フラストレーション蓄積と突発性癇癪/危機回避

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2014.10.10

フラストレーション蓄積と突発性癇癪/危機回避

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■ 連載:フラストレーション蓄積とメルトダウン(突発性癇癪)/危機回避
■ グッズレビュー:障害児用オーダーメイドランドセル
■ トピック:メルマガ読者の選んだ記事
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■ 連載 自閉症は『自閉』する障害ではない
第3回 フラストレーション蓄積とメルトダウン(突発性癇癪)/危機回避
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私たちにとっては普通の音・匂い・触感などが、非常に不愉快に感じられる。そんな特殊な感覚機能と毎日向き合っているのが自閉症。日々の生活の中でイライラが溜まりやすいのは想像に難くありません。自分の体が、環境の変化に振り回されやすい(スーパーに入った瞬間、瓶詰めピクルスの酢の匂いに耐えきれない、というほど敏感な例もあるようです)要はそれだけの事が、なかなか理解してもらえない、共感もしてもらえない。自閉症と生きる子供達のどれほど多くが、こういった孤独・孤立感に悩まされている事でしょうか 。だからこそ「相手の感じ方を少しでも理解したい」、そういう姿勢で常に接する事がフラストレーション/メルトダウンへの対処法の第一歩となります。子供の「我々にとって不都合な」行動をコントロールすることでは解決法は見いだせません。

では、今回も実際に起こった出来事を基に、回避できないハプニングとその時のメルトダウン(突発性癇癪)の回避法について詳しくお話ししたいと思います。

N君は水遊びが大好き。毎週近くのコミュニティーセンターに水泳に行くのをとっても楽しみにしています。ですが、今回は体調不良やスケジュールの加減で約一ヶ月ぶりのプール。前の日からお母さんに説明され、とっても楽しみにしていました。いつも通りバスに乗ってプールに着くと、、、、なんと「ファミリープール、緊急消毒中のため3時間使用禁止」との張り紙。最悪の事態です。一ヶ月ぶりのスイミング、しかもそれを楽しみに、嫌いなアルファベットの練習も乗り越えて来たN君です。なんと説明すればいいのでしょうか。N君は話し言葉を持ちません。自分の悔しさを言語化し、人に伝える事で気持ちを昇華させる術を持っていません。大型メルトダウンに繋がりかねない状況です。とりあえず、競泳用プールはいつも通りに使えるとのこと。更衣室に行き、着替えながら「今日はいつものプールが使えないよ。大きい方のプールに行くからね。」と簡単に説明しますが、N君の頭は待ちに待ったプールのことで一杯です。シャワーを浴びていつものプールへ突き進んで行きます。ここで一番大切なのは、可能な限り物理的にN君をブロックすること(手首を掴んでそちらに行かせない、とか)を避けることです。本能的に、保護者役として、「止めなきゃ」と思ってしまうものです。けれども、本人が心待ちにしていたプールが目の前に広がっているのです。それを無理矢理止められたら、誰だって抵抗したくなります。それよりも「N君に自分で別のプールへ行く選択肢を選んでもらう」=つまり、N君なら、自分でちゃんと決められる、と信用する。それだけのことで、多くの場合メルトダウンが回避できたりします。(100%の保障が無いので、行動に移すにはもちろん勇気がいります。それでも出来る限り選択の余地を作るようにします。)ここで、初めから無理矢理引き止めようとすると、我々の行動が子供達にとってあまりにも突然で、理不尽なものと映りますので、「噛み付く/頭を激しく打ち付ける」等、互いの身体の危険に繋がりかねない事態になります。

では、言葉を持たないN君にどうやってアプローチすればいいのでしょうか?

1)ダメを連発しない。強制的に抑制することを極力避ける。
N君の体に直接制限をかけないで、プールとN君の間に立ち、目線を同じ高さに合わせ、「待って。今日は、こっちはダメ(指で使用禁止の方のプールを指差し、ノーのサインと組み合わせます)」「あっち(競泳用プールを指し)はオッケー」と説明します。
※「ダメ!」(ノー)という言葉に、人間の脳は非常にネガティブに反応するそうです。だから、「ダメ!」から始めるのではなく、「待って」という中立的な単語で会話を始めます。一言目がノー!だと、その時点で「聞く耳」がシャットダウンされてしまう事が多いようです。

N君の目から輝きが消え、しかめっ面になると共に目に涙が盛り上がります。
「ごめんね。そうだよね。腹が立つよね。騙されたって思うよね。」N君の体現している感情を出来るだけ汲み取ってそれも伝えます。(この時、言葉は完結に。はっきりと、一文が長くならないよう気をつけます。)N君は立ちふさがる私を回避してさらにプールの方へ進みます。

