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イイトコサガシから始まるコミュニケーション

TOPIC──────────────────────────────
■ まえがき:当事者からのメッセージ
■ 新連載:イイトコサガシから始まるコミュニケーション
■ 連載:場面緘黙(かんもく)−日本の現状
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■まえがき:当事者からのメッセージ

発達障害の特性は、「手帳」を保有する当事者だけでなく、多かれ少なかれほとんどの人が持っています。編者自身も、認知テストWAISで動作性検査の値が言語性検査より20低く、申請すれば手帳がもらえると言われています。ですが、その2者の大きな差は、あえて手帳を取得しようと決心するほどの社会の中での、不適応の経験の有無ではないかと思います。

私の友人であり、異なった人の共生を目指す、ヴァラエティカフェを一緒に創設した仲間の一人である、冠地情(かんちじょう)さんは、本人曰く、不登校・ひきこもり・いじめ・発達障害の四冠王だったそうです。

そんな経験から、発達障害当事者同士が社会生活で必要なスキルをお互いの交流の中から身につけるワークショップ「イイトコサガシ」を行っています。その規模は、43都道府県で1000回以上、参加者は1万人以上とのことです。NHK ハートネットTV、バリバラ にも出演されています。

そんな当事者の代表の一人である冠地さんに、これまでの経験と他の当事者へのメッセージを、存分に連載で表現していただきたいと思います。

(五藤)

 

──■ 新連載:イイトコサガシから始まるコミュニケーション
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まずは、イイトコサガシという名前の由来から、始めさせていただきます。
このエピソードにこそ、生きづらさが可能性に変わる真理が入っているからです。イイトコサガシの立ち上げ前に、私たちは、約1年半の準備期間をかけました。

なぜ、そんなに時間が必要だったのか?
それは心の傷、二次障害、パニック、フラッシュバック等に対する方程式が整っていなかったから、です。専門家がいない中で会を運営していく以上、その命題と向き合うことは必須だったわけです。

そこで他の当事者会、支援者さんに相談した上で私たちが出した結論は「トラブルのほとんどは、良かれと思ってした助言、あるいは批判しているつもりのない批判から始まる。それらをルールで禁止しよう」でした。

しかし、これだけでは何かしっくりきません。
そこで追加されたのが逆の発想である「よかったところを探し、ほめることも必須にしよう。この二つが基本にあれば、さすがにトラブルは起き難い」というルールでした。

もちろん、懸念はありました。
1.ルールだからほめる→ お世辞みたいになってしまうのではないか?
2.全くよいところがなかったらどうしよう?
3.そんな簡単に良い所を見つけられないし、言葉にできないのでは?
4.参加者が受け入れにくいルールなので、集客が難しいのでは?

1に関してはそうならないように、少なくとも私たち(イイトコサガシのファシリテーター※1)は絶対に本気でイイトコサガシしよう、ということに落ち着きました。
※1 ファシリテーターとは、直訳すると促進する人、となります。 イイトコサガシ・ファシリテーターは、良かったところを応援する雰囲気や気持ちを促進する人、となります。

2に関しては、よかったところがゼロってことはさすがにないだろう・・では、解決しません。やってみないとわからないよね・・でも解決しません。最終的な私たちの落としどころは、このワークショップに納得して参加の申し込みをする人はかなりやる気のある人だろうから、よかったところがゼロにはならないだろう、でした。
その読みは的中し、特に問題にはなっていません。(デイケア等の支援機関に出向いて実施する時は問題になります。受け身の参加者がほとんどだからです)

3に関しては、だからこそ意味がある、というように解釈しました。
今や社会全般にその傾向がありますが、生き辛さを抱えている人たちは特にイイトコサガシが苦手。逆にワルイトコサガシは得意です。その割合を変える意味でも、このワークショップの中では、イイトコサガシを頑張ってみようよ、という結論に達しました。

