※3 外国人児童生徒等における教科用図書の使用上の困難の軽減に関する検討会議(文部科学省) 

エッジでは教科書を音声化したBEAM※4というデータをMP3で無償提供している。上記の検討委員会で発表したのだが、両親が外国人の、日本生まれで日本の公立中学校へ通っている、読み書きに困難を見せている5名の生徒に対して、ひと月の間に4回各1時間を音声で聞かせて効果を調査した。それぞれの母語での口頭の言語と読み書きの程度、現在の日本語の口頭の言語の程度についても尋ねている。音声を聞く前に、読む速度、流暢性(よどみなく読めるか)と正確性(読み間違えの頻度)を調べ、一か月後に同じものを測り、本人たちに感想を聞いた。4名で顕著に改善が見られ、残る一人も少し改善が見られた。最後の一人は口頭でも語彙が少ない生徒であった。生徒の感想では「漢字の読み方が分かって助かる」「物語の流れや登場人物の関係性が分かった」「これからも使っていきたい」と学習への効果を述べていた。

この他、高齢化社会におけるニーズも猶予を許さない。目が不自由になって、情報に触れられない状態が起きる人の数は年々増加の一途をたどることが明白である。ディスレクシアへの合理的な配慮が、実は多くの人たちへも役に立つということが分かってきて、すそ野が広がっていく予感がする。

※4 BEAM 

藤堂栄子
星槎大学特任教授
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 ■ 連載 「気になる」子どもたちと私の関わり
        第2回 小学校低学年編
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前回の記事では、息子が小学校に入る前を中心にお伝えしました。今回は、小学校に入ってから低学年の時期の話をしたいと思います。

〇子育てで一番つらかった時期

この時期を思い出そうとするだけで、目が潤むくらい大変な時期でした。保育園の一番上のクラスの時からつながっているのですが、いろんな面で息子のYは早熟だったんだと思います。

その頃はゲームボーイが出たてのころ、私の仕事の関係で、持ちかえったゲームボーイを4歳くらいのYは自分一人で操作を覚え、すっかり自分のものにしていました。いろんな人から聞く話ですが、発達障害の特性を持つ子どもにはそういったコンピュータに強い人が多いようですね。興味があるものに対する力はずば抜けています。ちょっと話が逸れてしまいますが、この特性は将来に生かせます。実際にYはその特性を生かし、情報系の大学を出て、IT会社に就職しました。そのあとのことは、連載の後半にお伝えしますね。

話が逸れたりどんどん飛んでいったりする頭の中は、私のADHDの特性でもあるようです(笑)

さて早熟な息子の話に戻します。まず口が立つ! 私もよくしゃべる方ですが、本当によく話す子どもでした。保育園の最後の保育参観のお散歩についていったとき、クラスの中で一番おしゃべりだった息子の姿を覚えています。それも論理立てて話せるんですね。人の意見を論破することも得意でした。話し方もとても大人っぽくて、可愛げがない。これも発達障害の子どもでよく聞く話です。大人のように丁寧というか、硬い話し方で、相手に合わせた話をすることが難しいみたいです。サンタなんかいない!と言い張って、女の子全員に取り囲まれたこともあるようです。

そういったことから、友人同士のトラブルが多く、保育園でも小学校入学してからも電話に常にびくびくしていました。トラブルがあると私宛に電話があるんです。PTAの行事や運動会などではいつも誰かに謝らなければならなくて。家には菓子折りがいつも用意してありました。Yを連れて謝りに行くこともとても多かったので。

おじいちゃんが亡くなった友達に「おじいちゃん死んでよかったね」、足の悪い同級生の女の子に「お前のせいでリレー負けたんだぞ」、授業中先生からこの世で大切なものはと聞かれ「お金」と答える、などなど… なんでそんなことを言うのか、先生にもよく聞かれましたが、わかるわけありません。今から考えればきっと本人の中では理由があったのでしょう。当時は、頭ごなしに叱るしかなかったのです。だって私にも息子のことがわからなかったから……。叱りながら私が泣いてしまうこともたびたびありました。

一番つらかったのが、1年生に入ってすぐからずっとYのことをターゲットにしていた同級生の女の子の母親Mでした。最初のきっかけは、後から聞いたらその早熟な女の子がYにちょっかいを出したことでした。うっとうしかったのでしょうね。その女の子のことを蹴ったり暴言を吐いたりしたらしいんです。Mからは、今日は何をされたとかいう電話が毎晩かかってきました。最後には「うちは引っ越しませんから、弁護士もいます」「あんた、仕事と息子どっちが大事なの」と詰め寄られました。今から思えば、Mも精神的に病んでいたのかもしれません。出張先からも電話をかけて謝ったのを覚えています。