2)正しい状況判断と優先順位
N君の腕を掴んで止めたい衝動を必死で自制しつつ、頭の中で優先順位をつけます。今回の立ち入り禁止の理由は、「子供がプール内で嘔吐してしまった事による、水の消毒のため」。足首くらいまで浸かってしまっても、激しくコンクリートの壁や地面等に頭を打ち付けられるよりはよっぽど安全です。
そこで、足くらいまでなら水に入ってしまう事は許容範囲と考えます。逆に無理に止めようとして思いっきり噛まれてしまった場合、肌の露出度が高い水着姿の私もかなりの怪我をしますし、その後のN君の行動を止める事はできません。優先順位は「N君と自分の安全の確保」です。

3)優先順位に従い、落ち着いた、低いトーンで冷静に話し続ける
(言葉数は少なめに)

そこで、じりじりとプールサイドに近寄り続けるN君を無理矢理制止はせず、N君とプールの間というポジションをキープしつつ、「こっちのプールは無理なの。あっちへ行こう。」「そのかわり今日はいつもより長く遊ぼう」と落ち着いたトーンで説明し続けます。

※N君の立場からすれば、私は彼にかなりの譲歩を迫っているわけです。こういう具合に、交渉の中に、彼の意向を尊重する意思がある事を明示していくことで、相手が頑に拒否してしまうのを避けるようにします。

ついにN君の足がプールサイドに到達し、様子をうかがっていた係のお姉さんにも注意をされてしまう始末に。簡単に状況を説明し、理解を貰いつつ、粘り強く説得と説明を続けます。涙を一杯に溜めた目で恨めしそうに私を睨みつけるN君。もう一度「N君、お願い。」とゆっくり頼みます。すると「んーーーーーっ!!」と激しく地団駄を踏み、ものすごい勢いで私を突き放し、同時に自分はもう一つの競泳用プールへと走って行きます。私の体の力が一気に抜けます。「あーーー、よかった。」

4)冷却期間(一人の空間が必要な時間を尊重し、黙って見守る)
この時点で、最悪の事態は回避できました。 しばらく(場合によっては30分ほど)は私にあれこれ言われたくないと思っている可能性が大です。こういうときは、一定の距離を置いてN君の方からコミュニケーションを再開してくれるのを待つのが一番です。最終的にはこちらに顔を向けたり、私の腕を引っ張って注意を惹き付けたり、「もう僕腹が立ってないよ。大丈夫だよ。」のサインを何らかの形で発信してくれます。そうしてコミュニケーションが再開されたら、「ありがとう。大変だったよね。がんばって理解してくれて、誇りに思う。」とN君の選択肢をきちんと讃えます。

上記例は、前回お話しした「コミュニケーションのサークル」が維持できた証拠です。言葉で伝わったのか、雰囲気で伝わったのか、どちらかは分かりません。でも、最終的には「僕は全然嬉しくないよ、この選択!」と自己表現しつつも、「今日はどうしてもダメらしい」という事を悟り、きちんと取るべき選択を取ってくれました。

どうしてもダメな事もある。全く予想できない、理不尽なことも日常の生活の中では起こる事です。こんな時、最後まで「N君はちゃんと分かってくれるはず」そういう信頼を失わず、相手の「選ぶ権利」を出来るだけ尊重する形で、それでも「ダメな事はダメ」と伝える事で、意外とメルトダウンを避けることが出来たりします。もちろん、普段の関わりの中で築き上げていた信頼関係があったからこそで、もし初対面だったら、上手くは行かなかったでしょう。だからこそ、日々の信頼を基にした人間関係の構築が大切なのです。
「どうせ通じないのだから」と、無理矢理止めていたら、彼のフラストレーションが蓄積し、最終的にメルトダウンは回避出来なかったでしょう。相手に選択の自由を与える、というのは信頼の証でもあります。子供達は、大人からの信頼感に常に最大限に応えようとしてくれます。「理解されない状況」にいつも閉じ込められていて、その上、誰も自分たちの気持ちを尊重しようとしてくれない。そう感じさせられる事が続く中、突然の計画変更を迫られては、フラストレーションが蓄積し、最終的に爆発、メルトダウンへと繋がってしまうのも仕方ありません。(特に言葉でそれを表現できない子供達のフラストレーションは絶大です。)だからこそ、相手の気持ちを理解する、出来る限り尊重する姿勢が、彼らの反応を大きく変えることに繋がるのです。
完全に自立した生活を送る事はないかもしれません。それでも、出来る限りの「自立」へとつなげるのは重要な教育の一つです。そして、それは「自分の頭で考える」所から始まります。誰かに強制的に止められない限り、自分の衝動を自分で管理できない、自分はそういう人間だ。と、思わせてしまうのでは教育ではなく、調教です。そうではなく「選択肢は自分で選ぶ」練習を繰り返す。それは本人の自信と自己責任にも繋がります。「自分で判断できない、考えられない」と初めから決めつけるのではなく、自閉症に合わせたモードで「考えられる」ように条件を整え、その中で「考える頭」を養って行く。それがDIR/フロアータイムの基本姿勢となります。