4に関しては、もうそこは割り切ろう、ということになりました。
少ない人数でも、このルールに納得した人だけでワークショップをした方がトラブルは少ないし、ワークショップ自体も盛り上がる、と。

結果は想像以上でしたね!
イイトコサガシの飛び交うワークショップは、その相乗効果で素晴らしいエンパワーメントを産み出しました。
自分がイイトコサガシからコミュニケーションを始めるからこそ、自分にイイトコサガシが還ってくる、という感覚を参加者全員で共有できたのです。
ちなみに、この考え方は開催回数1000回を超えた今でも変わっていません。ワークショップの目的と道筋と枠組みをハッキリさせた上で、納得した人にだけ参加していただく。これがトラブルを防ぐ、イイトコサガシ・黄金の方程式 です。

イイトコサガシは、常連さんとばかりワークショップをしているわけではありません。色々な地域で、色々な人たちと、色々な団体と一緒にワークショップを開催していますが、ほとんどトラブルになっていません。理由は、上記の割り切りを重要視しているからです。

最近で特筆すべきイイトコサガシの成長は「良かったところを探しほめる」から「良かったところを探し、応援する」にモデルチェンジしたことです。
イイトコサガシの本質は相互評価ではなく、相互応援、ということに気がついたからです。評価するためのイイトコサガシと、応援するためのイイトコサガシでは全然違いますよね? このことに気が付くのに、1000回以上の開催が私たちには必要だった、ということです(遠い目)

そして、イイトコサガシをナチュラルに率先していくファシリテーションが、現在のイイトコサガシ・ワークショップの大黒柱となっています。「冠地さんはルールだからイイトコサガシしているのではないな。生き様として、本気の情熱でイイトコサガシをしているんだな」と参加者さんの心に響くように、目指せるかどうか、です。

イイトコサガシから始まるコミュニケーションは、テクニックよりハートが大切。それを言葉ではなく生き様で伝えていくのが、イイトコサガシ・ファシリテーター。そのイイトコサガシ・ファシリテーターのハートが、イイトコサガシ・ワークショップを創造していくのです。

最後に一言。イイトコサガシ・ワークショップを簡単に漢字で説明すると、『相互成長試行遊創』:相互成長を目指して、試行錯誤力の土台を遊び心で創る!です。

冠地情(かんちじょう:本名)イイトコサガシ代表

 

──■ 連載:場面緘黙(ばめんかんもく)の子どもへの理解と対応
(第3回)場面緘黙−日本の現状
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連載の第3回はかんもくネット事務局、元緘黙児の保護者がお届けします。

場面緘黙は、日本では情緒障害として特別支援教育の対象となっています。
しかし、教育現場での場面緘黙の認知度はあまり高くありません。場面緘黙を知っていても、実際どのように対応すればよいか、わからない先生方が多いのが現状と思われます。

場面緘黙の改善には「早期発見・早期支援が重要」ということは、この連載の第1回と第2回にもありました。場面緘黙をもつ人の多くは保育園や幼稚園など、社会的場面にデビューする時期に症状の兆しが表れます。そのため、早い時期に、周囲の大人が子どもにどう関わるかが、とても大切になってきます。実際のケースに即して、まず就学前から話を始めます。

◆卒園式の練習がきっかけで場面緘黙を発症したK君

K君は、ちょっとはずかしがりや。おかあさんも小学低学年まで場面緘黙だったそうなので、親から不安になりやすい気質を受け継いでいるかもしれません。卒園を控え、卒園式の練習が始まった頃のことです。

「大きな声でお返事しましょう」
しかしK君はなかなか大きな声が出ませんでした。
先生はそんなK君に対して「もっと大きな声で!」とくり返しました。それでも先生が期待するような大きな声が出ませんでした。そしてそれ以来、K君は園で声が出なくなってしまいました。

人前での緊張が高いK君にとっては、それが精一杯のお返事だったのでしょう。しかし、そのがんばりは先生には伝わりませんでした。先生の熱心な指導が、K君にはかえって大きなプレッシャーとなったのです。