小学校では、幼稚園から来た母親グループと保育園から来た母親グループで大きく分かれました。どうしても子どもにかける手が少なくなる保育園のママたちとはあまりトラブルはありませんでしたが、幼稚園グループのママたちは苦手でした。

Yの2年生の担任は中堅の女の先生。とても仕事のできる物分かりのよい先生でした。Yのこともわかろうとしてくれていました。その先生から、行政の心理士に相談するように勧められて、区の心理の担当者に会いに行ったことを覚えています。まず、私だけで行き、そのつぎにYを連れていきました。結局その心理士が言うには「Yくんはほかの子より発達が早すぎる」ということでした。その頃、今のように発達障害のことがわかっていたら、診断を受けに行ったのかもしれません。でも、Yは人より頭の回転もよく、何より自己肯定感が抜きんでて高かったのです。

その理由は私にもわかりません。学習障害もなかったので、友達とのトラブル以外は低学年のうちはあまり問題にはなりませんでした。思うに、学校に通っているときに、勉強やスポーツに問題があまりないと、本人の自己肯定感を損なうことはなくなるようです。また、よい先生に巡り合うことが本人にとってとても良い影響があるのだと思います。

でも、低学年から中学年、高学年になっていくにつれ、ジャイアンはジャイアンでなくなっていきます。ほかの子が、ココロも体も成長するからです。そのあたりについては次回お話します。

〇通級指導教室などの学校での支援

発達障害といわれている子どもたち。脳の機能障害で発達に凸凹があります。そのため、できることとできないことの差が激しく、通常のクラスの中で授業を受けるだけでは難しいことがあります。小学校や中学校では、そんな子どもたちのために通級指導教室と支援員の制度を用意しています。

・通級指導教室とは?

通級指導教室(以下、通級)とは、週に数時間、通級指導教室に移動して、子どもたちの障害特性に合わせた支援や指導を受ける制度です。そのほかの教科の学習は、通常学級で過ごします。個別に必要な支援や指導の内容が変わるので、障害の種類によって教室の種類もいくつかに分かれています。そのため、在籍する学校にその子のニーズに合った通級が設置されていない場合もあり、地域で定められた他校の通級指導教室に通うこともあります。

この通級による指導を受けている生徒や児童が年々増えています。今は各小学校に通級があるところもあるようですね。

通級による指導を受けられる児童や生徒は、学校教育法施行規則第140条の各号のいずれかに該当する、小学校・中学校に通い特別支援学級には在籍していない障害に応じた特別の指導を行う必要がある児童生徒です。下記のような障害が含まれます。

・視覚障害
・聴覚障害
・肢体不自由
・言語障害
・自閉症
・情緒障害
・学習障害
・ADHD(注意欠陥・多動性障害)
・病弱および身体虚弱

通級のメリットには、通常学級に在籍するので、さまざまな児童生徒とのコミュニケーションができる、本人の障害に合わせた必要な支援やフォローを通級指導教室で受けられることがあります。

・特別支援教室構想

近年、通常学級にいる学習障害(LD)、ADHD、自閉症スペクトラムなどの発達障害のある子どもに、適切な支援を受けられるようにすべきとの声も高まってきました。文部科学省は、「特別支援教室(仮称)」として、さらに弾力的な支援ができる制度を進めようとしています。例えば、東京都の特別支援教室の例を挙げましょう。

東京都では全国に先駆けて2016年度から小学校の情緒障害等通級指導教室が特別支援教室に変わりました。それまでは、通級指導教室が設置されていない場合、他校に通わなければいけなかったのですが、東京都の全ての公立学校に特別支援教室がおかれ、教員がその教室に巡回して指導を行う制度に変わりました。このことから、「多くの子どもが支援を受けられる」「子どもや保護者の移動・送迎の負担が少なくなる」「在籍学級の担任と巡回指導教員の連携が密になる」という効果が期待されています。

・特別支援教育支援員の活用

今まで挙げた、通級指導教室や特別支援教室のほかにも、通常の学級に子どもたちをサポートする「特別支援教育支援員」を置く制度があります。この制度は、発達障害などにより学習や生活の面で特別な支援が必要な児童生徒が、約6%程度の割合で存在するという文部科学省調査があったのを受け、その子どもたちに適切な対応を行うためつくられました。支援員は、障害のある児童生徒への日常生活動作の介助を行ったり、学習サポートを行ったりします。教室には担任の他に、授業に集中しない子を注意したり、勉強を教えたりしている先生がいるという状況です。

※参考:「特別支援教育支援員」を活用するために(文部科学省)


今まで挙げてきたように、発達障害などのサポートが必要な児童生徒のための制度があります。すべての子どもたちが、障害にかかわらず少しでも自分らしく過ごせるようになるとよいですね。
 
原佐知子
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