※もちろん、全てのシーンにおいてメルトダウンが避けられるわけではありません。場合により無理矢理に制止することが必要な状況もあります。そんなときは、後から落ち着いて話し合い、その時の感情をしっかり把握できるよう一緒に気持ちの復習をしたりします。

次回は、DIR/フロアータイムと組み合わせて実際に使用していた、発達心理系アプローチと相性のいい、その他のテクニックをご紹介したいと思います。

(フェダック・佑子)

 

■ グッズレビュー:障害児用オーダーメイドランドセル
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今回も、息子(肢体不自由児・15歳)との経験によるお話をさせていただきます。

来春、小学校の新一年生になるお子様がいらっしゃるご家庭では、ランドセルの準備がそろそろ始まっているのではないでしょうか?最近、テレビでもランドセルのコマーシャルがよく流れていますね。

9年前、肢体不自由児の息子も、車椅子を使っていますが、周りのお子さんたちと同じように、新一年生への夢と希望を持っており、ランドセルも欲しがりました。また、親も、そんな息子に、ランドセルを用意してあげたいと思いました。いくつか、ランドセルを見ましたが、どう考えても普通のランドセルは、車椅子に乗っている我が子には、持てないし使えないことが、よく分かりました。

なんとか、工夫をして車椅子にランドセルをかける方法はないか・・・
そんな事も考えつつも、ネットで検索していたら、障害のある子供のためのランドセルが作られていることを知りました。

その時は、『オリビエランドセル』という名称だったと思います。それで、今回の寄稿にあたり、調べたところ、障害児用オーダーメイド オリビエUランドセルで検索できるようです。

●オリビエUランドセル の詳細はこちら>>

こちらのランドセルは、車椅子に掛けての使用がメインのものだけでなく、スタンダードなランドセルの形を保ちつつ、サイズや軽量を考えているものや開け閉めしやすい形になっているものもあります。身体に麻痺があり、手先が使いにくいお子さんだけでなく、手先が不器用だったり、体格が小さくて体力も少し劣ったりするお子さんにも使いやすいランドセルだと思います。

さらにうれしいことは、福祉用品は一般の商品よりかなり高額になるのですが、当時息子のランドセルは、30,000円でした。今でも税込で34,000円からとなっています。カラーも色とりどりで、お子さんもワクワクした気持ちで春の入学の時を楽しみにされることでしょう。お子さんのうれしい、希望に満ちた表情を見ることができるのは親として、とてもうれしいことですね。

(福徳 洋美)

 

■ トピック:メルマガ読者の選んだ記事
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メルマガアンケートで、読者の方の支持の多かったシリーズや記事は以下のものでした。

1) シリーズ 賞子先生の「魔法のアプリ」 井上賞子氏
13年9月20日号~14年4月4日号 13回連載
2) シリーズ ビジョントレーニング 北出勝也氏
12年12月14日号~13年9月20日号 12回連載
3) シリーズ 自閉症は『自閉』する障害ではない フェダック・佑子氏
14年9月12日号~連載中
4) 記事 自閉症の僕が跳びはねる理由 関連
13年9月6日号、14年8月29日号
5) シリーズ 「聞く」と「分かる」の関係 中川雅文氏
14年4月18日号~14年8月20日号 10回連載
6) シリーズ ボストンからの発達障害レポート
13年3月15日号、13年7月19日号、他 隔号で連載中
7) 記事 DVD紹介「発達障害の子どもたち」
14年5月30日号、14年9月12日号

グッズレポートでは「拡大教科書」14年8月8日号、「トミカタウン」14年2月7日号がよかったとのことでした。他に、井上先生の連載の中で紹介された「単語帳」などのアプリを使っているという書き込みもありました。なお、グッズレポートは下記ページにまとめて掲載されています。
★詳細はこちら>>

改善点では、現在の複数の記事が集まった形態よりも、記事ごとに単独で発行した方が、検索性が高まってよいという意見がありました。

これらを参考にして、今後もメルマガをさらに充実、改善していきたいと思います。アンケートへのご協力ありがとうございました。

 

■ あとがき
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次回メルマガは、10月24日の発刊です。

10月17日・18日は我孫子駅前で千葉県福祉機器展です。お時間の許す方は、JR我孫子駅前の会場にぜひ、お越しください。
★第9回千葉県福祉機器展 詳細はこちら>>
★レデックスセミナー(出展者セミナー)「認知症に関連する軽度難聴の早期発見」
17日午後1時30分~2時30分 定員50名

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