◆出席のお返事を飛ばされ続けたK君

小学校に入学したK君。朝の健康観察のお返事ができないことに困った担任の先生は、おかあさんにききました。「お返事をしないんですが、どうしましょう。飛ばしてもいいですか?」おかあさんはどうしていいかわかりません。先生にご迷惑をおかけしてはいけないと「そうしてください」と答えました。

こうして、K君のクラスでは、朝の健康観察でみんなの名前が順番に呼ばれる中、K君の名前だけが飛ばされ、呼ばれないことが毎日続くことになりました。

私は、この話を聞いたとき、K君の心情を思い絶句しました。
K君はクラスの一員として認められてないように感じたのではないだろうか。
自分はいなくてもいいんだと思わなかっただろうか。K君の自己肯定感が下がってしまったのではないかと・・・。

先生は先生なりに、K君を思いやってこのような対応をされたのかもしれません。しかし、K君が参加できるやり方で、朝の健康観察を行う方法を検討してほしかったです。K君もきっと、クラスメートと同じように接してほしかったのではないかと思います。

◆その後、動けなくなってしまったK君

私がK君の存在を知ったのは、彼が中学1年生の時でした。
K君は話せないだけでなく、身体が思うように動けない緘動(かんどう)もある状態でした。

定期試験のとき、こんなことがあったそうです。何かの手違いでK君はテストプリントを受け取り損ねてしまいました。しかし、そのことを先生にも周りにも伝えることができず、テスト時間中ずっとうつむいたままで過ごしたそうです。テストを集める時になって初めて、K君にプリントが配られていないことに周りが気づきました。

ここまで重篤なのに、保護者は学校の先生から「場面緘黙」という言葉を知らされたことがなかったそうです。そのためK君のおかあさんは、医療機関や相談機関に一度も相談したことがありませんでした。不登校にならず、がんばって学校に通い続けたために、周りは問題にしなかったということなのでしょうか?

◆「答えるまで座ってはいけません」ひとりの先生の対応で不登校に

次は、他の中学生のケースです。
Sさんは場面緘黙のため、先生から授業中に指されても答えることができませんでした。「答えるまで座ってはいけません。」場面緘黙に理解がない教師にこう言われて、Sさんは1時間中立ち続けました。

次の日、Sさんは中学校へ行けませんでした。そしてこれが、Sさんの長い不登校のはじまりとなってしまったのです。

中学校は教科別に先生が分かれます。実際、全員の先生方に場面緘黙の子への対応を理解していただくには、時間と相当な努力がなければ難しいことなのでしょう。しかし、それでも私は、ひとりの先生の間違った対応によってその後、何年にもわたって苦しみ続けることになる子どもや家族がいることを、先生方に知っていただきたいのです。

2015年5月にNHKのハートネットTVで場面緘黙が特集されました。周囲から理解を得られず、長年苦しんできた当事者・経験者・家族の“声”がたくさん番組によせられました。
※NHK福祉ポータル ハートネット (サイトはこちら>>

先生の言動は、その子の将来を変える大きな影響力をもちます。次回は、家庭と先生(学校)の連携による取り組みが、場面緘黙の改善へとつながっているケースを紹介します。

『なっちゃんの声−学校で話せない子どもたちの理解のために−』
『どうして声が出ないの−マンガでわかる場面緘黙−』
(共に学苑社) 著者はやしみこ

 

──■ あとがき
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前号でお知らせしました、第25回プロレジ大賞は残念ながら受賞できませんでした。ですが、各部門4つだけのノミネート作品に選ばれたことは十分、意味があったことだと思います。応援していただいた方々には心より御礼申し上げます。
第25回Vectorプロレジ大賞 結果発表 (詳細はこちら>>

今号からは、場面緘黙と当事者からのメッセージというダブル連載となりました。

次回のメルマガは、2月26日(金)です。