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場面緘黙の子どもへ支援と対応 〜教員の視点から

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■ 連載:場面緘黙の子どもへ具体的な支援と対応 〜教員の視点から〜
■ 連載:自分らしさの模索
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──■ 連載:場面緘黙(ばめんかんもく)の子どもへの理解と対応
(最終回)具体的な支援と対応 〜教員の視点から〜
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連載『場面緘黙の子どもへの理解と対応』最終回は、場面緘黙の子どもを持つ保護者で、元小学校教員でもあるかんもくネット会員がお届けします。

私は小学校の教員として約10年間現場に立っていました。正直に申し上げて、当時の私に十分な「場面緘黙」の知識があったとは思えません。名称こそ知ってはいたものの、大学では「子どもの病気、成長とともに治る」と学んだ記憶があった程です。

最終回では、教師として、また保護者として得た情報や経験をもとに、小学校教員の視点から「具体的な支援と対応」についてお話しします。

◆担任として行った私の工夫 〜安心できる環境づくり・関係づくり〜
私が受け持っていた3年生のクラスの中にAちゃんがいました。Aちゃんについては、前担任から「学校で話せるのはお友達のBちゃんだけ」と聞いていました。「場面緘黙ですか?」と聞いたら、「家庭からそうは聞いていない」とのことでした。Aちゃんは、教室でみんながワイワイやっていても、ひとり伏し目がちに座っている子どもでした。声をかけると話せないわけではないのですが、本当に小さな声でひと言話すぐらいでした。

家庭訪問でAちゃんのお母さんと話しているときのことです。お母さんが笑いながら「家では、ほんと、うるさいんですよ〜。そこのうちの子! 聞いてるんでしょ?」と言いました。ドアの方を見ると、Aちゃんがこっそりのぞいていて、恥ずかしそうに、にこっと笑ったのが見えました。学校とは違う、とてもリラックスした柔らかい笑顔に、私はちょっとびっくりしました。とてもうれしくて、Aちゃんの可能性をみた気がしました。Aちゃんの保護者はそれほど深刻に捉えておられない様子でしたが、担任としてできることとして、Aちゃんにとって安心できるクラス環境づくりをしたいと思い、次のようなことを行いました。

<席決め・グループ決め>
「席決め」では、唯一学校でもお話しができるBちゃんが必ずAちゃんの席の前後左右に来るように配置しました。そうすることで、困ったときにAちゃんはBちゃんに相談できるという安心感が持てると思ったからです。クラスの状況によって「席決め」は子どもたちの話し合いで決めたり、くじで決めたり、ということもありますが、このクラスでは担任の私が毎回決める方法にしました。授業などの「グループ決め」の時も、配慮を行いました。例えば、「好きな子と4人グループを作ってください」という場合、場面緘黙の子にとってとても酷な時があります。「ひとりになったらどうしよう」という不安。もちろん、「席決め」や「グループ決め」を児童が自由に行っても、いつも嫌な思いをするような子どもがいないようなクラスを目指すことが大切です。

<楽しいお話・じゃんけんゲーム>
Aちゃんが「学校楽しいな」「今日は学校楽しかったな」と思えるように、クラスのみんなが笑顔になれるようなゲームやお話を、朝や下校前に取り入れました。「楽しい」気持ちが、リラックスや安心感を生むと思ったからです。私自身のドジ話やおもしろい話をすると、クラスが大爆笑。クスクス笑うAちゃんの姿を見ては、心の中でガッツポーズをとっていました。

簡単なじゃんけんゲームもしました。「先生にじゃんけんで勝てないと帰れませんよ」と言って、負けると列の一番後ろに行くルールです。勝って「よっしゃ〜!」と嬉しそうに帰っていく子どもたち。負けて残念そうに列に並びなおす子どもたち。Aちゃんはじゃんけんに負けて並びなおすほうでした。2度目に負けたときに、おもわず「おいおい、がんばれ〜!」と声をかけたら、Aちゃんはちょっと嬉しそうに列の後ろに行きました。Aちゃんはこのじゃんけんがとても気に入ったようで、次に勝ってもBちゃんといっしょに何度も列に並びなおしました。「え〜何回目〜!?」と聞くとAちゃんとBちゃんはどっと笑いました。「じゃあね、ばいばい」とAちゃんにハイタッチを要求すると、ぴたっと手を付けて「ばいばい」と小さい声で言ってくれました。

このように、クラス全体の環境づくり関係づくりを試行錯誤していくうちに、Aちゃんと私との距離は徐々に縮まっていったように思います。

もちろん、反省すべき点もたくさんあります。「一言話せるのだから、もう大丈夫なはず」と、緊張が高い場面で発話を強制してしまい、Aちゃんが泣いてしまったこともあります。
「話したいのに話せない」
自分の娘が場面緘黙だということが分かって、今ならAちゃんの気持ちがよく分かります。

次に「今の私なら、こんな対応や支援ができるかもしれない」と思うことを挙げてみたいと思います。

◆具体的対応と支援
(1)子どもの様子を観察
教員は正しい知識を持って、注意深く子どもたちを見ていくことが大切です。
場面緘黙は、「本来、その子がもつ力を十分に発揮できない状態」です。場面緘黙について知識を持った今ならば、本人の「困り感」にもっと気がついてあげられるのではないかと思います。

(2)家庭に子どもの「困り感」を伝える
家庭に、場面緘黙の疑いのあるお子さんの学校での様子をお伝えすると、子どもの問題に向き合おうとされるケースと「家では問題ないから」と問題を軽視されるケースがあります。後者の場合、子どもの困り感に気が付けないまま放置してしまうことになりがち。教師が子どもの困り感に気が付いているのだけれど、保護者は問題を感じておられない場合、家庭と学校の連携できず校内でのみ支援していくことになります。しかし、有効な支援にはご家庭との協力は欠かせません。

かんもくネットの資料に、「場面緘黙児への対応と支援〜保護者の皆さんへ〜」というリーフレットがあります。以下のリンク先からPDFをダウンロードして印刷もできます。

・リーフレット『保護者のみなさんへ』(PDFはこちら>>
・リーフレット『学校・福祉・医療関係の皆さんへ』(PDFはこちら>>

教師から保護者に場面緘黙について伝えるとき、こういった具体的な資料をお渡しする方法もよいのではないかと思います。

(3)相談できる場所の紹介
保護者に相談できる場所を紹介する時は、教師も一緒に取り組んでいこうとする姿勢が大切です。「家庭」「学校」「医療機関や相談機関」が連携できることが、ご家庭の安心に繋がり、有効な支援へとつながります。できれば事前に、「場面緘黙」に関する情報や支援経験があるかということも確認できればと思います。残念ながら、相談機関や医療機関においても、場面緘黙の知識や経験が少ないところもあるからです。具体的に相談できる場所として、以下のようなところを保護者にお伝えできるでしょう。

1) 相談機関(療育センター・発達支援センター・教育センターなど)
2) 子どもの発達に詳しい医療機関
3) 学校:通級指導教室/スクールカウンセラー
4) 支援団体、親の会など

また、専門機関による適切なアセスメント(面談、発達検査など)を受けることにより、他の不安障害や発達障害の併存についても調べ、子どもにあった対応や支援方法を考えていくことが可能です。

(4)「家庭」「学校」「医療機関」「相談機関」との連携、支援計画
『場面緘黙児へ支援』という本では、カナダの場面緘黙支援プログラムについて詳しい説明があり、家族、クラス担任、学校運営者(校長)、専門家などで、「支援チーム」による対応が有効であることが書かれています。しかし、日本の教育現場では、「支援チーム」を作ることは難しい現状があります。保護者を通して「医療機関」「相談機関」から得た情報をもとに支援方法を考えたり、学校での様子を「医療機関」「相談機関」に伝えて支援方法についてのアドバイスをもらったりして、無理のない連携をとる方法が現実的ではないかと感じています。実際のところ、クラス担任は教科指導や他の子どもへの対応など、大変多くの業務を抱えています。特別な行事に対する準備や子どもの状態変化への対応は必要ですが、学期に一度など無理のない計画をたてて、継続しやすいシステムをつくっていくことが大切だと思います。

◆今、たんぽぽの綿毛のように広がる支援の輪
私は、3年前から啓発動画を作ってきました。家庭、学校、医療現場、専門家のみなさんに場面緘黙を広く知っていただきたいという思いからです。動画は毎年5月の「場面緘黙啓発月間」にあわせて、年に1本発表してきました。2015年5月作成の最新のものが下記です。

動画「場面緘黙(かんもく)を知ってください3」(5分27秒)
(動画サイト(youtube)はこちら>>

この動画はナレーターを場面緘黙経験者のAIRIさん、BGMをAIRIさんの弟さん、そして、本連載の第3回4回を担当したはやしみこさんに、イラストのご協力いただきました。たくさんの方に見ていただき、今も多くの方からコメントをいただいています。この動画を学校で活用して、子どもの話せる場面を少しずつ広げることができたといううれしい報告もいただきました。

下記は、2013年と2014年に作成した啓発動画です。
動画「場面緘黙(かんもく)を知ってください」(5分30秒)
(動画サイト(youtube)はこちら>>

動画「場面緘黙(かんもく)を知ってください2」(3分10秒)
(動画サイト(youtube)はこちら>>

ここ数年で場面緘黙がメディアに取り上げられることも多くなりました。学会での発表やシンポジウムが開かれ、各地で当事者の会や親の会も生まれてきました。まるで、たんぽぽの綿毛がゆっくりと空を飛び広がって各地に花を咲かせるように、今「場面緘黙」に関する理解と支援の輪がゆっくりと、しかし確実に広がっていることを感じています。

この連載が場面緘黙理解の「綿毛」の一つとして、読者の皆さんの心に届くこと、そして読者の方自身もその「綿毛」を飛ばしてくださる一人となってくださることを、心より願っております。読者の皆さん、企画してくださった五藤さん、本当にありがとうございました。

※参考文献
「場面緘黙Q&A」かんもくネット著、学苑社
「場面緘黙児への支援−学校で話せない子どもを助けるために−」
Angela E. McHolm ,Melanie K. Vanier , Charles E. Cunningham (著)、
河井英子・吉原桂子(共訳) 田研出版

(わかや)

 

──■ 連載:イイトコサガシから始まるコミュニケーション
第3回 自分らしさの模索
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なぜ人は生き辛く、生き難く、生き苦しくなってしまうのでしょう?
大きな理由の一つに「その人の生き方がブレているから、ブレやすいから」というのがあると私は実感しています。

ではなぜブレが生じてしまうのか?それは自分らしく生きていないからです。というよりも、その前段階である自分らしさを模索できていないから、です。

生き辛さを抱えている人たちは、自分らしさを殺して社会適応を強いられるケースも少なくありません。そうなれば、更に自分らしさが分からなくなっていきます。そして、自分らしさを諦めてしまいます。

イイトコサガシ・ワークショップの中で自分らしさの話をすると、多くの参加者さんから同じ質問を受けます。(支援者さんや親御さんからも、です)
「自分らしさってなんですか?」
やはりそうなのです。自分らしさが大切という言葉はたくさん聞いていたし、知っているけれど、いざ「自分らしさで試してみましょう」と言われると、どうしてよいか分からなくなってしまうのです。

私はこう答えています。
(現時点では、です。この先変わっていくと思われます)
「実は私もよく分かっていないのですよ。だからこそ、これが自分らしさなのかな? それともこれかな? いやいや、こういう自分らしさが好きだなってどんどんと試しているんです。自分らしさを目指して試行錯誤するからこそ、自分らしさを実感できるんじゃないでしょうか?」

自分らしさとは成りたい自分から始まります。
[成]りたい自分に成るために、[長]い時間をかけて色々と試行錯誤することを、イイトコサガシでは成長と呼んでいます。

みんなで一緒に相互成長を目指すワークショップ、それがイイトコサガシ・ワークショップです。成りたい自分ってなんだろう? という風に想いを巡らし、好奇心を刺激し、大きな夢を描くからこそ、自分らしさが見えてくるのです。

みんなで一緒に相互成長するという目的を共有している仲間と、色々な試行錯誤を重ねていくからこそ、自分らしさが新しく生まれていくし、育っていくし、創られていくのです。
色々な人の自分らしさと、自分の目指している自分らしさが真剣に交流するからこそ、他の人を参考にすることができるようになるのです。

この過程を面倒くさい、煩わしい、うざったいと投げ出してしまうからこそ、色々なものがブレてしまうし、ブレやすくなってしまう。そして、取ってつけたような価値観や言葉で、自分らしさを取り繕ってもだめなんです。チャンスやピンチの時には素の自分が出ます、出てしまうんです。他人はそれを判断基準にして人間関係を構築します。だからこそ、常日頃から自分らしさを模索して、研鑽して、大胆に改変していく意識が必要となってくるのです。

だって、皆さんも口先だけの言葉と、生き方からの言葉の違いってなんとなく分かりますでしょ? 口先だけの言葉は、例えつじつまが合っていても、違和感が残るんです。
「この人、本気に思えないな」
「いざとなったら、手のひらを返すんじゃないか」
「だったら、なんでやらないんだろう?」

コミュニケーションの技術が完璧になっても、この違和感を消すことはできません。だからまずは、自分らしさを模索して試行錯誤することから、たくさん試行錯誤することがスタートなのです。

最後にイイトコサガシ・ワークショップが目指している自分らしさの方向性を羅列しておきますので、ぜひとも参考にしてください。本当はひとつひとつ解説していきたいのですが、それをしてしまうと皆さんの試行錯誤の妨げになってしまうかな、と。なので色々な想像力を駆使して、自分らしさの成長に結び付けてみてください。

■イイトコサガシ・ワークショップの目指す自分らしさとは?
『自分らしさは試行錯誤の中にあるもの』
『自分らしさは意識的な混乱の中にあるもの』
『自分らしさはナチュラルハイの向こう側にあるもの』
『自分らしさは過去を手放す先にあるもの』
『自分らしさは試した後の違和感から見つけるもの』
『自分らしさは常識や多数派の論理の外にあるもの』
『自分らしさは感情表現から生まれるもの』
『自分らしさは批判を恐れずさらけ出す勇気』
『自分らしさは教えてもらうものではなく、創るもの』

冠地情(かんちじょう:本名)イイトコサガシ代表

 

──■ あとがき
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今日は3月11日、東日本大震災からちょうど5年めです。なくなられた方のご冥福と、まだ不自由な環境に過ごされている多数の方には、心よりお見舞い申し上げます。

当時、当メルマガでは、広島在住の臨床心理士による「mayaさんのスクールカウンセラー奮闘記」の連載がメイン記事でしたが、何かのお役に立つことができないかと考え、「災害時に役立つ情報サイト」の記事をまとめさせていただきました。
2011年3月18日号 (バックナンバーはこちら>>

次回のメルマガは、3月25日(金)です。場面緘黙の連載が終わり、次号からは吃音(きつおん)への理解と支援をご紹介する予定です。